研修医になる前の準備―国家試験後にやっておくべきことは?【現役医師解説】

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公開日:2024.02.06

研修医になる前の準備―国家試験後にやっておくべきことは?【現役医師解説】

研修医になる前の準備―国家試験後にやっておくべきことは?【現役医師解説】

医学部の卒業試験と医師国家試験に合格すると、晴れて研修医として働き始めることができます。医学生時代とは生活や環境が変わりますし、持ち物の準備なども必要です。

この記事では、研修に向けて準備しておきたい持ち物やスキルを解説します。臨床研修を有意義に過ごせるよう、参考にしてみてください。

研修医に必要なもの・必要ではないもの

多くの医学生にとって、研修医になることは「初めて社会人になること」です。しかし研修医の場合、一般的な社会人とは働く環境が異なります。研修医に必要なものと、必要ではないものを整理してみましょう。

研修医に必要な持ち物

医師 グッドサイン

研修医必携の持ち物として、下記のようなものが挙げられます。

  • スクラブや白衣
  • 職場用の靴
  • 時計
  • ペンライト
  • 聴診器
  • 印鑑(シャチハタ)
  • ノートパソコンやタブレット端末

服飾品

スクラブや白衣、職場用の靴、時計など、職場で身に着ける服飾品は必ず必要になりますので、あらかじめ準備しておくと良いでしょう。

研修医も手技や処置に携わることが多くあるため、"スクラブ・動きやすい靴"が基本の服装です。服は平日5日分=5セットあると理想ですが、スクラブや白衣は職場から支給されたり、デザインが指定されたりする場合も多くあります。最初は少なめに用意しておき、必要に応じて追加するのも良いでしょう。

靴は、医療用ワークシューズ(クロックス(crocsTM)など)や運動靴(スニーカー)など、動きやすくて疲れにくいものを選びましょう。

時計は、社会人として時間管理をするだけでなく、患者さんの呼吸数測定や看取りの際に必要となります。スマホで代用することは難しいため、腕時計を身に着けましょう。通常の腕時計やスマートウォッチのほか、処置時にじゃまにならないという理由で懐中時計を選ぶ方もいます。

診療業務で用いるもの

診察業務に直結する持ち物として、ペンライト、聴診器、印鑑があります。

ペンライトは対光反射の確認に、聴診器は心音や呼吸音の確認に用います。どちらも学生時代にOSCEや臨床実習で準備したものがあれば、それでも問題ないと思います。

印鑑は、学生時代には持っていなかった方も多いでしょう。持ち運びやすいよう、ボールペンと一体化したネームペンや、院内用PHSに付けられるタイプ(ストラップ付き)がおすすめです。

ノートパソコンやタブレット端末

ノートパソコンやタブレット端末は、情報のインプットやまとめで活躍するほか、アウトプットにも必要です。

各科ローテート中は、担当症例の発表や抄読会など、スライドを作成する場面が多くあります。修了時にはレポートを作成することも多いでしょう。

医局や研修医室、図書館の共用パソコンが置かれている場合もありますが、作業効率やセキュリティ面を考えれば、個人で持っておく方が良いです。情報の検索にはiPadやSurfaceのようなタブレット端末+キーボードが、スライドやレポートを作成するにはノートパソコンがおすすめです。

研修医に必要ない持ち物

"必要ない"と言うとやや語弊がありますが、一般的な社会人デビューでは必須と言える以下のようなものは、研修医の場合はあまり必要ではありません。

  • スーツやワイシャツ
  • 革靴
  • 名刺入れ

先述の通り、研修医の服装の基本形は"スクラブ・動きやすい靴"です。そのため、スーツやワイシャツといったフォーマルな服装は、あまり必要ではありません。学会発表や勉強会で必要になることもありますが、近年はリモート形式(または現地開催とのハイブリッド形式)で開催されることが多くなっています。スーツはお金もかかりますから、あらかじめ準備しておくより、必要に迫られてからの購入でも十分でしょう。

通勤はスーツで...と思う方もいるかもしれませんが、研修医の場合は病院内の宿舎に住む場合も多いので、スクラブで出勤することも珍しくありません。

社会人としての準備

草原に立つビジネスマンとビジネスウーマンの後姿

医学部再入学者などをのぞき、多くの場合は「研修医になる=初めて社会人になる」ことでしょう。研修医になるにあたって、社会人としての知識も身に付けておく必要があります。

税金や社会保険、引っ越しに必要な情報を知っておく

社会人として働き始めると、初年度から所得税を支払う必要が生じます。2年目からは、前年の所得に応じた住民税の支払いも生じます。

住民税の支払いにより、1年目より2年目の方が手取り額が低くなる場合があります。こうしたことを知っておけば、あらかじめ貯金をするなどして対応できますが、そうでないと2年目以降の生活に支障をきたしてしまう人もいるでしょう。納税は国民の三大義務ですから、自分が支払う税金について、ある程度知識を付けておく必要があります。

また、研修が始まると、病院の宿舎や、病院の近くの住居に引っ越しが必要なことも多いでしょう。電気・水道・ガスの契約や住民票の異動など、引っ越しに伴う各種手続きも把握し、早めに準備をしておきましょう。学生時代に実家で暮らしていた人は、一人暮らしをしていた人よりも、この点は積極的に学びが必要でしょう。

補足:医師賠償責任保険

保険に関しては、医師に特有の「医師賠償責任保険」もあります。病院やクリニック向けの「病院賠償責任保険」以外に、医師個人で加入する「勤務医師賠償責任保険」「日本医師会医師賠償責任保険」などがあります。

研修医は指導医の下で診療を行うため、直接訴訟の対象となることは多くありません。しかし医療訴訟は高額になりやすいため、万一のリスクに備えて保険に加入しておくのがおすすめです。病院から加入先を指定される場合もあるかもしれませんので、研修が始まってからの検討で良いでしょう。

銀行口座やクレジットカードを用意しておく

仕事が始まると給与が振り込まれますので、本人名義の銀行口座を用意する必要があります。学生時代から持っている人もいるかと思いますが、給与振り込みの専用口座を持っておくと収入を管理しやすくなり良いでしょう。

また、病院内のATMで毎回現金を引き出すのは大変ですし、手数料もかかります。院内に自分が利用している銀行のATMがない場合もあるでしょう。現金に頼らなくて良いよう、クレジットカードを1枚作っておくと便利です。QRコード決済も活用できますが、施設によって利用手段が限られている場合がありますので、勤め始めてから検討するほうが良いでしょう。

規則正しい生活習慣や必要なスキルを身に付けておく

形ある"持ち物"とは少し異なりますが、身に付けておいた方が良いものをご紹介します。

規則正しい生活習慣

医師国家試験が終わった後は、卒業旅行へ出かけたり、不規則な生活を送ったりすることも多いかと思います。しかし研修生活が始まると、朝早くから出勤する必要があります。遅くとも3月中旬くらいからは、生活リズムを整えておきましょう

タイピングスキル

臨床研修の指定病院になるような規模の病院であれば、近年は電子カルテが主流です。日々のカルテ記載やサマリー作成など、文字入力が求められる場面は多いでしょう。極端に速い必要はありませんが、WPM(words per minute)200~250程度で正確にタイピングできるスキルは、作業効率を上げることにつながります。無料のタイピング練習アプリなどもありますから、これらを利用して訓練を積むのも良いでしょう。

国家試験後も勉強を続けておくべきか?

カレンダーとボールペン

国試後の春休みに、研修に向けて勉強をしておくべきかどうか、気になる方も多いかと思います。

こちらについてはいろいろな考えがあります。もちろん、勉強しないよりはした方が、その分知識が身に付きますが、ほかのことに回せる時間が減ってしまうのも事実です。

国試直前期は、1日10時間程度勉強していた人も少なくないかと思います(もっと多いよ!いやもっと少ないよ!という方もいらっしゃるでしょうが)。座学の勉強は、すでに十分な時間を費やしているのではないでしょうか。国試後は、医学の勉強以外のことに時間を使う方が有意義であると、個人的には考えます。

まとめ

桜のある日本の風景 安行桜

今回は医師国家試験を終えた後、臨床研修が始まるまでに準備しておきたいことについて解説しました。国試を受けた後、研修が始まるまでの期間は貴重な長期休暇となります。リフレッシュしたい気持ちもあると思いますが、研修が始まると日々の生活が忙しくなります。あらかじめ準備できることを知っておけば、4月から効率良く研修に臨むことができるでしょう。

Dr.SoS

執筆者:Dr.SoS

皮膚科医・産業医として臨床に携わりながら、皮膚科専門医試験の解答作成などに従事。医師国家試験予備校講師としても活動している。

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