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夫婦の約7割が共働きとされる現在、医師も共働きであることが少なくないでしょう。とくに女性医師の場合、夫婦共働きであることが大半ではないでしょうか。
医師は労働時間が長く、残業や夜間の緊急手術などで勤務が不規則になりがちです。子育て世帯であれば保育園の利用がほぼ必須になりますが、医師の仕事と育児を両立させるには、どのように保育園を選べば良いのでしょうか。
この記事では保育園の現状、医師はどのように保育園を利用すれば良いのか、仕事と育児を両立させるための保育園選びや職場選びのポイントなどについて紹介します。
執筆者:Dr.Ma
医師の働き方と保育園
「働き方改革」「ダイバーシティ」「男女共同参画」などの用語が一般的になり、医療現場でも子育て世帯の医師が働きやすいよう環境が整えられつつありますが、医師は経験がものを言う職業であり、仕事を中断することはキャリアや診療スキルに大きく影響します。子育て世帯の医師にとって、保育園の存在は非常に重要です。
まずは、どのような場合に保育園を積極的に利用すると良いか、見ていきましょう。各家庭の事情でさまざまなケースが考えられますが、医師の場合は主に下記の2パターンが代表的かと思います。
夫婦で常勤勤務を続ける場合
育児中も夫婦が2人とも常勤勤務を続ける場合、保育園の利用は必須と言えます。夫婦の両親が健在で孫育てに協力的であったとしても、すべて任せきりにするのは難しいでしょう。夜間に緊急の呼び出しがあり得る医師においては、なおさら難しいと言わざるを得ません。
この場合、子どもは保育園で過ごす時間が長くなるため、どの保育園に預けるか、慎重に検討する必要があるでしょう。
夫婦の片方/双方が非常勤医師・大学院生の場合
夫婦の片方、または双方が非常勤医師や大学院生である場合、両親の協力を得ながら自宅で子育てをすることができるかもしれません。
ただし、医師は非常勤でも診療が長引いたり、臨時の手術が入ったりする可能性があります。大学院生は研究の打ち合わせや実験など、どうしても外せないスケジュールがあります。
小さな子どもは怪我をしたり体調を崩したりと、さまざまなトラブルが付きものです。自宅だけでの子育てが難しければ、やはり保育園の手を借りることになるでしょう。保育園の中には一時保育を行っているところもあるため、うまく利用すると良いでしょう。
医師の子どもは保育園に入れる?
2016年、「保育園落ちた日本死ね」と題した匿名ブログが大きな話題となりました。保育園に入りたくても入れない"待機児童"は社会問題となり、対策が進められました。
その後、待機児童をめぐる状況はどうなっているのでしょうか。園の種別ごとの特徴も、順に見ていきましょう。
待機児童の現状
2023年4月の調査では、全国の待機児童は2,680人と報告されています。ピーク時(2017年)の26,081人から約10分の1に減少しており、調査開始以来5年連続で最少値を更新しています。また、約86.7%の市区町村(1,510自治体)では"待機児童ゼロ"となっています。
減少した要因には、認定こども園や保育園の新設・定員数拡大などで保育の受け皿が拡大したこと、就学前人口が減少していることなどが挙げられています。
一方、人口増加率が高い地域を中心とする134自治体では待機児童数が増加しており、地域差が大きいことも指摘されています。保育士不足を抱えている自治体もあり、希望する地域の保育園に必ずしも入れるわけではない点に注意が必要です。
認可保育園
保育園には、国の基準を満たす認可保育園と、そうではない認可外保育園があります。
認可保育園は、自治体の援助を受けられることから保育料が安く、希望者が多いため競争になることがあります。認可保育園に入れるかどうかは、以下を考慮したポイント制で決まります。
基準指数 | 保護者の就労状況、子どもの健康状態などで決まるポイント |
---|---|
調整指数 | 兄弟が先に在園している、同居の祖父母がいるなど家庭の状況で決まるポイント |
優先順位 | 自治体が定める要素 |
たとえば、大学院生や非常勤医師だと「基準指数」が低くなりやすいため、地域によっては認可保育園への入園が難しくなります。また異動が多い医師はそのたびに転職しているとみなされ、入園の選考に不利になることがあります。
認可外保育園
認可外保育園は保育料が高い傾向がある一方で、地域の需要に合わせて延長保育や夜間保育など、柔軟な対応をしている施設もあります。夫婦の働き方に合う施設が近くにあれば、十分検討の対象となる施設です。
医療機関によっては院内保育園を設置しています。多くは認可外保育園であるものの、職員の子どもを受け入れる重要な役割を果たしています。次の段落で説明します。
院内保育園(院内保育サービス)
認可の有無とは別の観点で、医療従事者ならではの「院内保育園」についてご紹介します。
院内保育園は、病院の職員が育児をしながら安心して働くことができるよう、病院内に用意された保育園・保育サービスです。病院内保育園、病院付属保育園、院内保育所・保育サービスなど名称はさまざまですが、いずれも医療従事者の働き方に合わせた保育をしてくれる、仕事中も子どもが近くにいるためすぐに迎えに行くことができる、送迎の手間がないといったメリットがあります。
院内保育園を用意する医療機関は増加傾向にあり、2017年の調査では全病院の4割程度にのぼると報告されました。医師が職場や保育園を選ぶ際、院内保育園の有無は重要なポイントになると言えます。
ただし、担当する保育士の長時間労働や処遇の低さが問題視されており、院内保育園の実情もさまざまです。園庭が狭い/ない、子どもの数が少ない、ほかの職員に気を使うといったデメリットも考えられます。
保育園を利用して医師の仕事と育児を両立するための条件とは
忙しい医師の仕事と育児を両立するためには、どのような条件が考えられるのか、職場の条件と保育園の条件に分けて見ていきましょう。
職場の条件
繰り返しになりますが、育児にはトラブルが付きものです。急な帰宅が必要になることも少なくありません。仕事の最中であっても、抜けることがある程度許容される環境が必要です。
そのためには、医師の人数がある程度そろっている必要があります。医師が自分だけである場合、患者さんの容態が落ち着かない時に病院を離れることはできません。ほかの医師に診療を任せることが必要になります。診療体制が「主治医制」ではなく、「チーム制」「複数主治医制」であれば、そのような対応が許容されやすくなります。
忙しい診療科や病院では、仕事と育児の両立は難しいと考える医師が多いと思います。しかし、診療の忙しさそのものよりも、医師の人数や勤務体制、診療体制などから分業が可能であることの方が重要です。救急を中心とした医療機関でも時短勤務を認めている施設があるなど、勤務環境の実情は多彩です。先述した院内保育園の有無にも注目すると良いでしょう。
保育園の条件
保育園はスタッフや施設の状況により、子どもの受け入れ人数や時間にさまざまな違いがあります。基本の保育時間を過ぎた延長保育には対応できない施設、発熱した子どもなどに対する病児保育には対応できない施設も、少なくありません。
一概には言えませんが、認可保育園の場合、延長保育や病児保育への対応が難しいケースが多いようです。むしろ認可外保育園では、柔軟な対応をしてくれる施設があります。院内保育園では職員の働き方に合わせた保育を提供しています。
預ける保育園を決めるには情報収集が重要です。情報と実際に見た印象が異なることもあるため、事前に見学するのが望ましいと考えられます。
まとめ
医師の仕事と育児を両立させる保育園選びについて紹介しました。この記事で見てきた通り、育児をしながら医師の仕事を続ける上で、保育園選びと職場選びは同義になることがあります。まずは職場選びが非常に重要です。
働き方改革による長時間労働是正・労働生産性向上の流れを受けて、女性医師や子育て世代医師に適した労働環境を用意する病院が増えています。
仕事も育児も、大切な人生の一部。どちらも大事にするため、よりご自身のライフプランやキャリアビジョンに合った職場選びをしましょう。
執筆者:Dr.Ma
2006年に医師免許、2016年に医学博士を取得。大学院時代も含めて一貫して臨床に従事した。現在も整形外科専門医として急性期病院で年間150件の手術を執刀する。知識が専門領域に偏ることを実感し、医学知識と医療情勢の学び直し、リスキリングを目的に医療記事執筆を開始した。これまでに執筆した医療記事は300を超える。
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