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都心と地方では医療のあり方と求められる理想像に違いがあることから、医師の働き方と目的が大きく異なります。地方勤務は激務のイメージをもたれがちなこともあり、一昔前までは実家の医療機関を継ぐなどの特別な事情がなければ、医師のUターン転職は珍しい事例でした。
しかし最近では状況が代わり、介護や子育てなど家庭の事情や、生まれ育った地域に貢献したいと考える医師が、都心から地元に戻るUターン転職を検討するケースが増えてきています。また、地域医療への貢献や生活のしやすさを考え、都心から地方に移住するIターン転職も同様です。
とくにこの数年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行をきっかけに今までの働き方を見直した結果、新天地での勤務に興味をもつ医師も増えているため、Uターン・Iターン転職は決して特別なものではなくなってきたといえるでしょう。
地域医療の現状
地方勤務を考える際、避けて通れないのが地域医療構想にもとづく医療の提供体制。医学部卒業後の勤務経験が都心の市中病院や大学病院のみの方だと、都心とは異なる職場環境に最初はとまどう可能性があります。
その理由は下記内容が挙げられるでしょう。
高齢者の割合が多い
地方により多少の格差はありつつも、人口における高齢者の割合が高まります。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が目前に迫っていることも加味すると、地方に転勤して地域医療に携わるには、「高齢者の地域生活を支える医療」をより意識した視点をもつ必要もあります。
診療に必要な設備が整っていないことも
地域医療構想では、二次医療圏内における医療需要と病床は地域内で解決することが求められます。そのため、地域内の医療機関を高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4機能に分類し、地域の実情と医療ニーズに対応できるよう、それぞれの機能にもとづいた連携が進められています。
しかし現実には、地方に行くほど医療機関の母数が減少し、高度な医療設備を有するのは一部の医療機関に限定されます。そのため、より先進的な治療方法を実施しようにも、都心の医療機関と比較すると条件的にはどうしても不利になりがちな点を心に留めて置く必要があるでしょう。
医師の偏在
医師の偏在問題(東京への一極集中)についても、検討する必要があります。患者に対する医師数が少ない地方では、医師一人あたりに対する業務負荷がどうしても増えがちです。業務負荷軽減を目的としたUターン・Iターン転職をしたつもりが、かえって多忙にならないよう、転職コンサルタントを使いながらの情報収集は必須と言えます。
先にご紹介した地域医療構想にもとづく機能分化と連携は進んでおらず、昨今では感染症流行への対応を優先するため、問題解決に向けた議論は一時中断されています。今回の新型感染症流行そのものと大流行の再来に備え議論の再開が求められていることから、Uターン・Iターン転職を検討するなら医師偏在問題の動向は今後も注視すべきトピックといえるでしょう。
地域による医師の年収の格差は?
一般企業の平均給与は都心に行くほど高く、地方に行くほど低くなる傾向があります。しかし医療職の場合は逆で、地方に行くほど平均給与が高くなります。平均年収もキャリアの選択肢を検討する重要なポイントになるため、ここでは地方勤務を選んだ際の年収について紹介します。
地方勤務の医師の年収
全診療科目における医師の平均年収は1,596万円(※)。この数値を基準に、代表的な診療科の平均年収額を、東京都と年収の高い都道府県ごとに比較してみましょう。
まず、内科(一般内科)の平均年収は1,602万円。東京都の内科平均年収は1,581万円で、内科医の平均年収が高い都道府県は、福島県の2,095万円、愛媛県の1,967万円、徳島県の1,950万円でした。
次に外科(一般外科)の平均年収は1,601万円。東京都の外科平均年収は1,593万円で、外科医の平均年収が高い都道府県は、福井県の2,500万円、福島県の2,095万円、愛媛県と高知県の1,950万円でした。
最後に救急科の平均年収は1,602万円。東京都の救急科平均年収は1,581万円で、救急科の平均年収が高い都道府県は、愛媛県と高知県と徳島県の1,950万円、奈良県の1,900万円、京都府の1,750万円でした。
※ドクタービジョンに掲載された求人情報(2020年10月時点)をもとに算出した平均値です
地方の医師の年収が高い理由
東京都では、上記でご紹介した内科・外科・救急科の3つの診療科に医師が集中することから年収は平均値をやや下回ります。医師不足が深刻な地方では、医師誘致のため高給与条件を用意していることが多く、診療科全体の平均年収より200万円以上高く、地域によっては1,000万円近く上回る結果となりました。魅力的な金額が並んでいますが、医療機関からの期待値が高く、入職後は長時間労働や責任ある働き方を求められているとも受け取れるでしょう。
平均年収における地域差は、医師経験年数に比例して縮小すると言われています。つまり、医師としてキャリアを積んでからの転職であれば、都心でも地方でもある一定の待遇が期待できると考えられるということです。
医師のUターン・Iターン転職のメリット
続いて、Uターン・Iターン転職によるメリットについて解説します。自身のキャリアプランを振り返り、今後希望する働き方を考えながら各項目を確認しましょう。
年収アップが見込める
地方では医師誘致目的で平均年収が高めに設定されています。給与面を重視して職場環境を選びたいと考えるのであれば、地方勤務は有力な選択肢になるのではないでしょうか。
高齢者医療に携わることができる
年齢を重ねても地域のなかでその人らしい生活を送れるようにするには、医療面からのサポートが欠かせません。高齢化が進行する現代社会においては、高齢者医療へのニーズはかつてないほどの高まりを見せています。
また、地方では医師により多くの裁量をもたせている現場が多くあります。高齢者医療に限定せず、医師としての経験を積める場を求めて地方勤務を希望するのも良いかもしれません。
地域貢献ができる
地域医療の担い手として生まれ育った地域に恩返しをしたいと考えて、Uターンを選ぶ医師もいます。都心で生まれ育った医師でも、医学部時代に地域医療について学んだことや、同僚や先輩医師との交流のなかで地域医療に興味が芽生え、Iターンを検討するケースもあるようです。
落ち着いた働き方ができる
Uターンで地元に戻ってきた場合、土地事情や友人関係など慣れ親しんだ環境で働けるようになります。実家に子どもを預けられる環境であれば育児の負担も減らせることから、都心で働いていたときよりも落ち着いた生活ができると感じる女性医師も多いです。
条件と環境次第では、都心よりも落ち着いた環境で働ける場合もあります。地方自治体からの医師支援が充実度合いによっては、働きやすいと感じる環境が整っていることも珍しくありません。
医師のUターン・Iターン転職の注意点
魅力の多いUターン・Iターン転職ですが、注意すべきポイントももちろんあります。事前にしっかり把握してからUターン・Iターン転職を検討するようにしましょう。
最先端の治療に関わるのは難しい
医療設備や提供体制の違いなどから、先進医療や自由診療などは都心の医療機関に勤めていたほうが携われる機会が多いです。より先進的な技術を習得したいと考えているなら、地方の医療機関に就職するのは少し考えたほうがよいかもしれません。
地方によっては都心より激務となる可能性も
地方の医療機関では、医師不足などの問題から一人の医師が受け持つ業務量が多くなる傾向にあります。急性期治療から在宅介護を見越した地域連携、ときには休日のオンコールまで任されることもあり、以前よりも忙しい環境に身を投じる可能性もあります。相談するにも頼れる相手が少なく、自分でやらざるをえないケースもあるため、転職先を検討する際は職場のバックアップ体制についても確認しましょう。
生活環境が大きく変わる
地方に住むと都心まで出てくるのに時間がかかるため、学会や勉強会に参加するハードルが高くなります。せっかくの休日も出かけた先で同僚や患者さまとばったり遭遇することもあるため、気が休まらないと感じる場合もあるでしょう。
どこへ行くにも車が必要になること、家族がいればそれぞれの通勤や通学を考慮した住居選びをする必要があります。家族を伴ってのUターン・Iターン転職を考えているなら、事前に一度家族にも赴任予定地を見てもらうことを視野に入れたほうがよさそうです。
より良いUターン・Iターン転職を
親の介護など家庭の事情から地元に戻ることになり、条件を吟味してUターン転職を成功させた医師も多くいます。また、地方に行くほど平均年収が上がる医療業界の特性を活用して収入アップを目指したいなら、早い時期にUターン・Iターン転職をするのもおすすめです。
Uターン・Iターン転職を決意した理由は人それぞれ。今後の動向、メリットとデメリットをきちんと掴んで、自分にとってより良い転職をするようにしましょう。
ドクタービジョン編集部
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