専攻医とは?関連する制度も詳しく解説

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業界動向

公開日:2021.09.17
更新日:2023.10.06

専攻医とは?関連する制度も詳しく解説

専攻医とは?関連する制度も詳しく解説

新専門医制度がスタートして耳にするようになった「専攻医」。専攻医とは2018年度から始まった新専門医制度として新たに登場した名称の一つで、従来の「後期研修医」に相当するものです。今回は専攻医の概要や関連制度について詳しく解説します。

国家試験合格後の医師のキャリアと専攻医

国家試験合格後の医師のキャリアと専攻医

医学部を卒業し医師国家試験に合格すると、いよいよ医師としてのキャリアが始まります。国家試験合格後は「研修医」と「専攻医」を経て、ようやく一人前の医師としてスタートできるといってよいでしょう。

多くの場合、特定の分野(診療科)で「専門医」を取得し、専門性を磨いていきます。概ね下記の流れで経験を積み、資格登録や取得・更新を進めていきます。

医師国家試験合格

研修医

専攻医

専門医(基本領域)

専門医(サブスペシャリティ領域)

指導医

ここでは、研修医と専攻医について解説します。

研修医

原則として2年間、大学病院または国の指定を受けた研修病院で臨床研修を行う立場の医師で、「臨床研修医」「初期研修医」とも呼ばれます。各診療科をローテートし、おもにcommon disease(臨床で高頻度に遭遇する疾患)の診療や救急対応などを学びます。

【臨床研修でローテートが義務付けられている診療科】

  • 内科:24週以上
  • 救急科:12週以上(4週まで麻酔科に振り替え可能)
  • 外科、小児科、産婦人科、精神科:各4週以上
  • 地域医療:4週以上

上記に加えて、一般外来での研修(4週以上)も必修です。

専攻医

専攻医は、臨床研修を終えたあとに専門医取得を目指して、各病院の専門研修プログラムで学ぶ3年目以降の医師を指します。従来の制度では「後期研修医」と呼ばれていた医師がこの専攻医にあたります。

専攻医になるには、臨床研修後に日本専門医機構が定めた各病院の専門研修プログラムへの応募・合格が必要です。専門研修の期間は約3~5年間と、臨床研修よりも長い研修期間となります。そのため、臨床研修以上に医師としてのキャリアやライフプランを考えたうえで研修先を選ぶ必要があります。

専門医と専攻医の違い

専門医と専攻医の違いは、専門医資格の有無です。専門医を目指す研修期間の医師を「専攻医」所定の専門研修プログラムを終え認定を受けて専門医資格を得た医師を「専門医」と呼びます。

専攻医が知っておきたい「専門医制度」

専攻医が知っておきたい「専門医制度」

専門研修を終えたあと、医師のキャリアを積むうえで必要となるのが「専門医」資格です。

ここでは、従来の専門医制度と、新専門医制度について解説します。

専門医制度とは

専門医制度は、各診療科、領域におけるスペシャリストを育成し、質の高い医療を提供することを目的に生まれた制度です。旧専門医制度では各学会が専門医の認定を行っていました。専門医は医師としての経験やスキルを患者さまなどに理解してもらうためのいわば「信頼の証」で、医師のキャリア形成において重視されるものの1つです。

新専門医制度適用の背景

2018年度から、従来の専門医制度の課題を解決するため、新たな専門医制度がスタートしました。

旧制度では各診療科・領域の学会が独自に専門医を認定していたため、専門医認定の基準が統一されておらず、医師の質担保が課題となっていました。新専門医制度では、第三者機関である日本専門医機構が専門医取得に必要な研修プログラムの認定を行うことで、専門医の認定基準の標準化が図られます。

新専門医制度が地方の医師不足を助長するのではないかとの声もあり、専門医の更新要件に医師不足地域への従事を盛り込むなど、医師の地域偏在への対策もあわせて必要となっています(後述)。

新専門医制度の概要

新専門医制度の概要

専門医の研修方法

新専門医制度の専門研修プログラムには「基本領域」と「サブスペシャリティ領域」の2つがあり、前者を1段階目、後者を2段階目とした2段階構造になっています。

基本領域

専門医になるには、まず「基本領域」における専門医資格の取得が必要です。サブスペシャルティ領域の専門医を取得するうえでも、原則として基本領域における専門医取得が必須となります。

基本領域】(19科目)

①内科 ②小児科 ③皮膚科 ④精神科 ⑤外科 ⑥整形外科 ⑦産婦人科 ⑧眼科 ⑨耳鼻咽喉科 ⑩泌尿器科 ⑪脳神経外科 ⑫放射線科 ⑬麻酔科 ⑭病理 ⑮臨床検査 ⑯救急科 ⑰形成外科 ⑱リハビリテーション科 ⑲総合診療

出典:日本専門医機構「基本領域およびサブスペシャルティ領域一覧」(2023年10月閲覧)
https://jmsb.or.jp/ippan/#an05

専攻医になると、これら19の基本領域から1つの専門研修プログラムに参加して研修を受けます。

研修と言っても、院内では所属する診療科の医師として、同僚や患者さまと接します。気を抜かずに、責任感をもって勤務しましょう。

サブスペシャルティ領域

基本領域の専門医を取得した後は、自身のキャリアや、より深めたい専門性に応じて、サブスペシャルティ研修を選びます。

サブスペシャルティとして認定される領域には以下24種類があり、より専門性の高い領域の専門医を目指すことができます。たとえば、外科専門医を取得した後、サブスペシャルティとして消化器外科や心臓血管外科の専門医を取得するという流れになります。

サブスペシャルティ領域】(24領域)※2022年4月1日現在の認定領域

■連動研修を行いうる領域(連動研修方式または通常研修方式)
消化器内科、循環器内科、呼吸器内科、血液内科、内分泌代謝・糖尿病内科、脳神経内科、腎臓内科、膠原病・リウマチ内科、消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、小児外科、乳腺外科、放射線診断、放射線治療

■連動研修を行わない領域(通常研修方式)
アレルギー、感染症、老年科、腫瘍内科、内分泌外科

■少なくとも1つのサブスペ領域を修得した後に研修を行い得る領域(補完研修方式)
肝臓内科、消化器内視鏡、内分泌代謝内科、糖尿病内科

出典:日本専門医機構「基本領域およびサブスペシャルティ領域一覧」(2023年10月閲覧)
https://jmsb.or.jp/ippan/#an05

専攻医に関連する「シーリング制度」

専攻医に関連する「シーリング制度」

新専門医制度は医師の質を担保するために始まった制度ですが、別の問題も生じています。専門医認定の要件が厳しくなったことで専門研修プログラムに対応できる基幹病院が減少し、一部の地域や診療科に人気が集中したのです。そのため、以前から問題となっていた地域間や診療科間の医師偏在が助長されるのではないかとの懸念がありました。

これらを受けて、日本専門医機構は都道府県や診療科に医師の採用数上限を設ける「シーリング制度」を設定しました。

シーリング制度の概要

シーリング制度とは、すでに必要な医師数を確保できている都道府県や診療科に採用数の上限(シーリング)を設ける制度で、2020年度から実施されています。

具体的には、採用数の一部は「連携プログラム」枠として、研修プログラムの50%以上をシーリングのない都道府県で行います。さらに、「連携プログラム」枠の一部(上限5%)では、研修プログラムの50%以上を医師不足が顕著な地域で実施することで医師の偏在を改善する狙いです。

2023年10月現在、シーリングの対象となっている診療科は次のとおりです。

【シーリング制度対象の診療科】

  • 内科
  • 小児科
  • 泌尿器科
  • 脳神経外科
  • 整形外科
  • 形成外科
  • 耳鼻咽喉科
  • 放射線科
  • 皮膚科
  • 精神科
  • 麻酔科
  • 眼科
  • リハビリテーション科

診療科以外の区分では、自治医科大学卒の医師や、各医学部の地域枠で合格した医師が、シーリングの対象外となっています。

シーリング制度の課題・検討事項

シーリング制度適用の判断基準となる「都道府県・診療科別の必要医師数」が現場の実態に即しているかというと、そうではありません。現場からは必要医師数を調整するべきとの意見もあがっており、診療科ごとの必要医師数について議論が進められています。

2024年度のシーリングについては、新型コロナウイルス感染症の影響が続いていること等をふまえ、2023年度と同数に決まりました。「特別地域連携プログラム」と「子育て支援加算」も、前年同様の扱いとされました(前者は継続、後者は見送り)。後者は引き続きの議論が必要とされています。

◆特別地域連携プログラム
足下医師充足率が低い都道府県のうち、医師少数区域等にある施設を1年以上連携先とするプログラム。通常募集プログラム等のシーリングの枠外として別途設けられる。

◆子育て支援加算
子育て世代の支援を重点的に行っている(育児と仕事を両立できる職場環境が整っている医療機関で研修を行う)プログラムに対し、特別地域連携プログラムの設置を条件に原則1名を、基本となるシーリング数に加算する案。

出典:厚生労働省 令和5年度第3回医道審議会医師分科会 医師専門研修部会(令和5年9月)資料/令和4年度同部会(令和4年6月)資料
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001144599.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000954161.pdf

今後も、シーリング制度を含めた新専門医制度は、社会状況等に応じて見直しが予想されます。

専攻医は臨床研修を終え、専門医を目指す段階の医師

専攻医は臨床研修を終え、専門医を目指す段階の医師

専攻医は、臨床研修を終えて専門医を目指す段階である、専門研修プログラム参加中の3年目以降の医師を指します。どの専攻に進むかは、今後の医師としてのキャリアを左右するため、自分に合った専攻を見つけることが大切です。

また、専攻医の応募・採用や新専門医制度は今後も変わることが予想されます。突然の方針変更に慌てないためにも、日頃から情報収集を欠かさず行うようにしましょう。

ドクタービジョン編集部

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