【病院からクリニックへの転職を考える医師】が知っておきたい3つのこと~違い・選び方・体験談~

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転職ノウハウ

公開日:2020.01.07
更新日:2023.10.26

【病院からクリニックへの転職を考える医師】が知っておきたい3つのこと~違い・選び方・体験談~

【病院からクリニックへの転職を考える医師】が知っておきたい3つのこと~違い・選び方・体験談~

医師の転職市場は売り手市場であることから、大学病院や市中病院で働いたり、フリーランスとして働いたりと、豊富な選択肢があります。病院より規模が小さいクリニックで働くこともその1つです。今回は、病院からクリニックに転職するときに知っておきたい「違い」「選び方」「体験談」をご紹介します。

クリニックと病院、医師にとっての【違い】とは?

クリニックと病院は規模が異なり、医師の業務内容や報酬も異なります。クリニックへの転職で理想の働き方を実現するために、まずはクリニックと病院の違いを確認しておきましょう。

クリニックと病院の違い

クリニックと病院は、医療法第1条の5に規定された病床数で区分されます。
クリニックとは、病床数が19床以下の医療機関のことです。正式には「診療所」と呼ばれており、クリニック・医院・診療所は同じものを指し、全く病床を持たない無床診療所が大部分を占めています。
一方、病院は20床以上の入院施設を有する医療機関とされており、クリニックよりも規模が大きくなります。

また、クリニックと病院では、医療施設の構造要件にも違いがあります。
クリニック・病院共通の要件もありますが、クリニックは病院ほど構造設備の要件が厳しくなく、「必要な各室が独立しており用途が明示されていること」「消火用の機械または器具を備えていること」を満たしていれば基本的に問題はありません。
一方、病院はさらに設備として各科専門の診察室や処置室のほか、診療科に応じて手術室やエックス線装置の設置が求められます。

病床についても要件に差があります。一般病床について例に取ると、診療所では1人部屋6.3㎡以上、2人以上の部屋では患者1人あたり4.3㎡の床面積が必要ですが、病院では患者1人あたり6.4㎡以上が必要とされており、患者が使用する廊下の幅も異なります。

医師の業務内容の違い

クリニックと病院では規模や役割、医療法に定められた人員配置標準が異なるため、業務内容も変わってきます。
クリニックの役割は地域での日常的な診療で、来院は比較的軽症の患者さまが中心です。医師は1人いれば開設可能で、1人の医師が診察する患者数に制限はありません。病床を有する場合でも、一般病床であれば医師や看護職員数などに規定がないことが特徴です。
患者さまが殺到するクリニックは多忙になることもありますが、緊急的な対応を迫られることは少ないでしょう。かかりつけの診療が中心となるため、患者さまとの距離も近く、ゆとりのある働き方ができます。
一方、病院はクリニックよりも高度な治療を提供する役割を担い、施設規模も大きくなります。クリニックから紹介された患者さまを担当することも多く、クリニックよりも重症の患者さまを担当する機会が多いでしょう。
また、病院では1人の医師が診療できる患者数にも規定があります。医師は最低3名が必要で、外来では患者40名に対して医師1名、入院では患者16名に対して医師1名の配置が求められます。医師以外にも看護職員や薬剤師などの配置標準が規定されており、多くのスタッフと関わりつつチーム医療で1人の患者さまの診療にあたるのが一般的です。

医師の報酬(給与)の違い

クリニックと病院では、医師の報酬にも違いがあります。
厚生労働省「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査)報告-令和3年実施-」によれば、医療施設の類型別における医師の年収(給与額+賞与)は以下のとおりとなっています。

一般病院 国立 1,323万9,799円
公立 1,472万6,005円
医療法人 1,506万2,173円
一般診療所 個人(入院診療収益あり) 1,253万4,545円
医療法人(入院診療収益あり) 1,193万1,775円
個人(入院診療収益なし) 1,047万8,185円
医療法人(入院診療収益なし) 1,054万2,354円

クリニックよりも一般病院のほうが報酬の水準は数百万円高くなり、クリニックでも有床のほうが報酬の水準が高くなっていることがわかります。

医師がクリニックに転職するメリット

医師がクリニックに転職するメリットには以下のようなものがあります。

  • オンコールや当直がなくワーク・ライフ・バランスを整えられる
  • 地域に密着した診療ができる
  • 時給換算した場合、給与が高い傾向にある

医師がクリニックに転職する大きなメリットは、長時間勤務がなく、無理なく勤務できることです。
病院勤務の場合、当直やオンコール対応のため勤務時間は長時間になります。休息がほとんど取れない状態で翌日に通常勤務を行わなければならないこともあり、心身に大きく負担がかかってしまうケースもあります。
クリニックでは、無床なら当直やオンコールは発生しません。原則残業が発生することも少なく、診療時間終了後は自分の時間を確保できるため、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすくなります。有床でも重症の患者さまを診ることは少ないため、病院のように緊急対応が必要な事例は少ないでしょう。
収入面では病院のほうが高水準ですが、当直を前提とした働き方であるため、仮に時給に換算した場合はクリニックのほうが高い傾向にあります。

医師がクリニックに転職するデメリット

医師がクリニックに転職するデメリットには以下が挙げられます。

  • 高度医療に携われる機会が限られる
  • 最新の医療情報を入手しにくい
  • 勤務状況によっては収入が減る可能性がある

クリニックでは比較的軽い疾患を主に扱い、重い疾患は高度治療が可能な病院へ紹介するため、行える治療は限られたものになるでしょう。最先端の医療機器を扱う機会も病院に比べると限られるため、高度医療に携わりたい方には向かない可能性があります。
また、クリニックは病院に比べて最新の医療情報を入手しにくいこともデメリットです。
病院では複数の科の医師と接触する機会も多く、日々の勤務で幅広い知識を得続けることができます。しかし、クリニックは単科が中心であり、医師の数も病院に比べると少ないため、日々の業務内で知見や領域を広げることは難しくなるでしょう。
給与が病院より少なくなることもクリニックのデメリットです。
病院の場合当直やオンコールなどの対応が必要で勤務体系はハードなものの、手当などもあり報酬水準は高くなっています。勤務時間が一定のクリニックに転職することで、収入が減ってしまう可能性もあるでしょう。
ただし、美容領域など高収入となるクリニックもあり、クリニックだからといって必ずしも収入が少なくなるとは限りません。

増えつつある「クリニックの分院長・雇われ院長」の仕事とは

近年、分院の開設や現院長の退職などによりポストの空きが生じていることから、クリニックでの院長職(雇われ院長)の求人も増えつつあります。個人診療所の後継者を探しているケースも少なくありません。
雇われ院長の仕事内容は管理業務よりも外来診療が中心ですが、経営管理を任される例もあります。病院勤務と異なりオンコールや当直、休日の出勤はなく、病院勤務よりも給与水準が高い傾向です。
ただし、雇われ院長であっても管理者としての責任が発生し、トラブルの際には責任を問われることがある点には注意しておかなければなりません。
開業を目指すにはクリニックの開設や設備にまとまった費用がかかるうえ、全責任を自身で負う必要があります。自身の希望する働き方がある程度は実現できるものの、負担も少なくありません。
その点、クリニックの分院長や雇われ院長なら、病院勤務医よりも良い労働条件と安定した待遇で働きつつ、開業のリスクを負わずにステップアップできます。また、経営を学ぶ機会にもなるため、将来の開業に役立てられるという点もメリットです。
とはいえ、管理者としての権限の範囲はそれぞれの環境によって異なります。経営層の方針に従わなければならないなど、一定の制約があることは念頭に置いておかなければなりません。

クリニックへの転職時に気を付けるべき4つのポイント【選び方】

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クリニックと病院では医師の役割も業務内容も異なるため、勤務条件や労働環境、求められることも違います。より良い環境で満足できる働き方を実現するために、転職時には次の4つのポイントに気を付けましょう。

1. 給与

自分の生活にどのくらいの給与が必要なのか、将来の資産形成も含めてしっかりと考えたうえで転職先を決めましょう。
昇給の頻度、年金や福利厚生なども事前に確認しておきたいポイントです。クリニック勤務になると大きく昇給することは少ないので、あらかじめ確認して将来的なビジョンを描いておくことをおすすめします。

2. 労働時間

急性期の患者さまを診ないことの多いクリニックは当直やオンコールがない業務内容のため、ワーク・ライフ・バランスを大切にできます。総合病院の場合は当直やオンコールが求められ、過重労働が問題になることもあります。そうした働き方を見直したい医師にはクリニック勤務がおすすめと言えるでしょう。
ただし、診療科によってクリニックの労働時間は大きく変わり、外科や産婦人科のクリニックでは残業や当直が発生する可能性があります。

3. 医師の集患力

美容外科や美容皮膚科など自由診療を扱うクリニックは保険診療をおこなうクリニックに比べて高給与であることが多く、年収数千万円を提示されることも多くあります。
ただし、自由診療のクリニックで働くには"集患力"が何よりも重視されるので注意が必要です。自由診療は人気商売の側面もあるため、集患力がなければ解雇されたり減給されたりする可能性があります。ノルマが設定されることもあるため、よく調べてから転職するようにしましょう。

4. 医業承継

地方のクリニックでは、医師の高齢化などを理由に医業承継を視野に入れて求人を出しているケースも見られます。その地域でクリニックを営業してきた基盤を受け継ぐことができるうえ必要な医療機器なども揃っているため、独立を目指す医師にとっては一考の価値があります。

クリニックへの転職を成功させるために【体験談】

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クリニックへの転職を希望しているものの、実際に働くにあたり不安を感じている方もいるでしょう。ここからは、クリニック勤務に向いている医師の特徴と転職成功事例を紹介します。

クリニック勤務に向いている医師とは

クリニック勤務に向いている医師は、「ワーク・ライフ・バランスを重視したい」「地域密着の医療に携わりたい」という希望がある方です。
クリニックの中でも無床の場合、夜勤や当直はありません。また、基本的には診療時間内の勤務になるため、ワーク・ライフ・バランスを実現しやすいでしょう。家庭と仕事を両立させたい方にも適しています。
また、クリニックは地域の患者さまがまず相談に来る場所です。病院のように幅広い症例を診療する機会は減るものの、一人ひとりの患者さまに向き合って地域密着の医療を提供することができ、クリニックの選択によっては、専門性を活かした治療に特化することもできるでしょう。
将来開業を視野に入れている医師であれば、勤務しながら診療所運営ノウハウも学べるクリニックの雇われ院長を経験するのも良いでしょう。

クリニックに転職した医師の声

続いて、「ドクタービジョン」を活用してクリニックへ転職された3名の医師の事例をご紹介します。

転職事例(1) 医局退局後スポット勤務→クリニック非常勤

女性医師の場合、出産を機に現場を離れ、子育てが一段落してから復職を目指す方も少なくありません。婦人科医・E.M先生(30代・女性)もその一人でした。
E.M先生は出産後、子どもが小さなうちは時間の自由がききやすいスポット勤務をされていましたが、将来的に常勤に戻りたいと段階的な復帰を希望している状況でした。
そこで、希望する給与水準であること、および自宅からの距離が近いことを条件として転職活動を開始し、週2日・フルタイムの非常勤としてクリニックでご勤務されることが決まりました。
17時までの勤務が可能なクリニックなので保育園のお迎えにも間に合い、家庭との両立を実現されています。子育て中のスタッフが複数在籍していることから、サポート体制も十分な環境であることも決め手の1つとなりました。
クリニックでは大学病院に比べると診療する疾患の幅は狭くなったものの、「一人ひとりの患者さまとじっくり向き合える」というやりがいを実感できる環境で活躍中されています。

転職事例(2)大学病院→訪問診療クリニック

大学病院の救急科で活躍していたS.O先生(30代・男性)は、妻が2人目の子どもを妊娠したことをきっかけに年収アップと家族との時間をより作れる働き方を希望し、大学病院から訪問診療クリニックへ転職されました。
大学病院では内科領域も外科領域も診療できる救急科で活躍していたものの、当直勤務が多く、業務量と年収も見合っていなかったといいます。頻繁な人事異動も負担になっており、家族の側にいるために転職を決意されました。
年収アップと家族との時間をより作れる働き方を希望され、2つの条件を満たすことを優先したいとのことで、コンサルタントからは条件が合致した訪問診療クリニックをご紹介しました。自宅から距離が近く勤務時間も保育園の送迎を配慮した時間に調整でき、子育てに参加する時間も増やすことができたとお喜びいただいています。
訪問診療でもオンコール待機が不要だったため生活サイクルの安定も実現でき、年収200万円アップも叶えられました。

転職事例(3) 一般病院→クリニック院長

眼科医・H.S先生(60代・女性)は、20年以上勤務した一般病院から眼科クリニックの院長職への転職に成功されました。
転職のきっかけは、眼科での外来診療に加え、コンスタントに手術をこなすことが心身ともに負担になり始めたことと、裁量の範囲が狭く、自身が良いと思える医療の提供が困難であったことでした。また、自身の年齢や家族の介護を抱える中で働き方や仕事内容を見直したところ、選択肢として上がってきたのが転職だったといいます。
あと10年は働くということを考えれば、無理なく働ける環境が重要です。そこで、長期的な勤務ができること、業務負担が少ないこと、業務において裁量権があることの3つを条件として転職活動を始められました。
当初は勤務中の職場を非常勤にし、別の職場でも非常勤として働くといったことも考えておられましたが、コンサルタントからは裁量権を叶えるなら1つの職場に注力したほうが良いとアドバイスをさせていただき、常勤での転職に絞って転職活動をされることになりました。
現職のクリニックは外来診療が中心となり、業務負担は大きく軽減される一方で今までにない患者層を診察する機会が増え、充実したものとなっているそうです。院長職のため裁量権もあり、効率良く業務が進められるという点でもご満足いただいています。

ドクタービジョンは「日本調剤株式会社」を母体とする医療系の総合人材サービス会社として、医療機関と強固な信頼関係を築いています。各医療機関について熟知した経験豊富なコンサルタントが、希望条件や経歴・スキルだけでなく、キャリアプランやライフスタイルから提案を行っていますので、転職そのものに迷いがある方もぜひご相談ください。
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ドクタービジョン編集部

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