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2018年度より発足した新専門医制度は、「基本領域」と「サブスペシャルティ領域」の"2階建て"構造が特徴の一つです。2年間の臨床研修の後、多くの医師は19の基本領域いずれかの「専攻医」となって数年間の研鑽を積みます。その後さらなる専門性の習得を目指してサブスペシャルティ領域の研修を受ける人もいます。
サブスペシャルティ研修には「プログラム制」や「カリキュラム制」があり、ライフイベントなどに合わせて選択できるケースもあります。この記事ではサブスペシャルティ研修における「プログラム制」「カリキュラム制」について詳しく解説します。
新専門医制度における「プログラム制」「カリキュラム制」とは?
まずは、「プログラム制」と「カリキュラム制」の違いを見ていきましょう。
プログラム制とは
プログラム制は、年次ごとに定められたプログラムで研修を進める方法です。多くの場合は大学病院などの基幹病院といくつかの連携病院をローテートして研鑽を積みます。
新専門医制度の下では、日本専門医機構が認めたプログラムに沿って研修が実施されます。とくに「基本領域」の研修は医師として習得すべき標準治療を集中的に学ぶ期間であり、より質の高い専門医を養成するために研修の規定や運用を厳密に定めることが望ましいと考えられます。そのため基本領域の研修は「プログラム制」が原則とされています。
カリキュラム制とは
カリキュラム制は、各学会が定める要件を満たせば専門医試験を受けることができる研修システムです。
プログラム制はローテートする医療機関や時期が決められているため、自治医科大学や地域枠の出身者など一定期間へき地勤務が義務付けられている医師や、妊娠・出産で研修を中断する医師などは、専門医試験の受験資格が得られない可能性がある点が課題でした。
そこで導入されたのが、厳密なプログラムによらず柔軟に研修を行うことができる「カリキュラム制」です。フルタイムで医療機関に勤務した1カ月を「1単位」と換算します。必要な単位数や症例数をクリアする必要がありますが、期間に定めはないため、研修を一時中断することも可能。育児や介護などの事情で勤務時間や日数が短くなっても、勤務内容に応じて研修を進めることができます。
ただし、単位取得の要件などは学会によって異なります。
サブスペシャルティ研修ではプログラム制・カリキュラム制どちらも選択可能
サブスペシャルティ領域の研修では、プログラム制・カリキュラム制のいずれかを選択することができます。ただし学会によって要件は異なり、いずれか一方しか選択できないケースもあります。希望する領域の研修がどのように行われるのか、各学会のwebサイトを確認するなどして正確に把握しましょう。
「連動研修形式」の場合も研修の流れが通常と異なるため、求められる要件や研修期間を把握しておくことが大切です。
プログラム制で研修を始めた後にカリキュラム制に切り替えることもできます。2021(令和3)年度は213人の専攻医がカリキュラム制を選択しています(最初からカリキュラム制を選択した専攻医が100名、途中から移行した専攻医が113名)*。
令和4年度第2回医道審議会医師分科会医師専門研修部会 資料2-2|厚生労働省(*)
└p.9 令和3年度研修カリキュラム制で専門研修を行う専攻医数
▼連動研修に関する記事はこちら新専門医制度、サブスペシャルティはどう決める?
サブスペシャルティ領域の専門医を目指すには?新専門医制度の仕組みを理解する
サブスペシャルティ研修ではプログラム制・カリキュラム制どちらを選ぶべき?
サブスペシャルティ領域の研修を受けるには、関連する基本領域の専門医資格が求められます。臨床研修医2年目に基本領域を選択する段階で、将来選択する可能性のあるサブスペシャルティ領域も見据えておく必要があると言えるでしょう。
どちらのコースを選択するかによって、研修にかかる期間や働き方は大きく異なります。キャリアの築き方にも影響を与えるため、基本領域を選択する際には、興味のあるサブスペシャルティ領域でどのような研修が行われているのかも確認しておくことをおすすめします。
ここでは、両制度におけるメリットとデメリットを比較してみましょう。
プログラム制のメリット・デメリット
学会が定める厳密な内容に則って研修が進められるため、プログラムに従ってさまざまな研鑽を積むことができます。
一方で、先述のとおり制度に柔軟性はないため、へき地勤務が必要な医師、育児や介護で一定期間休職する医師、海外留学をする医師が研修を継続できないこともあります。
研修を実施できる医療機関が都市部に集中しているため、医師の偏在化につながり得るという懸念もあります。
カリキュラム制のメリット・デメリット
大きなメリットは、期間を定めないことによる柔軟性です。「即戦力」としてさまざまな地域の病院に配属されるケースも多く、医師として貢献しながらさらなる専門性習得を目指すことができます。
一方で、明確な修了期限が定められていないことで、プログラム制よりも研修期間は長くなります。集中的な研修を行いづらいケースもあり、研修効率が悪くなることもデメリットの一つと言えるでしょう。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、自身の希望する働き方や将来像に合う研修方法を選ぶことが大切です。
自分のキャリアプランや働き方に合った研修の選択を
ここまで、プログラム制とカリキュラム制の2つのコースについてご紹介しました。厳密な研修プログラムに従ってローテートするプログラム制に対し、決められた単位取得を積み上げることで専門医試験受験資格を得るカリキュラム制。どちらもメリット・デメリットがありますが、カリキュラム制によって多様な働き方のもとで研修を受けることが可能になりました。
サブスペシャルティ研修では両者を選ぶことができるため、希望するキャリアや働き方をしっかり考えた上で選択するようにしましょう。学会によって要件は異なりますので、最新情報を十分に確認することも大切です。
監修者:中山 博介
神奈川県の急性期病院にて、臨床医として日々研鑽を積みながら医療に従事。専門は麻酔科であり、心臓血管外科や脳神経外科・産婦人科など幅広い手術の麻酔業務を主に担当している。
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