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公開日:2023.12.21
「1件の重大な事故の背景には29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリ・ハットがある」というハインリッヒの法則をご存知でしょうか。
この「ヒヤリ・ハット事例」特集では、実際に起こった事例をご紹介します。原因や対策を知ることで学びの一助としていただくほか、記事の最後には事故を未然に防ぐための参考となるようなお役立ち情報も添えております。日々の診療のヒントとして、ぜひお役立てください。
(事例の出典:日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業)
他科医師間の連携不足による、術後患者への不要な薬剤投与
事例概要
※以降、一部表記を除き原文ママ
患者概要
患者 | 70歳代男性 疾患名:左耳下腺腫瘍 |
---|---|
影響度 | 軽微な処置・治療が必要もしくは処置・治療が不要と考えられる |
当事者 | 医師、看護師 |
事例の内容
6月17日に耳下腺腫瘍で耳下腺亜全摘、遊離皮弁術、気管切開術を施行し入室した患者。手術受けは夜勤看護師1が担当した。
頭頚科医師2、同科医師3、同科医師4が「皮弁の循環維持のためにヘパリンナトリウムを投与した方がいいと形成医師から言われたため考慮している。」と夜勤看護師1に話していた。
翌朝になってもヘパリンナトリウムを投与する指示がないため、再度頭頚科医師3・医師4に確認した。
頭頚科医師2は外勤のため早朝から不在であった。
頭頚科医師3が同科医師2にヘパリンナトリウムを投与するか確認し、同科医師3・医師4は夜勤看護師1に「(生食500 mlとヘパリン3 ml)このオーダーを投与してください。」と指示した。
夜勤看護師1は指示されたオーダーがCVP加圧用のオーダーであったため、「これはCVP加圧用のオーダーです。」
「通常へパリンを投与する際は、トータル48 mlになるようにヘパリンの量を調整することもありますがそれの間違いじゃないですか。」と確認した。しかし、「このオーダーでいいです。」と指示があった。
Wチェックを実施した際、他看護師も疑問に感じ夜勤看護師1に質問したが、夜勤看護師1は頭頚科医師には確認したことを伝えた。点滴を準備し8時30分に投与を開始した。
夜勤看護師1と日勤看護師5が引き継ぎを開始し、生食500 ml+ヘパリン3 mlの投与が開始となった経緯を引き継ぎした。
9時30分頃に形成医師6と同科医師7が診察のため来棟した。
夜勤看護師1は、形成医師6・医師7へ頭頚科医師からヘパリンナトリウムの投与指示があった経緯を伝えた。
形成医師6・医師7から「指示は出していない。」と返答あり。
10時30分頃に形成医師7が再度来棟し、形成医師の中にヘパリンナトリウムを投与する指示を出した医師は誰もいないため投与を中止するように日勤看護師5に指示した。
日勤看護師5が頭頚科医師4へ報告し、10時30分にヘパリンナトリウムの投与は終了した。
背景要因
- 医師間の連携不足
- 複数の診療科が担当しており治療方針に相違があった
- 日勤看護師は、疑問に思ったが主科医師に確認や薬剤師への疑義照会を行っていない
改善策
- 看護師間で疑問が解決しない場合、薬剤師へ相談すること
- 他科の医師が関わっている場合に疑問を感じた場合は他科にも確認すること
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ドクタービジョン編集部
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<この事例から学べること>
複数の診療科が関わる場合、医師は科ごとの治療方針に違いがある可能性を考慮し、他科の医師と丁寧なコミュニケーションを意識する。