医師の休みは少ない?研修医の休みの実態や休日が多い診療科についても解説

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働き方

公開日:2022.02.07
更新日:2023.12.25

医師の休みは少ない?研修医の休みの実態や休日が多い診療科についても解説

医師の休みは少ない?研修医の休みの実態や休日が多い診療科についても解説

医師は責任を伴う多くの業務をこなさなければならず、業界全体の人材不足も影響して過重労働になりやすい傾向があります。働き方改革で労働時間の是正が進められていますが、十分な休みが取れず、ストレスや疲労を感じる方もいるでしょう。

医師においても、思うように休みを取れないことは退職を検討するきっかけになり得ます。そこで今回の記事では、医師の休日に関する情報をご紹介します。これから研修医になる方や、転職や転科を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

医師の休日の実態

医師の休日の実態

医師の長時間労働は深刻

医師の労働時間の実態については、厚生労働省が定期的に調査をしています。2019(令和元)年時点では、病院・常勤勤務医の週当たり勤務時間(診療時間、診療なしを除く診療外時間、宿日直の待機時間の合算)について、週60時間以上と回答した医師は37.8%(男性41%、女性28%)、さらに過労死ラインを超える週80時間以上と回答した医師は8.5%(男性9%、女性6%)でした。

2022(令和4)年の調査では、週80時間以上勤務する医師の割合は3.6%まで減少しています。しかし、長時間労働が常態化している医療機関はまだ少なくなく、安定した医療提供体制を前提とする医師の働き方改革には、課題が山積しています。

医師の休日数

医師の労働時間が長いことをふまえると、休日がどれくらいあるのか気になる方も多いのではないでしょうか。細かい就労条件は所属する医療機関と診療科によって異なりますが、週休1〜2日とされていてもほぼ毎日のように出勤している医師も多いようです。

とくに医師になって5〜10年の大学病院勤務の中堅層は、試験や自身の学会発表のためのレポート・論文作成など、業務が多岐にわたり、勤務時間外の業務も増えてしまいます。

また、勤務医と開業医では休みの取りやすさが少し異なります。開業医の場合、クリニックの診療時間は診療に従事し、患者さまの数が多ければ残業することもあります。最近は土日も診療しているクリニックが増えていることから、医師が土日に働くケースも珍しくありません。それでも、勤務医と比較すると休暇は取りやすいようです。

研修医時代の休日数

以前は、研修医は激務と言われることが多くありました。大学病院では診療業務以外のいわゆる"雑務"を研修医が積極的に担当したり、市中病院では研修医も診療の即戦力となることが求められたりと、一社会人としても慣れない中で毎日を必死に送る研修医像がありました。

しかし、近年は過剰な時間外労働が問題視され、医師の勤務形態を見直す病院が増えています。医師も一労働者ですから、労働基準法の定める最低休日数「週1日または月4日の休日」(労働基準法第35条)が与えられなくてはなりません。この点は『医師臨床研修指導ガイドライン』にも記載されており、研修医の待遇を整備する病院は増えています。

いわゆる"ハイポ病院"、"ハイパー病院"によっても異なりますが、土日のいずれかに当直(日直、救急外来当直など)が入っても、どちらか1日は休暇を取れると考えられます。

医師の休日の過ごし方

医師の多くが日曜日・祝日の休診日や平日の1日を休日としていることが多く、旅行やショッピング、家族との時間を大切にするなど、心身ともにリフレッシュする休日を過ごしています。

一方、休日に仕事をして過ごす医師もいます。クリニックなどでのアルバイトや、症例研究や勉強会への参加、教授の補佐業務、学会への参加など、休日の過ごし方は人によってさまざまです。

また、必要に迫られた場合は、休日出勤をして受け持ちの患者さまの診察にあたることもあります。

医師の休日が少なくなる理由

医師の休日が少なくなる理由

医師の休日が少ない理由には、医師という職業の特殊性が少なからず関係しています。詳しく見ていきましょう。

休日でも呼び出しの可能性がある

日曜や祝日、大型連休中にも急患は発生します。医師が休めるように多くの病院ではシフト制を導入していますが、緊急手術の発生など、当番の医師が自分の手に負えないと判断した場合には、休暇中の上級医に応援を頼むことになります。

自分が担当する患者さまの体調をチェックする

自分が受けもつ患者さまが入院している場合、休日でも様子を見に病院に行くことがあります。とくに容態が急変する可能性のある方や手術直後の方がいるときは、状態を確認するため自主的に病院に行く医師も多いです。受け持ちの患者さまが急変した場合に率先して駆けつけるため、医師は休日でも気を抜けないというのが実態のようです

自己研鑽・スキルアップが生涯求められる

日々進歩していく医療業界では、医師自身が生涯、知識の更新やスキルアップに励む必要があります。そのため、アルバイトで本業では得られない診療経験を積んだり、専門医資格の取得や更新のための自己研鑽や研究、開業を視野に入れた人脈づくり・ノウハウ習得などに休日を使うことが多くなります。

休日の多い診療科

休日の多い診療科

ワークライフバランスを意識した働き方をしたいと考えるなら、診療科選びは重要です。

労働政策研究・研修機構『勤務医の就労実態と意識に関する調査』と厚生労働省『令和元年 医師の勤務実態調査』をもとに、医師の働き方を労働時間と有給休暇の取得日数を確認してみましょう。

労働時間

病院常勤勤務医の週当たり勤務時間平均の下位5診療科は、臨床検査科46時間10分、精神科47時間50分、リハビリテーション科50時間24分、眼科50時間28分、病理診断科52時間49分でした。いずれも心身の負担が比較的軽く、夜勤や当直が少ない点で共通しています。

入院している患者さまが多い病院などでは当直や宿直に対応するため、労働時間が長くなることもあります。そのため、転職時にはそうした特徴をチェックしておくこともおすすめいたします。

有給休暇の取得日数

医師の有休取得日数については、年間4〜6日が25.8%と最多で、1〜3日が24.9%、0日が22.3%と続きます(働き方改革関連法案の施行前)。有休を年に7日以上取得している人の割合を診療科別で見ると、産科・産婦人科(35.4%)、精神科(35.4%)、麻酔科(33.4%)が高い取得率となっています。

ワークライフバランスを重視したい方は、有休が取りやすい診療科を選ぶことも重要でしょう。

土日休みや休日数が多い職場の選び方

土日休みや休日数が多い職場の選び方

上記では、医師の休日の実態や休みを取りやすい診療科についてご説明してきました。

次に、ワークライフバランスを実現するために最適な働き方や職場の選び方について解説します。

無床クリニック

入院患者さまへの対応がない無床クリニックは、土日にしっかり休みを取れる職場の代表的な存在と言えるでしょう。外来患者さまへの対応がメインとなりますが、診療科と設備によっては日帰りの内視鏡検査や白内障手術、ICL手術、ほくろ・イボ取りなどの簡単な手術を担うこともあります。

最近では、患者さまへのアピールポイントとして土日診療をしているクリニックも増えています。転職希望時には、医師数や休みの取り方などを確認した方が良いでしょう。

外来患者さまへの対応や健診業務が多い医療機関

業務内容を外来患者さまへの対応と健診に絞り込んで、医療機関を探す方法もあります。とくに外来患者さまが集中する診療科や、健診で混み合うシーズンやその前には、クリニック以外に総合病院からも求人が出ることがあります。

外来患者さまへの対応や健診がある平日の日勤に限定されることが多く、休日の急患対応やオンコールは業務対象外とされます。ただし、土曜の午前中に診療している医療機関では、土曜出勤を求められたり、契約内容によっては日当直を頼まれたりすることもあるため、契約時に勤務条件の確認が必要です。

開業医

自身でクリニックを立ち上げ、診療時間や休診日を自ら設定する方法もあります。

ただし、かかりつけ医になると往診や緊急時の対応も発生します。そのため、診療時間外でも完全に気を抜けないという状態には変わりないので注意が必要です。

産業医

産業医として、企業に所属する労働者の健康管理に従事するという選択肢もあります。土日休みの企業が多く、有給休暇も取得しやすい職場環境のため、産業医資格を有しているなら、検討してみる価値はあるでしょう。

▼産業医に関する詳しい記事はこちら
産業医になるには?必要な資格の取得方法やスキルを解説

製薬会社のメディカルドクター

医師免許をもちながら製薬会社で働く選択肢もあります。メディカルドクターは、創薬の企画や立案、論文を読んだうえでの検討、治験データの評価を主な業務とします。民間企業の正社員となることから、企業によって手厚い福利厚生やフルリモート勤務など自由度の高い働き方が設けられていることが魅力です。

公務員(公衆衛生医師)

自治体に所属する公衆衛生医師になることで、休日や有給休暇を取得しやすくなります。公衆衛生医師の主な業務は、地域住民の健康維持や医療レベルの向上を目的としたルール・システム作りです。公務員として身分が保証されており、福利厚生も充実していることから、長期間にわたって働きやすい環境が整っていると言えるでしょう。

医療サービスのライターやアドバイザー

医療系コンテンツを扱うメディアのライターや監修者、医療システムやアプリ開発におけるアドバイザーなど、医師免許を持ちながら企業で働く選択肢もあります。近年では、医療ベンチャーを立ち上げる医師も増えています。

一般の企業は土日休みや福利厚生が充実している場合が多いほか、テレワークによるリモート勤務やフレックス制度など形式にとらわれない働き方を取り入れている企業が比較的多いことも魅力でしょう。

2024年以降の注意点

転職時の注意点

今後は医師の長時間労働が規制されるため、働き方が大きく変わることが予想されます。

2024年4月以降、医師の働き方改革によって長時間労働への規制が実施されます。しかし、すでに思うように休めず、長時間労働に対して辛いと感じているなら、早めに土日休みの職場に転職することも視野に入れましょう。

転職活動を始める際は、まず転職理由と求める条件をしっかり洗い出して整理します。給与はどのくらいの水準を求めるのか、臨床を続けたいかなど、ご自身の判断軸を定めてから、そのニーズを満たす求人を探すのがおすすめです。

自己分析や求人探しに悩むような場合には、転職コンサルタントへの相談も検討しましょう。第三者からの率直な意見を聞けるだけでなく、豊富な求人案件の中からご自身に合うものを転職コンサルタントが提案してくれます。年収や勤務条件などの医療機関には直接聞きづらい内容も、転職コンサルタントを介することで聞きやすくなるでしょう

休日がなくて辛いと感じたら転職も視野に入れる

患者さまの命を預かるという職業柄、医師には休みを取りづらい実態があります。やりがいを糧に仕事に専念する医師がいる一方、激務に耐えきれず転職を検討する医師もいます。

医師が活躍できる場所は病院以外にもたくさんあります。休日が少ない働き方に限界を感じているなら、転科や他業種へのチャレンジなど、少し視野を広げて転職活動をしてみても良いかもしれません。

ドクタービジョン編集部

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