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履歴書は応募者の第一印象を決める重要な書類です。自身の魅力や入職への意気込みが最大限に伝わるよう、定められたフォーマットに即しつつも充分精査した内容を記入する必要があります。
今回は、用紙のフォーマット・使用するボールペンの種類・封筒のサイズといった基本的なルールから、採用担当者に好印象を与える各項目の記入例まで、医師が履歴書を書く際に注意すべきことを詳しく解説します。履歴書の完成度を高めるためにぜひご参照ください。
履歴書を作成するために準備するもの全リスト
履歴書の用紙(手書きの場合)
応募先がフォーマットを指定している場合を除き特に規定はありませんが、大学名や学部名が長くても一行に収められたり、志望動機や業歴をしっかりと書き込んでも余白を設けられるA4サイズの使用を推奨します。
書店で購入するほか、ネットで提供されている履歴書フォーマットをダウンロードすればいつでも入手可能です。履歴書の記入後はコピーを取り、面接時に回答する内容と齟齬が出ないように保存しておきましょう。
ダウンロードできる履歴書のひな型(パソコン作成の場合)
複数の医療機関に応募する場合、履歴書はパソコンで作成するほうが効率的です。書き損じによる時間ロスや用紙の浪費を防げるので、手書きよりも格段に効率が上がります。
ハローワークが履歴書様式例を公表しているので、そちらをダウンロードして使用するのもおすすめです。
ハローワーク「【確定版】 厚生労働省履歴書様式例」
油性またはゲルインクの黒字ボールペン(手書きの場合)
文字がかすれたり用紙の裏側にインクがにじんだりしにくい油性またはゲルインクの黒字ボールペンを使用します。
応募先が手書きを指定している場合や、戸籍上パソコンで変換できない漢字が氏名に含まれる場合などは手書きが望ましいでしょう。
写真
写真は文字以上に強い印象を残すので、できるだけ質にはこだわりたいところです。写真館など設備の整った環境でプロのカメラマンに撮影してもらうのがおすすめです。ヘアスタイルを整え、スーツを着用して清潔感のある身だしなみに気を配りましょう。
原則として、3ヶ月以内に撮影した写真を使用します。
送付状(郵送の場合)
履歴書には、送付状を同封するのがビジネスマナーです。他の書類と同じサイズの用紙を用意し、同封されている書類一覧・概要・採用担当者へのあいさつを簡潔にまとめて記入しましょう。
封筒に入れる際は、この送付状が一番上に来るように書類を配列してください。
<送付状の記入例> |
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応募書類の送付につきまして 拝啓 ○○の候、貴院/貴法人/貴施設ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。 この度、△△に掲載されておりました□□科の求人を拝見し、応募させていただきます。 私は、5年間精神科医の職務に従事してまいりました。専門医資格を取得し、学会での口頭発表に積極的に参加するなど、医師としての知見を広げる取り組みを継続的に積み重ねております。これまでの経験を活かし、貴院/貴法人/貴施設に貢献したいと考え、別紙の応募書類をお送りした次第です。 ご検討の上、面接の機会をいただけると幸甚に存じます。 敬具 記 以上 |
※○○の候は月ごとに変更します(1月:初春の候/2月:余寒の候/3月:早春の候/4月:陽春の候/5月:新緑の候/6月:初夏の候/7月:盛夏の候/8月:残暑の候/9月:初秋の候/10月:秋冷の候/11月:晩秋の候/12月:初冬の候)。
角型2号・角型A4号の白封筒(郵送の場合)
A4の履歴書が二つ折りの状態で入る「角形2号」や「角形A4号」の白封筒を用意し、封筒左下に「履歴書在中」と赤枠付きの赤字で記入します。この文言がもともと印字されているものを選ぶと便利です。
クリアファイル(郵送の場合)
応募に必要な書類一式に折り目が付いたり汚れたりしないよう、クリアファイル(新品で透明のもの)に収めてから封筒に入れます。
<例文付き>履歴書の各項目攻略法
採用担当者が最重視するのは「志望動機」
志望動機は学歴や職歴のような固有名詞の羅列ではなく、応募者の人柄や入職に対する意思の強さが表れる項目であり、採用担当者が最も重視する部分でもあります。
以下の点を意識して記入しましょう。
- 「入職後どのような活躍をしたいか」という熱意が伝わる内容にする
- 複数の医療機関へ履歴書を送る場合でも使い回しはせず、応募先に応じて内容を書き変える
- ホームページで応募先の経営理念や診療方針をリサーチし、感銘を受けたポイントを盛り込む
- 自分を採用することが応募先にとってどのようなメリットになるのかをアピールする
- 文字数は200~300字を目安とし、記入欄の70~80%を埋める
ケース別志望動機記入例
キャリアアップしたいケース |
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これまで脳神経内科医としてやりがいを感じる日々を送ってまいりましたが、日本屈指の症例数を誇る貴院にてさらに包括的な知識と臨床経験を構築したいと思い、入職を志望いたしました。 |
プライベートとのバランスを重視したいケース |
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多様性のある働き方を推進しておられる貴法人にて、心身ともに健康な状態で長期的なキャリアを築いていきたいと考え入職を志望いたしました。 |
転科を希望するケース |
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これまで培った形成外科としての経験を活かし、「美」を通して患者様の幸福と自信を向上させるご支援をしたいと考えたため、貴院への入職を志望いたしました。 |
その医療機関を強く希望するケース |
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脳梗塞・くも膜下出血の治療において日本屈指の症例数を誇る貴院にて、脳神経外科のより高度な技術と知識を身に付けたいと考えているため入職を志望いたします。 |
病院からクリニックへ転職するケース |
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大学病院での勤務で培った幅広い知識やスキルを、今後は患者様一人ひとりに寄り添うケアに活かしたいと考えたため入職を志望いたしました。 |
志望動機NG記入例
前職では月間○○時間の残業を強いられ、医師としてのモチベーションを維持できない状況でした。 |
上記の例文は自分本位な内容に終始しており、面接官の心証を損ねる可能性があります。志望動機を書く際は、ふさわしくない要素が含まれないよう以下の点に十分注意しましょう。
- 前職や現職の悪口・不満を書いていないか
- 誤字脱字や読みにくい字がないか
- 待遇面の希望のみを書いていないか
担当者が初めに目を通す「学歴・職歴」
学歴は高校卒業から書き始めるのが一般的です。特に医療業界では出身の医学部が重視されるため、それ以前の学歴は特に必要ありません。
「学歴」「職歴」とそれぞれ先頭の行中央に記載し、次の行以降に具体的な項目を並べます。学校名や勤務先の医療機関名は、略歴ではなく正式名称を記載しましょう。一般的に略称で呼ばれる「高校」は「高等学校」と記します。
大学の学部名や学科名などが長く1行で書ききれない場合は、2行に分けて記入しても構いません。小さな文字で無理に1行に収めたり、1行のスペースに無理に2行挿入したりするのは読みにくくなるので避けましょう。
学校名や医療機関名が重複する場合でも「同上」「同学部」「同医療法人」「''〃」などのように省略せず、正式名称を繰り返し記入します。
病院名や法人名が英語の場合は、アルファベットの後に括弧を付けてカタカナ読みを記載すると親切です。
記載例 |
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VA Medical Center(ヴイエーメディカルセンター) |
年月の記載は和暦でも西暦でも問題ありませんが、項目によってバラつきが出ないよう表記を統一しましょう。和暦の元号はH(平成)やR(令和)と略さないようにしましょう。
採用後のポジションや待遇面に関わる 「業績」「免許・資格」
業績
学会発表・講演・寄稿・研究論文執筆の実績を記入します。
医師としてこれまで注力した分野をアピールできる重要な項目ですが、職務経歴書に詳しく書く場合は代表的なものの概要を記載すれば問題ありません。
当然ながら、虚偽や誇張は厳禁です。名称や内容に誤りがあると、意図的でなくても経歴詐欺になる危険性があるので十分に注意が必要です。
業績記入例 |
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【論文・口頭発表】 |
免許・資格
運転免許証を先頭に記載し、2行目以降に医師免許やその他の専門医資格などを取得順に列挙します。採用担当者がスムーズに確認できるよう医師登録番号も必ず明記しましょう。医師登録番号は氏名と取得年から検索できますが、病院側の手間を省略するほうが好印象です。
専門医や指導医などの資格は、給与交渉をする際に主張の根拠となるため、抜け漏れのないよう記載しましょう。資格取得に向け勉強中の場合や、受験の予定がある場合は「取得見込み」と記入して問題ありません。
免許・資格記入例 |
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平成〇年〇月○日 普通自動車第一種運転免許 取得 |
コミュニケーション能力の指標とされる「趣味」
昨今の採用面接では職種を問わず、応募者のコミュニケーション能力や自院とのカルチャーマッチを重視するケースが増えています。
院内スタッフ同士のチームワークや患者さまへの聴き取りといった現場での相互理解や意思疎通はチーム医療に欠かせないものとなっており、採用担当者にとって「趣味」の項目はそうした能力の指標となる「応募者の人柄や価値観」を知るヒントとなります。
「映画鑑賞」や「読書」のようにオーソドックスな回答を記載する場合は、具体的な作品名と簡単な感想を添えて個性を出すとよいでしょう。
趣味記入例 |
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休日を利用して2ヶ月に一度のペースで登山をします。 |
意外にチェックされている「細部」
敬語・敬称
履歴書では自身の呼称を「私」とするのが一般的です。「私」は、口頭に限らず文章でも用いられる最もフォーマルな一人称です。「僕」や「当方」を使うと、常識をわきまえていないと思われる可能性があるので注意しましょう。
文末表現は「ですます調」で統一し、項目によって表記に揺らぎがないよう気を配りましょう。
病院や医療法人など、組織や団体に付ける敬称は「御中」です。「御中」は、厳密に言うと宛先の人物を特定しない場合にのみ用いられる敬称なので、「様」との併用はしません。連続して使用しないように気を付けましょう。
役職名の付いた担当者に対して敬称を付ける場合は、「役職名+名前+敬称」の順で記載します。役職名にはすでに敬称が含まれているため、「名前+役職名+敬称」にすると意味が重複してしまうので避けましょう。
敬称記入例 |
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OK: ○○病院 御中 |
所要時間
自宅から勤務先まで、ドアtoドアで掛かるすべての移動時間を合計して記入します。所要時間は5分単位で記入し、端数は四捨五入して構いません。トータルの通勤時間が1時間未満の場合は、記入漏れとの区別をするために「0」を記入し、「0時間45分」のように書き表します。
電車やバスの経路が複数ある場合は最短ルートを選択し、路線名や最寄り駅名を併記しましょう。
日付・年齢・住所
日付は「履歴書を作成した日」ではなく、郵送する場合は「郵送日」、面接時に持参する場合は「面接日」を記入します。
住所は都道府県名から記載し、建物名やマンション名も省略せずに書きましょう。
本人希望欄
本人希望欄が特にない場合でも空欄にはせず「貴院/貴法人/貴施設の規定に準じます」と記入します。
ビジネスマナーの有無を判断される「送付形式」
履歴書をメールで送信する場合は、加筆や編集ができないPDFに変換しましょう。
郵送する場合は、応募期日が迫っている場合を除き速達ではなく普通郵便で問題ありません。「速達を利用することで意欲をアピールできる」「逆にそそっかしいネガティブな印象を与える」といったさまざまな解釈がありますが、封筒から出された状態で履歴書が採用担当者の手に渡る可能性も考えられるので、評価基準には影響がないと考えてよいでしょう。
転職コンサルタントに聞いた、履歴書作成のポイントと評価アップの技
履歴書作成において最も重要な記入欄は?
最も重要な記入欄は「志望動機・自己PR」です。志望する勤務先に対しての動機のほか、自身が何をしてきたか、何が得意かをできる限り具体的に明記するようにしましょう。
例えば、外科系であれば「執刀してきたオペ件数」や「症例数・外来数・得意な手術領域」などを記載します。内科系であれば「1日に診察できる外来患者数」や「がんや難病に携わった臨床経験数」など、専門分野での具体的な業績が数字で分かるように記載すると実力が伝わりやすくなります。
常勤の経歴のみだけでなく、非常勤の経験があればそれらも加筆するとよいでしょう。例えば「病院以外にクリニックでの外来経験もあります」といった補足事項が採用担当者の目を引くこともあります。
「特になし」という記載はNG?
求人側は「仕事とオフをどう切り替えているか」という視点でも履歴書を見るため、医療に関係のない内容(趣味など)でも「特になし」という記載はなるべく避けて、記入することを推奨します。
履歴書を添削・確認する際のポイントは?
「年月」と「学歴・職歴」に誤りがないかを確認しましょう。学歴については、医学部の入学年と卒業年に間違いがないか。職歴については、退職の年月と次の入職の年月にブランクがないか、病院名が間違っていないか、院内でのポジションは記載されているかなどをチェックしてください。
もしブランクの箇所がある場合、医療機関はその点を気にするため、面接の際に説明できるよう準備しておくとよいでしょう。
他の候補者と差を付けるためにすべきことは?
履歴書で自分の良さをアピールするには、所持している免許や資格、論文発表や表彰歴などの業績を細かく記載することが重要です。業績の記載項目がない場合は、できるだけ自己PRにつながるような内容を記載しましょう。
また、医師にとってコミュニケーションスキルは重要な要素ですので、看護師や他の医師と十分な意思疎通を図るためにしていることや、患者さまと接する際に大事にしているスタンスなどを記入すると好印象を与える後押しとなります。
つまり「自分が採用担当者ならどんな医師を雇用したいか?」という視点で履歴書を書くことが評価アップの最大の肝なのです。
書類選考の通過率を上げるコツ
履歴書を作成したら、必ず第三者に添削を依頼しましょう。自分では気づけない見落としや分かりづらい表現を指摘してもらえば、完成度が格段に上がります。
医師の転職を専門に扱うコンサルタントへの依頼は特におすすめです。これまで多くの転職を成功させたノウハウを生かし、的確なアドバイスを提供してくれます。
また、応募先に自らコンタクトを取るのも有効な手段ですが、転職コンサルタントを介して応募するという方法にも多くのメリットがあります。
例えば「面談で人柄・実績・意向をしっかり汲み取り、それらにマッチした医療機関を紹介してくれる」「コネクションがある施設からの採用確率が高い」「一般には出回っていない求人情報を提供してくれる」といった点です。これらは、書類選考の通過率を上げるために必要不可欠な要素です。
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