サブスペシャルティ領域の専門医を目指すには?新専門医制度の仕組みを理解する【2024年7月更新】

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公開日:2020.09.23
更新日:2024.07.03

サブスペシャルティ領域の専門医を目指すには?新専門医制度の仕組みを理解する【2024年7月更新】

サブスペシャルティ領域の専門医を目指すには?新専門医制度の仕組みを理解する【2024年7月更新】

2018年から本格的にスタートした新専門医制度は、医師の専門性の質を高め、患者さまに良質な医療を提供することを目的につくられました。しかし仕組みが複雑で、どのような制度なのかいまだによくわからないという方も多いでしょう。

この記事では、サブスペシャルティ領域の専門医を目指すうえで知っておくべきことについて、詳しく解説します。

基本領域とサブスペシャルティ領域

これまで、専門医の認定は各学会が独自の基準で行ってきました。多くは筆記テスト、口頭試問、症例レポートなどが課されますが、難易度は学会によってさまざまで、合格率が6割程度の専門医試験もあれば、ほぼ症例レポートのみでパスできる専門医制度もありました。

このような専門医資格ごとの違いを解消し、国民に質の高い医療を提供することを目的につくられたのが、いわゆる「新専門医制度」です。

新専門医制度では、第三者機関である日本専門医機構が認定基準を定めることで、診療科によらない画一した専門医資格の認定が目指されています。

新専門医制度の特徴は"2階建て"構造と呼ばれる設計です。多くの医師は臨床研修(初期研修)修了後、19個ある「基本領域」いずれかの専攻医となり、数年間の研鑽を積みます。基本領域の専門医資格を取得できたら、次は基本領域に関連する「サブスペシャルティ領域」の専門医を目指します。

それでは、基本領域とサブスペシャルティ領域にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

基本領域

臨床研修修了後の医師は、まず「基本領域」の専攻医として、日本専門医機構の施設基準を満たす医療機関で専門研修に臨みます。

2024年6月末現在、日本専門医機構が定める基本領域は以下の19領域です。

日本専門医機構認定 基本領域(19領域)
  • 内科
  • 小児科
  • 皮膚科
  • 精神科
  • 外科
  • 整形外科
  • 産婦人科
  • 眼科
  • 耳鼻咽喉科
  • 泌尿器科
  • 脳神経外科
  • 放射線科
  • 麻酔科
  • 病理
  • 臨床検査
  • 救急科
  • 形成外科
  • リハビリテーション科
  • 総合診療
出典:日本専門医機構webサイト
https://jmsb.or.jp/subspecialty/(2024年7月3日閲覧)

ここで注目したいのが、19番目の「総合診療」です。新専門医制度の創設とともに、基本領域の専門医資格として新たに認定されました。超高齢社会の日本において、今後在宅医療などの需要がますます高まっていくことが予想されます。さまざまな疾患のプライマリ・ケアを担う「総合診療専門医」への期待は高く、基本領域科目の一つとして組み込まれました。

サブスペシャルティ領域

サブスペシャルティ領域は、基本領域の専門医を取得した後に目指す、より専門性の高い分野を指します。2024年6月末時点で日本専門医機構に認定されているサブスペシャルティ領域は、下表の24領域です(2022年4月1日認定)。

内科領域 消化器内科
循環器内科
呼吸器内科
血液
内分泌代謝・糖尿病内科
脳神経内科
腎臓
膠原病・リウマチ内科
アレルギー
感染症
老年科
腫瘍内科
肝臓内科(補完研修方式)
消化器内視鏡(補完研修方式)
内分泌代謝内科(補完研修方式)
糖尿病内科(補完研修方式)
外科領域 消化器外科
呼吸器外科
心臓血管外科
小児外科
乳腺外科
内分泌外科
放射線科領域 放射線診断
放射線治療
日本専門医機構webサイト「日本専門医機構認定サブスペシャルティ領域一覧」をもとに診療科領域ごとに編集
https://jmsb.or.jp/subspecialty/(2024年7月3日閲覧)

専攻するサブスペシャルティ領域は、専門医取得済みの基本領域に関連する領域でなければなりません。たとえば、基本領域で内科の専門医を取得している医師は、サブスペシャルティ領域として循環器専門医の資格を取得することができます。しかし産婦人科専門医が循環器専門医を目指すことはできません。

基本領域を決める際には、サブスペシャルティ領域で選択する診療科についても大まかに決めておく必要があるでしょう。

サブスペシャルティ領域の研修制度について

サブスペシャルティ領域に進む若い医師たち

新専門医制度では、基礎領域とサブスペシャルティ領域の二段階制("2階建て"構造)の専門医取得が基本となります。このような二段階制をとることで、特定の基本領域における一定の知識やスキルを有した状態でサブスペシャルティ領域を受けることができ、より効果的な研修を実現できるメリットがあります。

一方で、特定のサブスペシャルティ領域の専門医を取得するには、前述のとおり基本領域が限定されます。そのためサブスペシャルティ資格を持つ医師が減る可能性がデメリットとして指摘されています。

サブスペシャルティ領域における連動研修

通常、新専門医制度の下では基本領域の専門医資格を取得するのに3~5年、サブスペシャルティ領域の専門医に進むにはさらに3年以上の研修が必要となります。サブスペシャルティ領域の専門医として患者さまに医療を提供するには、臨床研修修了後も長く厳しい修業が待っているのです。

スキルの高い専門医を目指すには、長い時間がかかるのも当然のこと。しかし、専門医取得に時間がかかることで、患者さまに専門性の高い医療を提供するまでの時間が長くなってしまいます。そこで日本専門医機構は、基本領域とサブスペシャルティ領域の研修を連動する、いわゆる「連動研修方式」を認め、この課題を解消しようとしています。

ただし、連動研修を適応できるサブスペシャルティ領域は、2024年6月末現在、24領域中15領域のみです。そのほかの領域は基本領域とは別で研修が必要な「通常研修方式」、もしくは少なくとも1つのサブスペシャルティ領域を修得したのちに研修を行う「補完研修方式」に分類されます。

連動研修を行い得るサブスペシャルティ領域(2022年4月1日現在)
  • 消化器内科
  • 循環器内科
  • 呼吸器内科
  • 血液
  • 内分泌代謝・糖尿病内科
  • 脳神経内科
  • 腎臓
  • 膠原病・リウマチ内科
  • 消化器外科
  • 呼吸器外科
  • 心臓血管外科
  • 小児外科
  • 乳腺外科
  • 放射線診断
  • 放射線治療
出典:日本専門医機構webサイト「日本専門医機構認定サブスペシャルティ領域一覧」
https://jmsb.or.jp/subspecialty/(2024年7月3日閲覧)

サブスペシャルティ領域の専門医になるために

サブスペシャルティ領域について腕組みして考える笑顔の女性医師

医師として早い段階から将来的な目標を決めなければならないのは、新専門医制度の特徴の一つと言えます。誤った選択をして後悔しないためにも、研修医のころから次の点を意識しながら研鑽を積んでいきましょう。

自分の目指す専門分野を事前に固めておく

前述のとおり、連動研修方式が適応されるサブスペシャルティ領域の場合、医師は早い段階で専門分野を選択することが望まれます。選択を後悔しないためにも研修中から将来を見据えてキャリアプランをしっかり描いておけると良いでしょう。

研修先のリサーチ

日本専門医機構が研修先として定める医療機関は多々ありますが、まったく同じカリキュラムで研修を進めているわけではありません。研修内容はそれぞれの医療機関独自のものとなります。

希望するサブスペシャルティ領域が決まったら、研修先を徹底的にリサーチし、自身が望む医師としてのキャリアを確実に踏めるところを選ぶようにしましょう。

キャリアを考えて連動研修を活用する

希望する専門分野が明確に決まっている場合は、通常より早いペースで研修を終えられるよう連動研修が可能な研修先を選ぶのがおすすめです。ただし、時間をかけてじっくりと研修を進めていきたい方も少なくないでしょう。通常研修と連動研修の内容を比べ、自身が納得できる研修プログラムを選ぶようにしましょう。

なりたい医師像をじっくりと考え、後悔のない選択を

専門医の質を高め、患者さまにより良い医療を提供することを目的に定められた新専門医制度。その特徴は「基本領域」と「サブスペシャルティ領域」の"2階建て"構造です。特定のサブスペシャルティ領域の専門医を目指すには、その分野と関係のある基本領域を選択しておかなくてはなりません。

また、2021年から導入された「連動研修形式」では、研修期間を短縮できるため、第一線で活躍できる時間が長くなるメリットがある一方、早い段階から将来像を定めておかなければならないといったデメリットもあります。

連動研修を受けるか否かにかかわらず、将来的に後悔のない選択をするためには、臨床研修中から将来を意識しながら診療にあたる必要があるでしょう。自分が目標とする医師像について考える時間を十分に持つことが大切です。

中山 博介

監修者:中山 博介

神奈川県の急性期病院にて、臨床医として日々研鑽を積みながら医療に従事。専門は麻酔科であり、心臓血管外科や脳神経外科・産婦人科など幅広い手術の麻酔業務を主に担当している。

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