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患者さまと接する機会は少ないものの、日々の診療に欠かせない分野で働く診療科があることをご存知でしょうか。今回ご紹介する臨床検査科は、その代表格ともいえる存在です。
今回の記事では、臨床検査医の平均年収から仕事内容、臨床検査医として働くメリット、将来性、さらに年収をアップさせるためのポイントまで、幅広く解説します。
臨床検査医の平均年収
全診療科における医師の平均年収が1,596万円であるのに対して、臨床検査医の平均年収は1,075万円です(※1)。今回の調査では、愛知県で1,150万円、長野県で1,000万円との回答が得られています。
他の都道府県の動向によって金額が変動する可能性もありますが、それを踏まえても一般的な職種の平均年収よりは高額で、医師の平均年収よりは控えめなことがわかる結果となりました。
※1.2020年10月時点のドクタービジョン掲載求人をもとに平均値を算出しています
臨床検査医として働く医師の数などに関するデータは、厚生労働省『平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』に詳細が記されています。
2018年末時点で臨床検査医として医療機関に従事する医師の数は604人。医療施設に従事する医師の全体数の0.2%と、その割合は少ないことがわかります。
なお、医療機関別のデータでみると、病院に勤務する臨床検査医の総数は596人。これに対して診療所に勤務するのは8人で、ほとんどの臨床検査医は病院に勤務していると考えて差し支えないでしょう。
臨床検査医の平均年齢は、57.7歳。医療施設に従事する医師全体の平均年齢は49.9歳のため、臨床検査医は比較的高齢化が進んでいるようです。
臨床検査医の仕事内容・働き方
臨床検査医に求められているのは、臨床検査医学に基づいた適切な臨床検査の実施と普及に努めることです。的確かつ迅速に臨床検査を実施するため、臨床検査技師の管理と協力体制の整備、さらに検査室の管理運営などに取り組んでいます。
臨床検査
臨床検査医は、担当医からのオーダーを受けて臨床検査を実施します。臨床所見などで診断できる疾患ではない場合には、機器を駆使して病名を特定するための項目を調べます。
なお臨床検査には、血液、尿、組織の一部など患者さまから検体を採取して調べる「検体検査」と、体表もしくは体内をエコーなどで直接調べる「生体検査(生理機能検査)」があります。
臨床検査医がどの検査を担当するかは、医療機関の特性と規模によっても異なります。外来メインの医療機関では生体検査は院内で実施し、検体検査は外注するケースが多いようです。医療機関の規模が大きくなるにつれて、検体検査と生体検査は分業される傾向にあります。
臨床検査技師や診療開始の検査相談
正確な診断を行うためのサポートも臨床検査医の業務です。判断に悩む症例に関しては、臨床検査医が直接担当するか、臨床検査技師から相談を受けてアドバイスや指導を行います。また、診療科の担当医師からの相談に対応することも大事な業務の一環です。
また、検査方法の選定など検査をオーダーする臨床担当医からの相談に対応することもあるようです。臨床検査には、臨床血液学、免疫、輸血、生化学などの分野があり、調べられる内容と強みはそれぞれ異なります。
そのため、診療支援業務の一環として臨床検査医は臨床医と相談しながら、実際に検査を受ける患者さまの状態に配慮して検査項目を考案する場合もあります。検査後は、臨床検査技師同席のもと、結果を共有します。
検査室の管理運営
臨床検査医は、前述のような臨床検査の実施と、臨床検査に関連する知識の提供・助言以外に、適切な臨床検査が実施されるよう検査室の動向管理も実施します。
臨床検査医になるメリット
病院で実施する検査全般を請け負っている臨床検査医はややマイナーではありますが、臨床医にとって欠かせない存在です。それでは、臨床検査医になるメリットを確認してみましょう。
検査室を管理する能力があるとみなされる
臨床検査専門医の資格を持っていると、検査室の管理運営を任されやすくなります。資格取得は必須ではありませんが、日常業務と検査室の管理運営に十分な能力を有しているとみなされるのです。
常勤医師が検査室を管理していると、「検体検査加算管理」を算定でき診療報酬上有利に働くことから、専門資格を有する医師には一定数のニーズがあります。
女性医師にとっても働きやすい
復職や転科を検討している女性医師にとって、臨床検査医は有力な選択肢となり得ます。臨床検査医は、業務の性質上、入院している患者さまを受けもったり夜勤や当直を任されたりすることが基本的にはありません。子育てや介護などがあっても無理なく働けるのがポイントです。
他診療科から転科した場合、希望次第で臨床を続けられるケースもあります。血液、呼吸器など今までの経験を活かしながら、臨床検査専門医として新たなキャリアを築くことが可能です。
大学病院などでは研究にも携われる
臨床検査学は、基礎医学と臨床医学の双方をつなぐ架け橋のような存在です。所属する施設によって研究内容と環境に差はありますが、大学病院では検査業務と研究を並行できるのが一般的。検査部は各診療科から検体や検査データが集まるため、臨床研究に取り組みやすい環境といえるでしょう。
大学病院は教育機関としての機能も有しています。教育的な能力もある医師であれば、教員として後進育成をキャリアの選択肢に加えることも可能です。
臨床検査医の将来性
検査技術そのものの進歩や機械による自動化が進んだことで、検体検査で必要な工程の多くは簡略化されてきました。しかし、検査の実施そのものや、機械的なデータを臨床現場に落とし込むための加工、臨床担当医への説明など、人間が対応しなければならない場面も依然として多くなっています。
近年では一回の検査でより多くのオーダーが出されるようになり、健康診断や人間ドックの受診率も増加しています。また、予防医療や先制医療を目的とした臨床検査も増えてきました。
こうした現状を踏まえると、臨床検査医の仕事は今後ますます重視されるようになるでしょう。
年収アップのポイント
前述の通り、臨床検査医の平均年収はやや低い傾向にあります。こちらでは、臨床検査医が平均年収をアップさせるためのポイントをご紹介しましょう。
管理職になる
勤続年数を重ねるだけでなく、技師長や室長など組織内で一定以上のポジションを目指しましょう。昇格のために、同僚や部下のマネジメント能力を少しずつ習得していくのがおすすめです。
関連資格を取得する
業務に関連した資格を取得して、手当をもらう方法もあります。業務に対する知見を深め、管理職へのステップアップにも欠かせない要素なので、積極的に検討したいところです。
臨床検査専門医以外にも一級臨床検査士、細胞検査士のような臨床検査技師の資格もあります。ただし、エコーに携わった経験を優遇する職場で細胞検査士を取得してもメリットがあまりないため、キャリアプランに基づいてどの資格を取得するかは決めるようにしましょう。
大規模病院や民間企業などに転職する
昇格が難しかったり、資格手当がない医療機関の場合には、外に目を向けるのも良いかもしれません。大規模な病院になるほど管理職は必要になりますし、医療機器メーカーや治験を行う企業では好待遇の職場も多くあります。まずは求人案件と自身のキャリアのすり合わせをしてみましょう。
安定的な働き方ができる臨床検査医
臨床検査医は、全診療科の業務を円滑にまわすために欠かせない存在です。今後もその重要性から、需要は増すと考えられるでしょう。ワークライフバランスを意識した働き方をしやすいのも、臨床検査医の魅力です。
一方で、平均年収はやや低い傾向にあります。高収入を狙いたいなら、キャリアアップや医療機関以外への転職も視野に入れて検討しましょう。
ドクタービジョン編集部
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