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2018年度から本格的に開始された新専門医制度。医師としてのキャリアを築いていく過程は制度発足前と比べて大きく変化しています。
しかし、この制度には様々な問題もあります。医学の発展に重要な医学研究を行う「研究医」を養成する仕組みがないこともそのひとつであり、将来の医学水準が低下する可能性が懸念されていました。そこで、2021年度からは、臨床に携わりながら研究を行っていく「臨床研究医コース」が新設されることになりました。
今回は「臨床研究医コース」がどのようなものなのか、研修の流れなども含めて詳しく解説します。
新専門医制度の「臨床研究医コース」とは?
「臨床研究医コース」とは2021年度から新たに設けられることが決定した、臨床に携わりながら研究を行う「臨床研究医」を養成するコースのことです。2020年9月から来年度の研修開始に向けて定員40人の募集が開始されます。まずは、仕組みについて詳しく見てみましょう。
臨床研究医とは
厚生労働省による「医師・歯科医師・薬剤師統計」(平成30年)によれば、病院や診療所などの医療施設で働く医師は全医師の95.3%を占めます。そのため、患者さまと向き合って診療にあたるのが医師の一般的な働き方と言えるでしょう。
しかし、医師が求められるのは臨床の場だけではありません。医学的知識や医師としての経験を必要とする場は多く、医学研究もそのひとつです。医学研究は、将来的な医学の発展を支える土台となるため、臨床と同じく重要な場です。医師には医学研究に貢献していくことも求められます。
2021年度から新設される「臨床研究医コース」の期間は7年間です。はじめの2年は専攻医として19の基本領域のうちいずれかの臨床的な研鑽を積み、専攻医を修了した後の5年は50%以上の比重で医学研究に従事しながら勤務する医師の養成が行われます。
新専門医制度が発足する以前は、医学研究を志す医師は初期臨床研修を終えると大学院へ進学し、当直アルバイトなどをしつつもほぼ全ての時間を研究に費やす生活を送ることが一般的でした。そのため、臨床においては十分な研鑽を積めないデメリットもありました。しかし、この制度では臨床的な研鑽と研究の両立が可能なプログラムを設けることで、臨床に携わる医療者と研究者としてのバランスのとれた人材を養成することができると考えられています。
新専門医制度下での臨床研究医コースとは
これまでの新専門医制度には、初期臨床研修を終えて配属される19の基本領域に医学研究を担う医師の養成コースはありませんでした。しかし、医学研究は将来的な医学の発展の土台を作り上げるもの。新専門医制度が発足したことで、その重要な医学研究を担う若手医師が減ることは、将来の医学水準低下につながるのではないかと様々な懸念の声が上がっていました。
そこで日本専門医機構や厚生労働省は、専攻医として臨床的な研鑽を積みながら医学研究のスキルも磨いていく「臨床研究医コース」の新設を決め、2021年度のカリキュラムスタートに向け、2020年9月には医師の募集を開始しました。
しかし、全体的な募集人数は決して多くなく、現時点での定員は40人となっています。さらに、19の各基本領域から最低1人が定員とされ、残りの21人は応募数に応じて定員が分配されることになっています。定員の見直しは今後の応募状況などを踏まえて随時見直される予定ですが、狭き門となる可能性もあるでしょう。
臨床研究医コースのメリットとしてあげられるのは、カリキュラムに従事する7年間は所属する医療機関などで医師としての身分と給与が保証されることです。これまで、医学研究に従事する医師は身分や給与が保証されず、アルバイトなどをしながら生計を立てているケースがほとんどでした。研究に没頭できず、医学研究への道を諦めてしまう医師が多かったのも事実です。また、このコースでは、研究に従事している間も所属する医療機関や大学院から決まった給与を得ることができるため、研究に没頭できる環境が整うとされています。
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▼参考記事はコチラ
日本専門医機構が設定する臨床研究医コースについて
臨床研究医のキャリア
臨床研究医コースは、医学研究を担っていく医師を養成するために新設された研修プログラムです。研修期間は全体で7年に及ぶため、一般的な臨床分野の基本領域とサブスペシャルティ領域での研修が修了するよりも長い期間が必要となります。研修を終えた後の医師としてのキャリアに不安を抱く若手医師も多いでしょう。
コースを修了した後は、基礎研究を行う大学院講座などの助教や講師のポストにつき、教官を務めるのが一般的な流れです。また、製薬会社など医師の知識と経験を必要とする企業への就職、さらなる研究を目指しての海外留学など、様々なキャリアを築いていける可能性があります。医師の多くは臨床の場で活躍していますが、臨床研究医は活躍できる場が多岐にわたることも魅力のひとつと言ってよいでしょう。 p>
一方で、臨床研究医コースを設置できる医療機関や研究機関は、設備や資金力が整った都市部に集中すると考えられており、医学研究に従事する医師の偏在も問題点としてあげられています。地方で医学研究を目指す若手医師が、どのようにキャリアを築いていくかが今後の課題となるでしょう。
臨床研究医になるには
臨床研究医コースが新設されることは決まりましたが、その定員は全国で40人と狭き門です。さらに、一定の水準以上の功績を残さなければ修了とはみなされませんので、配属された後も厳しい自己研鑽が必要となります。では、臨床研究医になるにはどのような研修が行われ、どのような成果をあげなければならないのか詳しく見てみましょう。
臨床研究医の研修の流れや修了要件
臨床研究医コースの期間は7年。その間、前半2年は臨床に従事し、後半5年間は50%以上の比重で医学研究にあたることが定められています。臨床研修や研究の進め方は所属する医療機関のプログラムに従って行われますが、基本領域学会が定める規定に達成した場合は専門医資格を得ることも可能です。また、研修期間中に大学院へ進学した場合は学位を取得することもできます。希望があれば、7年間のうちに研究の必要性に応じて国内外の研究施設に留学することも可能とされており、柔軟なカリキュラムを組めるのもメリットです。
このように、基本的な臨床スキルを習得しながら、それぞれの希望に沿った医学研究に従事することが可能となります。しかし、その分要件も厳しく、臨床研究医コースの研修修了要件は「7年間でSCI(Science Citation Index)がついた英文雑誌に、first authorとして2本以上発表する」こととされています。万が一、責務を果たせなかった場合は所属する医療機関の責任が問われ、定員が減らされるというペナルティが課せられることが決まっています。また、厚生労働省は、研修が修了した後は大学やナショナルセンターに所属して研究・教育に従事することが望ましいとの見解を示しており、臨床研究医コースを希望する医師には高い能力と研究者として活躍するという確固たる未来像を持つことが望まれます。
研究医の養成を目指して
2021年度からはじまる臨床研究医コースは、19の基本領域いずれかの臨床的研鑽を2年間積み、その後の5年間で医学研究を行う研修プログラムです。新専門医制度発足時から課題となっていた研究医の将来的な不足を解決すべく新設されたコースですが、現時点では定員が少ないこと、地域間の偏在が起こることなどの懸念点があるのも事実です。また、研修の修了要件が厳しいことも幅広い応募者が集まらなくなる要因になるのではないかと考えられます。
とはいうものの、このコースでは、臨床も研究も行いながら専門医資格や学位を取得したり、国内外に留学したりすることもできます。また、プログラムの7年間は所属する医療機関などから身分と給与が保証されるため、研究に専念できる点も大きな魅力です。実際に2021年度からプログラムがはじまれば、様々な問題が出てくることも予想されます。順次システムを改善して多くの研究医が養成されていくことが望まれるでしょう。
ドクタービジョン編集部
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