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放射線科医の業務は、「画像診断」と「放射線治療」に大別されます。いずれも正確さと専門性が求められる業務で、重要度は年々増している状況です。
一方で、「放射線科医の仕事が将来的に人工知能(AI)にとって代わられるのではないか」と危惧する声もあるようです。
今回の記事では、放射線科医に興味のある方や放射線科への転科を検討されている方に向けて、放射線科医の現状、AIとの関連性、将来性について取り上げます。
放射線科医の現状
まずは放射線科医の人数や仕事内容、年収など、現状についてみていきましょう。
放射線科医の人数や割合
厚生労働省の『平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』によると、2018年末時点で医療施設に従事する医師総数311,963人のうち放射線科医は6,813人。これは全体の2.2%です。このうち病院に勤務しているのは6,357人となっており、放射線科医のほとんどが病院勤務だとわかります。
業務内容
放射線科の業務は、放射線診断と放射線治療の2つに分けられます。
放射線診断に従事する医師は、CTやMRIなど検査の管理(適切な撮像範囲と撮影方法の指示出し)と画像診断の読影を行います。放射線治療に関わる医師の場合は、悪性腫瘍やがん治療に対する放射線量の調整などが主な業務内容です。
近年では、画像診断と同時にカテーテルなどの器具を挿入して治療を行うIVR(Interventional Radiology/インターベンショナル・ラジオロジー)を担う医師も増えています。
年収
医師全体の平均年収1,596万円に対して、放射線科の平均年収は1,550万円。業務内容の近い診療科をみると、放射線診断科は1,300万円、腫瘍放射線科は1,150万円、放射線治療科は1,075万円と、こちらは医師の平均年収よりも下がる結果となりました(※1)。
※1.2020年10月時点のドクタービジョン掲載求人をもとに平均値を算出しています
放射線科医の仕事はAIにとって代わられる?
病気などの正確な診断には欠かせない放射線科医ですが、近年、AIの発達によってその仕事が奪われるのではないかと言われています。果たして本当にそうなのでしょうか。その真相をみていきましょう。
新興ベンチャー企業が医療ヘルスケア市場を席巻
医療機器やヘルスケアにかかわる領域の進化は、ここ数年目覚ましいものがあります。医療業界は巨大でありながら、従来からの手法を踏襲していることが多く、そこに目をつけて産業化するテクノロジー企業が多く登場したためです。
近年の医療機器やヘルスケア開発に関するトレンドは、以下のように言われています。
- 「治療から予防」......病気になってから治療をするのでなく、病気にならないよう策を講じる
- 「画一から個別化・層別化」......全員同じではなく、個々人に応じた診療をする
デジタルヘルスケア市場で主な投資対象とされているのは、データマネジメント・解析、ウェルネス、ゲノミクスなど。従来の市場では、本流とされていない分野です。これから取り上げるAI(人工知能)も、近年投資が進むデジタルヘルスケア市場の構成要素に含まれています。
人工知能(AI)が医師を超える未来はそう遠くない
AIを使用した画像解析では、ディープラーニング(深層学習)を繰り返すことで画像認識能力の向上が期待できます。そのため、予防(検査)・診断を効率よく実施するためのツールとして開発が進められているのです。
近年、AIと医師による診断の精度を比較することを目的に、Googleが開発した肺がん健診AIと放射線科医師6名がそれぞれCT画像を読影する実験が行われました。AIによる読影は医師より偽陽性率が11%低く、がんを5%高く診断する結果となっています。今後はレントゲンやMRIなどの画像診断、病気の診断や治療方法の選択などへの導入を目指した研究開発も行われていくでしょう。
こうした動向を見聞きすると、「放射線科が行っている画像読影などの仕事がAIにとって代わられてしまう」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。学習や経験の蓄積により、AIが医師を超えるのは時間の問題と言われています。とはいえ、人間の仕事をすべてAIが行うようになると考えるのは、やや早計のようです。
(※Google社公開の全英文記事)
AIを使いこなすことが求められるようになる
前述のような懸念がある一方、「医師の仕事はなくならない」とする意見も。その根底には、責任の所在に関する問題があります。AIは自らの診断に対して責任を取れないため、AIによる画像診断をする場合に管理者が必要です。
そう考えると、AIによる画像診断は単独で行われるのでなく、放射線科医の業務効率化を支援するための診断ツールとして使用されるのが望ましいでしょう。
放射線科医は、医師の全体数に占める割合は少ないながらも、診断を進めるにあたって重要な判断材料となる画像診断を引き受けています。
AIによる画像診断を臨床現場の放射線科医が使いこなすようになれば、画像診断そのものにかける時間が削減され、捻出した時間を医療の原点でもある「患者さまと向き合う」ために使えるようになるでしょう。
放射線科医の将来性
がん治療の三本柱の一つとして、放射線治療はかねてより知られていました。近年では、機器の性能向上と新技術の確立により、外科治療に匹敵する治療効果が認められてきていることと、低侵襲治療(検査や手術などによる痛み、出血、発熱などを最小限まで減らした治療)に対するニーズの高まりを受けて、「切らないがん治療」を求める声は今後さらに増えるものと考えられます。放射線治療を担う放射線科医の需要も、さらに増えるのではないでしょうか。
放射線科医の数自体が少なく、ほかの診療科と同様に都市部での偏在が目立ちます。高齢化でベテラン医師が徐々に引退していくことを考えると、放射線科医の育成は急務と言えるでしょう。
AIなど新技術を駆使して放射線科の将来を切り拓く
医療技術は日進月歩です。30年前には想像すらできなかった画像診断システムやAIが登場し、医療現場に大きなインパクトを与えました。現在も、世界中の企業などが医療機器・ヘルスケア領域への新規参入や投資を行っています。10年後にはさらに新しい技術が登場して話題を集めているかもしれません。
AIは画像診断との相性が良いと言われています。CTやMRIなど最新の医療機器を日常的に使って画像診断を行う放射線科も、同じくAIと親和性が高いと言えるでしょう。放射線科はAIと臨床現場をつなぐハブ的存在として、今後もその存在感を放っていくことになると考えられます。
ドクタービジョン編集部
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