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「MedTech(メドテック)」とは、Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。情報技術を取り入れて医療を行うことを意味し、例えばセンサー搭載のIoT機器やスマートデバイスを使うことで健康管理、各種診断など、医療サービスの提供に役立てられるというもの。
長らく医療分野はITの導入が遅れていると言われてきましたが、この数年でAIを駆使した医療サービスが登場するなど、MedTechは目覚ましい発展を見せています。
いったい、MedTechによってどのような医療が可能になるのでしょうか?今回は、世界各国MedTechの実例をご紹介しながら、MedTechの概要と将来の展望について紹介します。
MedTech(メドテック)とは?
高齢化社会による慢性疾患の有病率の上昇に加え、「自分の健康を自分で管理したい」というヘルスケアのパーソナライゼーションに対するニーズはますます高まっています。しかし、長らく議論されている医師不足の問題はいまだ解消されず、患者さま自身も医療費の高騰に苦しんでいる状況があります。
そのようななか、MedTechにより医療のデジタル化が進むことで医療従事者の負担を軽減でき、さらに医療費の抑制にもつながると期待されています。
例えば、MedTechを活用することで診断機器や医療機器にICTを組み合わせたり、健康管理(維持・改善)用モバイルアプリを患者さま一人ひとりが使用できるようにしたりと、インターネット経由で様々な医療サービスの形態をとることが可能となります。それにより、病院での診療や入院そのものが減り、行き過ぎた医療需要を抑えられると考えられています。
MedTechは、第一に予防医学として大きな意義を持ちます。デジタルを駆使した健康管理、疾病スクリーニング、在宅ケアといった策を手厚くすることで、「入院せずに済む」状態の維持が期待できるのです。同時に、患者さまを診察した膨大なデータが集積されるため、ビックデータ解析によってこれまで以上に有効性の高い新薬開発も期待できるでしょう。
MedTechの導入が一般的になると、医療コストの流れも変化していきます。従来は患者さまに提供された医療サービスの「量」に基づいた支払いモデルだったものが、「価値」や「成果」をベースにした支払いモデルに変わっていきます。
現在、世界各国の医療テクノロジー開発企業や医療機器メーカーが手を組んで新たな医療課題の発見に取り組んでいます。IT業界からの注目度も高く、MedTechは成長分野として注目され、サービス導入に向けた資金調達も進んでいます。
MedTechで叶えられる医療の未来
実際に、MedTech企業はどのようなサービスを提供しているのでしょうか?医療従事者と患者さまがどのような恩恵を享受できるのか事例と合わせて見てみましょう。MedTechの具体的なサービスには、以下のようなものがあります。
・オンライン診療サービス
・医療従事者間、医療従事者・患者間のコミュニケーションツール
・患者の健康管理アプリ
・新薬開発に向けた診療データ、人体データの蓄積と解析
・治療を受けた患者の反応の分析とフィードバック
・デジタル機器のアップデート
疾病・傷害の予防から、発症後の診察、治療、病後の経過観察まで、あらゆるステージでMedTechは活用されます。
アメリカのMedTechの事例
アメリカの事例として、Googleの元幹部エイドリアン・アオウン氏が立ち上げたMedTechサービス「Forward」をご紹介します。Forwardは、快適でスマートな医療を提供する「アップルストアのような医療施設」をつくることを目指したサービスです。
まずは予防医療の徹底のため、医師たちのチーム体制による患者さまのウェルネスケアを行います。スポーツジムのような会員制をとり、患者さまは月額会員費を支払うことで健康管理プログラムや各種コンサルティングを受けることが可能。医師自身がAI、ソフトウェア、ハードウェアなどを総合的に活用して、会員となった患者さまがセルフメディケーションをできる体制を構築することにより「病気にならない人」を増やせるとされています。
日本のMedTechの事例
続いて日本の事例も見ていきましょう。株式会社Lily MedTechは、女性に優しい乳房用超音波画像診断装置の開発を目指して設立されました。
11人に1人の女性が乳がんを患っているというデータがあるなか、早期発見・早期治療につながるような技術革新のために、同社は東京大学医学系研究科・工学系研究科の医用超音波技術をもとにした「リングエコー」という画像診断装置を開発しました。
「リングエコー」は、超音波振動子が円環状になって、均質で解像度の高い撮像を可能とします。乳房の超音波画像診断を行う際、受診者はうつぶせになってベッドに開いている穴に乳房を入れ、円環状の超音波振動子が下垂した状態の乳房内部を撮影していくというものです。
従来の乳がん検査はマンモグラフィを基本としており、乳房の圧迫による痛みを訴える声が多くあがっていました。「リングエコー」による検査は圧迫がないため痛みを感じることがなく、放射線被ばくの心配もありません。また、診断精度の向上も可能だと言われています。
このように、MedTechは、従来マンパワーに頼ってきた医療業務をAIやソフトウェアなどに引き渡し、「サービス受給者が患者にならないで済む」予防医療を実現することで、医療従事者の負担の軽減が望まれています。
患者さまに対しては、受診時の痛みや恥ずかしさなどを解消できるので、受診に対する心理的ハードルを下げ、早期の病気発見と治療に結び付けることができるでしょう。MedTechは医師・患者それぞれの負担と問題点の解決に寄与することで、持続可能な医療制度そのものを構築できると期待されています。
医師はMedTechとどう関わる?
MedTechをうまく活用することで、医師は医療サービスの質の向上や効率化ができる可能性があります。
現在は新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対して、外出しなくても医療機関と同じレベルの診療を受けられるオンライン診療の開発が急がれています。オンライン診療とリモートケアに関するテクノロジー開発の進んだ医療ベンチャー企業が国境を越えて注目を集めており、かつてないスピードで医療の技術革新が進んでいるといえるでしょう。
医療においては、AIが得意とする仕事と、医師にしかできない仕事があります。AIやディープラーニングは診断や分析などの精度を向上することはできますが、患者さまとのコミュニケーションや、総合判断、創造性などのスキルは、経験を積んだ医師の方が勝ります。これからは、自らのスキルを高めつつ、MedTechを駆使できる医師の評価が高まる時代になるでしょう。また、ただテクノロジーに詳しいだけでなく、医師同士のコミュニケーションと情報交換の密度も高めていくことが重要になります。
MedTechを扱う企業では、現役の医師や医師免許を持つ人も多く働いています。医師のキャリア選択のひとつとしてもMedTechへ関わることがある点を知っておくとよいでしょう。
MedTechは日本の医療を変える!今後の動向に注目
MedTechは、病院や医療の現場、医薬品業界、医療機器業界のいずれにおいても、医療イノベーションを飛躍させていくものです。現行の法制度や倫理との整合性などの課題もありますが、MedTechを活用する流れは今後ますます強くなることでしょう。
ITの強みのひとつに、医薬品や機器の開発・改良、テクノロジーのアップデート、競合の動向といった情報を世界中に同時にシェアできる点があります。医師がいち早く最先端の医療技術に触れることで、その恩恵をより多くの患者さまに届けることができるはず。
今後は医師一人ひとりが、MedTechに関する知識を求められる時代になっていくでしょう。
ドクタービジョン編集部
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