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研修医になったばかりだと、研修医の業務がどのくらい忙しいものなのか、イメージできない方もいらっしゃるかと思います。研修医の後は各診療科の専攻医(後期研修医)となることが一般的で、その専攻医の忙しさについて気になっている方もいらっしゃるでしょう。この記事では、研修医や専攻医の基本業務と、忙しさを回避するための対策について解説します。
執筆者:竹内 想
研修医の忙しさ
研修医の忙しさは、ローテート中の診療科ごとに変わります。当直業務の忙しさは研修病院によって差があり、この2つが忙しさの振れ幅を決めるポイントと言えるでしょう。詳しく解説します。
医師免許を取得した後、ほとんどの人は研修医(初期研修医)として2年間、臨床研修に従事します。
研修医の間は、各病院のプログラムに沿った、研修業務中心の生活を送ることになります。本務に専念する必要があり、アルバイトなどの副業は原則できません。
現在の研修制度では「スーパーローテート方式」が採用されています。これは、必修科目である内科・外科・小児科・産婦人科・精神科・救急・地域医療と、各自が興味のある診療科(選択科目)で、およそ1~2カ月ずつ研修を行っていくものです。病院にもよりますが、初めは必修科目をローテートし、1年目の終わりから2年目にかけては、3年目(専攻医1年目)以降の進路も考慮しつつ、選択科目をローテートするパターンが多くみられます。
また、市民病院や大学病院のような大規模な病院では、研修医も救急外来で当直業務を担当する必要があります(中小規模の病院では当直業務がないこともあります)。当直業務は、平日であれば夕方17時ごろから準夜間23時ごろまたは翌朝まで、土休日であれば朝9時ごろから夕方17時ごろまでのことが多いです。なお、平日の場合は「当直」と呼ばれますが、土休日の場合は「日直」や「日当直」と呼ばれます。頻度は病院によって異なりますが、週1~2回(月4~8回)のことが多いでしょう。
現在は働き方改革の影響で、当直明けの業務が免除される病院も増えていますが、午前のみ業務が入ることもあります。また、時間外(平日の9時以前や17時以降、土休日)には、研修医対象の勉強会などが行われることもあります。
研修医の業務と日中の平均的なタイムテーブルをまとめると、以下の通りです。
- 各診療科での業務(日中)
- 救急外来当直(週1~2回)
- 土休日の日直(月1~2回)
- 時間外の勉強会
【主な業務内容】
【日中の平均的なタイムテーブル】(診療科によってかなり異なるため、下記は一例)
8:30 | 担当患者の回診、検査結果の確認 |
---|---|
9:00~ | 外来見学、担当患者の治療方針相談 |
13:00 | 昼食 |
14:00~ | 検査見学、予定手術 |
16:30 | カンファレンス参加 |
17:30 | 終了 |
※空き時間に適宜カルテ作成、雑務など
診療科によっては、ここに手術やカテーテル治療(循環器内科、脳神経外科など)が加わりますし、大規模な外科手術の場合は午前から丸1日かけて行われることも珍しくありません。予定手術だけでなく緊急手術の頻度が高い診療科(一般外科、脳神経外科、整形外科など)では、当然忙しさも増すことになります。つまり、日中の忙しさは診療科による差が大きいと言えます。
一方、当直の際の忙しさは、研修病院によってかなり差があります。大規模病院(三次救急病院など)であるほど救急車の受け入れに積極的で、日による違いはあまりなく、忙しい傾向があります。中小規模の病院では、救急外来はあるものの、救急車はあまり受け入れていないところもあります。
上記のタイムテーブルを見ると、勤務時間は9.5時間(休憩1時間)/日。そこまで長いわけではないと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、多くの研修医は社会人になりたてであり、学生時代と比べて拘束時間が長いことから、忙しさを感じやすいと言えます。また1~2カ月単位で診療科が変わるため、業務内容も大きく変動します。環境の変化から、ストレスを感じやすい時期です。
ただし、研修期間は2年間と比較的短く、プログラム内容もあらかじめ決められている部分が多いことから、後述の専攻医と比較すると、忙しさの振れ幅は少ないと言えるでしょう。
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専攻医の忙しさ
2年間の研修期間を終えると、内科・外科など各診療科に進むことが一般的です。多くは医師3~5年目にかけて、日本専門医機構が定めるプログラムの下で専門研修を受けます。この立場の医師を「専攻医」と呼びます(以前は後期研修医と呼ばれていました)。
専攻医と研修医の最も大きな違いは、病棟患者を主治医として担当するかどうかです。外科系の診療科であれば、手術の執刀医を務める機会も出てくるでしょう。研修医と違い、指導医なしでも診療行為が可能となり裁量権が増えますが、その分責任も重くなります。
病棟業務以外に外来診療も行う場合がありますが、外来はどちらかというとベテランの医師が担当することが多く、専攻医はそこまで外来枠数が多くないことが一般的です。
また、研修医時代に引き続き、救急外来での当直業務も行うことが多いでしょう。
専攻医は、臨床研修を終えた後ではありますが、各診療科単位で見れば、一番下の立場の医師になります。このため「診療科の中で誰かがやらないといけない仕事」をやる必要が出てきます。たとえば、造影CTを撮影する際の造影剤投与や抗がん剤投与時のルート確保には医師が同伴することが一般的ですが、この同伴医師は各診療科の持ち回りとなっていることが多いため、専攻医になったばかりの医師が担当する機会も多いでしょう。そのほか、カンファレンスの準備や、ローテートしてくる研修医の指導なども専攻医が担当するケースが多くあります。
また、専攻医になると、本業以外にアルバイトを行うことも可能となります。アルバイトは必須ではありませんが、所属している医局から派遣されたり、先輩医師から紹介されたりと、断ることが難しい場面もあるでしょう。勤務時間とは別に行うことになるので、忙しさに影響する一つの要因となります。
研修医・専攻医の忙しさを決める要因は?
研修医の忙しさを決める大きな要因として考えられるのは、研修病院における救急外来業務です。救急外来の忙しさは、救急車の受け入れ台数や、受診患者数からある程度推測ができます。これらは病院の公式サイトや研修病院紹介サイトなどで公開されていることが多く、予測の参考にすることが可能です。
また、診療科による忙しさの差も大きく影響します。一般に内科系よりも、外科系と呼ばれる診療科(一般外科、脳神経外科、整形外科など)の方が忙しいことが多いです。選択科目ではローテート期間を選択できることも多いため、忙しくなり過ぎることが心配な人は、こうした診療科を避けたり期間を調整したりすることも選択肢になるでしょう。
専攻医の忙しさを決める要因も、どの診療科を選ぶかが大きく影響します。もちろん同じ診療科であっても、病院によって忙しさのレベルは異なりますが、忙し過ぎることが心配な場合は、やはり一般的に忙しいとされる診療科を避けるのが良いでしょう。
忙しさをどう乗り越えるか
研修医や専攻医が忙しさを乗り越えるためには、同じ悩みを共有したり、相談したりできる同期の存在が大切です。とくに研修医の場合は、研修医室などで同期と同じ空間で過ごせるようになっている病院も多いため、日ごろの悩みを積極的に共有・相談しましょう。
近年はメンター制度が設けられている病院も増えています。メンターは上級医なので気後れしてしまうかもしれませんが、研修する上で悩みがあれば、早め早めに相談することがおすすめです。
業務においては、研修医向けに執筆された書籍や、医師による論文要約掲載サイトを利用するなど、限られた時間で効率的に知識をインプットできるツールを積極的に利用してみましょう。限られた時間を意識して有効に活用することで、忙しさの回避につながります。
どうする?初期研修医の勉強方法【現役医師解説】
まとめ
2024年4月からは、医師の働き方改革が本格的に始まります。当直明けの勤務体制が見直されるなど、医師の業務負担を減らす方向に進んでいます。
ただし、研修時代は医師としての一歩を踏み出すタイミングであり、肉体的にも精神的にも忙しい時期です。その後も日々、患者さまの命と向き合う医師という職業は忙しくなりやすいため、体調管理や業務管理が重要です。少しでも余裕をもって診療業務にあたれるよう、忙しさを決める要因や、その対策方法を把握しておくことは有益です。研修医や専攻医の先生方に、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。
執筆者:竹内 想
大学卒業後、市中病院での初期研修や大学院を経て現在は主に皮膚科医として勤務中。
自身の経験を活かして医学生〜初期研修医に向けての記事作成や、皮膚科関連のWEB記事監修/執筆を行っている。
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