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2017年度から始まった医師の働き方改革。長年課題とされていた日本の医師の「超長時間労働」にメスを入れるかたちで始まった本改革は、2024年度から施行されることが決まっています。今回は医師の働き方改革の内容や新型コロナウイルス感染症による影響などについて解説します。
2024年度から推進される「医師の働き方改革」とは
日勤後の当直勤務やオンコールなど、日本における医師の勤務形態は長時間労働に陥りやすいものです。厚生労働省の資料によると月80時間以上の時間外勤務をしている医師は約4割。半数近くの医師がいわゆる過労死基準を超える労働を行っていることがわかります。
このような実態を受け、2017年より厚生労働省に「医師の働き方改革に関する検討会」が設置され、医師の健康と生命、そして地域医療体制を守るため、医師の時間外労働規制と各水準の方針が定められました。
医師の働き方改革で決定された方針は2024年度から施行される予定です。
医師の時間外労働規制について
2024年4月より、すべての医師(勤務医)に対し原則、年960時間以下の時間外労働規制が適用となります。時間外労働を減らすため、具体的にどのようなことが行われるのでしょうか。
各医療機関には医師の労務管理や労働時間の短縮の徹底、医師の業務移管(タスク・シフティング)、連続勤務の制限、勤務間インターバルの確保などが求められます。たとえば、連続勤務は28時間まで、勤務間インターバルは9時間以上、医師の勤務状況や健康を鑑み必要に応じた面接指導や勤務停止(ドクターストップ)、代償休息といった措置の実施などです。
しかし、年960時間以下の時間外労働規制では地域医療や救急医療に携わる医師や、研修のために多くの時間を必要とする研修医などは対応できないケースも考えられます。その場合には年間1860時間以下にまで上限が緩和できます。
コロナ禍における医師の働き方
2021年3月現在、新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの医師が対応を迫られています。厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症の対応に伴う労働時間の延長や休日労働も、労働基準法※に則り可能との見解を示しました。
しかし、コロナ禍とはいえ医師も一人の人間ですから、不眠不休で働き続けることは難しいでしょう。医療機関は新型コロナウイルス感染症対応に携わる医師に対し、長時間の労働や過度の疲労がみられる場合には、医師による面接指導などを行ったうえ休息など適切な対処をする必要があると日本医師会が提言しています。
※:労働基準法第33条第1項各水準の指定と適用を受ける医師について
厚生労働省の検討会では、医師の時間外労働規制について、各医療機関や医師の状況に応じて大きく3つ(細分化した場合は5つ)の基準を定める方針を示しました。ここでは、各水準の概要と適用となる医療機関や医師について見ていきましょう。
全水準共通
<36協定で締結できる時間数の上限> ・通常の時間外労働(休日労働を含まない):月45時間以下、年360時間以下 ・「臨時的な必要のある場合」(休日労働を含む):月100時間未満 ・36協定によっても超えられない時間外労働の上限時間(休日労働を含む):月100時間未満 ・面接指導、必要に応じた就業上の措置:義務(時間外労働が月100時間以上となる場合)
A水準
<36協定で締結できる時間数の上限> ・「臨時的な必要のある場合」(休日労働を含む):年960時間以下 ・36協定によっても超えられない時間外労働の上限時間(休日労働を含む):年960時間以下 ・連続勤務時間制限(28時間):努力義務 ・勤務間インターバル(9時間以上):努力義務 ※適用となる医療機関:原則、すべての医療機関
B水準・連携B水準
<36協定で締結できる時間数の上限> ・「臨時的な必要のある場合」(休日労働を含む):年1860時間以下 ・36協定によっても超えられない時間外労働の上限時間(休日労働を含む):年1860時間以下 ・連続勤務時間制限(28時間):義務 ・勤務間インターバル(9時間以上):義務 ※適用となる医療機関: ・B水準...三次救急や救急搬送の多い二次救急指定病院、がん拠点病院など ・連携B水準...医師の派遣を通じて地域医療を確保するために必要な役割を持つ特定の医療機関
C1水準・C2水準
・「臨時的な必要のある場合」(休日労働を含む):年1860時間以下 ・36協定によっても超えられない時間外労働の上限時間(休日労働を含む):年1860時間以下 ・連続勤務時間制限(28時間):義務 ・勤務間インターバル(9時間以上):義務
※適用となる医療機関: ・C1水準...初期研修医、専門医取得を目指す専攻医を雇用している医療機関 ・C2水準...特定高度技能獲得を目指す医籍登録後の臨床従事6年目以降の医師を雇用する医療機関
医師の働き方改革における最大の目的は労働時間短縮のため、A水準を守ることが原則となります。あくまでB水準、C水準は例外です。また、A水準はその医療機関のすべての医師に適用されますが、B水準とC水準は業務上必要な場合のみ適用されます。
B水準・連携B水準は2035年度で廃止に
先に紹介した水準のうち、B水準・連携B水準については2035年度に廃止することが決まっています。一方で、識者のあいだでは本当に2035年度で廃止できるのか、医師の働き方改革をより迅速に進めるために前倒しで廃止すべきなどといった声が上がっており、今後も議論が続くとみられます。
厚生労働省などの動きに注視が必要
医師の働き方改革については大筋で方針が決まったものの、新型コロナウイルス感染症の拡大などにより当初の予定通りに改革が推進されるのかは不透明なままです。新型コロナウイルス感染症の対応に従事する医師の労働時間が問題視される一方で、対応に従事していない医師は不急の手術や治療の延期などで時間外労働が減り、負担が軽減されています。
また、医師は国民の生命や健康を預かる重要な仕事です。規定された労働時間を超えたからといって一概に業務を終了させるのも難しいでしょう。
今後も、最新の情報に注意して、施行時期や内容などの情報収集をおすすめします。
ドクタービジョン編集部
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