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内科は医師が最も多く所属する診療科であり、ジェネラリストとして勤務医や開業医として働くだけでなく、健診業務や介護保険施設での勤務など、多彩な働き方がかなう点が魅力です。
一方で、さまざまな働き方が可能であるからこそ、働く地域や就業形態によって年収にはかなりの幅があります。女性医師や20代の若手医師も多く、働き方や今後のキャリアも含めて気になる方は多いでしょう。
この記事では、内科医の年収を地域別・施設形態別に詳しく解説します。多彩な働き方に対する収入の特徴、年収アップの方法なども紹介します。ぜひご一読ください。
*1:2023年11月時点の「ドクタービジョン」掲載求人をもとに、平均値を算出しています。
*2:2022年8月時点の「ドクタービジョン」掲載求人をもとに、平均値を算出しています。
執筆者:中山 博介
内科医の年収は?
内科医の平均年収は1,812万円。全診療科の平均年収1,846万円をわずかに下回る結果でした*1。全診療科の平均年収とほぼ同じと考えて良いかと思います。
内科は、所属医師数が最も多い診療科です。厚生労働省の統計によれば、医師の約2割が一般内科医です。
全医師の平均年齢50.1歳に対し、内科医の平均年齢は58.9歳。多くの医師が長期間安定して収入を得られる診療科であるとも言えます。生涯年収はほかの診療科より高くなる可能性があると言えるでしょう。
また、内科は勤務形態(勤務医、開業医など)はもちろん、業務内容(健診なども含む)や施設業態(介護保険施設なども含む)、アルバイト業務の範囲など、多様な働き方があり得る診療科です。年収にも幅があるため、平均年収の数字はおおよその目安ととらえて読み進めてください。
【地域別】内科医の年収データ
内科医の平均年収を地域別に見てみましょう。
全国/地域 | 内科医の平均年収(万円)*1 |
---|---|
北海道 | 1,957 |
東北 | 1,811 |
北関東 | 1,864 |
一都三県 | 1,920 |
北陸・信越・東海 | 1,766 |
近畿 | 1,742 |
中国・四国 | 1,804 |
九州 | 1,723 |
北海道や関東は年収の水準が高く、九州や近畿と比べると差があることがわかります。内科医の平均年収には地域性があり、傾向としては南よりは北の方が高額になりやすいようです。
【施設形態別】内科医の年収データ
続いて施設形態別の平均年収について紹介します。こちらは最低額と最高額を並べて見てみましょう*2。施設形態によって、年収レンジにバラつきがあることが読み取れます。
施設形態 | 最低年収(万円)*2 | 最高年収(万円)*2 |
---|---|---|
クリニック | 1,486 | 1,937 |
一般病院 | 1,331 | 1,843 |
公立病院 | 1,368 | 1,800 |
大学病院 | 1,000 | 1,200 |
国公立・自治体 | 1,239 | 1,779 |
総合病院 | 1,260 | 1,872 |
療養型病院 | 1,382 | 1,750 |
ケアミックス | 1,368 | 1,843 |
精神病院 | 1,306 | 1,700 |
回復リハビリテーション病院 | 1,367 | 1,729 |
介護老人保健施設 | 1,201 | 1,396 |
平均 | 1,301 | 1,714 |
この表では、大学病院とクリニックの年収の違いが目を引きます。内科医全体の平均値と比べて、大学病院の年収の幅は低い水準です。
ほかに介護老人保健施設、国公立・自治体、総合病院も、平均年収が低い傾向にあると言えます。
一方で、クリニックの最低年収は1,486万円、最高年収は1,937万円と、いずれも平均値を大きく上回っています。所属する医療機関の施設形態が、平均年収に大きく影響することがわかります。
女性医師や20代医師の年収は?
内科医には、女性医師や20代の医師も多く含まれています。
厚生労働省の2022年の統計によれば、男性医師の平均年収が1,500万円程度であるのに対し、女性医師の平均年収は1,140万円程度*3でした。女性医師は出産や育児などのライフイベントによってフルタイム勤務が難しいケースも多いことから、男性よりも年収額が低い傾向にあります。
しかしライフイベントに合わせて多様な働き方を選びやすい点で、内科は女性医師が選択しやすい診療科と言えるでしょう。
また、20代(25〜29歳)の平均年収は約696万円*4と概算されます。給与が低い研修医や専攻医期間にあたる医師が多いため、年収は低くなります。
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▼参考資料
令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|政府統計の統計窓口 e-Stat
*3:「第1表:職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」より、「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」で算出
*4:「第5表:職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」より、「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」で算出
内科医の勤務形態と年収の関係
勤務医の場合
少し古い調査になりますが、2012年に実施された『勤務医の就労実態と意識に関する調査』*5では、内科の勤務医の年収は約1,247万円でした。同調査では、全診療科の平均年収は1,261万円であり、ほぼ同じ水準でした(ちなみに全診療科平均の2023年の調査結果*6では、病院勤務医の平均年収は約1,461万円、一般診療所では1,119万円でした)。
病院に勤務する勤務医は、緊急性や専門性の高い疾患を取り扱う機会が多くあります。小規模のクリニックや診療所では設置することが難しい検査機器を使えたり、入院患者さんの診療にあたったりもできます。
とくに大学病院では、希少疾患の研究や治験も実施されるため、臨床だけでなく、日本の医療の発展のための研究に携わることもできます。
緊急対応や宿当直業務など、内科の勤務医は比較的労働負担が大きい反面、後述の開業医と比べると年収は劣る傾向にあります。
開業医の場合
内科を標榜する開業医の平均年収は、『医療経済実態調査』から読み取ることができます。上述の勤務医と同様の年で比較してみましょう。2012年ごろ(2013年)の平均年収額(損益差額)は約2,539万円*7、2023年は約2,942万円*6で、勤務医の平均年収を大きく上回っています。
内科の開業医の主な業務内容は、ジェネラリストとして地域の患者さんの体の不調に幅広く寄り添うことです。患者さんが最初に頼るゲートキーパーであり、高血圧や糖尿病などの管理はもちろん、専門的な治療が必要な場合は高度医療機関へ紹介することも重要な役割です。
年収が高い背景として、こうした日常診療に加え、院長の業務である医療スタッフの確保や設備投資など、クリニック経営に伴う負担もあることは、理解しておくべきでしょう。
キャリアに合わせて選べる、内科医の多彩な働き方と年収の傾向
内科は、内臓・神経・血液など、体の内側の不調の原因を総合的に診断・治療する診療科です。その業務内容の幅ゆえに内科医は多彩な働き方が可能であり、年収も大きく変わります。
ここからは、内科医の代表的な職場である①有床医療機関、②無床医療機関、③介護保険施設、④健診業務について、働き方と年収の傾向をご紹介します。
①有床医療機関
有床医療機関とは、大学病院や市中病院など、入院可能な病床を有する医療機関です。入院中の患者さんはもちろんのこと、外来診療も受け持ちます。
当直業務も定期的に生じるほか、職場にいない時間帯も呼び出しに応じて職場に直行する「待機当番」もあり、まさに多忙な職場と言えるでしょう。忙しさで心身ともに厳しい環境ですが、時間外手当や日当直手当が支給されるため、給与は高い傾向にあります。
こうした環境は、2024年度以降に本格的に運用が始まる「医師の働き方改革」によって是正されていくでしょう。同時に、労働時間に上限が設けられることで、年収は下がってしまう可能性があります。働き方改革の内容を理解し、自分の労働や年収に与える影響も把握しておきましょう。
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▼働き方改革と当直業務の関係、宿日直許可などに関する詳しい記事はこちら
2024年から始まる医師の働き方改革。当直アルバイトができなくなる?
当直の医師は何してる?勤務の実態や職場ごとの特徴、働き方改革の影響も解説
医師の「寝当直」とは?仕事内容やアルバイトの際の注意点、働き方改革の影響を解説
②無床医療機関
無床医療機関とは、ベッドをはじめとする入院設備がない医療機関です。小規模なクリニックなどが該当します。
外来診療を主体とし、必要に応じて往診を実施することもあります。
当直業務や待機当番などはないため、ライフワークバランスを形成しやすい職場環境と言えるでしょう。
③介護保険施設
介護保険施設とは、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設(療養病床)など、介護保険サービスとして利用できる公的施設です。医師を配置することが義務付けられています。
今後高齢化がさらに進み、介護保険施設の増加が予想されることを考えると、内科領域を幅広くカバーできる内科医は、より求められるようになるでしょう。勤務先候補として視野に入れると良さそうです。
具体的な業務内容は、施設と業務内容によって異なります。利用者の診察や急変に対応できるよう当直業務やオンコールを担当することもあり、給与や待遇は千差万別です。
④健診業務
健診業務も、内科医の仕事の一つです。春や秋などは健康診断シーズンであり、各医療機関で求人を出すことも多いため、単発でのアルバイト経験がある方も多いのではないでしょうか。
健診業務はアルバイトだけでなく、非常勤勤務や健診センターでの常勤など、雇用形態はさまざまです。
当直業務がなく、勤務時間も決まっているため、プライベートの充実をはかりやすいでしょう。
給与は医師の平均水準よりも低い傾向にあると言われます。しかし内視鏡操作など、健診業務に役立つスキルや資格を保有している場合は好待遇になりやすいため、積極的にアピールしましょう。
内科医として収入アップを目指すには
自身の年収と平均年収を比較して、さらなる年収アップを考える方も少なくないでしょう。ここからは年収アップに向けた具体的な選択肢をご紹介します。
開業する
上述のとおり、開業医の平均年収は勤務医の平均年収を大きく上回るため、開業することで年収アップを目指せます。自身の診療スキルに自信があれば、良い選択肢と言えるでしょう。
年収面だけでなく、医療に対する姿勢や診療方針などの一切を自身の裁量で決定できる点が魅力です。
一方で、開業には多額の初期投資が必要です。経営次第では赤字が膨らみ、借金のリスクもあることに注意と覚悟が必要です。
医師のための「開業の極意」【2023年版】 【医師の開業年齢】データで見る開業医と年齢の関係 【自己資金0円】でのクリニック開業事例~医療を諦めない仕組み構築のために~<イーヘルスクリニック新宿院 院長・天野 方一先生>
非常勤やスポットでアルバイトをする
非常勤やスポットアルバイトも、年収アップのスタンダードな選択肢です。本業の忙しさなど、自身の状況に応じて働き方を選びやすいことから、多くの医師が実施しています。
毎週特定の曜日に勤務する「定期非常勤」や、ワクチン接種対応や療養型病院での当直勤務などの「スポットバイト」は、一般的なアルバイトと比べると高額です。
ただし、休日を削って働くため、体力面での負担が大きいほか、現場での人間関係構築にも時間がかかり、精神的負担になる可能性があることは覚えておきましょう。上述のとおり働き方改革が本格的に導入されるため、スポットバイトや非常勤勤務の労働時間に対してより厳密な管理が求められる点にも注意が必要です。
医師のスポット勤務とは?働き方や求人の探し方、注意点を解説
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年収レンジの高い地域・医療機関に転職する
今の職場より年収レンジの高い医療機関へ転職することも一つの手段です。
上述のとおり、年収傾向には地域差があり、北に向かうほど高い傾向があるため、IターンやUターンを検討するのも良いでしょう。医師不足が深刻な地域では、人材確保のために高待遇の求人を用意している医療機関も多くあります。交渉次第でさらなる高待遇を引き出せるかもしれません。悩んだときは、医師専門の転職コンサルタントへの相談も検討してみましょう。
医師のUターン・Iターン転職!気をつけたいポイントを解説
将来のキャリアを見据えた職場選びを
今回は内科医の平均年収について分析しました。同じ内科医でも、年収はどんな職場でどのような業務を担当するかによって大きく変わります。職場を選ぶ際は、ご自身が仕事に対して何を求めるのか、これからどんな医師になっていきたいのか、十分検討した上で決定することが大切です。この記事が内科医の方々のキャリアを考える際にお役に立てば幸いです。
執筆者:中山 博介
神奈川県の急性期病院にて、臨床医として日々研鑽を積みながら医療に従事。専門は麻酔科であり、心臓血管外科や脳神経外科・産婦人科など幅広い手術の麻酔業務を主に担当している。
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