【コミュニケーションエラーを防ぐには】vol.1 すれ違いはなぜ起きる?

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公開日:2023.09.19

多職種連携時代の医師コミュニケーション術

【コミュニケーションエラーを防ぐには】vol.1 すれ違いはなぜ起きる?

【コミュニケーションエラーを防ぐには】vol.1 すれ違いはなぜ起きる?

いまを生きる医師に必要な、医師同士・他職種とのコミュニケーションについてお送りする連載企画。今日は、前田陽平先生によるご執筆の2本目です。

前田陽平先生プロフィール写真

執筆者:前田 陽平

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コミュニケーションのすれ違いはなぜ起きる?

今回は、医療従事者同士のコミュニケーションについて、より掘り下げてお話ししていきます。

私たち医療従事者は、職種や診療科によって背景知識が違います。

同じ病気に対しても、詳しい病態や治療を掘り下げた知識を有する医師と、その病気に対して行われるべき看護についての知識を有する看護師は違いますし、薬剤の薬物病態や相互作用などに詳しい薬剤師も違います。

働き方の違いも重要な点です。医師にもチーム制がかなり導入されてきましたが、先にも述べたように、いまでも病棟では主治医制が主流だと思います。そうすると、指示や投薬も「間違っていなければ良い」と考えがちで、一般的とは言えない複雑な方法や内容になってしまうこともあります。一方で看護師の場合は多くが交代制で、複雑でわかりにくい指示や投薬をいちいち確認せざるを得なくなります。

背景知識についても働き方についても、注意すべき点は同じです。「わかっているだろう」「わかるだろう」という考え、つまり高コンテクスト(高い共通認識があるだろうという考え)を相手に要求しないことです。

ほかにも、長年一つの病院や部署に勤めていると、そのルールがあたかも一般的であるように感じますので、新規の入職者やほかの部署とのやりとりで齟齬が生じることもあります。これも高コンテクストを要求しない、つまり、当院の常識、当病棟の常識、当科の常識を相手に要求しないようにする、とも言えます。

ローカルルールは便利なものでもありますが、部署のルールが必ずしも一般的なルールとは限りません。また、ルールは盲信するのではなく、適宜改定していくものだということを全員が認識しておく必要があります。

「話す」時と「聞く」時のコツ

医療従事者同士でコミュニケーションが必要になるのは、主に電話か、直接話すか、です(メールもありますが、ここでは省きます)。会話にあたって意識したいポイントを見ていきましょう。

シンプルに話す

いきなりですが、私は本来話の長いタイプです(笑)。だから...というわけではないですが、「シンプルに話す」ことを心がけています。これが「話す」ときに注意するポイントの1つ目です。

もちろん交渉ごとなら、イントロなど「話の持って行き方」が大事ですが、こと臨床に関する話なら、シンプルに話すことが大事だと思います。

シンプルに話すコツは「大事なことから話す」です。

良くない例から挙げましょう。「64歳の女性で、10年前に脳梗塞の既往があります。10日前から胸が痛いという訴えがあって今日は救急外来にwalk inで受診されました...」というような電話です。まず、これでは急ぐのかどうかわからないので全然ダメです。

どんなことを相談したいのかが最初の一文で相手にわかるようにする、そして何をしてほしいのかもできるだけ早く伝えましょう。「STEMI疑いの64歳女性を診察していただきたいのですが今良いですか」のように、大事なことから話し始めるのが原則です。

もちろん、最初に相手にお伺いを立てることもありますし(その必要はないという意見もありますが、私は一応聞きます)、複雑な病状について相談したい時はそれなりに時間を取ることもありますが、そのような場合は、会話の最初に「急ぎの要件ではないですが、少し患者さんの件でお話ししたいことがありますので良いでしょうか」と伝えましょう。シンプルに話すことで、コミュニケーションが取りやすくなります。

これは医師-医師のコミュニケーションだけでなく、医師-看護師でも同じで、シンプルさが大事です。

    シンプルに話すコツ

  • 大事なことから話す
  • どんなことを相談したいのか、最初の一文で相手にわかるようにする
  • 何をしてほしいのかもできるだけ早く伝えるようにする
  • 急がない用事の場合は最初の一言でそれを伝える

感情を交えない

もう一つ、意識したい重要なポイントが、できるだけ感情を入れないことです。もちろん急いでいるときは急いでいることをアピールする必要がありますが、ほかの感情的な要素は入れないようにしましょう。

特に不要なのが、怒りやイライラ。これらを入れてコミュニケーションするメリットは皆無なので、表に出さないように心がけます(なかなか難しい場合もありますが...)。

逆に、聞く側は相手が何に困っていて、何を求めているのかを理解する必要があります。それが理解できない場合は直接尋ねる方が良いでしょう(もちろん話す側がそれをわかりやすく伝えるべきなのですが...)。その患者さんの診療において自分にどのような役割が求められているのか、ということも関係します。コンサルトを受けた側は「なぜ自分の診察を受けることになったのか」、患者さんに説明することも重要ですから、この点がわかりにくいのであればコンサルト元の医師に確認しておく方が良いでしょう。

相手に敬意を伝えるには

コミュニケーションを取る上で一番大事なのは、互いにリスペクトの気持ちを持つことです。

ほかの職種や診療科の人たちは、皆それぞれ何らかのプロフェッショナルです。相手に敬意を持って接すればそれは相手に伝わりますし、逆に軽んじていればそれも伝わります。

丁寧語で話す

どうすれば敬意が伝わるか。まずは、丁寧語で話すことではないでしょうか。私個人の経験では、相手に偉そうに話す人がどんな人かと言えば、患者さんとトラブルを起こすとか、所属部署で評判が悪いとか、そういう人が多いわけです。この記事を読まれている先生は、そのような医師を目指したいわけではないでしょう。

話が少し違いますが、「自分は嫌われてもいい」と公言する人もいます。それは「皆のために、人が言わない嫌なことも言えるキャラクターでいく」みたいに良い意味で使っているつもりなのでしょうが、実際には円滑にコミュニケーションを取ることを放棄しているような人が多いので、私自身はこういうことを言う人からはできるだけ距離を取っているし、自分自身はそうならないようにしています。

挨拶をちゃんとする

巨大な大学病院や基幹病院などではその効果は実感しにくいかもしれませんが、挨拶をちゃんとすることから始めてみてはどうでしょうか。挨拶をされて嫌な人はいないと思います。

中には、挨拶をされてもちゃんと返すことができない人もいます。びっくりしますが、そういう方にレベルを合わせず、自分は挨拶をする」という姿勢が大事かなと思います。

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今回はコミュニケーションのすれ違いやそれを防ぐ方法についてお話しました。次回は、具体的に医療現場での情報伝達やコンサルテーションに役立つ「Team STEPPS®」について紹介します。

前田 陽平

執筆者:前田 陽平

日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。日本アレルギー学会認定専門医・指導医。日本鼻科学会認定鼻科手術暫定指導医。医学博士。大阪大学医学部卒業後、市中病院で研鑽を積み専門医を取得。大学院を経て、大阪大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科で助教として勤務、2022年4月からJCHO大阪病院耳鼻咽喉科部長に就任。専門は副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻腔腫瘍、鼻副鼻腔・眼窩・頭蓋底疾患に対する経鼻内視鏡手術など。X(旧Twitter)では耳鼻咽喉科領域の医療情報などを発信し、Yahoo!オーサーとして記事を記載するなど、メディアや雑誌などでも多数活躍している。


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