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研修医として励む中で、勉強方法に悩まれている方も少なくないでしょう。
学生の間は、勉強が中心でしたが、研修医になると「仕事をしながら」必要な知識を身につけることが求められます。そうした学生時代とのギャップこそ、悩みの原因ではないでしょうか。
また、医師国家試験のように、全員が受験する試験が行われるわけではないため、どのように学習目標を立てるべきか悩まれる先生もいらっしゃることでしょう。
そこでこの記事では研修医が勉強するべき内容や、忙しい中でも行えるオススメの勉強方法について解説していきます。
執筆者:竹内 想
研修医が勉強しておきたい内容とは?
病院によって異なりますが、初期研修の間は1ヶ月ごとに異なる診療科をローテートする、「スーパーローテート方式」が基本となります。
1ヶ月間で全ての内容を理解することは難しいため、各診療科で学びたい内容をあらかじめ考えておくことが大切です。例えば、循環器内科であれば、心電図・心エコーなど内容を絞っておきましょう。ここでより具体的に「救急外来を受診する可能性の高い急性心筋梗塞の心電図変化に詳しくなる」などの目標を立てると、勉強内容が具体的で学習の質が向上するでしょう。
ただし、こうした準備だけではカバーしきれない、しっかりと時間を取って勉強すべき重要な分野があります。
- 抗菌薬・感染症
- 輸液・電解質
- 栄養
- 心肺蘇生 など
これらはどの診療科でも重要なものの、一つの診療科でじっくり学ぶことが難しい分野です。そのため、初期研修医の早い段階から勉強を進めると、どの診療科でも共通して役立つスキルとなるでしょう。
医学生と研修医における勉強方法の違い
医学生と研修医では勉強方法も異なってきます。ここでは、そもそも何を学ぶのかについての説明から、実際に習得に至るまでの違いについて見ていきましょう。
まず医学生の目的は医学を学ぶことです。医学は学問であり、人体の解剖生理についての理解や、特定の疾患の病態(原因)を理解する論理的思考が重要となります。
一方、研修医はこの医学の理解を前提として、実際の患者さまに提供できるだけの医療を学ぶことが目的です。患者さまは一人ひとり異なるため、「医学」と比較して「医療」では、教科書通りにいかない不確実なことが多くなります。
医学は学問として身につくように学ぶことが大切です。しかし医療においては、「脱水の患者さまに静脈路を確保する」「動脈血液ガス採取を行い、呼吸状態を把握する」など理論でわかっていても、実践するには自身のスキルが不足している場合があるでしょう。
医療の不確実性や自分の理想通りの行動が取れないというギャップから、悩みが生じることがあるかもしれません。こうした際の勉強方法として、「自分ですべて解決しようとせずに他人に教えてもらう」ことが大切です。
医学と比較すると、医療の提供や手技の取得は自学自習だけでは難しいことが多くあります。一人で解決しようとするのではなく、指導医、上級医、先輩研修医など身近な人に助けを求められる研修医を目指しましょう。
研修医におすすめの勉強方法<6選>
ここからは研修医生活で勉強を続けるためのコツについて解説します。
1日の振り返りをする
社会人になると日中の多くの時間、仕事をして過ごすことになります。当然仕事が終わって家に帰ってくると、疲労も溜まっていることと思います。
このような状況だと、帰ってきてシャワーに入り、すぐに眠りたいときもあるでしょう。
しかし、そこはグッと堪えて、「5分でも良いので時間を取り1日の振り返りをする」ことをオススメします。その中で、今日1日の学びや、理解が足りなかった部分が見つかれば、それをメモに書いておきましょう。疑問点の全てを当日中に解決することは難しいので、まずはメモして書き出すことが大切です。書き出してさえおけば、次の日でも週末でもその疑問点を調べることができます。
次の日でいいや...と思うかもしれませんが、前日あったことを思い出すのは意外と大変です。週末にまとめて思い出すのはもっと大変でしょう。当日中に振り返りをしないと、せっかく学んだ内容や気になった疑問点もすぐに忘れてしまいます。
眠る前のひと頑張りを試してみてはいかがでしょうか。
同期との協力
研修医になると、多くの場合は同期(同僚)が複数人いるでしょう。
上級医・指導医から学べることはもちろん多いのですが、同期から学べることもたくさんあります。
例えば、病院勤務の中では、教科書に載らないような「ローカルルール」や「診療科の特徴」が数多くあります。『翌日の薬剤の処方は何時までに終わらせておく必要がある』『検査をオーダーした際に誰に伝えれば良いのか』などです。
これらを学ぶには、先にその診療科をローテートした同期に聞いてみるのが一番早く確実な方法です。
また自分が学習を進めていく上での道しるべとしても、同期の進捗状況は参考になります。
例えば、研修医同期10人中8人が知っている知識や取得しているスキルがあれば自分も取得を目指した方が良いでしょうし、逆に10人中1人しか知らない知識やスキルであれば自身が取得できていなくても焦る必要はないでしょう。
職場によっては同期が多くないこともありますが、同期がいる場合はお互いに協力しあって学習を進めていくことをおすすめします。
スキマ時間の活用
研修医になると、多くの時間を病院で過ごすようになります。仕事に追われる時間も多くなるため、学習に充てられる空き時間なんてとてもない...と感じる方もいるでしょう。
学生時代よりも自由時間が少なくなることは間違いなく事実です。
しかし冷静に考えてみると、スキマ時間であれば意外にあるもの。例えば、朝回診が終わった後カンファレンスまでの待ち時間や、通勤中の電車・バスの乗り換え時間などです。
仕事が終わった後にまとめて勉強する時間がない可能性もあるため、こうしたスキマ時間をいかに活用するかが、勉強を進める上では大切です。
- スキマ時間を作ること
- スキマ時間に行うタスク/勉強内容を決めておくこと
を心がけてみましょう。
インプットとアウトプット
勉強をする=教科書の内容を覚える(インプットする)と思っている方も少なくないのではないでしょうか。
インプットだけではなく、自分の学んだ内容をまとめること(アウトプット)も大切です。インプットしてしっかり理解できていると思っても、実際に紙に書き出してみたり口に出してみたりしようとすると上手くできない場合もあるはずです。
これは、理解できているつもりだったが自分の理解がまだ十分でなかったことを示しています。逆の言い方をすれば、この不十分な点をしっかりと理解することでより質の高い学習を行うことができます。
一通りインプット学習を行っただけでは気づきにくい自分の弱点を把握するため、アウトプット型の学習が有効です。
アウトプットとして紙に書き出すのも良いのですが、他人に伝えようとスライドショーや画像にまとめるとアウトプットの質が高くなります。
アウトプットの場としては院内勉強会などが一般的です。とくに研修医の立場であれば、勉強会用のスライドを上級医にチェックしてもらうと良いでしょう。他人にスライドを見てもらいフィードバックを得ることで、一人でスライドを作成する場合と比較して、「自分のまとめ方が本当に正しいのか」「伝えたいことがしっかりと伝わるか」を客観的に把握することができます。
また近年は、ブログやスライド共有サービス、X(旧Twitter)などのSNSでアウトプットを行う人も増えています。
対面と比較するとフィードバックは得づらいですが、身近に見てもらえる人がいない場合はこれも良い方法と言えるでしょう。
医学書選びのコツ
学習を進める上では医学書を読むことも多いかと思いますので、医学書選びのコツについても触れておきます。
医学書を選ぶ上でやってしまいがちな失敗は、「ローテートが始まる前に意気込んで分厚い教科書を買ったが、実際に始まってみたら忙しく全く読まないまま終わってしまった」というパターンです。
分厚い教科書は学問的には役立つのですが、持ち運びには不向きなことが多く、研修医が使いこなすことは難易度が高いです。
そのため、「なるべく薄くコンパクトに内容がまとめられた医学書を買い、いつも持ち運び参照する」というスタンスの方が有効に活用できるでしょう。
また、分厚い教科書は研修医室や図書室に置かれていることも多いので、購入する前に一旦自分の病院内の施設を探してみることも良いでしょう。
失敗を避けるためにも、上で書いたように同期と協力して、どの医学書が良いかを聞いてみるのもオススメです。
情報をわかりやすく整理
学生(医学生)時代の勉強は基本的にペーパーテスト対策が重視されていました。これは医学生の最終目標が6年次に行われる医師国家試験の合格に設定されていることからもわかります。ペーパーテスト対策においては、幅広い分野の内容を自分なりに整理し、必要に応じて記憶の中から引き出して解答することが求められます。
しかし仕事は基本的に、教科書の持ち込みが自由で、情報を記憶できていなくても問題になることが少ないです。一方で、「どの部分にどの情報が書いてあるか(どこを見れば自分の求めている情報が得られるか)」は理解しておく必要があります。
つまり臨床の場においては、情報を整理してまとめておくことの重要性が高いと言えるでしょう。
情報整理の方法は手帳にまとめることが一般的です。それ以外に、OneNoteなどのスマートフォンやタブレットのアプリを利用するのも、検索のし易さという観点からは良いでしょう。
情報を整理整頓しておき、必要なとき必要な情報を素早く引き出せるようにすることを目指しましょう。
まとめ
今回は研修医が悩むことの多い、勉強すべき内容や具体的な勉強方法について解説しました。
学生時代は勉強することが仕事ですが、研修医として社会人デビューをすると、勉強するだけではなく学んだ知識を実践することこそが仕事になります。
その仕事に活かせるように、学生のころ以上に目的意識を持って勉強に取り組むこと、そして他の同期と協力していくことが大切となります。
今回の記事では勉強方法に取り入れることのできるメソッドについてもいくつか紹介しましたので、何か一つでも参考になりそうなものがあれば試してみてください。
執筆者:竹内 想
大学卒業後、市中病院での初期研修や大学院を経て現在は主に皮膚科医として勤務中。
自身の経験を活かして医学生〜初期研修医に向けての記事作成や、皮膚科関連のWEB記事監修/執筆を行っている。
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