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医師の勤務形態や業務内容にはさまざまな種類がありますが、そのうちの一つに「寝当直」があります。寝当直は言葉の通り「寝られる当直」という意味ですが、経験のない方は、どのような勤務なのかイメージしづらいかもしれません。
この記事では寝当直の業務にあたる医師が何をしているか、アルバイトで寝当直をおすすめする理由、寝当直をする時に気をつけたいことや働き方改革との関連について紹介します。
執筆者:Dr.Ma
寝当直とは
医師の勤務に当直は付きものですが、一口に当直といっても、その実態はさまざまです。一晩中救急車の対応をする当直もあれば、比較的長時間休むことができる当直もあります。夜間にしっかり睡眠時間を取ることができる当直のことを、「寝当直」と呼ぶことがあります。
一般に、療養型病院や小規模病院の当直の業務量はそれほど多くありません。こうした病院では、寝当直が比較的多いと言えます。
寝当直ではどんな業務を行うのか
寝当直では、夜間の外来対応はほぼなく、入院している患者さんの変化に対応する業務が中心です。入院患者さんの病状は落ち着いていることが多く、発熱などのよく起こる変化に対しては主治医から決まった対応が指示されていることも少なくありません。
医療機関によっては夜間の回診や定期処方などを依頼されることもありますが、困難に感じる業務は少ないと言って良いでしょう。
寝当直の過ごし方
病棟での業務が終了すれば、その後の時間の過ごし方に特に決まりはありません。医局や休憩室、仮眠室、当直室などで過ごすことができます。医療機関によりますが、テレビやwi-fiが使用できたり、シャワーを利用できたりと、リラックスした時間を過ごすこともできます。
働き方改革で寝当直をする医師が必要に
2024年4月から「医師の働き方改革」が本格的に始まると、医師が働くことのできる「時間外労働時間」に上限が設けられます。連続勤務時間も一定時間に制限され、勤務間にインターバルを設ける必要があります。
各医療機関は、医師が効率良く働く上で適切な休息を取るために、まさに「改革」を迫られています。改革の手段として考えられるのが、当直の外部委託です。これまで「寝当直だから」と常勤医が担当していた当直についても、負担軽減や時間外労働時間のコントロールを目的に、アルバイトを募集するようになる可能性があります。
寝当直ならば医師は不要では、と思うかもしれません。しかし、「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」ということが医療法で定められているため、医師の寝当直がなくなることはないでしょう。現在も寝当直の求人は数多くありますが、今後さらに寝当直の求人案件は増えていく可能性があります。
寝当直をおすすめする理由
体への負担が少ない
寝当直では、多くの場合睡眠時間を確保することができます。睡眠環境も整備されていることが多く、体への負担は少ないと言えます。
報酬は科目や地域によって幅がありますが、3~5万円/回程度であることが多いようです。通常の当直アルバイトと比較すると報酬は少ないですが、体や生活への負担を考えると、コスパが良いととらえる方も多いのではないでしょうか。
自己研鑽の時間に充てることができる
寝当直で過ごす時間は、そのほとんどが待機時間です。待機時間の過ごし方は自由なので、論文を読んだり学会の準備をしたりと、自己研鑽の時間に充てることができます。自宅では集中する時間を取れないという方にとっては、寝当直の時間は貴重な作業時間になるかもしれません。
ただし寝当直とはいえ、業務はゼロではありません。当直業務に支障をきたさないよう注意しましょう。
寝当直で気を付けたいこと
準備するもの
初めて行く病院で寝当直をすることになり、何が準備されているかわからない場合は、白衣やスクラブなど、一般的な診療業務に必要な準備をしていきます。医師が院内に自分一人の場合も多いため、いざという時に参照できる資料やメモなどもあれば持参すると良いでしょう。
業務がそれほど多くない寝当直ですが、とくに重要な業務と言えるのがお看取りです。療養型病院に入院している患者さんの多くはDNAR(心肺停止状態になっても心肺蘇生を行わない)であり、急な処置を要さない場合が多いのですが、お亡くなりになった時は当直医が死亡確認を行います。
当直のアルバイトでお看取りを行う場合、患者さんのご家族とは初めて会うことになるため、慎重な対応が必要です。お看取りの方法や流れに不安がある場合は、事前に十分確認しておきましょう。死亡確認に必要な聴診器、ペンライトや腕時計、死亡診断書に押す印鑑の持参も大切です。
そのほか、必要に応じて着替えや歯ブラシ、パソコンや本なども用意しておきましょう。
医師のための「患者の看取りの在り方」【令和版】
緊急対応の体制
寝当直と言われていても、救急車受け入れの問い合わせ対応や急変時対応が求められるケースもゼロではありません。医師だけでなく看護師も少人数のことが多く、自らの裁量で判断するしかありません。
土地勘のない場所へアルバイトに行く場合は、自分では対応困難な症例を搬送する病院が周辺にあるのかなど、緊急対応の体制について念のため確認しておきましょう。
宿日直許可の有無
働き方改革により、医師の時間外労働は月ごとに上限が定められ、それを超えると健康確保措置が必要になります。時間外労働時間は医師ごとに通算されるため、寝当直のアルバイトでも長い労働時間がカウントされることになります。原則として上限を超えてアルバイトを行うことはできないため、寝当直をしたくてもできない状況になる可能性があります。
そこで重要になるのが「宿日直許可」の有無です。宿日直許可は、通常勤務よりも軽度または短時間の業務で、睡眠時間を確保できる場合などに認められる制度で、勤務する医療機関が宿日直許可を得ていると、待機時間は労働時間とみなされず、診療時間のみがカウントされます。当直をする際は、勤務先が宿日直許可を得ているか確認しましょう。
2024年から始まる医師の働き方改革。当直アルバイトができなくなる?
宿日直許可で医師の働き方はどう変わる?改革の目的に逆行する問題、アルバイト選びへの影響も考察
寝当直求人の探し方
寝当直の求人は、先輩や同僚からの引き継ぎ・紹介のほか、求人サイトで探すことができます。求人サイトでは、時間帯や給与、診療科といった一般的な情報に加えて「救急対応なし」「寝当直」などと記載されていることがあります。興味を持てる案件があれば、問い合わせてみると良いでしょう。
条件の良い案件は応募が殺到し、すぐに締め切られてしまいます。あらかじめ求人サイトに登録しておくと優先的に案内を受け取ることができるので、興味がある人は活用してみましょう。
まとめ
ここまで、寝当直の実態について紹介しました。寝当直業務の経験がない方は、自分一人で対応することに不安を感じるかもしれません。しかし、寝当直案件を用意する病院は当直医に負担がかからないような体制を敷いていることが多く、困難を感じることはめったにありません。宿日直許可を得ている医療機関であれば待機時間を気にする必要はありませんし、体への負担も少ないことから、医師にとっては貴重な収入源となるはずです。
興味がある方は、先輩医師に尋ねたり、求人サイトに登録したりすることから始めてみてはいかがでしょうか。
執筆者:Dr.Ma
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