医師は慢性的に不足傾向があり、ほとんどの病院で医師数は足りていないため、職場の医師が退職するということは病院にとって大きなダメージになります。転職理由を話すときに失敗してしまうと、人間関係がこじれて悪化してしまうこともあります。転職理由を伝えるときには細心の注意を払うようにしましょう。
1:医局を退局するとき
医局はしっかりと準備をして退職を申し伝えないと、トラブルになる可能性が高くなります。医局を退局するときは、以下のようなことに気を付けましょう。
転職理由ははっきりと言う
医局を退局するとき、ほとんどの人は慰留に合います。医局側はなるべく医師に退局してほしくないため、あの手この手を使って引き留めようとしてきますので、退局する理由ははっきりとしたものにするといいでしょう。
例えば「このまま働いていても未来が見えない」「働く条件が悪い」などといったあいまいな理由にしてしまうと、「このようなモデルパターンがあり、数年後には・・・」「条件をこのように変更しよう」と説得されてしまうことがあります。自分が不満に思っている点を改善した上での説得なので、断りにくくなってしまいます。
医局に転職理由を伝えるときは、失礼にならない範囲ではっきりと伝えるようにしましょう。例えば「大学病院にいる限り○○という症例が経験できないので、それを経験できる病院に勤めたい」「実家の診療所を継ぐことになったので関連する診療科に転職したい」「結婚、妊娠、出産で状況が変わって」といったところです。
このような理由だと医局側もむげにはできません。ただし確固たる理由はないけれども、医局にこれ以上在籍したくないという場合もあると思います。そういった場合は、例えば「大学病院ではなく、もっと市民に近い病院で診療を行いたい」など、大学病院やその関連病院ではできないことを理由にすると円滑に進む可能性が高くなります。
退職の意思は早めに伝える
退職の意思は早めに伝えることが重要です。法律上は2週間前に申し伝えれば退職することができますが、そのような急な退職だと医局人事も乱れ医局側に迷惑がかかります。それでもいいと思うこともあるかもしれませんが、そうなると教授などからの心象が悪くなりやすいです。医局の影響力は徐々に下がってきているとはいえ、まだまだ大きいものです。医局を退局するときは最低でも半年、できれば1年ほどの猶予を持って伝えるようにしましょう。
まずは直属の上司から
いきなり教授に退職を伝えるのはおすすめできません。なんらかの不作法があると、心象が悪くなってしまう可能性があります。まずは直属の上司に退職の意思を相談するところから始めましょう。その上司にしても退局の相談が初めてではないはずなので、適切なアドバイスをしてくれるはずです。
可能ならば今まで退局した医師はどのような理由で辞めていったのか聞いてみるのもよいでしょう。自分の中で医局を辞める理由が固まっていないとき、理由をさらに固めるのに役に立ちます。
2:民間病院を退職するとき
民間病院を退職することは、医局を退局することに比べると退職しやすい傾向があります。民間病院としても医師が退職する経験は多いため、そこまで熱心に慰留を受けることはありません(医師不足が深刻な病院は別です)。民間病院を退職するときは以下のことに気を付けてみましょう。
転職理由はある程度はっきり言ってしまって大丈夫
民間病院の場合でも転職理由をはっきりと伝えることが大切ですが、医局の退職時よりも直接的に伝えてしまって問題ない傾向があります。給与が少ない、労働時間が長い、当直やオンコールが負担になる、人間関係が悪いなど、こういった就業するうえでの不満点は病院側が改善するべき事柄です。よほど険悪な感じに伝えない限り、理由の一つとして受け取ってくれて退職を受け入れてくれるはずです。
逆に給与や労働時間などすぐにでも改善できる点については、「そこは改善するから残ってほしい」と言われることもあるかもしれません。その点が改善されれば残ることも検討できるというときは、慰留を受けてもいいでしょう。
やはりなるべく早めに退職の意志を伝えること
民間病院でも急に医師がいなくなると症例などに支障がでることがあります。この場合でもなるべく早めに退職を申し伝えるようにしましょう。ただし医局ほど早めに伝える必要はありません。半年~3か月くらい前でも受け入れてくれるところがほとんどです。