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2024年1月、新しいNISA制度(新NISA)がスタートしました。
NISAは「少額投資非課税制度」という、一定の限度額まで非課税で資産運用ができる制度です。課税がないため、運用益の全額が投資家の収益になります。
2023年末までは非課税期間や非課税枠が限定的であったため、投資余力のある人にとっては物足りない部分もあったでしょう。新NISAでは、投資限度額が1,800万円まで拡大されました。
畑の面積が広がれば、収穫できる果実も増えることが期待されます。新NISAで何ができるのか、投資枠1,800万円の活用術を中心に解説します。
NISAとは
NISA(少額投資非課税制度)は、個人投資家の資産形成を後押しするために2014年にスタートした制度です。
通常、株式や投資信託の運用から得た利益は課税対象です。約20%の税金が徴収されるため、投資家の収益は約80%にとどまります。
一方、NISAで運用した投資の利益は非課税です。たとえば投資の利益が10万円だった場合、課税口座では手元に入るのは8万円ですが、NISA口座で運用すれば、10万円全額が収益になります。
このNISAについて、国民の貯蓄から投資への流れを加速させるため、政府は2024年から制度を刷新しました。旧NISAで限定的だった非課税投資期間や生涯非課税投資枠が、新NISAでは大幅に拡充されています。次の段落で詳しく見ていきましょう。
新NISAの概要とメリット
非課税投資期間が無期限に
旧NISAでは、非課税で投資できる期間が5年もしくは20年と限定的でした。
新NISAでは制度の恒久化に伴い、非課税運用期間が無期限になりました。運用期間を気にすることなく、売却したいタイミングまで投資を継続できます。
スポット投資と積立投資が併用可能に
旧NISAでは、株式や投資信託にスポット投資をするための「一般NISA」と、投資信託へ積立投資をするための「つみたてNISA」は併用不可で、どちらか一方しか利用できませんでした。そのため短期的な運用なら一般NISAを、長期的な資産形成を目指すならつみたてNISAを選ばなければならないのが通例でした。
一般NISAとつみたてNISAの機能を一本化して発足した新NISAでは、両者の機能を併用できます。「成長投資枠」と「つみたて投資枠」というそれぞれの枠の中で、株式投資や積立投資が行えます。
非課税投資枠が1,800万円に
旧NISAの生涯非課税投資枠は、一般NISAで600万円、つみたてNISAで800万円と限定的でした。投資余力がある方にとっては、少し物足りない制度だったかもしれません。
新NISAでは、非課税投資枠が1,800万円(年間上限360万円、投資額ベース)まで引き上げられました。年間360万円の内訳は、成長投資枠が240万円、つみたて投資枠が120万円です。
非課税枠が再利用(再投資)可能に
NISAで運用中の株式や投資信託は、いつでも売却が可能です。これに加えて新NISAでは、非課税枠が再利用できるようになりました。
旧NISAでは、株式や投資信託を売却すると、空いた非課税枠を二度と使うことはできませんでした。しかし新NISAでは、売却して空いた非課税枠を再利用し、株式や投資信託を購入(再投資)できます。投資限度額内であれば、投資(運用)→売却(換金)→再投資が何度でもできるのです。
いつでも換金や再投資ができることは、個々のライフイベントにあわせた運用をする上で重要です。住宅購入費・教育費・老後資金など、人生の節目で必要となる費用はもちろん、突発的な支出にも対応できるでしょう。
金融庁webサイト「NISAとは?」をもとに筆者が作成
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html
医師はNISAをどう使う?
目的と資産状況から考える
NISAを個々の資産形成に役立てるには、将来のライフイベントに向けてこれから資産形成する場合と、すでにある資産(余裕資金)を運用する場合とで、異なる投資戦略が考えられます。
これから資産をつくる場合
まずは、目標金額や運用期間を、ライフイベントごとに設定しましょう。
たとえば、教育費として1,000万円、老後資金として2,000万円など、目的ごとに必要な資金を明確にすることで、想定利回りや毎月の必要投資額を計算できます。
長期的な資産形成には、積立投資が向いています。積立投資は投資期間が長くなる若い世代に有利ですが、投資期間を15年以上確保できる40代・50代でも、老後資金の準備に間に合います。
今ある余裕資金を運用する場合
使途が決まっていない余裕資金を運用したい場合は、リスクをどれだけ許容できるかを考えましょう。投資の世界では、ハイリターンを求めれば、リスクも高くなると考えるのが一般的です。
NISAの投資対象は、上場株式、投資信託、上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)です。1つの銘柄に投資する株式投資よりも、複数の地域や資産を投資先としている投資信託の方がリスクは低いと言えます。
非課税投資期間が無期限になったことは、株式投資にもメリットをもたらします。株価の上昇をじっくり待つこともできますし、高配当株への投資で配当金を受け続けることもできます。
投資資金に余力があれば、株式投資と積立投資を併用するなど、新NISAの特徴を生かした投資戦略を取ることができます。
投資先の選び方①:投資信託と株式投資の併用
新NISAでは投資信託(積立投資)と株式投資を併用することが可能です。資金に比較的余裕のある医師の方であれば、目的や運用期間で両者を使い分けるのも一案です。投資余力のある医師だからこそ可能な投資戦略です。
投資信託
投資信託は、運用方針によってインデックスファンドとアクティブファンドに分けられます。
インデックスファンドは、日経平均、S&P500、NASDAQなどの各種指数に連動した投資成果を目指します。一方のアクティブファンドは、指数以上の成果を目指すファンドです。NISA対象の投資信託の多くはインデックスファンドです。
運用方針とは別に、投資対象資産による分類もできます。「株式型」「債券型」「不動産型」「バランス型」などがあり、簡単に言うと投資先の資産が株式なのか債券なのか不動産なのかによる分類と考えてください。バランス型は投資先が株式・債券・不動産・コモディティなどにバランス良く分散しています。
これに加えて、投資対象地域による違いもあります。国内・海外・国内外・米国のみ・全世界先進国のみ・新興国のみなどさまざまです。
自分が「どの地域」の「何」に投資をしたいかを明確にすると、希望する投資信託を選びやすくなるでしょう。
投資対象資産と投資対象地域は、投資信託の「交付目論見書」で確認できます。運用方針によって期待される運用成果やリスクが異なるため、事前にしっかり確認することが大切です。
株式投資
株式投資は、短期間に大きな利益を得ることも可能な投資ですが、株価の変動幅が企業の業績や社会情勢に左右されるリスクがあります。日々の値動きをある程度注視する必要があるため、投資信託と異なり、運用には手間と時間を要します。
株式投資の利益は、売買差益と配当金です。売買差益とは、株価が下がったタイミングで株式を購入し、値上がりのタイミングで売却して利益を得ることです。当面使う予定のない資金であれば、高配当株への投資で永久に配当を受けることもできます。
投資先の選び方②:積立投資
投資経験の浅い方や、日々の値動きに注視している時間のない方に向いているのが積立投資です。
積立投資は、毎月定額で投資信託を買い付ける方法です。日々の値動きに煩わされたくない方に向いています。
成長投資枠(240万円)をすべて積立投資に充てると、年間最大360万円の積立投資が可能です。最短5年で1,800万円の投資枠が埋まります(月30万円✕12カ月✕5年=1,800万円)。使途が決まっていない資金なら、非課税のまま無期限で運用が可能です。
積立投資では、分配金は自動的に再投資されて運用が継続されます。利息が利息を生むという複利効果から、運用が長期になるほど成果が大きくなります。
まとめ
2024年から新NISAがスタートし、日経平均もバブル崩壊後最高値を更新するなど、投資市場が沸いています(2024年2月時点)。非課税投資枠が大幅に引き上げられ、投資期間も無期限になった新NISAは、収入が高く投資余力のある医師にとって使い勝手の良い制度と言えそうです。
投資に元本保証はありませんが、投資先資産と投資時期を分散することで、リスクを分散することができます。NISAを利用して、ご自身のライフプランに合った投資を始めてみませんか。
執筆者:山﨑 裕佳子
FP事務所MIRAI 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、証券外務員二種保有。「家計の見直しでMIRAIを変える」をモットーに、各種相談、マネー記事執筆、書籍監修など幅広く活動中。
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