医師の生涯年収はいくら?勤務医・開業医の違いと生涯年収を上げる方法

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公開日:2024.07.04

医師の生涯年収はいくら?勤務医・開業医の違いと生涯年収を上げる方法

医師の生涯年収はいくら?勤務医・開業医の違いと生涯年収を上げる方法

医師の年収は、年齢や勤務先、勤務医なのか開業医なのか、診療科の違いといったことで異なります。また一般的に高収入であるといわれている医師ですが、その一方で「医師は割に合わない」という意見もあります。なぜ医師は割に合わないといわれているのか医師として年収を上げるにはどのような方法があるのかをお伝えします。

医師の生涯年収とは

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病院勤務医の年収が1,479万円だとすると、26歳~65歳の40年勤務で生涯年収は5億9,160万円で、おおよそ6億円が生涯年収となります。

なお、これはあくまでも勤務医の場合であり、開業医となり仮に75歳まで働けば生涯年収は増加します。一般的な大学・大学院卒の退職金を含めない生涯年収は、約2億6,000万円となっていますので、他の職種と比較すると医師の収入は、数倍になります。

※実際の医師の生涯年収は勤務先や開業の時期、診療科といった多様な条件により異なります。

開業医と勤務医の生涯年収

病院の勤務医であると給与を受け取りますが、個人開業医となると収支差額が収入となります。

月額給与 年収
病院勤務医 123万円 1,479万円
開業医(法人等) 211万円 2,530万円
開業医(個人) 205万円 2,458万円

このようなデータから、開業医は勤務医の約1.7倍の収入があるとわかります。勤務医から何歳頃に開業をするのか開業医として何年働くかにより、生涯年収に差が出ると言えるでしょう。

30代で開業した場合の生涯年収

勤務医として10年働き、36歳で開業医になって75歳まで働く場合を例に考えてみましょう。

勤務医の10年で約1億5千万円、開業医の40年間で約10億円の収入があるとすると、生涯年収は約11億5千万円となります。30代前半の勤務医の年収は抑えられる傾向にありますので、上記の数字には誤差があるかもしれませんが、この時期に開業医となれば同年代の医師よりも年収が高くなると考えられます。

開業するためには医師としてのスキルだけでなく、開業資金の準備や経営者としての能力も必要になります。

40代で開業した場合の生涯年収

勤務医として20年働き、46歳で開業医になって75歳まで働く場合の生涯年収について考えてみましょう。

勤務医の20年で約3億円、開業医の30年で約7億3,000万円の収入があるとすると、生涯年収は約10億3,000万円となります。40代は医師としての経験やスキルが充実し、組織内では管理者としての役割も担う年齢です。

開業資金の融資を受けるという意味でも信頼が得られる年代なので、40代の開業を目標にしている人もいるでしょう。 社会法人日本医師会の「新規開業の場合の開業後年数別開業年齢」(下記参照)から逆算すると、40歳前後で開業医となる医師が多いようです。

50代で開業した場合の生涯年収

勤務医として30年働き、56歳で開業医になって75歳まで働く場合の生涯年収について考えてみましょう。

勤務医の30年で約4億4,000万円、開業医の20年で約5億円の収入があるとすると、生涯年収は約9億9,000万円となります。一般的に開業の際に受けた融資は、10年〜20年で返済するケースが多いようです。医師としての実績やスキルは申し分ない年齢ではありますが、開業のために融資を受ける年齢としてはリスクがあるかもしれません。

診療科ごとの医師の年収の違い

診療科によっても年収に違いがあります。こちらのデータを参考に、診療科ごとの年収を比較してみましょう。

診療科 平均年収 生涯年収(40年勤務で算出)
脳神経外科 1,480万3,000円 5億9,212万円
産科・婦人科 1,466万3,000円 5億8,652万円
外科 1,374万2,000円 5億4,968万円
麻酔科 1,335万2,000円 5億3,408万円
整形外科 1,289万9,000円 5億1,596万円
呼吸器科・消化器科・循環器科 1,267万2,000円 5億688万円
内科 1,247万4,000円 4億2,474万円
精神科 1,230万2,000円 4億2,302万円
小児科 1,220万5,000円 4億8,820万円
救急科 1,215万3,000円 4億8,612万円
その他 1,171万5,000円 4億6,860万円
放射線科 1,103万3,000円 4億4,132万円
眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 1,078万7,000円 4億3,148万円

※40年勤務した場合の生涯年収は、「平均年収×40年」で算出

平均年収が高額となる脳神経外科と、眼科・耳鼻・泌尿器・皮膚科の平均年収を比較すると、400万円程度の差があります。生涯年収となるとさらに大きな差となり、診療科の違いで医師の収入が異なるとわかります。

脳神経外科は労働時間が比較的長く、高度な技術が必要となり専門スキルが求められます。産科・婦人科は、妊婦と胎児の命を預かる責任があり、オンコールや当直回数の多さが収入の高さに反映されていると考えられます。

医師の年収が高額になる理由

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他の職業と比較すると、医師の年収は高額になる傾向があります。大学の医学部で6年間勉強し、その後は医師国家資格に合格しなければなりませんし、そこから研修医を経験する必要があります。高度な専門知識が必要な医師であるからこそ年収が高額になりますが、他にも理由があります。

なぜ医師の年収は、高額になるのでしょうか。

需要と供給のバランス

人は誰しも最善の医療を平等に受ける権利があります。生まれながらに持病がある人はもちろん、怪我や風邪などで、多くの人が病院を必要としています。

日本は高齢化社会なので、今後はますます医師の需要が高くなっていくと予想されており、今後も人口が減少していくこと予想すると、より医師不足が深刻化していくという懸念もあります。また、医師は病気の治療だけでなく、健康を維持する、という役割もありますので、高齢化が進むほどより需要が増えていくと考えられます。

患者さまの命を預かる責任

医師は患者さまの命に関わる仕事です。

患者さまの症状の診断や症状により投与する薬、治療方針といった治療に関する全てにおいて医師が判断を下す場面は多くあります。時には患者さまの死を受け止めなければならない場合もあり、精神的なストレスは計り知れません。患者さまが回復し笑顔が見られるという喜びもありますが、常に人の命を預かるという尊い役割の対価として高額な報酬が設定されていると考えられます。

24時間体制の激務

医師は需要が高い仕事ですが、診療科によっては24時間体制で対応が求められる激務な職場もあります。

勤務時間が決まってはいるものの、患者さまの容体の急変や急患によっては対応を余儀なくされます。医師の中には残業時間が多くなり、過労死ラインと呼ばれる一定時間を超えるほどの勤務をしている人もいます。人手不足は慢性化しており、不規則な生活を送っている医師は少なくありません。

医師は割に合わない?

年収が高額であるといわれる医師ですが、あまり実感がないという人も多いかもしれません。勤務環境が過酷な仕事のため、「高収入だとしても割に合わない」と感じている医師もいるようです。

具体的にはどのような理由があるのでしょうか。

年収が高いため税金も高額

医師のように比較的収入が高額な場合は、支払わなければならない所得税も高額になります。

所得税は収入金額に応じて比率が決まっていて、「900万円を超え、1,800万円以下」という水準では所得税は33%、「1,800万円を超え、4,000万円以下」は所得税は40%となります。せっかく収入が増えても所得税だけでなく、住民税や社会保険料などもかかります。書面上では高収入であっても、その分引かれる金額が大きく、手取りは期待よりも少なくなってしまいます。

ただし開業医の場合は、自身で確定申告を行いますので、経費を計上して所得を下げると、課税所得金額を下げられることもあります。

開業医は退職金がない

勤務医であれば退職金がもらえますが、開業医となった場合は退職金という制度はありません。開業医は勤務医よりも収入が高くなるとお伝えしましたが、退職金の有無についてもよく検討すべきと言えます。

さらに開業医はクリニック開業の際の融資の返済だけでなく、老朽化のための建て替えや設備投資にもお金がかかっています。開業医が高収入だとはいえ、出費も多くなることを踏まえ、リタイア後の生活資金については計画しておかなければいけません。

開業医は厚生年金がない

勤務医であれば厚生年金にも加入していますが、個人事業主となる開業医は厚生年金に加入していません。開業医となると国民年金のみの加入となりますので、早い段階から老後資金について考えておく必要があります。

医師に限らずですが、高所得者は生活水準も高く、毎月の生活費も高額になる傾向があります。退職金も厚生年金もない開業医は、高収入であったとしても、老後の資金に関しては勤務医よりもシビアに計画する必要があるかもしれません。

24時間の勤務体制

医師は診療科によっては24時間の勤務体制ということも多く、更にその業務は患者さまの命を預かるという責任の伴うものもあります。いくら収入に反映されているとはいえ、割に合わないと感じている人もいます。

医師に限らずですが、働く理由はお金だけではありません。「自分自身を成長させたい」「社会の役に立ちたい」「生きがいを感じたい」というように、報酬以外の目的を誰しもが持っているはずです。どんなに高収入であっても、お金だけでは激務の対価とはならない可能性があります。

医師が生涯年収を上げる方法

医師が生涯年収を上げるには、どのような方法があるのでしょうか。節税や投資という意見もありますが、ここでは医師として生涯年収を上げる方法を考えてみましょう。

開業医になる

先述した通り、開業医は勤務医よりも年収が高くなる傾向があり、生涯年収も高額になると見込めます。

ただし開業には医師としてのスキルや経営力、人材や資金といった多くの準備が必要となります。新規開業なのか、診療科は何なのか、立地や地域病院との連携といった要素も影響するでしょう。開業医になれば必ずしも年収が上がるというわけではありませんので、丁寧に準備していきましょう。

転職する

一般的な職業であれば都市部の方が年収が高い傾向にありますが、医師は地方部の方が年収が高くなる場合があります。人材が不足している傾向にありますので、医師獲得のための条件の良い求人がみつかるかもしれません。また勤務先の経営形態が、国立なのか医療法人というような違いによっても収入に差がある場合もあります。

ちなみに、高額の求人はすぐ締め切られてしまううことも多いので、良い求人があればとりあえず問い合わせをして詳細を確認したり、いつまでキープできるか確認しておくとよいでしょう。

アルバイトや副業をする

医師としてアルバイトをするのは、珍しいことではありません。副業やスポット案件を探す、非常勤の掛け持ちをする、という働き方があります。医療機関のアルバイト相場は、時給1万円〜というところが多いようです。

収入がアップするだけでなく、常勤先と異なる医療を経験できるという自身のスキルアップのチャンスとなるというメリットもあります。

専門的な資格を取得する

専門医を取得している、資格を必要とする手術や内視鏡ができる、という強みがあれば、収入アップの交渉材料となります。

転職をする際には力強い武器となりますし、開業の際にも患者さまからの信頼に繋がるかもしれません。高齢化社会という背景もあり、認知症に対応できる精神科医でありながら内科疾患も診られる、リハビリ専門医を持っている、というような医師は需要が高くなると考えられます。

医師の生涯年収を上げる方法はある

医師は他の職業と比較すると、年収が高額になる傾向にありますが、その生涯年収は人それぞれです。診療科や病院の地域、開業するかしないか、というように、医師としてどのようなキャリアを積んでいくかで生涯年収は異なります。

医師として年収をアップさせる方法はいくつかありますので、自身に合う方法を選んでキャリアアップを目指していきましょう。

ドクタービジョン編集部

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