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医師としてキャリアを積んでいくと、研究職へ進むか、勤務医としてキャリアアップしていくか、または開業して独自の道を拓くかなど、いくつかの進路が考えられます。
今回のコラムでは、まず医師が開業する年齢・引退予定年齢とその課題について解説します。次に、勤務医と開業医の違いを働き方や年収、診療のスタイルなどの面からご紹介いたします。それぞれの働き方のメリット・デメリットも整理しておりますので、医師としてのキャリア選択の参考にしていただければ幸いです。
医師の開業、引退に適した年齢とは
開業医としての長期的なキャリアプランを考える場合、いつ開業するかはとても重要です。ここでは、平均的な開業年齢や開業の動機・引退予定年齢・引退後のライフプランなどから開業の適齢期について解説します。
開業時の平均年齢
日本医師会による「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査(2009年9月)」によると、新規開業時の平均年齢は41.3歳となっており、医師免許を取得後、2年間の臨床研修、3年間の後期研修を修了してから約10年後に開業している医師が多いという結果です。
多くの臨床経験を積み、医療技術や知識の習得をする必要があるため、開業には期間を要します。また、開業資金の用意や経営者としての知識やノウハウを学ぶ時間も必要です。開業資金は金融機関からの融資で準備する方も多く、その場合も医師としての実績や経験を踏まえた事業計画が必要となります。
超高齢化社会の日本において、患者の高齢化だけでなく医療を提供する医師側の意識が変化していることも医師の開業年齢に影響しています。50代になると勤務医生活で成すべきことはおおよそやり遂げて後進の教育にあたる医師も多い一方、第一線で理想の医療を追求したいと開業医を選ぶ医師もいるからです。
このように、医師としての経験や実績を積む期間、開業資金・事業運営のための準備、医師の意識の変化などが開業年齢に影響しています。
同アンケートでは「開業した動機」についても調査されており、主な回答と割合は以下の通りです。
- 理想の医療を追求(42.4%)
- 将来に限界を感じた(35.1%)
- 経営も含めたやり甲斐(26.3%)
- 精神的ストレスに限界(21.0%)
- 過重労働に疲弊(18.6%)
理想の医療の追求や経営も含めたやり甲斐といった前向きな動機が多い一方、将来への不安や現状に対する不満が開業のきっかけにもなっています。
開業動機を開業してからの年数別で見てみると、開院から10年以内の方の「将来に限界を感じた」「過重労働、精神的ストレスに疲弊」という回答が増加傾向にあり、勤務医等の労働環境の厳しさ、それに対する不安・不満が高まっていることが読み取れます。
開業医の引退予定年齢
では、開業医が引退する年齢は何歳くらいなのでしょうか。
大前提として、医師という職業に引退すべき年齢や時期についての定めはなく、医師免許を有する限りは医師として働くことが可能です。ただし、公務員や民間の勤務医には定年時期が定められています。
・公務員として働く勤務医の定年
国公立の大学病院や公的病院の勤務医は公務員としての位置づけとなり、国家公務員法で定年は65歳と定められています(国家公務員法第81条の2)。
勤務先によっては、定年から5年間の継続雇用制度を採用している場合もあり、制度を活用できれば70歳まで働くことができます。
・民間病院で働く勤務医の定年
民間病院の勤務医の定年はその病院ごとの就業規則で定められており、多くの場合60歳あるいは65歳に設定されているのが一般的です。他の民間企業と同様、定年延長や再雇用の制度を活用して雇用期間を延長できる病院も多くあります。
病院長や副院長、医長といった病院幹部の役職の場合、定年制度が除外されているケースもあるようです。
・開業医の引退
自分の病院をもつ開業医には定年はありません。いわゆる自営業という働き方になりますので、いつ退職するかは自由に決めることができます。
では、実際に開業医はいつ引退することを考えているのでしょうか。
日本医師会総合政策機構が全国の病院・診療所開設者に行った引退予定年齢に関する調査によると、全体の引退予定年齢の平均値は73.1歳。年代別に引退予定年齢を見てみると、以下のように若い年代ほど早期の引退を考えていることが窺えます。
回答者の年齢 | 引退予定年齢 |
---|---|
40歳未満 | 68.8歳 |
40~49歳 | 68.1歳 |
50~59歳 | 70.3歳 |
60~69歳 | 72.4歳 |
70~79歳 | 76.3歳 |
80歳以上 | 82.0歳 |
引退予定年齢を近く迎える60代以上は、事業承継後のライフプランなどを考える時期です。同調査では事業承継後のライフプランに関するアンケートも行われていますが、「事業承継後のライフプランは決めていない」という回答が約40%、「完全にリタイア」が16.6%ある一方で、40%近くの方は「何らかの形で臨床に関わる・医療施設などで勤務する」と答えており、事業経営からは全部もしくは一部引退するものの、医師としての仕事は継続意向の方が一定以上存在することが分かります。
公益社団法人 日本医師会「日本医師会 医業承継実態調査」
開業の適齢期とは
開業年齢の平均が41.3歳、引退予定年齢の平均が73.1歳であることを踏まえると、開業医として働ける期間は約30年です。
開業後は医療サービスの提供以外に、経営やスタッフの管理など病院の運営面についても労力を割くことになります。個々によって状況に違いはあるものの、心身とも充実している年代に早期に開業するのが「適齢期」なのではないでしょうか。もちろん開業するまでには臨床経験を積む時間・資金を準備する期間が必要ですが、これらの準備を早めに整えることで、開業医として理想とする医療の追求や病院を大きくしていくといった夢に費やせる時間がより長く担保できるでしょう。
適齢期に開業することには以下のようなメリットもあります。
・早期に収入が増加し、より適切な投資をしながら経営できる
勤務医と開業医では、収入面で大きな違いがあります。
厚生労働省「第23回 医療経済実態調査結果報告」によると、勤務医(一般病院)の平均年収は約1,468万円、開業医(一般診療所開設者/入院診療収益なし)の平均年収は約2,677万円となっており、一般病院の勤務医と診療所開業医の平均年収には約1,200万円の開きがあります。診療科や病院の規模によって異なりますが、収入面で考えた場合でも早く開業するメリットは大きいと考えられるでしょう。
新規開業で医療設備や土地建物を購入すると、融資の利息なども含めた開業資金はある程度まとまった額になります。加えて、開業後も医療技術の進歩に伴い新たな医療設備へ投資することもあるでしょう。開業前後にさまざまな資金が掛かり続けることを踏まえると、「意欲的に働ける年齢で開業し、経営で得た資金で適切な投資をする」というスタイルで経営できることが、適齢期で開業することのメリットといえます。
・自己裁量が増え、時間に融通がつきやすい
開業の動機でも触れたように「精神的ストレスに限界」「過重労働に疲弊」といったネガティブな感情が開業のきっかけとなる医師は少なくありません。
勤務医は勤務時間の長さだけでなく、病院や診療科によっては緊急手術の対応が求められたり専門外の診療が必要になったりと、精神的に余裕が持てない環境であることが多くあります。一方、開業医は経営やスタッフの管理といった業務や責任は増えるものの、勤務時間を含めた労働環境を自己の裁量で決めることができます。時間に融通が利きやすいという点も、適齢期で開業するメリットの1つといえるでしょう。
厚生労働省「第23回 医療経済実態調査結果報告」
開業医と年齢に関する課題
開業年齢に関するリスク
開業年齢に関するリスクは、年齢を問わず存在します。
・若手医師が開業する場合勤務医であっても開業医であっても、患者さまが安心できる医療サービスを提供しなければならない点に変わりはありません。早い開業の方がメリットは多いといっても、医療に必要な技能や知識は必ず求められます。地域に根付いた病院経営をすることも多く、開業しても地域の信頼を得られなければ事業の継続自体が難しくなります。新規開業の場合は事業資金を準備する必要がありますが、あまりに若くして開業すると「医師としての実績や経験・専門性が不足しており事業運営力に対する信頼性が低い」と評価され、融資を受けることも難しくなってしまいます。
・高齢医師が開業する場合高齢の医師が開業する場合のリスクとして考えられるのは、病院経営をするにあたっての体力的・精神的な充実度です。豊富な医療経験や実績を持ち合わせていても、開業医として働く上では、医師としての診察業務だけでなく、経営者としての業務と責任が伴います。
年齢を重ね視力や体力が低下すれば、医療技能に影響が出る場合もあります。勤務医であれば仮に自分が病気となっても代わりの医師を立てることが可能ですが、開業した医院で医師が自分1人となれば代わりは利かず、病院へのマイナス評価に繋がりかねません。
病院経営において健康維持の重要度は高く、開業初期に高齢であることが大きなリスクになり得ます。また、開業医として働く期間が短いほど開業資金・設備投資の回収に対するリスクも大きくなります。
早く開業したいが、資金やノウハウが不足している
できるだけ早く開業したいと考えていても、必要な資格やスキル、資金が不足したまま開業すれば、経営に立ち行かなくなることもあるでしょう。開業時に必要なことを知り、希望の開業時期までに条件を満たせるよう準備を進めましょう。
(1)医療サービスに関する資格、スキル医師が開業するために必要な資格は医師免許のみです。医師免許があれば年齢・経験問わず開業することは可能です。ただし、病院常駐者(主に院長)は防火管理者の資格が必要となります。防火管理者とは、消防法にもとづき不特定多数の人が利用する病院において火災等による被害を防止するための資格です。市区町村が実施する講習に参加すれば誰でも取得可能です。また、集患のためには臨床経験や技能・知識だけでなく、近隣病院と差別化するための専門医資格の取得が有効に働く場合もあります。さらに、開業医には患者さまとのコミュニケーション力だけでなく、スタッフを管理するためのコミュニケーションやマネジメントの力も必要です。患者さまの満足度を高めて信頼を得られれば、集患や経営の安定にも繋がります。
(2)資金確保、事業運営に関するスキル開業するにあたっては資金が必要となりますが、特に医療機関の開業はその他の職種と比べて必要な資金が多くなる傾向があります。また、新規開業と身内や知人などの事業を承継する事業承継では、新規開業の方が必要資金は多くなります。新規開業には約5,000万円~1億円の資金が掛かるとされており、これを自己資金あるいは金融機関からの融資などで準備する必要があります。事業融資の通りやすさや運転資金確保などを鑑みると、一定程度の自己資金を準備する方が有利に働くでしょう。
新規開業する場合の一般的な資金の内訳は以下の通りです。
<物件取得費>物件取得費は、土地・建物を購入する場合とテナントに入居する場合で異なります。
- 土地建物を購入する場合...物件価格・諸費用(仲介手数料、登記費用、印紙代など)
- テナントとして入居する場合...敷金(保証金/月額賃料の6~12か月分)・礼金(月額賃料の1~2か月分)・仲介手数料(月額賃料の1か月分)・前家賃
<設備費>
- 内装工事費
- 診療設備費(超音波診断装置、内視鏡、心電図計など)
- 什器備品費
<開業準備費>
- OA機器・システム費
- 医療消耗品の購入費
- 採用費・研修費
- 集患・広報費
- 医師会諸会費
- その他備品の購入費
<運転資金>
- 固定費(人件費・賃料・共益費・リース料・借入金返済)※6か月分程度
- 変動費(検査外注費・薬剤費・衛生材料費)※6か月分程度
新規開業の場合、開業当初の集患の良し悪しや診療報酬の入金時期なども踏まえ、軌道に乗るまでの事業収支の管理は慎重に行う必要があります。どの地域で・どういった医療サービスを・どれくらいの規模で提供するのか。競合と差別化するためにどういった設備・資金の活用の仕方をするのかによって、必要な開業資金は変わります。しっかりとした事業コンセプトや事業計画を立て、どのように安定経営を実現していくのかを考える経営力も必要となります。
開業医としての独立を考えるには、医師としてのキャリアプランや働き方などについての方向性を決め、必要な技能やノウハウを身につけると同時に開業資金を準備する必要があります。
開業を目指す医師のキャリア形成や資金づくりなどをサポートする転職支援サービス「ドクタービジョン」では、技術取得や院長としての経験を積むことができる求人や開業資金調達のための非常勤勤務・スポット求人など、開業を目指す方のビジョンを丁寧にヒアリングしたうえで一人ひとりに最適な求人を無料でご紹介しています。北海道から九州まで全国に拠点を展開しているため、エリアごとの特性を踏まえた情報提供が可能です。さらに、ドクタービジョンが属する日本調剤グループの「メディカルセンター.JP」では、開業に適した優良物件を厳選してご紹介し、開業までをサポートするサービスを提供しています。
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引退を希望する年齢になっても承継が難しい
帝国データバンクの「医療機関の休廃業・解散動向調査(2021 年)」によると、2021年の医療機関の倒産件数は33件。一方、事業承継ができないことによる休廃業・解散件数は567件となり、倒産件数の17.2倍となっています。ちなみに、全国全業種の休廃業・解散と倒産の平均倍率は9.1倍です。比べてみると医療機関がいかに休廃業・解散件数の割合が多いかが分かります。
休業・廃業・解散するには「借入金や買掛金などの債務がない」「債務免除などの必要がない健全な財務状況である」ということが大前提です。つまり、多くの医療機関は健全な黒字経営であるにも関わらず、後継者不足を含めた要因で休廃業や解散に至っていることが分かります。
前述した日本医師会の調査でも、医療開設者のうち引退時期を迎える70-79歳で36.4%、80歳以上でも29.0%が「現段階で後継者候補はいない」と答えているのが実情です。子どもへの事業承継を考えている場合も、診療科目が違う・子どもに事業を承継する意思がない・異なる地域で生活基盤をつくってしまい承継意思を撤回する、といった問題があります。
そうした背景下で近年増えているのが、第3者に事業を承継するケースです。ただし、一般的に事業承継には5~10年の期間が必要といわれています。病院の規模や経営状況にもよりますが、後継者選び・育成・新たな後継者のもとでの組織づくりのほか、税金対策・資産移転なども鑑みるとできるだけ早い段階で準備をはじめる必要があります。
株式会社帝国データバンク「医療機関の休廃業・解散動向調査(2021 年)」
公益社団法人 日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査(2009年9月)」
幻冬舎「相続破産を防ぐ医師一家の生前対策」井元章二 著
勤務医と開業医、どちらで働く医師が多い?
開業医と年齢について理解したところで、勤務医と開業医の違いについて確認してみましょう。勤務医は病院や診療所などの医療施設で雇用されて業務を行う医師を指します。対して、開業医は自ら病院や診療所などを経営し、医師と経営者という2つの面を持っている点が特徴です。
勤務医として働く医師が半数以上、開業医は20%程度
厚生労働省「平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」から勤務医の割合を見てみましょう。本資料から施設の種別「病院(医育機関付属の病院を除く)」「診療所」「医育機関付属の病院」の医師数を比較すると、いずれも昭和61年から増加傾向が見られます。なかでも「病院(医育機関付属の病院を除く)」が最も多くなっており、平成30年は、その勤務者だけで医療施設従事者全体の44.8%を占めています。
近年では病院や診療所の代表者が勤務医であるケース(雇われ院長)もあるため、この調査結果が医師数・割合の実態を反映しきれているわけではありません。全国の医師のうち勤務医が半数以上にのぼり、開業医は約20%にとどまっていることがわかります。また、開業医も診療所の経営者が大半です。
ちなみに開業医の人数の年次推移は、病院・診療所ともにほぼ横ばいです。ただし、診療所の開業医は平成18年と比べると、平成30年は微増しています。
美容医療や専門外来に特化した診療所は新規参入が増える可能性
全体的な医師数は年々増加しています。なかでも病院の勤務医の数が増えているのは、質の高い医療設備や最先端の医療情報が集まる大病院の勤務医を選択する医師が多いからではないかと考えられます。それに対して、診療所の医師は開設者・勤務医を問わず平均年齢が高齢になってきており、今後は地方の中小病院を中心に減少していく可能性も考えられます。ただし、美容医療などの自由診療のクリニック、便秘外来や睡眠障害外来など専門に特化した診療所は新規参入が増えるかもしれません。
勤務医として働くメリット・デメリット
2018年の時点では勤務医のほうが開業医よりも多いことから、医師のキャリアとしては勤務医が主流であることがわかりました。では、勤務医として働く場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
病院や診療所の運営主体や規模にもよりますが、勤務医として働く場合、次のようなメリット・デメリットが考えられます。
働き方
<メリット> ・高度医療など専門的・先進的な医療のスキルを習得できる ・同僚や上司の医師との交流により新たな知識、人脈を得られる ・リスクマネジメントを請け負う専門部署があり、個人で責任を負う機会が少なくて済む ・多岐にわたる職種のコメディカルとの交流がある ・専門医資格の取得に有利
<デメリット> ・病院勤務では当直やオンコール体制により労働時間が長くなりやすい ・大学の医局などに属している場合、論文執筆などのタスクも発生する ・医局人事の影響が大きいため、希望の部署から異動することがある ・他科疾患の診療に携わることが少ない
大病院の勤務医になると、難病治療や高い技術の医療に関わることもあり、人脈を築いたりして将来のキャリアを堅実に固めていくことができる可能性があります。一方、組織に属しているゆえに人間関係のしがらみや長時間労働など、希望と異なる働き方を余儀なくされることもあるでしょう。
しかし、無床診療所の勤務医となった場合は、当直やオンコールがないことが多く、病院の勤務医よりも、ワークライフバランスがとりやすいでしょう。
年収
<メリット> ・雇用と収入(給与)が安定している ・年功序列で役職・年収がアップすることが多い ・組織に属しているので、各種保障・年金などがある
<デメリット> ・手術や治療の実績が優良でも、給与が一気に上がることはあまりない ・診療科と地域によって年収に大きな格差がある ・大都市圏は病院勤務の希望者が多く、買い手市場になっているため賃金が低い
一般病院勤務医の平均年収は、勤務する地域や診療科によって差がありますが、厚生労働省が2019年11月に発表した「第22回医療経済実態調査」によると、医療法人では1,641万円と最も高くなっています。次いで公立1,514万円、公的1,433万円、国立1,432万円です。年収面だけを考慮すれば、国公立の病院・診療所よりも医療法人のほうが優遇されていると考えられるでしょう。
診療のスタイル
<メリット> ・多く幅広い症例、稀な疾患の診療に携わることができる ・診療科、医療施設を超えて医師たちとの連携ネットワークを築ける ・国立病院や公立病院に勤務している場合、公共への貢献を実感できる
<デメリット> ・病院の診療方針に従う必要がある ・医師不足の病院に勤務すると、医師一人あたりの担当患者数が多く過重労働になりやすい
総合病院などでは、患者さまが遠方からやってくる場合もあります。地域の外にも医療サポートの手を広げていくことができる点は医師として大きなやりがいになるでしょう。
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勤務医の平均年収は?年代・勤務先・働き方での違いを解説
開業医として働くメリット・デメリット
続いて、開業医として働く場合のメリット・デメリットを確認してみましょう。一般に、開業医は勤務医よりも年収が高いといわれていますが、実態はどうなのでしょうか?
働き方
<メリット> ・自分の理想とする医療を実現できる ・独自の裁量や判断で仕事をできる ・勤務医によくある医局人事や人間関係による精神的ストレスが少ない ・地域住民との距離が近く、地域医療に貢献していることが実感できる
<デメリット> ・休みたいときでも、代理の医師などがいないと休みにくい ・医師としての腕前だけでなく、経営者としての能力も求められる ・経営状態が厳しくなることで閉院するリスクがある ・患者さまからの苦情対応など医療以外の業務も発生する
開業医は、医師としての顔と経営者としての顔をあわせ持っていることが最大の特徴です。そのため、自身の裁量で地域医療への貢献の仕方や地域の医療ニーズにあわせた経営戦略を行うことができます。一方で経営者として経営の安定化を図ったり万が一の訴訟リスクなどに備えたりする必要もあるでしょう。
年収
<メリット> ・勤務医よりも2倍近く年収が高い ・他の医療施設との差別化により通院者が増えると、収入が大幅にアップする ・診療所の評判が上がれば、収入は青天井になりうる
<デメリット> ・従業員への給与支払いや家賃などがかり、すべてが収入になるわけではない ・診療所の開設費用、リフォーム費用、設備投資費用がかかる ・休業した場合は収入が激減する ・退職金がないため、老後資金の準備を考える必要がある
開業医の平均年収は、厚生労働省が2019年11月に発表した「第22回医療経済実態調査」によると、医療法人の有床診療所の院長は3,466万円、同じく無床診療所の院長の場合は2,745万円となっています。勤務医と比較すると、1,000〜2,000万円ほど高いことがわかります。
ただし、勤務医の収入が給与である点に対して、開業医の収入は事業収入(収入から経費と事業借入の返済額を差し引いた額)になる点には注意が必要です。経費や借入返済額によっては勤務医よりも収入が減少することもありえます。
診療のスタイル
<メリット> ・自分の希望する診療スタイルをとることができる ・患者さまやその家族からの反応が直接わかり、今後の診療に役立てやすい ・患者さまの家族を含めたサポートができる
<デメリット> ・地域の医療ニーズに応じて、診療方法や条件を柔軟に変更する必要がある ・広告宣伝など、診療以外の業務も行わなければならず診療に専念できない場合がある
診療所では地域住民との距離が近く、かかりつけ医としての役割を期待されることが多いでしょう。その際は、患者さまに安心してもらえるような信頼関係の構築やコミュニケーションが重要です。コミュニケーション力に自信があれば開業医も選択肢のひとつとなるでしょう。
一方で、専任の従業員が確保できない場合には、広告宣伝など診療以外の業務も自身で行わなければならず、思うように診療に専念できないこともあるかもしれません。
勤務医と開業医、どちらを選ぶべき?
勤務医と開業医それぞれのメリット・デメリットを整理しました。これらを踏まえたうえで、勤務医、開業医に向いている医師をそれぞれ確認してみましょう。
勤務医に向いている医師
勤務医は安定しているという大きな魅力がある一方で、雇用されている以上、仕事の自由度と年収は比較的低くなります。その点が気にならなければ、勤務医のキャリアを選ぶ方法もあるでしょう。
また、所属する病院の経営方針や求められている役割を理解して働ける力があるのなら、勤務医として優れた仕事ができるはずです。事務的な業務を担ってくれる部署がある勤務先を選ぶことで診療に集中できるので、充実した環境のなかでスキルを早く磨くことが可能です。学会や海外研修にも参加しやすいでしょう。
加えて、外科などの大がかりな手術と入院を要する診療科では、設備投資などの開業リスクを考慮した結果、勤務医を選ぶケースが多いようです。
開業医に向いている医師
「自分の理想の医療を実現したい、自分の力でどれだけ医療に貢献できるかチャレンジしたい」という意思がある場合は、開業の道を選ぶ医師が多い傾向があるようです。
開業医の大きなメリットは、自分の判断と裁量で診療と病院・診療所の運営ができることです。また、ふるさとの地域医療に貢献するなど、勤務地も自由に選べます。
開業医が多い診療科は、内科や歯科のほか、開業資金が少なくて済む心療内科や、日帰り手術の需要が急速に増えてきている眼科、皮膚科などです。これらの診療科に従事している、または将来的に従事したい医師は開業もひとつの道でしょう。
もし開業して院長となった場合、医師や看護師、事務員などを雇用するのであれば、勤務医では求められなかった雇用主としてのコミュニケーション力が求められます。また、患者数を増やすための広告マーケティングなど、医療以外の分野の幅広い知識やスキルも必要です。多角的なスキル、知識を発揮したい場合は開業医が向いているでしょう。
自分の目指すキャリアについて考えよう
勤務医と開業医は、働き方や年収など様々な面で大きな違いがあります。メリット・デメリットをよく理解して、将来のキャリアを考えてみましょう。
その際には、社会的ステータスや収入などの条件を比較するだけでなく、「自分はこれからどのような医師になりたいか」という原点に立ち返ることが重要です。
勤務医、開業医のどちらを選んでも、自分の理想とする医療を追求し、患者さまやその家族、地域医療へ貢献していくことができるキャリアプランを設計することが、理想の医師像に近づく一歩となるでしょう。
ドクタービジョン編集部
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