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医師免許取得と医籍登録完了後は、研修医として全国各地の医療機関で働くことになります。
研修は初期研修(臨床研修)と後期研修(専門研修)に大別され、研修の目的、実務内容、身につけられるスキルなどが異なります。研修時代の経験や人脈は、その後の医師人生に大きな影響を与えるため、研修先はしっかり吟味して選びたいものです。
本記事では、研修期間、初期研修と後期研修の目的、各研修先の選び方を解説します。
研修期間は初期研修と後期研修をあわせて5年
まずは臨床研修制度が確立された背景から説明します。
臨床研修制度改定と基本理念の確立
臨床研修制度は全国にある国の指定を受けた研修病院(大学病院を含む)に所属し、実際の臨床を通して知識やスキルを習得するために2004年より開始された制度です。医師としての人格の涵養(かんよう/じっくり養い育てること)、医学と医療の担う社会的役割の認識、プライマリ・ケアに関する診療の能力習得を基本理念として掲げています。
当制度施行前、研修プログラムは医療機関ごとの格差が激しく指導内容の不十分さが目立っていたうえ、研修医はアルバイト扱いで身分と処遇が非常に不安定な状態でした。全国で医療事故が相次いだことや、2002年の研修医の過労死による裁判で、研修医は賃金が必要な労働者であることが認められるなど、研修医の身分保障や給与保障を見直す動きが加速しました。その結果、臨床研修制度が改正されました。最近では、2020年にも時代の流れを受けて大幅な改定が行われています。
研修先次第では研修期間の長さが異なることも
研修期間は5年間で、前半の初期研修(臨床研修)と後半の後期研修(専門研修)に分けられます。なお、現在「研修医」は一般に初期研修医を指し、後期研修医は「専攻医」「専修医」と呼んで区別することもあります。
初期研修は、2年かけて基幹型臨床研修病院、協力型臨床研修病院および臨床研修協力施設(診療所、保健所など)をまわります。研修内容の詳細は医療機関ごとに異なります。初期研修期間を3年と定めている医療機関もまれにあるので、研修先を選ぶ際は学べる内容に加えて研修期間も確認しましょう。
一方、後期研修は3年間です。2018年から導入された新専門医制度に沿って専攻分野を決め、初期研修よりも高度な知識と技術を習得します。後期研修には厚生労働省による明確な定義はありません。学会や医療機関ごとに独自の制度が設けられており、学ぶ内容によっては3年以上の期間を要する場合もあります。
初期研修の目的
続いて、初期研修の目的について説明します。
2年間かけて複数科をローテンション
初期研修は、医師としての基礎を身につける期間です。1年目では内科6か月、外科3か月、救急・麻酔科を3か月かけてまわり、各診療科の基礎を習得します。2年目には1か月ごとに小児科、産婦人科、精神科に配置され、地域保健・医療の各領域での研修の後、自身で診療科を選択して研修を受けます。
医師としての「いろは」を身につける
初期研修の目的は、多くの診療科をまわり、臨床現場での経験を積んで、診療に必要な能力を習得することです。ここでいう必要な能力とは、診療のための技能と知識だけでなく、患者さまとそのご家族、ならびに一緒に働くコメディカルへの対応なども含みます。
患者さまには、一人の人間としての個性や意志があります。医師として患者さまを任されたからには、一人ひとりの声に耳を傾け、真剣に向き合う必要があるのです。また、指導医などの上級医から厳しい指摘を受けて落ち込んでも、それを受け止めて前進しなくてはいけません。初期研修では、謙虚な姿勢で学び、医療従事者に必要なコミュニケーション能力を身につけましょう。
後期研修の目的
2年の初期研修を終えたあと、次に始まるのが後期研修です。
専門医習得を目指し自身のキャリアを磨きあげる
初期研修を修了すると、後期研修がスタートします。新専門医制度では「専門医取得にかかる研修」と呼ばれる期間です。後期研修は19におよぶ基本領域から希望先を選択し、専攻医として研修プログラムを受けます。初期研修では広く浅く学ぶのに対し、後期研修は専門領域についてより深く学ぶ期間と言えるでしょう。
任される仕事の量と責任は初期研修時以上
後期研修では任される診療業務も増え、次第に手術や処置を担当するようになります。最初はマンツーマンだった上級医による指導も、経験を積むにつれてほとんど見守るだけの状態になっていきます。医師数や医療機関の少ない地域では、研修医が主戦力として活躍し、一般外来や一部の病状説明など、現場を回していることも珍しくありません。
また後期研修では、本業に支障が出ない範囲であれば副業許可が降りるようになります。医師のアルバイトには、外勤と呼ばれる夜間の宿当直などがあります。年収アップが目的と考えられる傾向にありますが、本業とは違った経験を積めるメリットもあります。
研修先の選び方
最後に、研修病院を選ぶ際のポイントについて解説します。
労働環境と教育体制の充実度は必ず確認する
研修先を選ぶ際にチェックしたい事項には、以下の2つがあります。
- 直近数年間の研修医受け入れ実績
- 指導医の在籍数
臨床研修病院の指標にもなっているので、ぜひ確認しておきたいポイントです。
後期研修に入って副業が解禁されるまでは、研修先の給与以外の収入源がない状態が続きます。生活維持のためには重要な要素となるため、年収や月収は必ずチェックしましょう。
当直の頻度と業務の詳細も、可能な範囲で確認すると良いでしょう。とくに若手医師は経験を積むためといった目的や人員配置などの都合から、通常より多く当直勤務を求められるケースもあります。
また、福利厚生の内容や充実度については、医療機関によって大きく差が出ます。具体的には、家賃補助やスポーツジム・部活動の活動費、などがあります。将来結婚して子どもをもちたいと考えているなら、時短勤務や院内保育園の有無などもあわせて確認すると良いでしょう。
初期研修のカリキュラムは要チェック
初期研修は、医師一年生として基礎を身につける大切な期間です。そのため、初期研修を受ける医療機関および関連施設を選ぶ際には、指導体制や同期、先輩医師との人間関係を重視する方が多いようです。
また、多数の診療科で横断的に経験を積める貴重な機会でもあるため、選択期間の長さやカリキュラムの充実度を重視する傾向も見られます。
後期研修先はキャリアプランと専門医取得を意識して選ぶ
後期研修は、大学医局に在籍して医局派遣で大学病院や関連病院で経験を積む以外に、博士号取得を目指して大学院に籍を置きながら後期研修を受けるケースもあります。ほかにも、あえて大学病院の医局ではなく市中病院での研修や、臨床以外の進路を選択することも可能です。
そのため、後期研修では研修プログラムが自分の希望と一致していることを確認しておきましょう。専門医の知識を深めるなら、資格取得に向けた研修制度とフォローアップ体制の充実度を、事前に調べることが重要です。
後期研修の前後は、キャリアチェンジを考えるタイミングでもあります。専攻医になったあとは、医師不足の地域で活動を行ったり、大学院などでの基礎研究に取り組んだりと、さまざまな選択肢が考えられます。医療機関によっては今後の進路に関する相談に乗ってもらえるため、研修後のフォローアップ体制についても確認すると良いでしょう。
近年、職場環境や人間関係に行き詰まり、転科や転職を検討する専攻医も増えています。納得できる理由があれば転科を容認する現場も多くあるようですが、指導体制や職場の人間関係と雰囲気が自分に合うかを事前に見極めることも研修先選びには欠かせないのです。
キャリアプランに基づく研修先選びで後悔のない選択を
医学部卒業後は、初期研修医として2年以上、後期研修では専攻医として3年以上、トータルで5年以上の年月をかけて臨床技術を習得します。
初期研修では、医療従事者としての心構えや診療技術の基礎を身につけます。それに対して後期研修は、自ら志望した専攻分野の知見をさらに深める期間です。
目指す将来像は、医師それぞれ異なります。将来どのような医師になりたいのか、そのためには何をする必要があるのか、この2点をしっかりと考えたうえで決断する必要があるでしょう。
研修先の医療機関決定にあたり、医学部生時代の友人や同僚からの口コミは貴重な情報源になります。医療機関のホームページや民間企業が運営する情報サイトも同様です。
キャリアプランを早い段階で練り上げ、情報収集を積極的に行い、後悔のない選択をしましょう。
ドクタービジョン編集部
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