AI(人工知能)は進歩し続けています。将棋の世界の話になりますが、数年前まではAIが将棋のプロに勝つことはできませんでした。しかし今や、プロがAIに勝つことはほぼ不可能で、その差はどんどん開いているのです。驚くべきスピードで進歩を続けるAI。将来的には、私たちの仕事にも活用され、働き方は大きく変わっていくと考えられます。では、AIの登場により、医師の仕事はどのように変わるのでしょうか。
AIは医療のどの部分で役に立つか
現在のところ、AIは検査工程において、ある程度の精度をもって判断できると考えられています。欧米諸国では、AIによる画像診断を行い病名を確定させたり、患者さまの遺伝子情報から可能性が高い病名を解析したりといった使い方がされているようです。
データから規則性や関連性を見つけ出して判断や予測を行う、機械学習。それを発展させたディープラーニングにより、AIは自動で学習して、判断や予測の精度を高めています。その精度は人間を超えたとも言われているのです。検査工程において、AIが信頼される時代になるのは、思ったよりも早いかもしれません。
厚生労働省は、具体的に以下の領域などでAIの実用化が進むと考えています。ここで注目すべきは、あくまでAIは人間の支援を目的として活用されるということです。
①ゲノム医療
DNAに含まれる遺伝子情報を集約・調査。より効率的に病気を診断し、より効果的な治療を導き出すゲノム治療。この治療を実現するためのデータベース構築などに用いられると考えられる。
②画像診断支援
MRI検査やCT検査などの検査画像を集めたデータベースを用いて、対象となる検査画像の読影を行う。医師による診断の根拠の底上げにつながると期待されている。
③診断・治療支援
問診など、一般的な検査にAIを活用。論文などから抽出されたデータベースなどを用いて、AIが診断を行う。最終的な責任は医師が持つが、業務効率化や負担軽減に繋がると期待されている。
※参考>https://www.gene-lab.com/column/column_180327_01.html
※参考>https://gemmed.ghc-j.com/?p=24403
AIにより人間の医師の仕事はなくなるのか?
AIの実用化が進むことにより医師の仕事がなくなるのではないか、という不安の声が聞こえています。しかし、現在のところ可能性は極めて低く、あくまで支援を目的に活用されるでしょう。
その理由の一つに、「責任の所在」があります。判断の誤りなど、何かしらの医療ミスがあったとき、AIは責任を取ることができません。一般的に、何かしらの医療ミスが起きた時、責任を取るのは直接治療に当たった医師となります。真摯に原因を究明する...といったような責任を負うことが求められるでしょう。しかしAIの場合はそのような対応を取ることができません。
いわゆる、倫理観の問題と言えますが、しばらくの間は医療の先頭にAIが立つことはないでしょう。あくまでも、医師の支援を目的に使用されることがメインとなるはずです。いま現在、医療において最も活用されている画像診断の分野でも、基本的には医師の診断を助けるツールとして使われていくのではないでしょうか。しばらく、医師の仕事はなくなることはありません。
将来を見据えて、どのように診療科を決めればよいか
医師の診断を助ける支援ツールとしての使用が見込まれるAI。しかし、目覚ましい進歩を続けているため、10年後20年後には医師に代わり診断を下している可能性は否定できません。
もし、AIによって仕事を失うのでは...と気を揉むのであれば、AIに任せることのできない領域で活きる知識やスキルを高める必要です。たとえば、外科手術や出産は人間の手技が必要となるため、まだまだAIやロボットには任せられない分野と言えるでしょう
AIの登場で、医師を取り巻く環境は大きく変わるのではないかと見込まれています。「10年後20年後も働き続けられるか」といった軸で、診療科を選ぶ時代が近づいてきているのかも知れません。