卒後10年目を迎えた医局勤務医の皆さん、今の働き方に満足していますか?多忙な毎日でキャリアパスへの不安を感じていませんか?
卒後10年目は、医師としてのキャリアを見つめ直す大切な時期です。この記事では、医局内外のキャリアパスを比較し、後悔しない働き方を選ぶ方法を紹介します。
医師としてより充実した働き方が選択できる内容であるため、ぜひ最後まで読んでみてください。
【勤務医あるある?】多忙であることで、将来の選択肢を狭めているかも?
「会議や学会の準備で、自分の時間や家族との時間が削られる」
「働き方を見直さないと、子供を持つのも難しくなりそう」
「当直明けの疲労で集中力が続かない。医療過誤を起こさないか心配」
「医師としての将来像を考える時間が取れない」
医局勤務の医師の中には、このような悩みや不安を持っている方が少なくありません。心当たりのある方も多いのではないでしょうか?
医局での勤務は非常に多忙です。残業や当直を繰り返していると、集中力の低下による医療過誤の原因になりかねません。患者さまの命を預かる医師として、医療過誤は避けたい事態です。
また、多忙すぎるがゆえに、家族との時間を作れないという悩みも多くの医師が持っています。子供を持てないかもしれないという不安や、子供がいたとしても以下のような悩みを持つ方もいます。
「平日は家に帰るだけ、休日は疲れて家族サービスができない」
「全然家に帰ってこないくせに干渉してこないで!と思春期の子供に怒られた」
こうした内容は、多忙な日々の中で、家族との時間を犠牲にした結果、起こった出来事です。中には、親の介護を兄弟に任せきりにしていた結果、親が亡くなってから後悔したといったエピソードもあります。
家族は何物にも代えがたいものです。ですが、医局勤務の医師の中にはこのような経験をしている方もいます。そうならないためにも、多忙のリスクを今一度確認しておく必要があります。
多忙な医師が経験して困った内容4選
多忙がもたらすリスクは数多くあります。大きくは以下の4つにわけられます。
- 健康リスク
- キャリアリスク
- プライベートリスク
- 経済的リスク
どれも重要なものばかりです。どのようなものか詳しく見ていきましょう。
健康リスク
健康リスクは、多忙によるリスクの中で特にイメージしやすいものです。主なリスクと、その具体的な例として、以下があります。
- 身体的な健康リスク:疲労の蓄積による免疫力低下で感染症に罹患など
- 慢性的な睡眠不足:集中力の低下による医療過誤やヒヤリハットなど
- 不規則な食生活や運動不足:高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスク増加など
- メンタルヘルスの悪化:過剰なストレスや業務上の責任、長時間労働からくる不安による抑うつ状態の発症、燃え尽き症候群(バーンアウト)など
- 過労死:過度な時間外労働など
健康診断を受けた結果、複数の項目で異常値を指摘されて愕然とした経験がある方は、要注意です。健康を損なうばかりか、医師として働けなくなる可能性もあるでしょう。正常性バイアスは誰にでも働きます。健康診断の結果を軽視しないようにしましょう。
独立行政法人労働安全衛生総合研究所の発表によると、長時間労働は脳・心臓疾患の危険性を高めるという結果が出ています。時間外労働時間が月100時間または2ヶ月~6ヶ月の平均が80時間を超える場合、脳・心臓疾患の発症との関連が強くなるため、非常に危険です。月100時間の勤務は、週に約20時間なので、毎日3時間ほどの残業になります。
厚生労働省の令和4年の調査「医師の勤務実態」によると、週に40時間以上働いている医師は、全体の77.5%にも上ります。週20時間以上となると、割合はより増えるでしょう。多くの医師が、脳・心臓疾患の危険性が高まる労働時間の限度を超過しているのが現状です。
また、多忙による医師の過労死も多く、2007年時点でさえ厚生労働省が労災と認定しているだけで25件も発生しています。過労死ラインを超える多忙さは、命にまで影響を与えるリスクをはらんでいるのです。もし医師が過労死してしまった場合、現場の医療スタッフへの負担が増えるばかりか、所属している医療機関のサービスや評判が低下し、社会的信用が下がるといった可能性もあります。健康リスクがもたらす影響は、非常に大きいといえます。
キャリアリスク
多忙により、キャリアアップを目指すも、時間不足で自己研鑽が難しいというジレンマに陥るリスクもあります。以下を見てみましょう。
- キャリアアップのための目標設定や行動計画を立てられない:モチベーションの低下、将来のへの不安
- 自分が特化したい専門性だけの深掘りができない:専門医資格取得の遅れ、特定の分野への学習不足
- 自己分析ができない:キャリア設計ができない、転職やキャリチェンジの判断が難しい
このように、医師として成長することが難しくなり、キャリア形成が躓く可能性があります。多忙で疲れていると、スキルアップのための時間が取れないばかりか、時間を取れたとしても心身の疲労によって打ち込めないといったケースも発生します。思い描いていたキャリアパス通りに進められず、キャリア形成に大きく影響を与えてしまいます。
多忙によるキャリアリスクによって、「ワーク・ライフ・バランスを整えたい」「専門の分野に特化したい」と思い描いているキャリアを実現できなくなる可能性もあります。
プライベートリスク
多忙な医師はプライベート時間の確保が難しく、ワーク・ライフ・バランスの課題が浮き彫りになっています。例えば、以下のようなケースが発生します。
- 家族との時間の減少:コミュニケーション不足による不和、家族のイベントに参加できない
- 育児への参加不足:子供の成長に悪影響を及ぼす、子供の将来への不安
- 趣味やプライベートの時間の減少:ストレスの解消、生活習慣の乱れ、自己実現の機会の減少
- 自分のための時間がないことによるストレス:燃え尽き症候群、うつ病などの精神疾患のリスク
- 配偶者や子供に負担をかける:家事の負担、子供が寂しさを感じる
- 自己肯定感の低下:自己評価の低下、自信喪失
- 子供に親と認識されない:心の支えの喪失、親子関係の構築の失敗
- 親の死に目に会えない:親孝行ができない後悔、家族との関係悪化
以前は、家族を顧みずがむしゃらに働くことが美徳とされる風潮もありました。ですが現在は、かけがえのない家族のために時間を使うのも大切です。
しかし、医局勤務が多忙すぎると、今回紹介したようなリスクに遭遇します。自分のための時間を思うように作れないのはもちろん、交友関係が希薄になったり、家族と不和を起こしたりと良いことがありません。そのため、多忙だからこそ、限られた時間を有効活用し、家族との時間や自分のための時間を優先して確保していく必要があります。ワーク・ライフ・バランスを考えながら、プライベートの時間も確保していくようにしましょう。
経済的リスク
多忙すぎると経済的なリスクも発生します。例えば、以下のようなものです。
- 必ずしも収入増加に繋がらない:宿直・当直の時間単価が低い、長時間労働の対価が支払われない
- 健康を害した際に収入が減少する:病気や怪我による休職、健康被害によるキャリアへの影響
- 組織体における昇進・昇給機会の喪失:キャリアアップの遅れ、市場価値の低下
意識したいのが、忙しさは必ずしも収入増加に繋がらないという点です。例えば宿直・当直の際に手当があった場合、時間単価にすると非常に低いというケースが該当します。宿直・当直は医療機関によって取り扱いが異なるため、ほとんど労働のない勤務と忙しい勤務とでは労働における収入の認識が変わります。経済的なリスクを知るためにも、勤務している医療機関における宿直・当直が宿日直許可を得ているのかを確認しておいた方が良いでしょう。
また、働きすぎて健康を害した際は、収入が減少する点にも注意が必要です。入ってくるお金が減ることによって将来への不安が増大したり、生活レベルを落とさざるを得なかったりと、様々な不安が生じます。預金通帳の数字が減っていく姿は、思っている以上に心にダメージを与えます。
自身のキャリアパスに基づいてより専門的なスキルアップの計画を立てたり、副業や投資などの収入源を複数持ったりするなど、万が一に備えて、十分に考えておく必要があるといえるでしょう。
医局を出るメリット・デメリットを徹底比較
医局勤務が多忙なら、出るとメリットがあるのではないかと考える方もいるでしょう。まずはどのようなメリット・デメリットがあるのか、以下を見てみましょう。
医局を出るメリット
医局を出るメリットには、以下のようなものがあります。
- 人事異動に左右されない
- 勤務場所を自分で選べる
- QOLが充実する
- 人間関係の悩みが解消する
- 年収アップの可能性がある
医局を出るメリットは、医局の人事異動に左右されず、自分が働きたいように働ける点です。医局に所属していると自分の希望とは異なる部署に異動になる可能性がありますが、医局を出ると自分の興味関心やキャリアプランに合わせて、勤務場所や専門分野を事由に選べます。地域医療に貢献したい、専門性の高い医療機関で働きたいなど、自分の理想とする医療を提供できるようになるでしょう。
さらに、医局で働いていると、医局特有の慣習や人間関係にストレスを感じる方もいるかもしれません。人間関係の悩みは、古代ギリシャの時代から人が抱える悩みの1つです。簡単に解決できるものではありません。大きく変えるには、環境そのものに変化が必要になります。医局に所属していると人事異動などのしがらみも増えることから、医局を出ることによってそうした悩みから解放されるのは大きなメリットです。
結果、家族や自分と向き合う時間が増え、QOLも充実していくでしょう。経験やスキルを磨いていくうちに正当な評価を得られ、年収アップを実現できる可能性もあります。
医局を出るデメリット
医局を出るのはメリットばかりではありません。以下のデメリットがあります。
- 専門性を深めることが難しくなる可能性がある
- 指導医のサポートを受けられなくなる
- 年収が減少する可能性がある
- 周囲に気軽に相談できる人がいなくなる可能性がある
- 大学病院の医師など、社会的な地位が低下する可能性がある
メリットの一方で医局を出るデメリットも大きく、医局内でのキャリアパスが難しくなる点には注意しましょう。教授や准教授を目指すなら、医局に所属しておかなければいけません。また、現場経験を積むのなら医局にいる方が良い場合が多々あります。最新設備が整う環境下で、基礎研究や希少症例、高度な医療緒技術といった貴重な経験を多く得られる点は、医局の魅力です。
また医局は人脈を広げる絶好の機会なので、そうした機会を失ってしまう点は痛手といえるでしょう。医局から出ると幅広い知識を求められることも多いため、専門外の知識も身に付けておく必要があります。
詳しくは以下のコラムで解説していますので、ぜひ確認してください。
医局に残る場合:多忙を改善し、やりがいを高める方法
医局に残る場合、多忙をどう改善するかが重要になります。そのためにもまずは現状を把握し、以下の中から取り組みやすいものを実践していきましょう。
- ルーチンワークや事務作業などの不要な業務を削減して効率化する
- 良く使う書類のテンプレートを作成する
- 事務作業など専門性の低い業務をスタッフに依頼する
- 院長や事務長と相談して業務分担を明確にする
- スタッフと連携し報連相を徹底して重複作業を防ぐ
- 十分な睡眠時間を確保する
- 定期的に運動をし、ストレス解消や体力維持に努める
病院での仕事はチームで動くので、ルーチンワークや事務作業などを見直し、誰でもできるようであればスタッフに仕事を振るようにしましょう。スタッフと連携し、情報共有と報連相を徹底するのも重要です。それだけで重複業務の削減や連絡ミスによる突発的な業務を予防できます。
また、多忙さを解消するためには周囲の環境と合わせて自分自身の体調も大切です。睡眠時間を十分に確保し、隙あらば定期的に運動をして、ストレス解消や体力維持に努めましょう。空き時間に病院の周りをランニングするだけでも大きく変わります。複数を一気に進めるのではなく、取り組めるものから取り組んでいき、少しずつ改善していきましょう。
医局に所属していると、以下のようにキャリアパスがある程度決まってきます。
- 大学で研究に専念する
- 若手医師の指導医になる
- 教育者として大学院の教授になる
- 関連病院を転々としながら働く
- 関連医院でキャリアを築き、長期間働く
このように、研究職を目指す場合もあれば、若手医師の指導をしたり病棟業務をしたりと様々です。勤務先が大学病院の場合、民間病院では体験できない専門性の高い症例にも触れられるでしょう。
そうした経験やコネクションは、将来のキャリアにとって大きな財産となります。ただしそのためには労働時間をどうするかが重要になります。忙しい中で経験やコネクションを積み上げるには、時間を確保しなければいけません。
2024年現在、時間外・休日労働が月100時間以上になる医師には、面接指導が義務化されています。必要と認められる場合は就業上の措置が講じられるため、あまりにも多忙な場合は労働時間を交渉してみましょう。
労働時間の交渉は、自分のキャリアを守るだけでなく、医療の質を維持するためにも重要です。約17時間起き続けていると、お酒を飲んだときと同レベルにまで作業能力が低下すると言われて今います。ヒヤリハットの確率も高くなり、患者さまにとっても危険です。現状の労働時間や改善して欲しい点を具体的にまとめ、教授や上司に相談してみましょう。その際は、厚生労働省の「医師の働き方改革」のガイドラインを参考すると効果的です。
医局を出る!転職という選択肢のメリット・デメリット
多忙を回避するために医局を出るという選択肢もあります。この際、選択肢として挙がるのが転職です。実際に転職するとどのようなメリット・デメリットがあるのか、それぞれにわけて見ていきましょう。
医局を出て転職するメリット
医局を出て転職するメリットとして、以下のものがあります。
- 医局や病院内の人間関係を改善できる
- 時間的・精神的なゆとりを持てる
- 専門性を特化したキャリアアップに繋げられる
- 専門外の患者を対応しなくて良くなる
- 給与や待遇アップに期待できる
- クリニックに転職するとオンコール対応をしなくて良くなる
- 当直や当直明けの連続勤務をしなくて良くなる
- 遠方への異動が減る可能性がある
- 拘束時間を減らすことができる
- 鬱や睡眠不足などの心身の問題を改善できる
- 年収アップに繋がる
働く先を変えるので、人間関係を改善できたり、ワーク・ライフ・バランスを見直せたりできるため、心身的な負担を軽減できます。具体的なキャリアプランがある場合は、より専門職として知見を深められるでしょう。実績を積み重ねることで、専門医としてのキャリアアップにも繋がります。
また、病院からクリニックへ転職した場合は、オンコールや当直対応をしなくて良い点もメリットです。特に当直の当番がある方は、当直明け後にそのまま診療を行い、患者さまの対応をする場合もあるでしょう。クリニックならそうした負担が少なくなります。
医局勤務や日々の業務で忙殺され、健康リスクを抱えている方は転職をするメリットが大きいといえます。
医局を出て転職するデメリット
医局から抜ける転職にはデメリットもあります。特に以下の点には注意が必要です。
- キャリアダウンの可能性がある
- 人間関係を1から構築する必要がある
- 過去の評価が新しい職場に影響を与える可能性がある
- キャリアプランを見直す必要がある
- 専門性を活かせなくなる可能性がある
- 研修制度がない病院に転職する可能性がある
- 収入がかえって減ってしまう可能性がある
- 退職金制度の条件が厳しい場合がある
- 転職先の系列病院で異動になる可能性がある
- 勤務時間や労働条件が前職より厳しい可能性がある
- 新しい環境に適応するために心理的な負担が生じる
実際に転職した結果、収入が落ちてしまったケースも珍しくありません。医局に所属している場合、当直や医局派遣があるため、転職による労働条件の変化で収入面に不安が残るのは確かです。
また、転職は人間関係を改善できる方法ではありますが、新しい職場でまた1から人間関係を構築しなければなりません。医療業界は狭い世界なので、新しい場所でも前職の噂や評判が伝わっている可能性もあります。
勤務時間や労働時間が前職よりも厳しい場合もあるため、転職先を選ぶ際は様々な情報を集めて慎重に検討した方が良いでしょう。
転職のメリット・デメリットを減らすなら人材紹介会社の利用がオススメ
転職活動はメリットとともに様々なリスクが潜んでいます。ですが、医局にいることで多忙なのであれば、転職が大きな転機である可能性はあるでしょう。現状を大きく変えるには、環境そのものを変える方法が効果的です。
一方で転職にはリスクも伴うため、転職を考えた際はまず自分ひとりで転職活動をするのではなく、人材紹介会社など転職のプロの力を借りて転職活動をすることをオススメします。
求人サイトに掲載されている情報だけを見て、自分に合っている場所を探すのは容易ではありません。見極めを失敗すると、デメリットで紹介した場面に遭遇する可能性があります。
人材紹介会社を利用すると、自分に合った求人情報を紹介してくれるのはもちろん応募書類の添削、面接対策など様々なサポートを受けられます。今の職場で働きながら自分に合った場所を探すので、転職活動そのものにリスクはありません。むしろ積極的に活用して、自分の市場価値を客観的に把握しましょう。
転職での失敗の多くは、自分の市場価値を正しく把握できておらず、なかなか転職先が決まらないか、採用条件を見抜けず収入を落としてしまったといったケースが占めます。
そうならないためにも業界に精通した人材紹介会社を活用し、最適な場所を見つけましょう。
多忙な毎日、変えませんか?理想の働き方へ、第一歩を踏み出しましょう
多忙な毎日は、少しずつ心身を削っていきます。自分では大丈夫だと思っていても、ある日突然、限界を迎える可能性があります。私生活への悪影響が出る前に、現状を変えるように行動しましょう。
理想の働き方を実現できるのは自分だけです。そのためには「現在の環境を変える」もしくは、「転職」の2つの方法があります。どちらにもメリットとデメリットがあるため、思い描くキャリアプランを叶えられる方法を選びましょう。どちらにしようか迷う場合は、環境の改善と転職、2つの方法を同時に進める形もオススメです。中でも人材紹介会社なら、先生の希望に沿った求人を紹介してくれるので、両方の面から多忙な働き方改善にアプローチできます。理想の働き方を実現するためにも、ぜひ検討してください。