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さまざまな業界で進められているICT化。コロナ禍で人と人との接触を減らすことが重要視されるいま、医療分野においてもICT化はさらに加速しています。今回の記事では、医療ICTの現状と課題について詳しく解説していきます。
コロナ禍により医療のICT化が加速
「ICT」とはInformation and Communication Technologyの略で、情報通信技術を活用したコミュニケーションを指します。医療分野では、すでに電子カルテシステムの普及や診療報酬明細書の電子化、地域の医療機関のネットワーク化などが推進されていました。
電子カルテが当たり前になった、遠隔診療が始まった、紹介予約がオンライン化したなど、ICT化が前進した実感のある方も多いはず。それでは、新型コロナウイルス感染症が流行し始めてからは、医療におけるICTはどのように変化したのでしょうか。詳しくみていきましょう。
オンライン診療の導入が進む
感染拡大防止のため、導入が加速したオンライン診療。初診からのオンライン診療は原則的に認められていませんでしたが、新型コロナウイルス感染症が収束するまで時限的・特例的に実施可能となっています。これは俗に言う「0410対応」のこと。初診を含むオンライン診療は、その利便性の高さから恒久化するための議論が重ねられているところです。
今後は、医師がオンライン診療について学ぶ機会が増えることが予想されます。向いている疾患や症状に関する理解が進み、質も向上していくでしょう。
学会出席もオンラインに
最新の情報を得るために欠かせない学会。コロナ禍の前は現地に足を運び講演を聞く形でしたが、現在はオンラインでの開催、または現地開催とオンラインのハイブリッド形式が主流になってきています。
オンラインではほかの医師と交流が上手くできない、現地での観光の楽しみがなくなるなどのデメリットはあるでしょう。しかし、感染症対策が可能、移動時間かからない、自分のスケジュールの都合に合わせて視聴できるなど、メリットが多いことから、今後もオンラインでの開催は続いていくと考えられます。
ICT化により期待されるメリット
どの業界でもICT化と謳われていますが、医療の現場では具体的にどのようなメリットが期待されるのでしょうか。
最適医療の提供が可能となる
患者さまが過去に受けた健診や治療の内容、既往歴、使用した薬剤などの情報をデータ化して一元化することで、個々の状態に適した医療を効率的に提供することが可能になります。また、複数の医療機関で患者さまの情報を共有・確認できることで、過剰な検査や薬物治療を防げるでしょう。
病気の解明や治療法の開発
全国の医療機関から収集された難病やがんについての大量の臨床情報を解析することで、新たな診断技術や治療法、新薬の開発につながります。現在は不明となっている病気の発症機序が明らかになるかもしれません。
医療機関の効率化
少子化で医師不足がより深刻になっていくなか、業務の効率化は必要不可欠です。ICT化によって、保険証のオンライン確認や請求・支払いの効率化などが進むと、窓口業務の負担軽減も期待されます。
地域医療の充実
遠隔による画像診断や病理診断、在宅している患者さまのテレケアなど、遠隔医療によって医療アクセスの地域差を埋めることが可能です。また、オンラインで専門医が非専門医をカバーしやすい環境があれば、僻地や離島などでも受けられる医療の質は高くなるでしょう。
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ICT化の現状
医療のICT化により、医療従事者にとっても患者さまにとっても様々なメリットが期待できることがわかりました。ここでは、医療ICT化の波で普及が推進された電子カルテや地域医療情報ネットワークの現状について説明します。
電子カルテの普及状況
厚生労働省から出された『電子カルテシステム等の普及状況の推移』によると、平成29年の電子カルテの普及率は、一般病院では46.7%、一般診療所では41.6%という結果が出ています。病床規模別に見ると、400床以上は85.4%、200〜399床は64.9%と多くの病院で普及していることがわかります。
2021年現在は電子カルテの普及率がさらに向上していると予想でき、院内や医療機関間における患者さまの情報共有・連携は順調に効率化されているようです。
地域医療情報連携ネットワークの稼働状況
地域医療情報連携ネットワーク(以下、地連NW)とは、病院や診療所、薬局、介護施設などが患者さまの情報を電子化して共有・閲覧できるシステムのことを指します。医療機関が連携することで必要ない検査や治療といった過剰医療を防ぎ、地域医療の質をより良くする目的で構築されました。また、地連NWは、紹介・逆紹介、転院などがスムーズに進み、切れ目のない医療や介護を提供できるとも期待されました。
しかし、2020年10月に公表された厚生労働省の調査結果では、システムがまったく利用されていないケースや、利用が低調なネットワークが存在し、都道府県を通じた事業主体への指導が不十分だったことがわかりました。地連NWの活動状況が低調な場合は支援の対象外とする、都道府県が運用状況のフォローアップを行うなどの対策が実施されていますが、活発に利用されるまではもう少し時間がかかりそうです。
個人情報の取り扱いにおける課題も
医療ICTでは、個人情報の取り扱いにおいて課題がいくつかあります。個人情報をしっかり保護・管理・活用するためにどのような対応が検討されているか説明します。
ICT化推進に必要な被保険者番号のID化
ICT化の推進を行ううえで必要になるのが、被保険者番号のID化です。現在は加入している保険が変わっても、個人の資格情報(名前や生年月日、被保険者番号など)は引き継がれず、継続的な管理がされていない問題があります。
加入する保険が変わっても個人の資格情報のデータを容易につなげるため、被保険者番号を世帯単位ではなく個人単位化し、「医療等ID」としても活用できるよう進められる予定です。
マイナンバーカードの利用における課題
2021年3月からは、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになりました。現在は一部の医療機関でプレ運用中ですが、今後(2021年10月ごろを予定)多くの医療機関で、健康保険証の情報のほかにも患者さまの薬剤や特定検診などの情報をオンラインでスピーディーに確認できるようになる予定です。
しかし、医療機関はネットワーク環境の整備や資格確認用の端末、顔認証付きカードリーダーなどの購入が必要となり、導入へのハードルは高い現状があります。患者さまのセンシティブな医療情報を扱うため、セキュリティ対策のための経費も必要です。今後少しずつ導入する医療機関は増えると考えられますが、時間はある程度かかるでしょう。
ICT化で日本の医療はさらによくなる
医療ICTにおいて、さまざまな施策が進められています。それに伴い、新たな法律の整備やガイドラインの変更なども出てくるでしょう。医療ICTによる変化は目まぐるしく、新しいデバイスやシステムを使いこなすことに不安や抵抗を覚える方もいるかもしれません。
しかし、ICTが医師不足や過重労働などの日本の医療問題の解決に一役買うことは間違いありません。専門分野において研鑽を積むだけでなく、ICTについての知識を持ち、キャッチアップし続けることも重要です。
ドクタービジョン編集部
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