女性医師が知っておきたい「育児休暇」の制度・取得条件・給付金

医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。
医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。

働き方

公開日:2022.12.20

女性医師が知っておきたい「育児休暇」の制度・取得条件・給付金

女性医師が知っておきたい「育児休暇」の制度・取得条件・給付金

※この記事は2022年12月20日時点の情報です。

女性医師のための「育児休暇まとめ」

妊婦健診のための休暇など

有給か無給かは勤務先の規定によりますが、妊婦健診を受けるために休暇を取得することが可能です。男女雇用機会均等法第12条により「妊産婦(妊娠中または出産後1年以内の女性)は、保健指導や妊婦健診を受診するために必要な時間を事業主に確保してもらうことができる」と定められています。
なお、妊婦健診費用は公費による助成があり、市区町村の窓口に「妊娠届」を出すと母子手帳と共に「妊婦健康診査受診券(補助券)」が配布されます。受診券(補助券)を受診前に提出すれば受診料から補助金額が差し引かれます
受診券(補助券)の枚数(公費負担回数)や補助の額(公費負担額)は都道府県によって異なり、厚生労働省による平成30年4月時点での調査結果では、公費負担回数は全都道府県で14回以上、公費負担額の全国平均は105,734円でした。これを差し引くと、自己負担額はおよそ3~7万円程度が一般的です。

これ以外にも、労働基準法第66条・男女雇用機会均等法第13条により、妊産婦は医師等から受けた指導事項の内容によって業務などの負荷軽減措置を受けることができます。医師から指導があった場合は、無理をせずに勤務先に申し出ましょう。

医師の指導事項の内容を事業主に伝えるときに活用するのが、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」です。医師が健診結果から通勤緩和や勤務時間短縮等の措置が必要であると判断した際に、このカードを受け取ることができます。カードには医師からの指導事項がまとめられていますので、事業主に提出することで医師の判断を正しく伝えることが可能となります。

産前産後休業

産前休業は、出産予定日の6週間前から取得することができます。双子以上の場合は期間が延長され、14週間前から取得可能。なお、出産日も産前休業に含まれます。
原則、産後は出産の翌日から8週間は就業できませんが、産後から6週間が経過し医師にも認められた場合は、請求して就業することも可能です。予定日よりも遅れた出産になってしまっても予定日から出産当日までは産前休業に含まれ、産後休業も変わらず8週間となります。
産前・産後休業の取得は、雇用形態などに関わらず取得が可能。有期契約労働者(契約社員・アルバイト・パート等)でも請求することができ、休業を取得したことを理由とした解雇は男女雇用機会均等法の第9条で禁じられています。

公的医療保険に加入している被保険者や被扶養者が出産すると、出産育児一時金が支給されます。
支給額は、産科医療補償制度※に加入している医療機関の場合は1児当たり42万円、そのほかの医療機関の場合は40万8千円(2022年10月時点)。「直接支払制度」を利用している医療機関の場合は、申請を医療機関で行えば給付金が医療機関に直接振り込まれるため、まとまった出産費用を準備する必要はなくなります。
出産一時金は出産にかかる費用負担を軽減するための給付金です。出産手当金と混同されがちですが、産休中の生活を支える目的で支給される出産手当金とは別物ですので、覚えておきましょう。
※生まれてきた子どもが重度脳性麻痺となった場合の経済的負担の補償や原因分析・再発防止を図る制度

育児休業

育児休業は「子どもが1歳になるまでの間で希望する期間」に、男女に関わらず取得することが可能。取得するには休業開始予定日の1か月前までに申請が必要です。
契約社員やアルバイト・パート等の場合でも、「子どもが1歳6か月(2歳に達する日まで取得する場合は2歳)に達する日までの間に雇用契約が更新されないことが明らかでない」という要件を満たしていれば取得が可能。自身の労働契約の内容や、勤務先の育休取得の要件などを確認して申請をしましょう。
育児休業の期間は延長も可能で、子どもが1歳になった時点で保育所に入れないなどの事情がある場合は、子どもが1歳6か月に達する日まで(再延長で2歳まで)は育児休業を延長することができます。育児休業の延長は、1歳の誕生日を迎える2週間前までに申し出る必要があります。

育児休業期間は基本的に無給となりますが、雇用保険か共済組合、および共助会から育児休業給付金(いわゆる出産手当金)の支給が受けられます。
支給期間は雇用保険の場合は子どもが1歳に達する日の前日まで、共済組合の場合は子どもが1歳に達する日まで、共助会の場合は子どもが1歳から3歳になる日の前日まで(雇用保険・共済組合からの支給がある期間は無支給)となっており、支給額については以下のとおりです。(いずれも給付上限相当額あり)

  • 雇用保険の場合
    (給料日額(育児休業開始前6か月の賃金÷180)× 0.5)×支給日数合計※
    ※支給日数合計...休業開始日・終了日の属する支給対象期間については当該支給対象期間の日数/それ以外の支給対象期間については30日
  • 共済組合の場合
    (給料日額(給料月額÷22)×0.5×1.25)×支給日数合計※
    ※支給日数合計...支給対象期間から土曜日・日曜日を引いた日数
  • 共助会の場合
    (給料日額(給料月額÷22)×0.2)×支給日数合計※
    ※支給日数合計...支給対象期間から土曜日・日曜日を引いた日数

育児休業給付金は非課税の給付金のため所得税はかからず、社会保険料(健康保険・厚生年金)も免除されます。

【注目】2022年10月1日~施行の「産後パパ育休」

男性の育児休業取得の推進を目的として、2022年10月1日より、父親に対する育休制度(いわゆる「産後パパ育休」)が新たに施行されました。子どもの出生日から8週間以内に最長4週間の休業を取得することが可能に。この4週間は2回まで分割して取得することが可能となっています。

育児休暇を安心して取得するために

室内でくつろぐ妊婦

妊娠初期に注意すべきこと

妊娠初期に胸やけ・吐き気・嘔吐などの症状が出る「つわり」。妊婦の約50~80%に症状が認められる症状で、妊娠6週前後から始まり、8~12週頃につわりのピークであることが多いといわれています。つわりの症状は個人差が大きく、症状が強く出ている場合は入院が必要となることもあります。
つわりが始まる妊娠初期は流産のリスクも高い時期のためら、職場の理解やサポートが肝要です。周囲に妊娠を言いづらかったり「休みたい」と言いにくかったりする方もいらっしゃるかもしれませんが、妊娠の報告ができないままつわりが始まり、無理をして働いてしまうと身体に大きな負担がかかります。妊娠がわかったら、同僚・上司だけでなく勤務先の担当者も含めて速やかに報告・相談し、受けられる支援を確認しましょう。
さらに、妊娠初期は胎児の薬物や放射線に対する感受性が高い時期でもあります。医師の仕事には放射線曝露のリスクが高い業務も含まれているため、業務内容にも配慮が必要です。妊娠中の女性の線量限度は法令で定められているため、早期に相談をして業務を調整してもらうようにしましょう。

出産前後に注意すべきこと

妊娠後期に生じやすい異常として考慮すべきなのが切迫早産です。お腹がはったら休むなど、無理をしないことがリスクの予防になります。長時間の立ち仕事や前屈み等の動作の多い仕事、夜勤や時間外・休日労働等などは、妊娠特有の症状が悪化したり異常(病気)が起こったりする可能性を高めますので、特に注意が必要です。
健診の際に産科医から負荷軽減措置が必要であると判断された場合は、医師の指導事項が書かれた「母性健康管理指導事項連絡カード」が渡されますので、これを事業主に提出し、働き方を調整してもらいましょう。
「仕事内容を限定すると、周囲に迷惑をかけてしまう...」とためらう方もいるかもしれませんが、無理をして入院治療するような事態になれば余計に職場に迷惑をかけることになります。早産や妊娠高血圧症候群などのリスクを未然に防ぐためにも、できるだけ無理はしないよう心掛けるとよいでしょう。

育児休暇取得時に注意すべきこと

雇用形態によっては育児休業を取得することができなかったり育児休業給付金の受給対象外となる可能性もあるため、注意が必要です。育児休業は誰でも取得できるとされていますが、対象外について定めている労使協定がある場合に限り、以下に該当する方は育児休業が取得できません。

  • 雇用された期間が1年未満
  • 1年以内に雇用関係が終了する
  • 週の所定労働日数が2日以下

上記以外に、日々雇用されて働いている方も育児休業は取得できないとされています。

育児休業中に支給される育児休業給付金についても以下のような受給要件があるため、対象から外れていないかどうか確認しておきましょう。

  • 育児休業後の退職予定がない
  • 育児休業の開始前2年間で、就業日数(賃金支払基礎日数)が11日以上の月が12か月以上ある
  • 被保険者期間において上記要件を満たさない場合でも、産前休業開始日等から前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上ある

なお、有期雇用の場合は以下の受給要件も満たしている必要があります。

子が1歳6か月までの間に労働契約の期間が満了予定でないこと(保育所に入所できない等を理由に、子が1歳6か月後の期間について育児休業を延長して取得する場合は、1歳6か月の休業開始時において2歳まで))

休業中に注意すべきこと

育児休業期間中に一時的・臨時的に就労することは可能ですが、その就労日数が月10日(10日を超える場合は80時間以内)を超えると、育児休業給付金が支給されなくなります。この就業日数・時間の算定は「おもな勤務先(雇用主)以外での就労」も含まれますので、注意してください。
また、育児休業期間中に支払われる賃金は、育児休業給付金とあわせて「休業開始時賃金日額×支給日数」の80%以下に収めなければなりません。それ以上になってしまうと、給付金が不支給となります。
育児休業給付金は雇用保険料の対象外ですが、育児休業中に賃金が支払われた場合は雇用保険料の負担が発生するため、こちらにも注意が必要です。

保育先の確保のために知っておきたいこと

就労・就学・療養といった理由で家庭保育ができない場合は、子どもの年齢に応じて以下の認可施設での支援を受けることができます。

【0~2歳】

  • 認可保育所
  • 認定こども園
  • 地域型保育 ※家庭的保育・小規模保育など

【3~5歳】

  • 認可保育所
  • 認定こども園
  • 幼稚園の預かり保育

利用するには住んでいる市区町村に申請して保育の必要性の認定を受ける必要があるため、早めに確認するようにしましょう。

保育料は、0~2歳児の場合、保護者の世帯所得に応じた料金が自治体ごとに定められており、認可施設であれば月額数万円です。3~5歳児については、2019年10月から幼児教育・保育の利用料が無償化されました。

医師は雇用契約や働き方が複雑で、保育先の確保が難しいとされています。
例えば異動が転職扱いになる、大学院生は学生扱い、産休・育休に伴って非常勤になる、といったことが理由で認可保育所の減点対象となり、入りにくくなってしまうことも。また、時間確保がしにくいため、事前の書類準備や見学、入園後の呼び出し対応や送り迎えなどに十分に対応できないことも考えられます。
状況によっては、ベビーシッターなどの活用も検討に入れてみましょう。

病児保育や介護との両立のために知っておきたいこと

子の看護休暇

「子の看護休暇」とは、ケガをしたり病気にかかった子の世話を行うため、あるいは子に予防接種または健康診断を受けさせるために取得できる休暇のこと。小学校就学前の子を養育する労働者は、1年度において5日、2人以上の場合は10日を上限として子の看護休暇を取得することが可能です。
休暇を取得できるケガや病気の種類・程度には制限がなく、風邪による発熱など短期間で治癒する疾病であっても労働者が必要と考えれば申し出ができ、1日単位または時間単位で取得できます。

介護休業

要介護状態の家族を介護するために取得できるのが「介護休業」です。介護を必要とする家族1人につき3回まで、通算93日間の休業を取得できます。対象範囲は、配偶者(事実婚を含む)・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹及び孫に該当する家族となります。

介護休暇

要介護状態にある家族を介護する労働者は、年次有給休暇とは別に、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)までを上限として介護その他の世話を行うために休暇を取得することができます。休暇は1日または時間単位で取得可能です。

育児休暇はスムーズに取れた?妊娠出産に関するリアルな女性医師の声

続いて、実際に妊娠・出産を経験し、今も医師として働く女性医師4名の体験談をご紹介します。

3人の産休・育休、それぞれ周囲の反応や働き方に違いが(2007年卒/循環器内科、総合診療科勤務)

1人目の産休・育休

妊娠した際に働いていたのは急性期病院。当直の際は仮眠もあまり取れないような忙しさでしたが、妊娠を報告したところ、その月から当直を外してもらい、カテーテルの当番も外してもらえました。
もともと女性医師が少なかったのですが、恐らくその病院ではこれまで妊娠中に働いていた女性医師がいなかったのだと思います。そのため妊婦が働くことに対するマニュアルやルールといったものは無く、どうすればよいか上司が困惑する場面もあったかもしれません。当直やカテーテル当番を外してもらうといった措置に対して、同僚からは多少なりとも「ズルい」と思われていたかも...。
とはいえ、家庭を持っている男性医師は多かったので、「おめでとう」と祝福してもらったり、業務についても配慮していただいたのはありがたかったです。
そういった配慮に応え、同僚に不公平感を感じさせないためにも、他の人がやりたくない仕事を率先して引き受けるようにしていました。

1人目の産休は2ヶ月間、育児休暇は6ヶ月間いただきました。
産休中、常勤として働き続けることを視野に入れて実家の近くに転居。妊娠した時に実母が「復職後の子育ては協力するわよ」と言ってくれていましたし、サポートをお願いするならより負担を減らせるよう、近くに住んだほうがいいと思ったのが理由です。

出産後は、大学の関連病院の常勤勤務として復職。医局が配慮してくださったのか、病棟業務や当直(ほぼ寝当直)もあるものの基本的には時短勤務にしなくても9~17時で帰れるという、比較的落ち着いて働ける職場でした。

2人目の産休・育休

2人目の妊娠が分かった後も、職場では祝福して貰えました。カテーテル施設は無く、当直もあまり多忙な環境ではなかったので、制約もなく産休まで変わらず勤務することができました。

復職後は大学病院の常勤勤務に。通勤時間が片道1時間半となり、それが一番辛かった点です。復帰した当初は冠疾患集中治療室(CCU)勤務で、朝のカンファレンスが7時50分から始まるため、6時半に子どもを実家に送り届けてから出勤。夕方のカンファレンス後、早ければ18時頃には退勤できましたが、自宅に着くのは20時前という生活でした。

半年ほど勤めたのち、次は病棟勤務に。副班長となり、班長が大まかな方針を決めた後に下の子と一緒に実質業務を進める立場になりました。
研修医もいたため指導する時間も必要で、日々の退勤は20時頃、帰宅するのは22時頃。土曜日も半日勤務があり、子どもには「お母さんはほとんど家にいない人」と認識されていたようです。

直接的な非難はありませんでしたが、「子どもがいる女性医師は働かない」と思われないようにと心掛けていました。
2人目の産休は1.5ヶ月。育児休暇は8ヶ月と、1人目より長く取得しました。1人目の出産時には長く臨床を離れることに不安感があったのですが、意外にもすんなり復職できたことで、「休んでもまた働ける」と安心できたのが、育休が長くなった理由だと思います。

3人目の産休・育休

3人目を授かったのは、そろそろ当直勤務にも入ってもらいたいという話が出ていた頃。妊娠したため、引き続き当直フリーにしていただきました。
2人目の時と同様に「子どもがいる女性医師は働かない」というイメージを与えないよう、遅刻や早退、欠勤ナシで、指導している研修医の業務が長引いた場合もきちんと付き合うようにしていました。

3人目の産休は1.5ヶ月、育児休暇は12ヶ月。大きな問題なく臨床現場に復職できたという経験から、2人目よりさらに長期で取得しました。

復職したのは、大学関連の別クリニックでの常勤勤務です。通勤は片道1時間と短くなり、9~17時の外来業務のみで土曜勤務は月2回程度。復職前に働いていた大学病院と比べると、子育てにかけられる時間が各段に増えました。

そこで1年ちょっと働いたのち、自宅近くの訪問クリニックに転職しました。
常勤勤務で当直もありますが、9時~18時の定時を17時までに短縮していただき、自転車で通える距離なので昼休みに自宅に帰ることもできるように。子どもは地元の公立小学校と幼稚園に通わせているので、お昼休みに小学校や幼稚園の用事を済ますこともできるようになりました。

3人の産休・育休を経て思うこと

女性医師にとって、妊娠出産は働き方を変える、見直すきっかけになります。
「働き方を変えたい」と思いながらもきっかけを持てずにいる男性医師や独身女性医師にとっては、妊娠出産を経た女性医師が簡単に働き方を変えているように見えて、疎ましく思ってしまうこともあるのかな、と思います。
大学病院で産休・育休を取得した時は、とても肩身が狭かったです。忙しい病院ほど休んだ人のシワ寄せが残っている人にいきやすいので、お休みをする側としては辛かったですね...。

これは女性医師に限らず多くの女性にとってもそうだと思うのですが、妊娠・出産は仕事だけでなく人生の大きな分岐点になるのだと実感しました。仕事においては足枷のように感じてしまうこともありましたが、妊娠・出産・子育てというライフステージを経たことで、人生における大きな経験値を得られたと感じています。

私にとってのワークライフバランスは、「就労時間内に120%働いて自分の仕事を完遂することで、家庭の時間を圧迫しない」ということ。家庭を優先させたいと思うと急性期病院で得られるやりがいを求めることは難しかったですし、今の仕事内容に多少の物足りなさを感じないこともないですが、目の前の患者さんにとって最適な医療を提供する、ということにやりがいを見出しています。

厳しい態度を取られた妊娠中と、配慮が得られた出産後(2013年卒/泌尿器科勤務)

妊娠中

子どもは2人いるのですが、1人目の妊娠が分かったのは医局から出向という形で初期研修時代の病院へ勤務し始めたばかりというタイミングだったため、科長からは厳しい態度を取られました。妊娠中も透視検査業務に入っていましたね。夜間に病棟からの電話対応や緊急対応もしていましたし、祝日に1人で緊急オペをしたこともあります。

2人目の妊娠は大学の医局に復帰して週4の時短勤務で働いていた最中でしたが、医局からは「おめでとう」と言って貰えました。復帰した当初から時短勤務で当直と土日祝は免除という勤務形態だったので、妊娠後も引き続きその働き方で。透視検査業務は免除して貰いました。

産休は、2人とも産前6週、産後8週を取得しました。

出産後

1人目の育児休暇は生後4ヶ月まで取得し、時短勤務で復職。その病院では時短で就労するのは私が初めてだったこともあり、周囲が定時で上がれるよう気にかけてくれました。
子育てについては、夫が在宅勤務で保育園が自宅からすぐ近くにあったので、ほぼ夫が対応してくれていました。夫の協力のおかげで融通が利いたので、緊急事態や人員不足の際は残業することもでき、周囲からは「ありがたい」と言って貰っていました。

2人目の育児休暇は生後10ヶ月まで取得し、本院の外来班で週5の時短勤務として復職。外勤は月4時間のみで、当直と土日祝の当番は免除という勤務形態に。外勤がほぼ無かったので、「週5で常時外来にいてくれる専門医資格のある女性医師」として重宝されていたと思います。外来班の上級医が自分だけ、という時は残業せざるを得ないこともありましたが、周りの方は気にかけてくれていました。
夫が在宅から出社メインとなったため、保育園からの当日呼び出しは私がメインで対応することに。コロナ禍だったので、子どもが発熱した際などは検査で陰性診断が降りた場合のみ、翌日から隣県に住む義両親に看病をお願いするようにしていました。両親の都合がつかない場合には、病児保育も利用しています。

2人の産休・育休を経て思うこと

出産後に備えて家の片付けができたりと、産休はありがたい期間でしたね。出産前後はトラブルが多かったので、産休はあってよかったと思います。
育休中は勉強する時間がなかなか取れませんでした。特に2人目出産後は子育てへの時間に多くの時間を割いたので、勉強時間を確保するのは難しかったです。そのため、復帰後に最近の新規免疫治療薬を知らなくて慌てて勉強したり、久々にオペレーターとして手術をする際は緊張感を覚えたことも。
1人目の育休は短めだったのですが、2人目は家庭の事情で長めに取得することになり、長く休むとその分、復帰後に通常運転に戻るまでの時間もかかるような気がしました。

初期研修中に妊娠・出産。周囲は配慮してくれたが...(2019年卒/初期研修中)

研修医の妊娠・出産に対する周囲の反応は

3年上に初期研修中に妊娠出産を経験された先輩がいて前例があったので、妊娠報告をした時もすんなり受け入れてもらえました。
循環器内科の研修中だったのですが、妊娠中は当直を免除していただき、カテーテル業務にも入らなくていいように調整してくださいました。コロナが流行し始めた時期だったこともあってER(救急外来)研修は無しに。つわりがひどかったので2週間ほどお休みもいただきました。
産休は4ヶ月、育児休暇は5ヶ月いただき、研修に復帰。出産後も当直は免除で、基本的には残業無しという働き方になり、勤務時間外の勉強会は可能な時だけ参加するようにしていました。
初期研修医ということもあり、子どもの急な体調不良の際は上の先生に業務をお願いしてお迎えに行かせていただいていました。時にはどうしても難しいこともあるので、そんな時は夫に対応してもらうことも。初期研修医中は登録だけして使用しなかったのですが、専攻医になってからは、子どもが体調不良になった初日は一緒に休み、ある程度元気になったら翌日からは病児保育を利用したりしています。

妊娠中も出産後も、職場全体が応援してくれる雰囲気だったのでとてもありがたかったです。ですが、そんな中であっても「つわりで体調が悪い」というのは伝えづらかったです...。皆、いつも忙しい中働いていたので、どうしても気が引けてしまうところはありました。

初期研修中の産休・育休を経て思うこと

もともと初期研修医中に子どもが欲しかったので、「3年かけて研修修了すればいいよ」と言ってくれた研修先を選んでいました。そのため、職場の皆さんに妊娠をお伝えした時もマイナスなリアクションはなくむしろ応援していただき、私自身も「研修中なのに...」という焦りはなかったです。
育児と仕事の両立は...なんとか、できている、というところでしょうか。正直、どちらも中途半端なのは否めません。
今は専攻医になり、2人目を考えています。けれど、技術や知識を向上させたり専門医の資格取得を目指したりといったことを考えると、専攻医中に産休育休をしっかり取るのは難しいと感じてしまっています。

医局長が変わったことで、対応にも変化が(2003年卒/循環器内科)

妊娠中

もともと非常勤勤務で、妊娠中も当直無し・9時~17時勤務でした。
妊娠したのは分院から本院へ戻った直後。多少戸惑っておられたものの、医局長は問題なく受け入れてくださいました。
その後、医局長が交代に。交代後の医局長には婉曲にではあるものの、健診へ異動するよう言われたりしました。
ハイブリッド手術室での治療に関われなくなり、同じラボの人の負荷が増えてしまったこともあり、周囲の反応は微妙なものでした。負担が増えているのは事実なので、私自身も申し訳ない気持ちに...。
気まずい思いもしつつ、産休は産前6週産後8週を取得しました。

出産後

1年の育児休暇を取得し、出産前と同様、9時~17時勤務で復帰。交代した医局長に「ハイブリット手術室で勤務できないのであれば、エコー室ではないところへ行くように」と言われ、エコーラボから病棟班長へ異動になりました。病棟勤務になっても自分の仕事はできるので異動自体はそこまで嫌ではありませんでしたが、医局長の言い方に少し不満を覚えたのも事実です。
周囲の未婚の女性医師さんからの理解もなかなか得られませんでした。時短勤務や当直免除に加え、子どもの幼稚園の行事がある度に半休を取るのを見て「そんなに頻繁に行事があるものなの?」と言われたことがあり、正直辛かったです。
子どもの具合が悪くなっても、外来中は迎えに行けません。病児保育も利用していましたが、定員が4人と少なく、すぐにいっぱいになってしまって利用できないことも多かったです。母にみて貰うこともありましたが、それも難しい場合は休むしかありませんでした。

産休・育休を経て思うこと

男性医師は、奥様も医師である場合は妊娠出産に関わる欠勤や休暇について理解があり協力的でもあります。ですが、奥様が医療従事者ではない場合、あまり理解を得られないことが多いように感じました。
勤務形態によっては子どもの病気にも付き添うのが難しく、母として医師としてのバランスが取れなくなってしまいます。妊娠・出産・復帰を経て、周囲の理解を得ることは不可欠だと痛感しました。
現在は、仕事と子育てを両立できているというほどではありません。子ども中心の生活でもいいと感じ始めているので、仕事のスキルを低下させない程度の仕事量を探っている状態です。
フルタイムで働いている方には、尊敬の念を感じてしまいます。

データで見る、女性医師の育児休暇への意識と実態

グラフ

女性医師は育児休暇が取れない?実際の取得率は

実際のところ、女性医師の育児休暇取得は進んでいるのでしょうか?日本外科学会が実施した「女性外科医の妊娠・出産の対する意識とその実態に関するアンケート」(2018年3月~5月実施)から、女性医師の出産・育児、育児休暇への意識と実態について読み解いてみましょう。

まず、産前休暇取得期間については、回答数458名のうち産前6週を取得したのは261名で57%、その他の期間(4週や8週)を取得した方は172名で38%となっており、半数以上の方が6週の休暇を取得できていました。その一方で、6週未満の取得となっている方も見られます。
産後休暇については回答数462名のうち産後8週が350名で76%、その他の期間が102名で22%となり、産前よりも法定期間の休暇を取っている割合が増えています。
第1子の育児休暇を取得した割合は回答数462名のうち285名の62%となっており、40%近くが育児休暇を取得できていないのが実情です。
育児休暇の取得期間は最も多かったのが「6か月~1年」で57%でしたが、「1~2か月」が13%、「3~5か月」が21%と、34%の方は6か月取得することができていませんでした。
第2子に関して育児休暇を取得した方は59%となっており、第1子の時とほぼ同じとなっています。

産前・産後休暇や育児休暇を取得するハードルはまだ高く、取れたとしても十分な期間取得できていない方もいるというのが実情のようです。

また、第1子妊娠出産をきっかけに離職・転職の経験はあるか(回答数477名)という質問に「ある」と答えたのは28%、第2子の場合は24%で、出産を機に2~3割の方は転職や離職を考えざるを得ないという状況がわかります。

徐々に制度の改善や職場の理解度も進んできてはいますが、まだ十分なレベルとは言えないようです。


海外と日本はどうちがう?女性医師の現状と課題

国際的に見ると、日本は医師全体に占める女性医師の割合が最も低い国5カ国のひとつです。

2012年3月に発表された同志社大学政策学会による論文を見ると、2007 年における女性医師の割合が最も高い5カ国は、スロバキア57%・フィンランド56%・ポーランド56%・チェコ53%・ハンガリー53%と、北欧や東欧旧共産圏を中心とする国々。対して最も低い5カ国は、日本17%・トルコ 21%・ルクセンブルグ25%・アイスランド29%・アメリカ30%。見てのとおり、日本の女性医師の割合が最も低くなっています。

日本の女性医師は眼科や皮膚科などの専門診療科に集中している傾向があり、妊娠・出産後に復職できず、パート勤務や診療所開業医へ転出する割合は男性医師よりも高くなっています。
ここからも、結婚や出産後における離職・復職へのハードルが高く、キャリアを重視しにくいということが見て取れます。
女性医師のキャリア支援や柔軟な勤務スタイルの整備など、勤務医のワーク・ライフ・バランス支援策が諸外国に対して遅れている点も、女性医師が少ない一因でしょう。

北欧では育児と介護が社会制度に組み込まれていたり、東南アジアでは家事を外注化する傾向もありますが、日本女性には「出産・育児・仕事をすべてにこなすことが良いこと」というイメージも少なからずあり、女性医師の負担感を増加させているのではないかと言われています。

医師不足の解消のためには、「女性医師が働きやすい病院をつくることが、結果として男性医師にとっても働きやすく、医療の質を高めることに繋がる」という声も挙がっています女性医師の早期開業離職の抑制と復職を促進させることが、結果として勤務医不足の改善に繋がるのではないでしょうか。

「育児休暇が取れる女性医師」への近道とは

女性医師

女性が子育てとキャリアを両立できる社会が求められている昨今ですが、医療業界においてはまだまだ育休が取りづらいと感じている女性医師が多くいるのが現状です。
女性医師が育児休業を取得しない理由として、「代理の医師がいない」「職場に取得しづらい雰囲気がある」という点などが挙げられます。休みを取られると仕事がまわらなくなると言われたり、言われずともそうした雰囲気を感じ取ってしまうと、育児休暇が制度として整っていたとしても取りにくさを感じたり、本当は取りたいけれど諦めざるを得ないという場面もあるのではないでしょうか。

家庭と仕事の両立は、育児休業のみならず、女性医師として働き続けるため、キャリアアップしていくために大切なことです。どうしても現在の職場環境では難しそうだという場合には、自分の希望に合う働き方ができる環境に転職することも視野に入れる必要があります。

医療業界専任のコンサルタントが転職のお手伝いを行っている「ドクタービジョン」は、2021年の女性医師の登録者数が前年の約4倍と、多くの女性医師の方々に支持をいただいています(2022年8月時点、当社調べ)。
働きやすい環境へ転職できた事例も多数。例えば、以下のような転職事例があります。

【女性医師の転職成功事例1】常勤勤務/循環器内科から一般内科へ

3人目の妊娠・出産を希望しており、産休・育休が取りやすく子育てとの両立に理解がある転職先を探していたAさん(30代後半)。
転職前に働いていたのは循環器内科で、8時45分~15時45分の時短勤務。お子さん(3歳と1歳)の保育園の送り迎えができるよう、9時~の勤務が可能な病院を希望。産休や育児休暇が取りやすいことや女性の割合が多く子育てに理解があることに加え、できるなら仕事のやりがいも得られる職場を...と望まれていました。
転職後は希望通りの9時~勤務で、当直・オンコール無しの一般内科に入職。これまでの経験を活かして循環器内科の外来も行いつつ一般内科としても病棟管理を行うなど、患者さまと接する時間もやりがいも増えたとのことです。
入職後、めでたくお子さまにも恵まれ、現在は産育休中です。

【女性医師の転職成功事例2】常勤勤務/消化器内科

転職前は大学病院の消化器内科で9~18時・当直ありという勤務形態で、子どもを授かりたい...と願いつつも多忙な日々のなか、育児休暇が取得できるか不安だったというBさん(30代前半)。
ワークライフバランスが維持できる環境を希望されており、約1時間かかっている通勤時間を短縮するため自宅近くの職場を探すことに。条件はもちろんですが、消化器内科で培ったスキルを活かせる転職をしたい、という希望もお持ちでした。
転職後は、同じく消化器内科に勤務。自宅から近くなり、当直が無くなったことで家族と過ごす時間がグッと増え、「消化器内科の経験を積みながらお子さんと向き合える生活の基盤が整った」と仰っています。
医師の働き方改革に注力している病院でもあり、産育休の取得や復帰後の子育てを応援してくれる環境が整っていたのも、転職を決意した決め手だったそうです。

【女性医師の転職成功事例3】常勤勤務/産婦人科

一人体制の産婦人科勤務で、産休・育休が取れるか不安だったというCさん(30代後半)。
転職前は11時~20時・週4日勤務でしたが、人手不足だったため急遽出勤することもあり、「1~2年後には妊娠出産を...」と希望していたものの、実現するイメージが湧かずにいたのだそうです。
そんなCさんが希望されたのは、育児休暇制度が利用できるのはもちろん、自身の将来を見据えて不妊治療の分野を一から学べる環境であること。
結果は、すべての条件を叶えられる不妊治療クリニックが見つかり、転職成功。9時~18時の週4日勤務、不妊治療を基礎から学び専門医の取得を目指せるという環境で新たなスタートを切られました。
入職後、約1年で無事にご出産。現在は育児休暇を取得されています。

【番外編:男性医師の転職成功事例】常勤勤務/一般内科

9時~18時の週5勤務で、当直・オンコールありの市中病院勤務だったという男性医師・Dさん(30代後半)。
当時は奥様と2人暮らしでしたが、家族と過ごす時間が少なく、将来的にはお子さんを希望されており、ご自身も育児休暇の取得をしたいとお考えでした。
希望条件は「男性の育休に理解がある病院」「ワークライフバランスを維持するため、急な呼び出しのない所」。そのご要望を叶える転職先としてご紹介したのが、当直無し・オンコール無し・土日祝休みの市中病院でした。
常時1~2名は育児休暇を取得しているという、病院全体が育児に対し積極的な環境。Dさんも入職後約1年で育児休暇を取得され、現在は復職して仕事とご家族との時間、どちらも大切にできる日々を送っていらっしゃいます。

ドクタービジョンでは、このようにお子さんを望む女性医師や育児休暇を希望される男性医師がさまざまな形で活躍できる求人を豊富にご用意しています。子育て中の医師が働きやすい時短勤務や午前or午後のみの半日勤務ができる職場も多数あり、中には専門資格の取得が可能なお仕事も。子育てとの両立のみならず、キャリアアップもできる転職先を選ぶことができます。

また、家庭や育児との両立に役立つサービスをまとめた『家庭&育児 医師お助けブック』、女性医師のインタビュー記事や働き方に関するコラム記事をまとめた『ドクターズコラム』などを通して、女性医師の活躍を多角的に応援しています。

現在の職場環境と育児の両立に悩んでいる方、不安のある方は、この機会に準備を始めてみませんか。ご登録やご利用はすべて無料ですので、まずは興味のある記事を読んだり資料を活用してみてください。

ドクタービジョン編集部

医師がキャリアや働き方を考える上で参考となる情報をお届けします。医療業界動向や診療科別の特徴、転職事例・インタビュー記事、専門家によるコラムなどを日々の情報収集にお役立てください。

今の働き方に不安や迷いがあるなら医師キャリアサポートのドクタービジョンまで。無料でご相談いただけます