【2023年版】外科医の平均年収を解説!地域別・施設形態別ランキングも紹介

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公開日:2021.01.06
更新日:2024.02.14

【2023年版】外科医の平均年収を解説!地域別・施設形態別ランキングも紹介

【2023年版】外科医の平均年収を解説!地域別・施設形態別ランキングも紹介

外科医はハードワークな一方で、一人前になるまでの修行期間が長く、ほかの診療科と比べてコスパが低いというイメージを持たれがちです。しかし最近は外科医の働き方も多様化しており、今後は職場と働き方の選択次第で、年収にも差が出てくると考えられます。

この記事では、外科医の年収の現況について解説します。地域別・施設形態別の平均年収ランキングも紹介しますので、キャリアプランの参考に、ぜひご一読ください。

*1:2023年11月時点の「ドクタービジョン」掲載求人をもとに、平均値を算出しています。
*2:2022年8月時点の「ドクタービジョン」掲載求人をもとに、平均値を算出しています。

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執筆者:中山 博介

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外科医(一般外科)の平均年収は?

外科医(一般外科)の平均年収は?

「外科医=ハードワーク+低賃金」というイメージを持たれがちですが、外科医の平均年収は1,914万円*1であり、全診療科の平均年収1,846万円と比較してむしろ高い水準です。

【診療科別】年収ランキング*1

順位 診療科 平均年収(万円)*1
1位 皮膚科 2,145
2位 形成外科 2,032
3位 泌尿器科 1,929
4位 産婦人科 1,921
5位 整形外科 1,915
6位 外科(一般外科) 1,914

調査対象とした全19診療科中、外科は6位。かなり上位であることがわかります。

しかし、この金額はあくまで全国の平均値です。実際の年収は年齢、勤務形態(勤務医/開業医など)、勤務地の所在(都市部/地方)、救急対応の有無などの諸条件によって違いがあるため、あくまでも目安ととらえましょう。

平均年収が高い要因は、外科医の高齢化?

平均年収に影響する要素の一つとして、外科医の年齢分布について考えてみましょう。

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2020年)によれば、外科医(一般外科)の人数は全医師323,700人中13,211人(約4.1%)であり、内科・整形外科・小児科・精神科・眼科などに次いで上位です。

一方で、外科医の年齢分布を見ると、60歳以上が年々増加しているのに対し、40代以下の若手は減少しています。平均年齢で見ても、全医師が50.1歳であるのに対し、外科医は53.6歳。ほかの診療科と比較して少子高齢化が進んでいると言えます。

つまり、賃金単価の低い若手医師が減少し、賃金単価の高い高齢の医師が残っているため、外科医の平均年収が底上げされていると考えられます。

若手の外科離れの要因として、日本外科学会は、生涯労働期間の短さ、勤務時間の長さ、医療訴訟リスクの高さなどを挙げており、こうした状況が改善されなければ、今後さらに外科医の高齢化が進むとみて、働き方改革などを強化する意向です。平均年収だけでなく、こうした取り組みの動向にも注意しましょう。

【地域別】外科医年収ランキング

続いて、勤務地の所在による違いをデータで見てみましょう*1。下表のように、首都圏を含む東日本が上位を占めています

順位 都道府県 外科医の平均年収(万円)*1
1位 福島県 2,582
2位 岩手県 2,365
3位 群馬県 2,354
4位 神奈川県 2,233
5位 山梨県 2,142
6位 東京都 2,098
7位 福井県 2,064
8位 奈良県 1,963

近年は医師の地域偏在が深刻化しており、地域の医療体制を維持しようと、地方における高待遇求人も少なくありません。実際、上記ランキングの1位と2位は、長らく医師不足を課題として抱えている東北地方の2県となっています。

ただし、同じ都道府県内でも年収には地域差があります。また、一概に地域だけで平均年収を評価することは難しく、勤務する医療機関によって差があることも押さえておきましょう。

【施設形態別】外科医年収ランキング

施設形態別の平均年収については、最低額と最高額を並べて見てみましょう*2施設形態によって年収にバラつきがあることが読み取れます。

施設形態/医療機関 最低年収*2 最高年収*2
クリニック 1,657 2,314
一般病院 1,355 1,901
公立病院 1,300 1,800
国公立・自治体 1,542 2,043
総合病院 1,223 1,908
療養型病院 1,434 1,780
ケアミックス 1,383 1,896
精神病院 1,315 1,733
回復リハビリテーション病院 1,347 1,727
介護老人保健施設 1,194 1,394

外科医が高年収を期待できる施設形態はクリニック。次いで国公立・自治体(が運営する施設)となっています。

また、クリニックや一般病院、総合病院では年収の開きが大きいのに対し、介護老人保健施設は平均年収そのものが低く、年収額の幅は200万円程度にとどまっています。

外科医の主な業務

勤務医の場合

勤務医の場合

外科医(勤務医)の主な業務は、外来対応はもちろん、医療施設の機能やレベルに応じた検査や手術によって患者さんの治療にあたることです。

いくら優秀な外科医でも、一人でできることには限度があります。勤務医として大きな医療機関に所属することで、特殊な検査や複数医師との共同手術が可能となるため、大きな手術にも携われます。とくに専門性の高い心臓血管外科や小児外科の手術は、クリニックでは困難でしょう。

難病に立ち向かえることで外科医としてやりがいを感じやすい一方、勤務医は救急対応や受け持ち患者さんの急変対応といった業務もあるため、勤務時間が不規則かつ長時間になりやすい点がデメリットです。

開業医の場合

外科医(開業医)の主な業務は、地域の人々の健康を守るゲートキーパーとなることです。

患者さんを最初に診察する立場であり、重篤な疾患が疑われる場合は適切な医療機関に紹介することが求められます。検査機器を多数所有し、自施設で手術などの専門治療を行うクリニックもあります。

勤務医と比べて年収は高い傾向にあり、緊急手術などの時間的拘束も少ないですが、専門性の高い手術などから遠ざかってしまう点がデメリットです。

外科医のキャリアプラン

外科医のキャリアプラン

外科医のキャリアプランには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、3つのケースをご紹介します。

専門領域を極める

外科医のキャリアプランの一つとして、専門領域を極めていくことが挙げられます。

専門領域を極めた外科医であれば、日本全国から患者さんを集めることができ、高待遇での就職も可能です。とくに、その領域でゴッドハンドと呼ばれるような脳神経外科医や心臓外科医は重宝されます。

臨床経験を積みながら、まずは専門医などの資格取得を目指しましょう。専門医資格を取得するには、学会に所属するだけでなく、必要な症例数の達成や試験への合格など、所定の条件をクリアする必要があります。日々の業務の中で勉強時間を確保するのは大変ですが、転職活動する際に実現可能なキャリアの選択肢が増えるでしょう。

外科医の経験を活かして診療の幅を広げる

専門性を極めることも大切ですが、難易度の低い手術や処置も含め、外科診療全般をカバーできる外科医のニーズも忘れてはいけません。医師不足や地域偏在が嘆かれる昨今、1人でさまざまな診療を行うことができる医師は重宝されます。とくに、多様な患者さんを受け入れる市中病院、看取りを控えた患者さんを受け入れる緩和ケア病院などでは、専門性だけでなく、フレキシブルな施術に対応してくれる外科医を求める声が多いです。

外科にこだわらず他領域で活躍する

外科医にこだわらず他領域で学び直すのも、キャリアプランの一つです。

外科は患者さんの全身管理に必要なスキルが身に付く診療科であり、他分野でも活躍が期待できます。実際、麻酔科や救急科、美容外科などに転科する医師は少なくありません。

他分野の知識と経験を身に付けることで、提案可能な治療の選択肢が広がり、医師としての技量も向上するでしょう。

女性外科医のキャリアプラン

女性外科医のキャリアプラン

外科を選択する女性医師の場合、避けて通れないのが結婚、妊娠、出産、子育てといったライフイベントとの両立です。

外科医として修練が必要な時期と重なるケースが多いことから、キャリアとプライベートのどちらを優先すべきか、悩まれる女性医師も少なくないでしょう。

ライフイベントに関する悩みでも一人で抱え込まず、できるだけ周囲と相談しましょう。将来、医師として自分はどうなりたいのか、パートナーが何を望んでいるのか、言葉にして理解し合うことが次のステップにつながります。

女性医師がキャリア継続を希望する場合、職場や同僚からの理解、家族の協力、保育園など子どもを預けられる環境の獲得が重要です。

仕事と家庭を両立させている女性医師が身近にいるなら、相談相手になってもらえるよう働きかけても良いかもしれません。

外科医の年収と今後の展望

今後、外科医の年収に影響を与える可能性がある話題を、2つ紹介します。

インセンティブ制導入の可能性

外科医にとって明るいニュースとして、インセンティブ制導入の可能性が挙げられます。若手外科医の減少に歯止めをかけるため、日本消化器外科学会が提言している制度です。

2014年、外科医の待遇改善・負担軽減を目的に「休日・深夜・時間外加算」が制定され、2022年4月にはこれが大幅に緩和されました。しかし、現状は医療機関の収益にとどまり、労働した外科医に還元されていないことが問題視されています。

もしインセンティブ制が導入されれば、加算が医師にも還元され、年収の増加も期待できます。導入に向けた検討が待たれるところです。

令和6年度診療報酬改定

心配なニュースとして、令和6年度診療報酬改定により診療所の報酬単価が引き下げられることが挙げられます。

2023年12月、2024(令和6)年度の診療報酬改定方針が定まりました。医療従事者の人件費などに充てられる部分はプラス改定(引き上げ)とされましたが、依然として財務省は診療所の利益率の高さを指摘しています。今後は診療所と病院で報酬単価を変える可能性もあり、開業医にとっては年収に直結する懸念になったと言えるでしょう。

外科医として年収アップするために

最後に、外科医として年収アップを目指すための選択肢を3つ、ご紹介します。

①専門領域の深堀り
②アルバイト勤務
③転職

①専門領域の深堀り

医療は日々進歩し、専門領域はますます細分化しているため、専門領域を深掘りしていくことは自身の市場価値を高めることにもつながります。専門医や指導医などの資格取得、業務に関する外部講座の受講など、専門領域の深堀りで年収アップを目指しましょう。

その分野を代表するような医師のもとには多くの患者さんが集まるため、高待遇で医療機関と契約できるケースがあります。

これまでのキャリアを振り返り、自身が貢献できる分野や業務は何か、改めて考えてみると良いでしょう。

②アルバイト勤務

年収アップを効率良く目指すには、メインの職場とは別の医療機関で働くアルバイト勤務もおすすめです。

先輩や同僚から紹介を受ける場合も多いと思いますが、医師向けの転職サイトを利用すれば、自分の環境や能力に合ったアルバイトを効率良く探すことができます。

医療法では、1週間の勤務時間が32時間以上の医師を「常勤医師」、それ未満の医師を「非常勤医師」として定めています。

非常勤医師と呼ばれる働き方には、クリニックや施設などで毎週決まった日時に勤務する「定期非常勤」と、健康診断やワクチン接種などによる突発的な人員不足に対応するための「スポット勤務」があります。それぞれの状況や環境に適した方法を選択し、効率良く年収アップを狙いましょう。

ただし、副業を認めていない、あるいは事前に副業届の提出を求める医療機関もあります。アルバイト勤務を実施する際には、就業規則も事前に確認しましょう。医師の働き方改革施行後は、副業先が宿日直許可を取得しているかどうかも重要なポイントになります。

③転職

現在の勤務先より高い報酬が期待できる医療機関への転職も、選択肢の一つになると思います。

とくに医師不足が深刻な地域では、医師を集めるために高待遇の求人を出すこともあるでしょう。しかし、多くの医療機関の中から、自分に合う条件の職場を探し出すことは容易ではありません。日々の診療をこなしながらでは、なお難しいでしょう。転職を選択肢として考えている方は、転職サイトなどで相談してみると良いのではないでしょうか。

この記事で紹介したように、外科医には多様な働き方があり、年収やキャリア形成にも違いが出ます。外科医の皆さまや、これから外科医を目指す方々のキャリアを考える上で本記事がお役に立てば幸いです。

中山 博介

執筆者:中山 博介

神奈川県の急性期病院にて、臨床医として日々研鑽を積みながら医療に従事。専門は麻酔科であり、心臓血管外科や脳神経外科・産婦人科など幅広い手術の麻酔業務を主に担当している。

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