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新型コロナウイルス感染症について、日本でも高齢者を優先にワクチン接種が始まりました。しかし、変異株の流行もあり未だ予断を許さない状況です。感染が拡大している現状を踏まえて、厚生労働省は数多くの「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」を事務連絡として示しています。
この記事では、新型コロナウイルス感染症に関する診療報酬臨時特例について詳しく解説していきます。
診療報酬の臨時特例措置について
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症によって全国の医療機関に過重の負担がかかっていることから、診療報酬について数多くの臨時特例措置を出しています。
すべての医療機関に対する臨時特例(2021年9月診療分まで)
2021年2月26日に示された「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その35)」では、「特に必要な感染予防策(*)を講じた上で診療を行う」すべての医療機関が対象となる臨時特例について明らかになりました。
新型コロナウイルス感染症の患者さまに対しての対応措置をとっていない医療機関においても、徹底した感染症対策が必要不可欠となっています。感染症対策には様々なコストがかかるため、すべての医療機関で、通常の診療報酬に感染症対策実施加算をすることが認められました。
【感染症対策実施加算】
臨時特例の期間は、2021年4月から9月診療分までです。10月以降は、感染拡大状況や医療現場の状態などを踏まえて継続するか検討されます。
*:特に必要な感染予防策とは 「『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き』等を参考に、感染防止等に留意した対応を行うこと」とされています。具体的な例としては、診療の際に飛沫・接触予防を適切に行うこと、感染予防策に関して職員に周知すること、病室や施設の運用にあたっては感染防止に資するように変更などを検討することが挙げられています。
新型コロナウイルス感染症の患者さまを受け入れている医療機関について
前述した内容のほかにも、診療報酬の算定にあたっての施設基準については下記のような臨時特例が出されています。
2021年4月6日に示された「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その41)」では、これらの臨時特例の対象が明確にされました。
対象となるのは、具体的に下記に該当する医療機関とされています。
・ 新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れた保険医療機関等
・上記に該当する医療機関等に職員を派遣した保険医療機関等
※新型コロナウイルス感染症から回復した後に引き続き入院が必要とされる患者さまを受け入れた保険医療機関等を含む
・学校等の臨時休業に伴い、職員の勤務が困難となった保険医療機関等
・新型コロナウイルス感染症に感染し又は濃厚接触者となり出勤ができない職員が在籍する保険医療機関等
これらに該当する期間は、当該期間を含む月単位で取り扱います。病棟単位ではなく病院単位のため注意してください。また、保険医療機関等には、薬局や訪問看護ステーションも含まれます。
また、緊急事態宣言が発せられた場合は、日本全国のすべての医療機関が対象になります。蔓延防止等重点措置が発せられた場合は、「当該区域を含む都道府県に所在する全ての保険医療機関、保険薬局及び訪問看護ステーション」が特例の対象です。
2022年度には診療報酬改定の予定も
2022年度には、診療報酬改定が行われる予定です。改定に向けたスケジュールや論点となるポイントについて見ていきましょう。
改定に向けたスケジュール
2021年4月14日の中央社会保険医療協議会・総会では、厚生労働省保険局医療課が下記のようにスケジュール案を示し、了承されました。
出典:中央社会保険医療協議会総会資料
新型コロナウイルス感染症の影響で、従来通りのスケジュールで進めることは困難となっています。そのため、医療機関の経営状況に関する調査や入院医療に関する調査、2020年度診療報酬改定の検証などを行った上で、2021年7月ごろから論点の整理が行われる予定です。具体的な検討は、9月ごろから進められます。
ただし、秋から冬にかけての感染拡大が懸念されており、場合によってはスケジュールが変更される可能性もあるでしょう。
論点となるポイント
【2020年度診療報酬改定の影響を踏まえた見直しについて】
2022年度の診療報酬改定は、2020年度の改定による影響や効果を分析したうえで見直す必要があります。しかし、新型コロナウイルス感染症によって非常に多くの臨時特例措置が出されたため、何が原因となって引き起こされた結果なのかを判別する必要が出てきました。
新型コロナウイルス感染症による影響か否かを判別することは困難なものの、可能な限り判別できるような方法にして調査が進められています。
【日本病院団体協議会が出した6項目の要望について】
2021年4月16日に日本病院団体協議会(日病協)は、厚生労働省に総論的な第1弾の要望として6項目を示しました。そのため下記の項目についても、議論されると考えられます。
①適切な入院基本料の設定
→地域医療を維持するために、病院経営を支える入院基本料の増点を求めています。
②働き方改革、多職種協働、タスクシェア・タスクシフトを進めるための診療報酬上の評価、基準緩和
→多職種チームによる入院医療の提供のための、点数・配置基準の設定を希望するとともに常勤・専従要件の基準緩和などを求めています。
③地域における医療機能の分化・連携を推進するための診療報酬上の評価
→入院患者が他院を受診する場合の入院料の減算について、根本的な制度の見直しを希望しています。また、特定入院料算定病棟・医療療養病棟において、高額薬剤の出来高請求ができるようにも求めています。
④医療におけるICTを推進するための診療報酬上の評価
→電子カルテや地域医療ネットワークの導入、オンライン資格確認のためのシステム導入などにはコストがかかるため、診療報酬で評価するよう希望しています。
⑤救急医療の充実と評価
→救急医療体制の充実のため、2020年度の改定時に新設された「地域医療体制確保加算」の算定要件の緩和を求めています。
⑥食事療養費の見直し
→入院中の食事療養費は、ほぼすべての医療機関で大幅な赤字となっているため、適切な水準に見直すように求めています。
臨時特例や次期診療報酬改定に注目
新型コロナウイルス感染症は日本の医療に大きな影響をおよぼしており、いままでにない柔軟な特例措置がとられています。そのようななかで2022年度の診療報酬改定に向けての議論も進行しており、より良い仕組みとなるよう期待されています。今後の動向に注目していきましょう。
ドクタービジョン編集部
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