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2018年に「新専門医制度」が開始しました。質の高い専門医の養成を目的とした制度で、基本領域のうち19番目の専門医に加わったのが「総合診療医」です。
総合診療医は、決まった分野に特化して専門性を高めるのではなく、地域医療におけるプライマリ・ケアや医療体制の構築をリードすることが求められています。
新制度のスタートとともに、ますます注目度が高まっている総合診療医とはどのような存在なのでしょうか。また、求められるスキルや、総合診療医になるメリット・デメリット、将来のキャリアパスなどについて説明します。
総合診療医とは?
総合診療医は、「患者さまのさまざまな疾患・外傷を総合的に診療できるジェネラリスト」です。日常的に頻度が高く、幅広い領域の疾病と傷害等に対して、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を提供する医師のこと。いわば、なんらかの医療を受けたい患者さまが、真っ先に受診しに行ける医師であり、プライマリ・ケアの最前線で活躍する医師といえるでしょう。
たとえば、風邪をひいたときや、子どもが夜中に突然熱を出したとき、予防接種を受けたいとき、数日間腹痛が続いているが総合病院にかかったほうがよいのかわからないとき...。そうした「どの医療機関にかかればいいのかわからない」ときにも頼りになるのが総合診療医です。身近な例でいうと、かかりつけのお医者さんや、地域の基幹病院の総合内科などがあげられます。
ただし、総合診療医の役割はそうした診断のプロフェッショナルというだけにとどまりません。大規模な設備を必要としたり、専門性が非常に高い医療行為だったりする場合を除いて、総合診療医はあらゆる疾患や健康問題に対応できる基礎的な臨床能力を備えています。
総合診療医の大きな特徴として、「患者さま本人を総合的に診る」ということがあげられます。疾患だけではなく、患者さまの生活習慣、環境、家族関係、経済状況、精神面での悩みなど、ありとあらゆる分野を視野に入れて治療方針を立てます。
もし不眠と動悸で悩んでいる人が受診したら、対症療法的に薬を渡すだけでなく、「どのような職場で働いているか」「人間関係や金銭上の悩みなどはないか」など、不調の原因に対してアンテナを張ることが大切です。こうした臨床推論と予防医学的なアプローチによって、患者さまの健康を支えていくことが求められているのです。
現代における総合診療医の役割と重要性
総合診療医は、ありとあらゆる疾患と外傷に対応できるスペシャリストの側面をもちながら、各専門医と連携してより深い医療を提供できる体制を構築するジェネラリストでもあります。そのため、急性期・慢性期・終末期にかかわらず、疾患・外傷の様々なステージに対応できる高い能力を有していることや、どのような医療ニーズにも適切な判断を出せることが求められます。
たとえば糖尿病の慢性合併症の患者さまであれば、生活習慣を改善するためのアドバイスを行い、経過を看視し、病院から帰ったあとのケアも配慮するといった総合的なサポートを継続して行う必要があります。このように、総合診療医には、その地の住民の健康を底支えしていく地域医療の柱としての役割が期待されているのです。
高齢化が進行する現代においては、ますますその重要性が高まっています。高齢者は身体の不調がいくつも重なり、疾患が複数の診療科にまたがってしまいがちです。多岐にわたる疾患、そして社会背景も含めて診療にあたることができるのが総合診療医だと言えるでしょう。
また、総合診療医は、慢性的な医師不足問題の解決にも貢献しています。大規模な機器や設備を必要とする高度医療は各分野の専門医が担当しますが、総合診療医はその一歩手前で、疾患の状況をコントロールする能力を持っています。 状況を見極めたうえで複数の診療科と連携をとり、適切な医療を早いタイミングで提供する。こうしたコーディネート能力も総合診療医の強さであり、様々なニーズに対応することで横断的に医療を支えています。
総合診療医のキャリア
総合診療医のキャリアには様々な道が考えられます。地域全体の医療を支えたり、地域の基幹病院のなかで各専門医へつなぐ役割を果たしたり、総合診療医の後進を育成したり...。活躍の場は数多く広がっています。
・地域医療、へき地の診療所、かかりつけ医
・地方の病院や医療センター、介護施設
・在宅診療、家庭医
・総合病院の総合診療科
・ジェネラルマインドをもつ専門医
・公衆衛生や医学教育の指導
・家庭医療の教育
・大学や医療教育研究センターとの連携
・スポーツドクター
・行政、地域包括ケアセンター など
また、総合診療医を目指す場合には、最初から総合診療専門医研修のプログラムを受けるか、ほかの専門医を取得したあとに総合診療医を取得するかで悩む方も出てくるでしょう。医科大学の総合診療専門医研修コースでは、臓器別の診療科も勉強したり、地域医療を深く学ぶオーダーメイド研修を制度化しているところもあります。そのため、総合診療医を取得したあとにより興味のある分野を選択していくこともできるでしょう。
ただ、総合診療医の場合は「何科で働くか」よりも「どんな医師になりたいか」という視点からキャリアを考えることをおすすめします。専門医制度の研修に参加する以外にも、病院に勤務し外来を受け持ちながら学術会議や講習会、オンラインプログラムに参加して知識と技術を磨く方法も。総合診療医の強みを活かして、自分らしいキャリアパスを築いていけるとよいですね。
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総合診療医として働く場合のメリット・デメリット
最後に、総合診療医として働くメリットとデメリットについてお話します。
総合診療医のメリット
前述したように、高齢化や過疎化にともなって総合診療医のニーズは高まっています。高齢者は多科にわたる疾患をもちますが、総合診療医はすべてを診ることができるため状況を把握しやすく、患者さまとの距離を近く感じることができるでしょう。また、地方やへき地では医療の柱として、住民に寄り添った地域医療のかたちを自ら構築していくことができます。
そのほかにも、総合診療医の数はまだ少なく、病院の総合診療部門や教育をリードしていく立場として期待されています。次世代の総合診療医を育成するロールモデルとしての役割や、総合診療の領域をよりよい方向に改革するなど、日本における総合診療分野をリードし、社会に貢献することもできます。
総合診療医のデメリット
いわゆる「特定の臓器や疾患において高い専門性を持つ」ことがあまりないため、深い専門性が習得できないのではないかという不安をもっている方がいるかもしれません。従来の日本では、医師はある特定の領域に特化して専門分化するのが一般的だったため、モデルケースが少ない懸念もあります。
ただ、疾患の原因はひとつとは限らず、「専門外でなければ診ない」という医師にかかった場合、患者さまは自分の身に何が起きているのか分からないまま診療科をいくつも転々としなくてはなりません。総合診療医は「なんでも診る・その患者さまを丸ごと診る」ことができ、必要に応じて各専門医につなぐことのできる存在です。
高度な専門性が求められる疾患・外傷に対しては、適切な初期対応を身に着けておけば十分ですし、現代ではデータベースで最新の医療知識をアップデートしていくことは可能です。積極的に知識や技術の取得を目指していれば、おのずと専門性は発揮できます。
地域の人から必要とされる総合診療医
総合診療医は「ありとあらゆる疾患・外傷を総合的に診療」することができる医師です。それはつまり、患者さまの医療ニーズに対して真っ先に応えられる医師であるということ。
急性・慢性いずれにも対処でき、子どもから高齢者までを診ることができる総合診療医は、その地域の住民が病気にかかりにくく、健康に生きていけるようにサポートし、ひいては患者さまとその家族がより幸せに暮らしていく手助けができます。
「あの先生がいれば安心だ」。そんなふうに、総合診療医は地域の人々から頼られる存在として、地域医療の中心的存在として、今後さらに日本の医療を担っていく存在となるでしょう。
ドクタービジョン編集部
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