モンスターペイシェントに遭遇したら?ケースや対応方法を解説

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働き方

公開日:2022.09.29

モンスターペイシェントに遭遇したら?ケースや対応方法を解説

モンスターペイシェントに遭遇したら?ケースや対応方法を解説

医療機関で働く医師や看護師を悩ませるモンスターペイシェント。理不尽な言動に手を焼いた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。モンスターペイシェント対応に付随するストレスは、精神障害の発症の引き金になることもあるため、対応方法は積極的に身につけておきたいところです。

本記事では、モンスターペイシェントの定義、対応が困難な理由、実際に寄せられたクレームパターン、適切な対応方法についてご紹介します。

モンスターペイシェントとは?

モンスターペイシェントとは?

モンスターペイシェントとは、医療従事者もしくは医療機関の双方に対して、自己中心的で理不尽な要求、ときに暴言や暴力を繰り返す方を指す言葉です。医療機関を受診する患者さまに限らず、そのご家族を指すこともあります。

なお、医療機関側が誠実な対応をしているにもかかわらず理不尽な要求や迷惑行為を執拗に繰り返す場合は、悪質クレーマーと呼ぶこともあります。

患者さまがモンスターペイシェントと化す原因と傾向

患者さまやそのご家族がモンスターペイシェントと化す原因はさまざまです。外来での待ち時間の長さやスタッフの対応に対する不満、疾患、将来への不安が怒りに姿を変えるケースがあることも認識すべきでしょう。または、認知症や精神疾患が原因で問題行動を起こすこともあります。

とくに暴言や脅迫による精神的暴力や殴る蹴るなどの身体的暴力は、救急外来や精神科などで起こりやすいと認識されていました。ところが最近では、健診施設や介護関連施設などでの暴力行為が増え、以前より暴力にさらされる危険性が高まっています。また、セクハラやつきまとい、ストーカー行為などの被害報告もあります。

モンスターペイシェントと医師の応召義務の関係

モンスターペイシェントと医師の応召義務

モンスターペイシェントの言動を受けて、「対応が悪かったのかもしれない」と感じて自分を責めてしまう方や、「病気のせいだから仕方ない」と考え問題行動を同僚や上司に報告しない方もいるかもしれません。しかし、モンスターペイシェントによる迷惑行為は、一度発生すると長期化することもあるため、毅然とした対応が必要です。

ところが、モンスターペイシェントの言動により医療機関とスタッフが甚大な被害を受けていることを把握していながらも、「診療せざるを得ない」と考え耐え忍んでいる方も...。こうした背景に、「医師の応召義務」が関係しています。

医師の応召義務とは

医師法(昭和23年法律第201号)(抄)

第19条 診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

引用:医師法(昭和23年法律第201号)

医師法では、上記のように規定されています。ここでいう「正当な事由」について、昭和24年9月10日付医発第752号厚生省医務局長通知では、「それぞれの具体的な場合において社会通念上健全と認められる道徳的な判断によるべき」と記載されており、医師は診療を求められた場合たとえ時間外や理不尽な内容でも対応しなければならないという解釈にもなりかねないのです。そのため、応召義務違反と訴訟を恐れる医師はあとを絶ちません。

医師の応召義務の在り方

ところで、長年問題視されている医師の過重労働を解決すべく進められている働き方改革において、応召義務の在り方と解釈が論点の1つとして取り上げられました。厚生労働省では研究班を設置し検討会を開き、以下について整理しました。

  • 応召義務違反のみでは損害賠償義務などは原則発生しないこと
  • 医療機関では応召義務とは別に必要かつ十分な治療を行うこと
  • 正当な理由がない状態で診療を拒まないこと
  • その上で診療しないことを正当化されるケースを紹介しています。

    迷惑行為についても触れており、たとえば診療とは無関係のクレームが繰り返された結果、信頼関係が喪失しているケースや支払い能力を有しているにもかかわらず支払いを拒否するなどのケースでは、医師が診療を拒否しても正当化されると記載しています。

    【事例】モンスターペイシェントのクレーム

    【事例】モンスターペイシェントのクレーム

    ここでは勤務中、医師に寄せられた実際のクレーム事例について紹介します。医学部生や若手医師の方なら、自分が遭遇したらどのように対応するか考えてみましょう。

    ケース①診療方針への不満

    診療方針の説明をしている最中、提案した診療方針にご納得いただけず、「このやぶ医者が!」と面前で喚き散らされたことがあります。

    実際に行なったクレーム対応

    患者さまのご家族を交えた状態で、症状、診断、治療方針について改めて説明しました。また、患者さまがよりご納得いただける方法を考え、セカンドオピニオンのご提案も行いました。


    ケース②治療費への不満

    保険診療は診療報酬点数が決まっているので、過剰な請求ではありませんが、患者さまが想定されていた以上の治療費を請求されたとして、怒りが収まるまでしばらく怒鳴りつけられたことがあります。

    実際に行なったクレーム対応

    患者さまの立場で考えると、待ち時間が長かっただけではなく、支払金額の内訳が明確ではなかったことが原因でお𠮟りを受けたと考えています。そのため、患者さまがご納得されるまで話を聞き、ご説明させていただきました。


    ケース③治療費の返還を求められる

    不妊治療中の患者さまから、思うような結果が出ないことで診療中に不平や不満を浴びせられたことがあります。それだけでなく、今までかかった治療費を返還してほしいという無理難題まで突きつけられてしまいました。

    実際に行なったクレーム対応

    まずは、落ち着きを取り戻してもらおうと患者さまの思いと心に溜め込まれていることに耳を掛けました。 クリニックとして今回のケースのような患者さまの対応を行う職員が予め配置されているため、患者さまが落ち着き、話を聞ける状態になったところで専門職員に対応を引き継ぎました。


    ケース④待ち時間への不満

    事前予約をせずにご来院した患者さまへ、予約している方を優先するため診療まで時間がかかる旨を事前にお伝えしました。それでも、想像以上に待たされたことに激怒し、待合室まで聞こえるくらいの怒号を浴びせられました。

    実際に行なったクレーム対応

    患者さまには、ただひたすら謝るしかありませんでした。クリニックの責任者にも顛末を報告し、ご理解をいただくよう促しました。

    モンスターペイシェントによる迷惑行為の種類

    モンスターペイシェントによる典型的な迷惑行為は、以下のようなパターンがあります。

  • 金銭要求
  • 入院費や治療費などの診療費不払い
  • 迷惑メール・ネット上での誹謗中傷
  • 外来や病棟での暴言
  • セクシャルハラスメント
  • 暴力行為
  • 患者さまたちから寄せられたクレームは医療機関の改善・改革に役立つこともあります。しかし、実際には一般的なクレームとモンスターペイシェントによる迷惑行為を明確に区分することは難しく、理不尽な要求に耐え忍ぶ展開も見られるのが現状のようです。

    モンスターペイシェントへの適切な対応方法

    モンスターペイシェントへの適切な対応方法

    ここでは、診療現場で発生したクレームへの対応方法について確認しましょう。

    まずは患者さまの話を聞く

    前章で紹介した事例からもわかるように、患者さまの話を聞くことはその場でできる最も適切な対応法であり、解決策を探るための第一歩です。モンスターペイシェントは自己主張が強い点が共通しており、医療機関受診時は不安感から常時以上に自分の訴えを聞いてもらおうとする傾向があるとされています。そのため、こちら側が話を聞く姿勢を見せることで安心していただけ、次第に気持ちが落ち着いてくるケースも多いようです。

    医療機関ごとの対応方法を事前に確認しておく

    医療機関によっては、トラブル発生時の対応フローや部署が確立している場合もあります。常勤で勤務する職場だけでなく、スポットなどの新しい職場で勤務する際にも、事前にモンスターペイシェントへの対応フローを確認しておくと良いでしょう。

    誠実な対応をとる

    医療機関やスタッフの対応がきっかけで患者さまがモンスターペイシェントと化し、耐え難い言動や理不尽な要求をするように発展してしまうケースもあります。医療機関やスタッフ側に落ち度があれば、誠実に謝罪する必要があるでしょう。

    ただし、相手の求めに応じて過度に謝罪をするのではなく、医療機関側の落ち度に則した謝罪をしましょう。

    スタッフ間での情報共有

    モンスターペイシェントのなかには、ことあるごとに迷惑行為を繰り返す方もいます。一度でも迷惑行為を起こした患者さまは、過去の出来事のほか、その時の対応方法や反応についてもスタッフ間で共有していると心強いでしょう。

    悪質な場合には警察への相談も検討

    金銭などの利益を目的にしたクレームを始め、自己満足、医療機関やスタッフを攻撃する口実を作ろうと敢えて無理難題を提示してくるケースもあります。悪質クレーマーに遭遇した場合は、警察へ相談することも視野に入れましょう。

    モンスターペイシェントへの対応方法は事前に確認しよう

    モンスターペイシェントとのトラブルは、遭遇しないに越したことはありません。しかし、人と関わる医師の職務上、大小問わず何かしらのトラブルが発生するのは避けられないでしょう。

    怒りに身を任せた言い方であっても、納得する内容のクレームであることもあります。話を聞き納得できる内容であれば、今後改善に努める旨を添えて謝罪するのも必要なテクニックです。

    ただし、応召義務を盾に迷惑行為や不当な要求を執拗に繰り返すケースでは、悪質とみなし毅然とした態度で対応することが重要です。いざ遭遇したときに困らないよう、モンスターペイシェントへの対応方法について事前に確認しておきましょう

    ドクタービジョン編集部

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