医師の「研究日」とは?有意義な過ごし方を現役医師が解説

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働き方

公開日:2024.06.03

医師の「研究日」とは?有意義な過ごし方を現役医師が解説

医師の「研究日」とは?有意義な過ごし方を現役医師が解説

病院に勤務する医師は、勤務先に「研究日」が設けられていることがあります。名前のとおり研究業務に充てるだけでなく、医局が指定する外勤日とされていることも多いでしょう。常勤先とは別の環境に身を置くなど、この日を有効活用することで、自身のスキルアップを図ることができます。

この記事では研究日の概要や、研究日を有効活用する方法を考察します。研究日の使い方・過ごし方について考えたい方はぜひご覧ください。

研究日とは

研究日は勤務医の一部に存在する制度です。病院は通常、平日が営業日であり、勤務医も平日に勤務をしますが、このうち週に1日もしくは半日が「研究日」とされていることがあります。

名前のとおり、大学病院などで研究に携わるほか、他院やクリニックに外勤するなど、さまざまな過ごし方があり得ます。職場によっては「外勤日」と呼んでいることもあります。

研究日の意義

Stethoscope on calendar with marked date. Medical examination concept.

研究日は、医師個人にとっても医療機関にとっても、多くのメリットをもたらすと考えられます。双方の立場から、研究日の意義について考えてみましょう。

医師にとってのメリットは、下記のようなことが考えられます。

医師のメリット

  • スキルアップ(診療の幅の拡大、専門性の向上、情報収集など)
  • キャリアアップ
  • ワークライフバランスの改善

研究日の過ごし方については後述しますが、ほかの医療機関で業務にあたるケースが多いと思います。常勤先と異なる環境で仕事をすることで、自身の診療の幅が広がったり、より専門性の高い手術や手技を経験できたりと、スキルアップやキャリアアップにつながることが期待できます。人脈を広げる機会にもなるでしょう。

研究日を休息や家族との時間に充てることもできますから、ワークライフバランスの改善につながる場合もあります。

一方、雇用者である医療機関にとってのメリットには下記があります。

医療機関のメリット

  • 研究成果による病院の競争力強化
  • 医師のスキルアップによる医療の質向上
  • 医師のモチベーション向上

自院で勤務する医師が、他院での勤務を通じてスキルを持ち帰ってきてくれるとしましょう。その経験で医療の質が向上すれば、自院にとってもメリットです。他院で働く医師の姿にほかの医師が刺激を受け、モチベーションアップにつながる効果も期待できます。

研究日がもたらすメリットは定量化が難しく、必ずしも成果が得られるとは言えませんが、うまく活用することで医師にとっても医療機関にとっても、さまざまな恩恵をもたらしてくれる制度と言えるでしょう。

一方、研究日にはデメリットもあり得ます。医師から見れば、研究日があることで、それ以外の日の業務量が増える可能性があります。医療機関から見れば、研究日に医師が不在となることでマンパワーが不足する可能性が考えられます。

研究日が設けられている職場はどのくらいある?

研究日は、すべての勤務医に設けられているわけではありません。

どの程度の医療機関に研究日があるのか、公的なデータはありませんが、筆者の経験からは勤務医のおおよそ半分ほどに研究日があると考えられます。とくに大学病院では研究日が設けられていることが多い印象です。

研究日の過ごし方

白衣の女性

研究日の過ごし方について、主な事例を3つ紹介します。

①アルバイトをする
②臨床研究/基礎研究をする
③休息・趣味や家族と過ごす時間に充てる

①アルバイトをする

研究日の過ごし方として多いのが、ほかの医療機関でアルバイトをすることです。外来診療や手術にあたることが多いでしょう。

研究日は曜日が固定されていることが多いので、スポット(単発)アルバイトだけでなく、非常勤アルバイトを定期的に入れることができるケースも多いと思います。

ただし、2024年4月からは「医師の働き方改革」が施行されており、医師の時間外労働時間に上限が設けられています。これには常勤先での時間外労働だけでなく、他院でアルバイトをする時間も加算されます。アルバイトを検討する際は、常勤先の規定を確認することに加えて、自分の労働時間の上限がどのくらいなのか(A/B/C水準など)、勤務先が宿日直許可を取得しているかどうかを確認してからにしましょう。不安がある方は、医師専門のコンサルタントに相談してみると良いでしょう。

大学の医局の場合は関連病院などに医師を派遣する役割があるため、他院での外勤があらかじめ決められているなど、研究日に何をするか自由に選べないケースも少なくありません。

②臨床研究/基礎研究をする

研究日の名前のとおり、実際に研究業務に充てる例もあります。

といっても、週1日だけで研究を進めることは難しく、とくにマウスや細胞を扱うウェットな実験は複数日にまたがることが多いでしょう。それでも週に1日まとまった時間を取れれば、1日がかりの実験や論文執筆に取り組むことができます。

③休息・趣味や家族と過ごす時間に充てる

研究日を休暇のように扱う例もあります。

勤務医の場合は勤務スケジュールがカレンダーどおり、平日が勤務で土日が休みとなるのが一般的です。世の中の多くの人と同じですから、休日は商業施設や観光地は当然混み合っています。しかし、平日に休日を取得できれば、混雑を避けて快適に過ごすことができるでしょう(ただし家族や友人と予定を合わせるのは難しいかもしれません)。銀行や役所での手続きなどができるのも、平日に時間を取れる利点と言えるでしょう。

研究日を有効活用するには?

研究日を有効に活用するには、下記のことを意識すると有益でしょう。

  • 目標や目的を明確にする
  • 事前に準備をしておく
  • 振り返りをする

目標や目的を明確にする

研究日を使って何をしたいのか、明確に決めることが重要です。1日で何をどこまで進めるのかといった短期目標に加え、月・年単位の長期目標を立てると有意義でしょう。

事前に準備をしておく

研究日を迎える前に、必要な資料や機材を準備しておいたり、進行スケジュールを決めておいたりすることで、限られた時間を有効活用できるでしょう。

振り返りをする

研究日を終えた後は、事前に立てた目標をどこまで達成できたか振り返ると良いでしょう。事前計画と照らし合わせることで、次回の計画を立てる際に役立ちます。進捗や効果を確認することで、モチベーションの維持にもつながります。

まとめ

ポージングをする男性医療従事者看護師医師

昨今は「大副業時代」とも呼ばれ、大手企業でも副業の解禁が進んでいます。医師も、今後は「研究日=単なるアルバイトの日」ではなく、自身のスキルやノウハウを活かした副業活動に充てる日として活用することも視野に入れる必要があるでしょう。

ただし、研究日はすべての勤務医に認められている制度ではありません。研究日を通じて副業や自己研鑽に努めたい場合は、研究日のある職場への転職を検討するのも良いでしょう。

やりたいことや目標がある場合は、研究日にこだわらず有給休暇を活用することも選択肢です。一定の要件を満たしたフルタイム勤務者であれば、継続勤務年数が6カ月以上で年10日、6.5年以上で年20日の有給休暇が付与されます(労働基準法第39条)。毎週、特定曜日の午後に休暇を取るなどすれば、擬似的な「研究日」を作ることができます

この記事が研究日について考える上で参考になれば幸いです。

Dr.SoS

執筆者:Dr.SoS

皮膚科医・産業医として臨床に携わりながら、皮膚科専門医試験の解答作成などに従事。医師国家試験予備校講師としても活動している。

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