医療技術の進歩に伴い、国から先進医療として認められる治療・検査は年々増加しています。患者さまの治療の選択肢を増やすことにも寄与している先進医療。現場で診療に携わる医師にとっても先進医療について説明する機会が増えていることでしょう。患者さまが先進医療を希望された場合、医師はどのような点に気をつければよいのでしょうか。
この記事では、患者さまに説明する際のポイントや先進医療の基本知識について解説します。
先進医療とは
先進医療とは、保険診療と認められていない治療や技術のなかでも、国が認めた一定の施設や方法の範囲内で患者さまが受けられる医療のことです。先進医療は、患者さまの治療の選択肢を広げて利便性を上げるために保険診療と混合するかたちで利用されます。
国により先進医療に指定されている治療の例として、以下が挙げられます。
※:適応に詳細規定あり
先進医療の種類について
先進医療は第2項先進医療(先進医療A)、第3項先進医療(先進医療B)に分かれています。2021年3月現在、両者をあわせて81の治療・検査が先進医療として国に認められています。ここでは、第2項先進医療と第3項先進医療の違いについてみていきましょう。
第2項先進医療(先進医療A)
未承認や適応外の医薬品・医療機器の使用を伴わない医療技術です。また、未承認・適応外の体外診断薬を使用する医療技術などであっても、その検査薬などの使用による人体への影響が極めて小さいものであれば、第2項先進医療となります。
第3項先進医療(先進医療B)
第3項先進医療に分類される医療技術には大きく2つあります。1つは未承認や適応外の医薬品・医療機器の使用を伴う医療技術、もう1つは未承認・適応外の医薬品・医療機器を使用しない医療技術であっても、その医療技術の安全性・有効性を判断するために治療・検査の行われる環境や効果などを重点的に観察・評価する必要があると考えられる医療技術です。
患者さまに先進医療について説明する際のポイント
標準治療で望ましい効果が得られない患者さまが、ご自身で調べるなどして先進医療を受けることを希望されるケースがあります。とくにがん診療に携わる医師にとっては、先進医療について患者さまから説明を求められる場合もあるでしょう。
先進医療は標準治療ではなく、治療も高額になるため、治療を行う前にしっかりと説明をして患者さまの同意を得ることが大切です。では、患者さまへ先進医療について説明する際にどのような点に留意すればよいのでしょうか。
先進医療について患者さまに説明する際、押さえておきたいポイントは次の5つです。
検討する先進医療の内容
患者さまの疾患、病状において検討可能な先進医療の内容について、必ず説明しましょう。先進医療の中には細心の注意を払いながら提供する必要のあるものもあります。検討する先進医療のリスクとベネフィットをしっかりと説明することが大切です。
患者さまの状態によっては先進医療を受けられない場合があること
先進医療の適応となる疾患であっても、患者さまの状態によっては先進医療を受けられないケースがあります。保険診療と同様に、患者さまが希望されたからといって必ずしも治療・検査を受けられるわけではないことを伝えましょう。
保険診療との併用が可能であること
先進医療で提供される治療・検査のなかに保険診療の内容が含まれる場合には、併用(混合診療)が可能です。保険診療と併用することで全体の医療費を抑えられるケースもあるため、その旨を伝えるとよいでしょう。
高額療養費制度、加入保険の先進医療特約についての案内
先進医療を受けると、最終的に医療費が数百万、数千万と膨らむことも少なくありません。通常、先進医療は高額療養費制度の対象にはなりませんが、診察や入院料といった一般診療と共通する部分については保険診療となり、高額療養費制度の対象となります。
また、患者さまが加入している医療保険に先進医療特約が付帯していれば、特約が適用されるケースもあります。加入している保険会社へ問い合わせることも併せて伝えておきましょう。
最終的な患者さまの自己負担額について
患者さまが気になるのは、最終的にかかる医療費の総額です。医療費の自己負担額が大きいと患者さまやそのご家族の生活を圧迫することも珍しくありません。先進医療について患者さまから同意を得る前に、最終的な患者さまの自己負担額についてしっかりと説明しましょう。
丁寧な説明を心がけ、医師、患者さまが納得して治療に臨めるように
先進医療は標準治療と比べて安全性や効果が確立されておらず、医療費も高額になりがちです。先進医療を希望される患者さまの多くは標準治療で思うような効果を得られず、わらにもすがる思いで治療・検査を希望されることがほとんどでしょう。
医師は、患者さまの最終的な自己負担額も含めて、患者さまが納得して先進医療を受けられるよう丁寧かつ十分な説明を心がけることが大切です。