転職の希望先から内定をもらっても、まだ現在勤務する病院側へ退職意思を報告することが残っています。医師が不足している職場などでは、慰留を受けたり退職交渉が難航する場合もあります。また、マナーをきちんとしないと人間関係が悪くなることもあります。医師が現職を円満に退職するためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか?
1:退職交渉のマナーとは
退職交渉をするときは余裕をもって始めることが重要
労働者が退職したいときは、病院や企業に14日前に申し出ればよいと民法で定められています。基本的に事業者側は労働者の退職に応じないわけにはいかないため、退職届を提出すればまず受領され退職が認められます。
ただしこれはあくまで法律上の話であり、マナーの上では褒められたものではありません。基本的に病院も営利を追求しています。そのため、削減できる予算ならば削減するため、医師をぎりぎりの人数で回している病院が多くなります。14日前という短い期間しかないと病院は次の常勤医を雇う時間がないため、病院を運営するため様々な経費を支払う必要が出てきます。
一方で三か月ほど前など余裕をもって退職交渉を行うと、人員の補充をする時間もあるため、病院側も落ち着いて対応することができます。急に退職を申し出るとしつこい慰留に会うこともありますが、余裕をもって退職を伝えれば慰留されづらいということは医師側にとってもメリットになります。
退職交渉をする相手
退職交渉をする相手は基本的に直属の上司になります。例えば市中病院の部長職、大学病院の教授職などいきなり上の立場の人に退職を申し出るのは失礼にあたります。直属の上司は部下がどのようなことを考えているか把握している必要があるため、そのようなことをしてしまうと上司失格と上の人から思われてしまうこともあります。
直属の上司としても退職したいという気持ちがどの程度固いのか、待遇などを改善すれば考えを変えてくれるのか、もし退職意思が決まっているならばどのようにすればスムーズに退職できるか、などを直接話す必要があります。医師は狭い業界なので、今後も上司やさらに上の人たちと再び一緒に働くこともあるかもしれません。退職交渉する相手を間違えると人間関係の悪化に繋がり、今後の仕事に影響が出る可能性もあります。誰に何を相談するか、これはマナー以前の人間関係の問題としてしっかり把握しておくようにしましょう。
また、退職交渉をするときに、強く「退職します」というのも感情を悪化させる原因となります。まずは相談ベースで「退職を考えているのですが~」と柔らかく相談するのが良いでしょう。
退職交渉をするときは忙しくない時間帯を
朝などの慌ただしい時間に退職交渉をするのは良くありません。忙しくて時間が取れないのはもちろん、十分に話し合うことができないためしつこい慰留を受けたり、上司の感情を悪化させる原因となります。余裕のある時間帯や日を選んで退職交渉をするとよいでしょう。
基本的に職場で良好な人間関係を築けているのならば、退職交渉をした時に医師側の意見を尊重してくれます。もしも待遇に不満があるようならば、それを改善してくれる可能性もあります。ただし、人間関係が悪くそれが原因で退職を決意することもあるでしょう。そのようなときはしつこい慰留を受けたり、プレッシャーを掛けられたりすることもあります。なるべく普段から良好な人間関係を保つように気を付けましょう。
2:慰留を受けないようにするためには
病院側としては医師一人雇うのにそれなりの採用コストを払っています。医師を育てる研修なども人件費として支払っているため、医師の退職は極力避けたいと考えています。そのため、医師が退職を希望しても慰留を受けてしまうこともあります。労働条件や給与面などが改善されて、その病院で働き続ける意思があるならば慰留を受けるようにしましょう。しかし人間関係など労働条件以外のところに不満がある場合は、慰留を断る必要があります。
慰留をきっぱりと断るためには、退職をする理由を明確にすることが重要です。「労働環境が~」「人間関係が~」などと言ってしまうと、改善するから残ってくれと相談されることもあるでしょう。転職をしなければいけない理由は、相手が納得してくれるような内容を考えるようにしましょう。例えば「〇〇という症例を経験したいため、他院に移りたいです」などです。転職先を病院に明かす必要はないため、慰留を受ける可能性が低くなるでしょう。