医師の起業(ビジネス起業)増加の背景とは|起業事例と起業する際のポイント

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公開日:2024.06.13

医師の起業(ビジネス起業)増加の背景とは|起業事例と起業する際のポイント

医師の起業(ビジネス起業)増加の背景とは|起業事例と起業する際のポイント

医師が起業をすると言えば、クリニックの開業をイメージされる方が多いかもしれません。しかし近年では、医師として培った経験や知識を生かし、ビジネスパーソンとして起業をするケースが増えています。

なぜ医師としてではなく、ビジネスパーソンとして起業する方が増えているのでしょうか。また、どのようなビジネスで医師の経験や知識が活かせるのでしょうか。

今回は医師がビジネスパーソンとして起業した例から、医師のビジネス起業増加の背景やビジネスのアイデア事例、起業するにあたってのポイントを解説していきますので、これからビジネス起業を考えている方の参考になれば幸いです。

医師のビジネス起業が増加している

「年々、医師がビジネスとして起業するケースは増加傾向にある。」

それを証明するかのように、医師の起業を後押しする動きが増えてきています。日経産業新聞(電子版)に下記のような記事がありました。

『ビヨンドネクスト、医師起業家ファンドの勝算』
ベンチャーキャピタル(VC)のビヨンドネクストベンチャーズ(東京・中央)が医師起業家向けの「アントレドクターファンド」を設立した。以前から創薬などヘルスケア領域へ積極的に投資してきたが、医師出身の起業家を支援する姿勢を明確に打ち出す。(2019年1月8日)

日経産業新聞 ビヨンドネクスト、医師起業家ファンドの勝算より引用(2024年6月1日閲覧)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39714760X00C19A1000000/
参考資料:ビヨンドネクストベンチャーズ公式

また、起業を後押しする動きは医学部にもあり、慶應義塾大学医学部では、健康医療領域における起業をサポートするためのビジネスコンテストを主催。過去入賞者は慶應医学部との共同研究、資金調達、医療機器承認取得、海外支社設立などを達成しています。

実際に医師が起業した企業3選

実際に起業に成功した医師はどのようなビジネスを実施しているのででしょうか。医師が起業した事例をそれぞれ異なる業種で3選ご紹介します。開業ではなく医師の強みを活かして起業したいと考えている方は是非参考にしてください。

株式会社ドクターシーラボ

国内の美容皮膚科レーザー治療研究の第一人者のうちの一人となる医師が1999年に創業。

レーザー治療後でもシミがまたできてしまう患者さまを見てスキンケアの重要性に気づき、原因を防ぐために肌に負担となる成分を極力使わず、肌の水分を補いながら守る製品の開発を目指しました。

このような背景をもとに、「肌トラブルやエイジングで悩むすべての人を救いたい」という想いから開発されたオールインワン化粧品「アクアコラーゲンゲル」が大ヒットし、多くの方に愛用される商品となっております。

(※現在ドクターシーラボはJNTLコンシューマーヘルス株式会社のブランドの一つとなっています。)

株式会社ミナケア

東大病院や都立病院などで循環器内科に従事し、医師の間でMBA取得の先駆けになったとも言われ医師が立ち上げたのが、株式会社ミナケア(2011年2月創業)です。健康を守り、育てるコンセプトである「健康投資」を提唱し、

「病気の治療のための医療」から、病気にならないための「投資型の医療」を目指し、データヘルス支援やヘルスケアサービスの開発を行っています。

株式会社メディカルノート

医学博士でもある医師が共同経営者として立ち上げたのが、株式会社メディカルノート(2014年10月創業)です。

すべての人が"医療"に迷わない社会の実現を目指し、信憑性の低い情報が蔓延する中で、確かな医学情報を発信するために医師の実名による情報発信サイト「Medical Note」を運営しています。


以上ご紹介した3つの事例は医師のビジネス起業の一例ではありますが、医師が起業する背景には医師だからこそ気づく医療現場の問題点の解決を目指して起業するというケースが多いのではないでしょうか。

医師が日々働く中で感じる医療現場の課題を解決したいと思うのは、当然の流れなのかもしれません。その解決策として、ビジネスパーソンとしての起業を選ぶ方が増えてきている可能性があります。

ビジネス起業のアイデア事例

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ここでは、医師が起業しているビジネスアイデアについてご紹介します。医師の経験を活かし、どのようなビジネスを立ち上げていることが多いのでしょうか。

以下、詳しくご紹介します。

化粧品開発

先述のドクターシーラボを始め、日本国内でも医師が開発した化粧品であるドクターズコスメは人気です。

美容外科医や皮膚科医が監修するケースが多いですが、南アフリカで生まれた「ENVIRON(エンビロン)」は形成外科医が開発した国際的な化粧品ブランドとなっており、このように他の科目の医師が開発した事例ももちろんあります。

専門知識や専門的な資格を持った医師が開発、という安心感や効果に対する信頼感が増すだけでなく、クリニックを開業していれば商品のファンからの集客効果も見込めるようです。

コミュニティサイト

前項でご紹介した起業事例でも触れましたが、医師同士を繋ぐコミュニティサイトを運営する方も多いようです。医師同士でなければ分からない悩みや疑問などを解決できるツールとして人気があります。近年では医師同士だけではなく、医師と患者、医学部生向けのコミュニティサイトを運営するような例もあります。

オンライン診療システム

主に忙しくて病院に行く時間がない方に向けた、オンラインで診療できるシステムを開発した医師もいます。株式会社CyMed(2022年3月創業)では「次世代型デジタルクリニック」と称するオンラインシステムをオープンさせました。受診前の健康相談から、受診後の服薬指導までをオンラインで完結。現代社会の忙しい人々において、今後の需要は高まっていくと考えられます。

医療機関向け治療用アプリ

治療のため生活管理から必要な疾患において用いる、治療用アプリの開発をする医師もいます。株式会社CureApp(2014年7月創業)では、医療機関向けのニコチン依存症治療アプリ「CureApp禁煙」を開発し医療機関に導入しました。スマートフォンを利用したアプリは、患者さまとしても利用ハードルが下がる傾向にあるため、今後の需要拡大も期待されています。

予約ポータルサービス

例えば、手続きの煩雑さや病児保育室の認知不足などを解消するために、患者さまと病児保育室を繋ぐ予約システムを開発した医師もいます。株式会社グッドバン(2017年7月創業)では、近くの病児保育を24時間LINEひとつで簡単に予約できるシステムを開発。多くの保護者が気軽に利用できるようになった結果、病児保育の利用者が1.7倍になりました。施設を利用する際の不便性に着目したサービスであると言えます。

以上、あくまで一例ではありますが、医師としての経験や知識を活かし様々なビジネスを展開していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。医師として働く中で感じた問題点が、ビジネス起業のきっかけになるかもしれません。

医師が起業する際のポイント

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では、医師がビジネスパーソンとして起業する際に意識すべきことは何なのでしょうか。起業するにあたってのいくつかのポイントについて、以下で詳しく解説していきます。

1.ビジネス・経営の知識を習得する

ビジネスパーソンとして起業する場合、マーケティングやコンサルティングの知識、プレゼンテーション能力など、ビジネス・経営に関する幅広い知識が必要となります。

起業が成功した医師の経歴を見ても、MBAを取得していたり、医療業界から離れ会社勤めの経験があったり、ビジネスの知識もあったという方が多いようです。

2.自分の強みを理解する

ビジネスパーソンとして起業するためには、問題提起に加え、ご自身の強みを活かすことが重要です。今までの医師としての経験や人脈、得意分野などご自身の強みを理解し、ビジネスに活かすと成功する確率が高くなるかもしれません。

3.赤字になる覚悟を持つ

一般的に医師は収入が高い傾向にあります。そのため、ビジネスパーソンとして起業した場合、大幅に年収が下がる可能性もあります。もちろん成功すれば年収が上がる可能性もありますが、特に起業当初は赤字になる覚悟が必要と言えるでしょう。

4.資金面の計画をしっかり立てておく

当然のことながら、起業は失敗することもあります。そうなる前に、事前に線引きを決めておくことも重要です。今の収入や資金面から考慮し、いくらまでだったら赤字が続いたとしても将来的に返済できるのか逆算しておきましょう。事前に決めておくことで、借金だけが残ってしまうリスクも最小限に抑えられるかもしれません。

5.いきなり起業はしない

ビジネスの経験が無い状態で起業し、成功する方はごく一部と言えるでしょう。できるだけリスクを回避するためにも、医師を続けながら起業することをおすすめします。また、会社を経営するにはある程度の資金も必要ですので、いきなりビジネス1本で起業するのではなく、医師として働きながら起業することをおすすめいたします。

週末起業のすすめ

ビジネスパーソンとして起業を考えているのであれば、まずは週末起業という選択肢はいかがでしょうか。

週末起業とは、医師として働きながら副業として起業する方法です。例えば、常勤医師であれば勤務後の時間や休日を、非常勤医師の場合は週何日かを起業したビジネスにあてます。医師としての収入も得たまま起業することで収入面のリスクを少なくすることができますし、ビジネスが軌道に乗るかの判断材料にもなります。

まずは副業としてスタートさせ、軌道に乗ってからビジネスパーソンへ転身することで起業する際のリスクを最小限に抑えることができるのではないでしょうか。但し注意点として、原則医師は副業が可能とされていますが、医療機関によっては副業を禁止しているケースもあります。副業を始める際は職務規定を必ず確認するようにしましょう。

医師として「ビジネスをどう始めるか」を考えよう

「医師としての新しい働き方」になりつつあるビジネス起業。

その背景には、働く中で感じた医療業界の問題点の解決や、医療を通じてより良い社会を実現したいという思いがあるのではないでしょうか。医師としてビジネス企業をお考えの方は、今回の起業事例やポイントを参考にご検討いただければと思います。

今回の記事が、これからビジネス起業を考えている医師の皆様の参考になれば幸いです。

ドクタービジョン編集部

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