新型コロナウイルスによって医療現場はどう変わった?

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業界動向

公開日:2020.09.03

新型コロナウイルスによって医療現場はどう変わった?

新型コロナウイルスによって医療現場はどう変わった?

新型コロナウイルスが世界を震撼させた2019年末から半年以上が経過しましたが、未だ終息の気配は見えていません。外出自粛、マスク着用やソーシャルディスタンスの徹底などにより私たちの「日常」は大きく変わりました。

医師が従事する「医療現場」も、大きく変わったものの一つです。患者さまの受診控えによって、経営状況の悪化に追い込まれた医療機関も珍しくない一方、オンライン診療や服薬指導など新たな医療への取り組みも進んでいます。そこで今回は、新型コロナウイルスが医療現場に与えた影響とそれにともなう今後の課題について詳しく解説します。

新型コロナウイルスによる医療現場への影響とは?

新型コロナウイルスによる医療現場のイメージ

新型コロナウイルスは医療現場の「日常」にも大きな変化を及ぼしています。「With(ウィズ)コロナ」に向けて新しい医療体制の構築も進んでおり、今後医療の現場はさらに変化していくことも考えられます。まずは、新型コロナウイルスが医療現場にどのような影響を与えたか詳しく見てみましょう。

受診患者数の減少による赤字転落

医療機関は新型コロナウイルスをはじめとする病原体に感染するリスクが高い場所と言えます。そのため、日本国内で本格的に新型コロナウイルス感染症患者が増えはじめた4月頃から、感染対策として「受診控え」をする患者さまが増加しました。6月以降は、外来・入院ともに全国的な患者数は増えていますが、新型コロナウイルス以前の水準には達していません。とくに小児科を標榜する診療所の患者数は半減しているとのことです。

このような影響から、全国で経営状況が悪化している医療機関が増えています。新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関の8割以上は赤字であるとの報告もあり、外来休止や閉院に追い込まれる医療機関も少なくありません。このままの状況が続けば、医療の提供を続けられない医療機関も益々増えることが予想されています。

医師余り?医師の偏在?

日本は先進国のなかでも人口あたりの医師数が少ない国です。これまで全国的に医師は不足傾向にありましたが、新型コロナウイルスは「医師余り」という現象を引き起こしているとされています。

というのも、上述したように医療機関の多くは新型コロナウイルスの影響で経営状況が悪化。「フリーランス医師」として働く非常勤医師の雇用を打ち切った医療機関が続出したからです。さらに、県境をまたいだ移動の自粛が長く続いたため、都心部からアルバイト医師を呼び寄せる地方医療機関の雇用が少なくなったことも大きな要因の1つと言えます。

これまで自由な働き方で高い報酬を得ていたフリーランス医師にはつらい時代となった一方、アルバイト医師が少なくなったことで常勤医師の負担が増加したのも事実です。日当直や時間外勤務が増えた医師も多いでしょう。また、赤字転落にともなってボーナスや給与がカットされるなど、労働環境が悪化している医療機関では、医師だけでなく看護師や薬剤師などの医療従事者も退職希望者が続出しているのが現状です。

付き添いや面会お断り

新型コロナウイルスの感染拡大を懸念し、外来患者の付き添いや入院患者の面会を原則的に許可しない医療機関が増えています。したがって、看護師など患者さまの生活上のサポートを行う医療従事者の負担は増加。さらに、家族に会えない故の精神的な不安から、せん妄症状が現れる方も増えています。付き添いや面会が全面的に認められない状況にご家族からも苦情が上がり、その対応に追われることもあるでしょう。

このように、新型コロナウイルスは医療現場の「日常」を大きく変え、患者さまにも医療従事者にも大きな負担を与えているのです。

新型コロナウイルスで医療はどう変わる?

新型コロナウイルスによる医療現場のイメージ

新型コロナウイルスは医療現場に様々な影響を及ぼしていますが、「With(ウィズ)コロナ」時代に向けて新しい医療の体制構築が進められようとしています。医療は今後、どのように変わっていく可能性があるのか詳しく見てみましょう。

「コンビニ受診」は減少!セルフメディケーションが注目される?

これまで、医療現場で度々問題となっていた「コンビニ受診」。コンビニ受診とは、虫に刺された、深爪したなど非常に軽度な症状のみで昼夜問わず医療機関を受診する行為のことです。日本は国民皆保険制度が整っており、諸外国に比べて医療費が非常に低いため、このようなコンビニ受診が横行していました。コロナ禍にあってもコンビニ受診が完全になくなったわけではありませんが、件数は明らかに減少しています。

また、軽い喉の痛みや咳、ケガなどであれば、医療機関を受診せずに市販薬を服用して様子を見る「セルフメディケーション」を行う患者さまも増えています。日ごろから感染対策を徹底し、栄養バランスのとれた食事にも注意するなど、健康に対する意識が高まっている方も増えているので、今後は「何かあればすぐに医療機関を頼る」方は少なくなると考えられます。

オンライン診療・服薬指導の普及

新型コロナウイルスの拡大にともない、電話やスマホなどの通信機器を用いて診療を行う「オンライン診療」が注目されています。今でこそメジャーになりつつあるオンライン診療ですが、実はオンライン診療が解禁となったのは2017年のこと。2018年にはオンライン診療に係る診療報酬が新設されています。

しかし、これまで認められていたオンライン診療は、長期的な治療が必要な難病・生活習慣病・精神疾患などに限定。さらに初診時は対面診療を行わなければなりませんでした。そんななか、2020年4月には医療機関内での新型コロナウイルス感染症の拡大を予防すべく、厚生労働省は時限的に初診を含めたオンライン診療を解禁。対象疾患も大幅に増え、一気に需要が高まっています。政府はオンライン診療やオンライン服薬指導を円滑に行えるシステム構築を目標に掲げており、今後もさらなる普及が予想されています。

「With(ウィズ)コロナ」時代の医療現場...どんな課題がある?

新型コロナウイルスの拡大により、医療現場は大きく様変わりしました。今後もこれまでと同じ状況に戻ることなく、新たな医療体制が築かれることでしょう。

セルフメディケーションやオンライン診療の普及は、感染対策だけでなく、一人ひとりが健康を意識することで健康寿命の延伸が期待できます。また、医療格差を是正して全国で平等な医療が受けられるなど、多くのメリットがあるでしょう。その一方で、受診のタイミングが遅れるために病気の早期発見が妨げられることや、ネットリテラシーの違いによって新たな医療格差が生まれることなども問題となり得ます。

新型コロナウイルス終息の気配がない今の状況では、今後どのような医療現場がつくりあげられていくのか、想像するのは難しいでしょう。しかし、医師には医療現場の問題を1つずつ解決しながら、よりよい医療を提供できるよう力を尽くす使命もあります。日ごろから現状の医療問題に関する情報にアンテナを張り、医師としてどのようなことをすべきか、どのようなことができるのかを考えておくようにしましょう。

ドクタービジョン編集部

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