オンライン診療を行うための施設基準とは?必要な届出、診療報酬における算定要件も紹介

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公開日:2023.09.08

オンライン診療を行うための施設基準とは?必要な届出、診療報酬における算定要件も紹介

オンライン診療を行うための施設基準とは?必要な届出、診療報酬における算定要件も紹介

コロナ禍の時限的、特例的な取り扱い(コロナ特例)で注目を集めたオンライン診療は、2022(令和4)年度の診療報酬改定により「情報通信機器を用いた診療」として評価が新設されました。初診が解禁されたことでオンライン診療を取り扱う医療機関が増加し、今後も拡大する可能性があります。

患者さん、医療機関にさまざまなメリットがあるオンライン診療。導入を検討している医療機関や、興味を持っている医師の方も多いのではないでしょうか。

そこで注意したいのが、コロナ特例の終了に伴う届出です。2023年8月以降、オンライン診療を行うためには「情報通信機器を用いた診療」に必要な施設基準をクリアし、届出を行わなくてはなりません

この記事では、オンライン診療を行うために必要な施設基準に加えて、届出の内容や算定要件について紹介します。

オンライン診療とは

オンライン診療とは、医師と患者さんの間でパソコンやスマートフォンなどの情報通信機器を使用し、診療行為をリアルタイムで行うことです。診療行為というのは、診察を通して患者さんの状態を医学的に診断し、診断結果を伝えたり処方をしたりすることを言います。近い言葉に「オンライン受診勧奨」や「遠隔健康医療相談」がありますが、これらは診断や処方などの医学的判断を伴わないため、オンライン診療とは区別されます。

本来診療行為は、対面によりできるだけ多くの情報を集めて行うべきと考えられています。しかし、コロナ禍で受診控えが頻発したことや、宿泊療養施設に滞在する患者さんへの医療提供手段が問題となったことを背景に、オンライン診療をはじめとする遠隔診療の必要性が高まりました。診療報酬においても、いわゆる「コロナ特例」(初診214点、電話再診73点、外来診療74点)が定められ(2023年7月31日で終了)、電話やオンラインによる診療普及の後押しとなりました。

コロナ禍の前から、オンライン診療は医師不足や医師偏在への対策手法として掲げられていたこともあり、2022(令和4)年度の診療報酬改定では「情報通信機器を用いた診療」が新設され(初診251点(対面288点)、再診・外来診療73点)、種々の規制や指針が定められました。

オンライン診療の普及が進みつつある近年、希望する患者さんは少なくないと考えられます。取り扱う医療機関はますます増えると見込まれ、私たち医師にとってオンライン診療が身近なものになってきています。すでにオンライン診療を行っている医師の方、興味を持っている方はもちろん、今のところオンライン診療を行う予定がない方も、オンライン診療を取り巻く制度や施設基準について把握しておきましょう。

オンライン診療を行うための届出とは

オンライン診療を行い「情報通信機器を用いた診療」として診療報酬を得るには、届出が必要です。2023年7月31日まではコロナ特例による算定が可能ですが、8月以降はオンライン診療を行うための届出が必須になっています。

届出とは、必要な書類をダウンロードし、地方厚生局へ提出することを指します。届出には2種類あり、一つは「オンライン診療開始時の届出」、もう一つは毎年7月に提出する「診療実績の届出」です。それぞれどのような書類が必要か、見ていきましょう。

オンライン診療開始時の届出

オンライン診療開始時に提出する書類は、以下の2つです。

オンライン診療を行う医療機関は、届出書に記載されている基準をクリアしていなければなりません。この内容は後ほどご紹介します(「オンライン診療を行うための施設基準とは」の段落を参照)。

診療実績の届出

オンライン診療を始めた後は、毎年の診療実績を届け出る必要があります。以下の書類を使って、毎年7月に前年度の実績を提出します。

参考:関東信越厚生局のフォーマット(令和5年版)

▼参考資料
基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和4年3月4日保医発0304第2号)|厚生労働省

別添1「初・再診料の施設基準等」第1 情報通信機器を用いた診療
別添7「基本診療料の施設基準等に係る届出書」
様式1「情報通信機器を用いた診療に係る届出書添付書類」
様式1の2「情報通信機器を用いた診療に係る報告書(7月報告)」

オンライン診療を行うための施設基準とは

それでは、オンライン診療を行う施設として評価を受けるための施設基準を見ていきましょう。2022年3月に厚生労働省から発出された通知に記載されている「情報通信機器を用いた診療に係る施設基準」がこれにあたります。内容は以下の通りです。

情報通信機器を用いた診療に係る施設基準
(1)情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されているものとして、以下のア~ウを満たすこと。
ア 保険医療機関外で診療を実施することがあらかじめ想定される場合においては、実施場所が厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下「オンライン指針」という。)に該当しており、事後的に確認が可能であること。

イ 対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められていることを踏まえて、対面診療を提供できる体制を有すること。

ウ 患者の状況によって当該保険医療機関において対面診療を提供することが困難な場合に、他の保険医療機関と連携して対応できること。
(2)オンライン指針に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関であること。
厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和4年3月4日保医発0304第2号)より引用
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984045.pdf

上記アの通り、まずは厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(オンライン指針)に沿った体制を有する必要があります。

この指針では、オンライン診療の提供体制について、医師や患者の所在に関する考え方、最低限遵守する事項、推奨される事項などを定めています。

たとえば、医師の所在について最低限遵守する事項としては、次のような内容が定められています。

ⅰ オンライン診療を行う医師は、医療機関に所属し、その所属及び当該医療機関の問い合わせ先を明らかにしていること。
ⅱ 患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関において直接の対面診療を行える体制を整えておくこと。
ⅲ 医師は、騒音により音声が聞き取れない、ネットワークが不安定であり動画が途切れる等、オンライン診療を行うにあたり適切な判断を害する場所でオンライン診療を行ってはならない。
ⅳ オンライン診療を行う際は、診療録等、過去の患者の状態を把握しながら診療すること等により、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を整えなければならない。ただし、緊急等やむを得ない場合には、この限りでない。
ⅴ 第三者に患者の心身の状態に関する情報が伝わることのないよう、医師は物理的に外部から隔離される空間においてオンライン診療を行わなければならない。
ⅵ オンライン診療を実施する医療機関は、ホームページや院内掲示等において、本指針を遵守した上でオンライン診療を実施している旨を公表するものとする。

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和5年3月一部改訂)より引用(一部表現を編集)
https://www.mhlw.go.jp/content/001126064.pdf

さらに、上記施設基準(1)イ・ウの通り、必要時に対面診療を組み合わせることが難しい場合にほかの保険医療機関と連携して対応できる体制を整備することが求められています。

オンライン診療の評価を受けるための算定要件とは

施設基準をクリアした上で、診療報酬における算定要件を満たすと、オンライン診療として評価を受けることができます。初診に関する算定要件を要約すると、以下の通りです。

  • 施設基準を満たしていることを地方厚生局長等に届け出る
  • 「オンライン指針」に沿った診療を行う。診療内容、診療日、診療時間などの要点を診療録に記載する
  • 原則として保険医が保険医療機関内で実施する。保険医療機関外で行う場合も「オンライン指針」に沿った適切な診療を行い、事後に実施場所を確認できるようにしておく
  • 患者の急変時等、緊急時には原則として当該保険医療機関が必要な対応を行う。やむを得ず対応できない場合はほかの医療機関を速やかに受診できるよう事前に患者に説明しておくとともに、かかりつけ医や紹介先の医療機関名をカルテに記載しておく
  • 対面診療を提供できる体制を有する。難しい場合にはほかの医療機関と連携して対応できる体制を有する
  • 「オンライン指針」や種々の診療ガイドラインに沿った適切な診療・処方であったことを、診療録や診療報酬明細書の摘要欄に記載する
  • 予約に基づく診察による、特別料金の徴収はしない
  • 情報通信機器の運用に要する費用については、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として徴収できる
厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要 個別改訂事項Ⅱ(情報通信機器を用いた診療)」p.4、および東京都医師会webサイト「新規開業医のための保険診療の要点(総論)[6]オンライン診療」の内容をもとに作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911810.pdf
https://www.tokyo.med.or.jp/doctor/practicing_docs/general/06

まとめ

医師 診察

ここまで、オンライン診療を行うための届出と施設基準、算定要件について紹介しました。

厚生労働省の「オンライン指針」では、医師の責任が次のように明記されています。

「医師はオンライン診療で十分な情報を得られているか、その情報で適切な診断ができるか等について、慎重に判断し、オンライン診療による診療が適切でない場合には、速やかにオンライン診療を中断し、対面による診療に切り替えることが求められる」

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和5年3月一部改訂)p.9より引用
https://www.mhlw.go.jp/content/001126064.pdf

利便性に優れたオンライン診療ですが、患者さんの安全性が損なわれてしまっては本末転倒です。オンライン診療を行う際には、勤める医療機関が施設基準を満たしているのか、急変など緊急時に対応できる体制があるかどうか、確認するようにしましょう。

Dr.Ma

執筆者:Dr.Ma

2006年に医師免許、2016年に医学博士を取得。大学院時代も含めて一貫して臨床に従事した。現在も整形外科専門医として急性期病院で年間150件の手術を執刀する。知識が専門領域に偏ることを実感し、医学知識と医療情勢の学び直し、リスキリングを目的に医療記事執筆を開始した。これまでに執筆した医療記事は300を超える。

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