病理医の平均年収は?仕事内容や働き方についても解説

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マネー

公開日:2021.05.26
更新日:2023.10.06

病理医の平均年収は?仕事内容や働き方についても解説

病理医の平均年収は?仕事内容や働き方についても解説

病理医は、疾患の確定診断などに必要な病理学的診断を専門に行う医師のことです。正確で良質な医療の提供に貢献するほか、他科との合同カンファレンスや、蓄積されたデータをもとにした臨床研究なども行います。

本記事では、画像診断や内視鏡検査ではわからないミクロの世界を主戦場とする病理医について、平均年収のほか、主な仕事内容と働き方、病理医が感じるやりがいについてもご紹介します。

病理医とは

病理医とは、臨床医からの依頼に応じて、疾患の確定診断に必要な病理診断を行う医師のことです。患者さまから採取した組織や細胞の形状・配列などを観察することで、病名の診断や、病変の進行度判定などを行います。

患者さまと直接接する機会は少ないものの、治療方針を左右する判断が求められることから、医療において重要な役割を果たす存在です。しかし全国で2,000名程度と、従事者の数が少ないことが課題となっています。

病理医の仕事内容・働き方

他診療科同様、病理科にも専門医制度が導入されています。日本病理学会認定病理専門医で、2023年10月3日現在の総数は2,787名です。

日本病理学会のホームページを見ると、病理医の本業は、「病理解剖(剖検)」「組織診断(生検および手術材料)」「細胞診断」と紹介されています。以下でご紹介するのは、病理医が担う業務の一例です。検査オーダーを出した診療科との合同カンファレンス、院内医療安全検討会のメンバーとしての発言、最近では病理外来を開設して患者さまに直接説明をする機会も増え、医学部生への指導や高校生を対象にした病理学入門の実施などの医学教育にも注力している医療機関もあるようです。

病理解剖(剖検)

医療機関で亡くなられた患者さまの死因特定と病態解析、生前実施した治療の効果などを検証します。今後の医療のさらなる発展の礎にすることが目的です。

組織診断(生検および手術材料)

生存中の患者さまから採取した小さい組織片(内視鏡検査で採取したポリープや手術で直接切除した切片)を顕微鏡などで観察することで、病期の進行度合などを判断します。

手術方針を決定するため、手術中に疑わしき部分の組織を採取して短時間で診断する「術中迅速診断」も組織診断の一つです。

細胞診断

子宮粘膜表面をぬぐって採取した細胞や注射器で回収した乳腺付近の細胞など、直接採集するのが難しい部位の検査です。この細胞診断は、日本臨床細胞学会が認定する細胞検査士と共同で実施するのが一般的ですが、判断に悩む場合には臓器別専門の病理医と標本を共有したうえで助言を仰ぐことも多くなっています。

病理医の平均年収

治療計画に大きな影響を与える病理科で働く医師は、どのくらいの収入が見込めるのでしょうか。

まず、全診療科における医師の平均年収は1,596万円です。これに対して、病理科の平均年収は1,576万円、病理診断科の平均年収は1,320万円です(※)。医師の平均年収と比較するとやや控えめな金額と言えるでしょう。

平均年収は地域によって大きく異なり、病理科の地域別平均年収は大阪府で1,962万円、京都府・愛媛県・高知県・徳島県で同額の1,950万円、奈良県で1,900万円。病理診断科は、北海道で1,700万円、長野県で1,500万円です。

病理医の平均年収が低い理由としては、残業や日当直がないことや、手術に同席しても執刀は担当しないため、諸手当が他の診療科のように見込めないことが関係していると考えられます。裏を返せば、「定時退勤しやすくオンオフをしっかりつけれる職場環境」が多いと言えるでしょう。

※:2020年10月時点のドクタービジョン掲載求人をもとに平均値を算出しています(本調査では、「病理診断科」「病理科」両項目を設置していたことを受けて、双方の結果をご紹介しています)。

補足:病理医の関連データ

平均年収のデータの補足として、病理医に関する統計データをご紹介しておきます。

  • 病理医の数:医療施設に従事する医師数323,700人のうち病理診断科に所属するのは2,120人。これは医師全体数の0.6%に留まります。このうちのほとんどが病院勤務で、診療所勤務は50人のみ。病理医はかなり貴重な存在であると言えるでしょう。
  • 男女構成比:病理医が所属する割合の多い「病院勤務」で見ると、男性68.3%、女性31.7%となっており、男性が約7割を占めています。
  • 平均年齢:医師全体が50.1歳なのに対して、病理医は49.4歳。ほぼ平均値と言えます。

病理医のやりがい

病理医のやりがい

正確な病理診断が患者さまの治療につながった時や、病理診断がきっかけで全身疾患の有無が推定できた時などに、やりがいを感じる病理医が多いようです。オーダーを提出した医師に対して、病理診断の結果から診断の誤りを指摘することもあるため、病理医は「doctor's doctor」(doctor of doctors)(医師のための医師)の異名で呼ばれることもあります。

また、病理医は全診療科にまたがって疾患を横断的に理解することから、基礎医学と臨床研究の橋渡し的存在でもあります。基礎医学に興味があり研鑽を積みたい、手術や内科的な治療とは異なる方法で患者さまの治療に携わりたい、学問としての医学発展に貢献したいと考えている方にとって、面白さを感じやすい診療科でしょう。

さらに、国、施設、担当の病理医によって診断基準と判定は異なります。そのため、挑戦しがいがあると考える病理医もいます。こうした奥深さも、病理医ならではの魅力でしょう。

病理医は世間的にも認知されつつある

数ある専門領域のなかでも、「縁の下の力持ち」といったイメージが強い病理医。患者さまの面前に出る機会も少ないために「知る人ぞ知る診療科」でしたが、近年では病理医を主人公にした漫画やドラマが登場したりしています。

さらに、病理医自身による情報発信が増えたことから、その存在は少しずつ知られるようになりました。

病理医が担当する病理診断の守備範囲は広く、経験年数が増えるに従って幅広い知識が身につくようになります。現在、転科を検討されている方や医学部生や研修医で今後のキャリア選択に悩まれている方は、広くて深い病理医の世界を覗いてみるのも良いかもしれません。

ドクタービジョン編集部

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