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研修医になると、意気込みのためか本(医学書)をたくさん購入してしまう方が多くみられます。やる気があるのは素晴らしいことですが、読み切れないほどの本を購入するのはあまりオススメできません。
この記事では、研修医がなぜ本を買い過ぎてしまうのか、本を買い過ぎることによるデメリット、買い過ぎを防ぐ解決策について、医師である筆者の目線で解説します。
執筆者:竹内 想
研修医が本を買い過ぎてしまう理由
まず、なぜ研修医が本を買い過ぎてしまうのか、主な理由を見ていきましょう。
- 学生時代よりお金に余裕がある(ただし読む時間は十分に取れない)
- およそ1~2カ月で診療科が変更になり、そのたびに必要な本が変わる
- 知識不足を感じる場面が多く、知識を本で補おうとする
- そもそも研修医向けに発行されている本が多い
再受験などの例外を除くと、研修医(初期研修医)は学生を終えたばかりの社会人です。学生の間は授業料を払って教育を受ける立場ですが、社会人になると医師として医療を学びながらお金を稼げる立場になります。自由に使えるお金も増えることでしょう。しかし、まだお金の管理に慣れていないこともあって、本を買い過ぎてしまう例が多くみられます。
お金に多少余裕が生まれる一方で、仕事による拘束時間が長くなり、学生時代と比較して本を読む時間の確保が難しくなります。本を購入しても思うように読み進められず、結果的に本が溜まっていってしまうこともあるでしょう。
また、研修医はスーパーローテート制度に沿った研修を行うため、およそ1~2カ月で診療科が変更となります。新しくローテートする診療科では自身の知識不足を感じやすく、本を購入して知識を補おうという発想に至りやすいものです。
本を買って勉強するのは、自己肯定感を得やすいお金の使い方です。そのため多少本を買い過ぎたかなと思っても、ブレーキをかけることは難しいかもしれません。
そして近年、研修医の数が増加しており、出版社も研修医をターゲットとした本を多く出版しています。このことも研修医がつい本を買い過ぎてしまう理由の一つと言えるでしょう。
ここまで、研修医が本を買い過ぎてしまう理由について見てきました。では、本を買い過ぎることで、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
本を買い過ぎるデメリット
研修医が本を買い過ぎることによるデメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。
- 医学書は高価なため金銭面での負担が大きい
- サイズ・重量があるものはとくに、保管や引っ越し時の扱いに困る
- 将来使うかもしれないと購入しても、情報の鮮度が下がりやすい
まず何より、医学書は高価です。研修医向けの比較的薄い本であっても、3千~5千円程度するものが珍しくありません。成書と呼ばれる分厚い教科書ともなると、2万円近くするものも多くあります。いくら社会人になって自由に使えるお金が増えたとは言っても、研修医の平均給与は420万円/年(手取り26.5万円/月)程度です。1万円を超える書籍を購入することの負担はかなり大きいものがあります。
また、医学書はサイズが大きく、とくにカラー印刷の書籍は重い傾向があります。研修医から専攻医になるタイミングで職場が変わることもあるでしょうから、本を買い過ぎてしまうと引っ越しの際の扱いも大変です。
そして、医学の内容は日々進歩しています。売れ筋書籍であれば、5年も経てば新版が発行されることが多いでしょう。最新の書籍を買っても、その内容を信頼できるのは数年程度です。新版が発売されると、旧版は 情報の鮮度が下がってしまいます。「今買っておけば後で役立つかも...」と思って早めに購入しても、あとで後悔する可能性があるのです。
デメリットを理解した上で本をたくさん買うのもあり
ここまで、本を多く購入することのデメリットを取り上げました。しかし逆説的ではありますが、金銭面・保管面での負担を無視すれば、本を多く購入することのデメリットをそこまで気にすることはありません。むしろ、本を多数購入することによるメリットも当然あります。
たとえば、自分が気になる分野の本を複数購入し内容を比較することで、どの本にも重複して載っている内容は重要であり、1冊にしか載っていない内容は重要性が低いだろうと推察することが可能になります。これは本に対して真剣に向き合う成果と言えます。自分のお金を使って購入している分、本から学ぶ内容が多くなると言えるでしょう。
このように、デメリットを把握した上で"あえて本を多数購入する"という戦略を取ることもできますが、まずは「本を買い過ぎないようにしよう」という意識を持つところから始めるのがおすすめです。
本の買い過ぎを防ぐための対策
本の買い過ぎを防ぐには、下記のような方法があります。
- 必要な本を厳選する
- 図書館や研修医室、同期から借りることを検討する
- 書店やフリマアプリで中古版を購入する
- 電子書籍を活用する
まず、気になった本を手当たり次第に買うのではなく、「必要な本を厳選して購入する」という意識を持つことが大切です。そのためには同期や先輩など、自分と近い立場の人の意見が最も参考になります。医学書専門のレビューサイトなどもありますので、身近に聞ける人がいない場合はこうしたサイトを利用するのも選択肢の一つでしょう。
私個人的には、自分でお金を出して購入する場合はローテート期間中に十分読み終わるような薄め・小型の書籍の方が、成書と呼ばれる分厚い書籍よりも良いように思います。
レポートなどで用途が一時的な場合は、知人との貸し借りやレンタルサービスで済ませることができないか、検討してみましょう。研修病院によっては図書館や研修医室・医局などに書籍が置いてあることも多くあります。
どうしても購入しないといけない医学書の場合、書店やフリマアプリで販売されている中古版でも良いか検討してみましょう。内容がそこまで変わっていない場合、割安で購入できる可能性があります。金銭的負担を減らしたい場合に有効です。
医学書を買い過ぎるデメリットの一つである「保管場所」への懸念は、電子書籍を利用することで、ほぼ完全に解決できます。ただし、保管場所への懸念がなくなることで、キャッシュレス決済やゲームアプリ内の課金と同様に際限が効かなくなったり、売却ができなかったりする点に注意が必要です。
書籍という観点からは少し外れますが、近年はスライド共有サービスや動画サイトからも医学情報を得ることが可能です。ただし、これらの情報は書籍と比較して玉石混合の傾向があるため、その点に注意が必要です。
まとめ
研修医になると、本を過剰に購入してしまう方が一定数出てきます。今回はこの「本を買い過ぎる問題」の原因や、その対策法について見てきました。書籍の購入は自己投資として重要な出費ではありますが、そのようなexcuseがあるため支出額に際限がなくなりやすいのも事実です。財布の紐を締め、本の買い過ぎを防いで充実した研修生活を送るために、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
執筆者:竹内 想
大学卒業後、市中病院での初期研修や大学院を経て現在は主に皮膚科医として勤務中。
自身の経験を活かして医学生〜初期研修医に向けての記事作成や、皮膚科関連のWEB記事監修/執筆を行っている。
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