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医師には、容態の急変があった患者さまや救急搬送時に対応するため、自宅や医療機関周辺で待機をする「オンコール」という業務が課されています。
待機中は自由に過ごせますが、オンコールに対する報酬が十分とは言えない医療機関が多いことや、気持ちの切り替えができないストレスから、対応を好まない医師も多いようです。
そこで今回は、オンコールの過ごし方や対応が少ない職場の探し方について詳しく解説します。
オンコールの過ごし方
オンコール対応時の忙しさや給与体系などは、医療機関によって異なります。ほとんど呼び出されることなく高い報酬を得られるケースもあれば、夜間に複数回の呼び出しがあるにも関わらず報酬が低いケースも少なくありません。
待機中は医療機関からの連絡にいつでも対応しなければならないため、プライベートな時間を取りにくく、オンコールに対してネガティブな感情を持つ医師もいます。しかし、急患に対応するためには重要な役目です。
次では、そのオンコール時の過ごし方や勤務条件について詳しく見ていきましょう。
勤務条件は医療機関による
オンコール時の過ごし方には、医療機関によって独自の条件が設定されています。急患対応が必要な場合には速やかに医療機関へ出向く必要があり、待機中は自由に好きなことをして良いわけではありません。
具体的には、次のような条件を定めている医療機関があります。
- 医療機関に30分以内に到着できる場所にいること
- 医療機関から半径5km圏内にいること
- 飲酒などを控え、すぐに勤務可能な体制を整えておくこと
緊急時に医師を呼び出す際、スタッフは、医師が規定された状況や場所にいることを前提として考えます。医療機関が定める規則は、事前に確認しておきましょう。
規則を守れば行動は制限されない
オンコール時は、規則の範囲内であれば基本的に行動の制限はありません。趣味の映画鑑賞やスポーツを楽しんだり、家族とのお出かけや外食をしたりすることも可能です。プライベートの少ない医師にとって、体を休める貴重な時間でもあります。
ただし、前述の通りで入浴時などでも携帯電話の音を聞こえるようにしておく必要があったり、飲酒を控えなければいけなかったり、完全なプライベートとは言えないのが実情でしょう。
オンコールの報酬・手当・労働時間
オンコールの待機は、医師のプライベート時間としての側面を持っています。しかし同時に、「いつ呼び出されるかわからない」というストレスがあるのも事実です。以下では、そんなオンコールの待遇について詳しく見てみましょう。
報酬と業務内容が見合わない場合も
医療機関によって差はあるものの、オンコールを担当すると「待機料」という名目で手当てが支給されることもあります。また、呼び出されて稼働した場合に、1回1~3万円の手当や時間外手当などが報酬に上乗せされる医療機関もあるようです。
手当が時給換算で支給されることはほとんどないため、医療機関内に泊まり込んで必要時に患者さまの対応を行う当直業務と比べると報酬は低めになっています。
救急対応が多い医療機関では、オンコール後に帰宅してまたすぐに呼び出しがかかる......というケースも少なくないでしょう。そういった医療機関では、業務内容と報酬が見合わないと考える医師も出てくるかもしれません。
オンコールの労働時間の実態
労働政策研究・研修機構が実施した『勤務医の就労実態と意識に関する調査』によると、勤務医の約9割がオンコールのある働き方をしています。
オンコールの頻度や実働時間は診療科によりますが、脳神経外科や産婦人科など急患が多い診療科ほど頻度は高く、月に10回以上対応が必要なケースも少なくありません。実働時間は、手術や出産など時間を要する治療を行うと長くなる傾向にあります。
「オンコール問題」とは?
現在、オンコールに待機料などの手当てがつく医療機関が増えています。しかし、オンコールを業務時間として認めず、実働時間以外の報酬を支払わない医療機関もあり、裁判に発展したケースもありました。
次では、その「オンコール問題」について詳しく見てみましょう。
オンコールに残業代は出るか
雇用主は、労働に対して給与を支払う義務があります。医師からすれば、オンコールの待機時間も労働と認めて欲しいところですが、実際にはそうでない医療機関も多いです。
過去に、勤務中の仮眠時間を労働時間とすべきか否かについての裁判で、最高裁判所は「(仮眠時間は)労働からの解放が保障されているとは言えず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当」との見解を示しました。これにならえば,、医師のオンコールも労働時間と考えられますが、次に説明する裁判では残業代は支払われませんでした。
「オンコールは労働時間に該当しない」と下された判例
オンコールの報酬をめぐる「時間外手当等請求事件」では、医師と県立病院との間で裁判が行われています。そして2015年、最高裁判所は「オンコールは労働時間に該当しない」との判決を下しました。医師のオンコール体制が使用者である病院側の業務命令だとは言えないというのが大きな理由です。
そのため、オンコール業務への評価は低いにも関わらず、医師にとっての負担は少なくないという状況になっています。
オンコールが少ない診療科・職場・働き方
それでは、オンコールが少ない職場で働きたい医師におすすめの職場や働き方について見てみましょう。
内科・神経科など
オンコールでの出勤頻度は、急患対応が少ない内科や神経科などでは少ない傾向にあります。
ただし、オンコールの頻度は医療機関によって様々。緊急手術などが多い外科などでも、医師の数が多ければ頻度が少なくなるケースもあるでしょう。
急患数が少なく医師が多い医療機関
オンコールによる出勤頻度は、対応する急患数と稼働する医師の数にも関係します。急患数が多い都心部の救急病院などではオンコールに就く医師も多いですが、医師数も多いため、頻度は比較的少ないでしょう。一方、急患数が少ない医療機関でも、医師が不足している場合には多く課せられるでしょう。
非常勤医師や患者さまを担当しない医師
非常勤医や担当の患者さまがいない医師として働く場合、オンコールが課せられないケースもあります。ただし医療機関の種別や体制によっても異なるため、転職する際は事前に確認しておきましょう。
オンコールの少ない医療機関への転職も一考の余地あり
オンコールは、医師が急患に対応するため必要な業務です。実働時間以外は自宅などで好きに過ごせますが、呼び出される可能性のあるストレスと対峙することになり、報酬と業務内容が見合わないと考える医師も少なくありません。裁判で争われた事例もありますが、具体的なルールについては医療機関の裁量に任されているのが現状です。
一方、オンコールで呼び出される頻度は、診療科や医療機関の種別にもよります。オンコールが少ない医療機関を選びたい方は、まずは転職コンサルタントに相談してみましょう。
執筆者:成田 亜希子
東京都出身、弘前大学医学部卒。青森県弘前市在住の内科医・公衆衛生医師。国立医療科学院や結核研究所で研修を積み、保健所勤務経験から感染症、医療行政に詳しい。
【所属学会】 日本内科学会、日本公衆衛生学会、日本感染症学会、日本結核病学会、日本健康教育学会所属。
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