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痛みに配慮した診療のニーズが高まりつつあることを受けて、今後は麻酔の取り扱いに関する知識を有する麻酔科医の活躍がより求められるようになるでしょう。
しかし、全国的に麻酔科医不足が問題視されているのが現状です。今回は、麻酔科医の年収と主な仕事内容、麻酔科医ならではのやりがいについてご紹介します。
麻酔科医の年収は?
麻酔科医全体の平均年収は1,584万円であり、医師全体の平均年収1,596万円※と比較しても、ほぼ変わりない金額であるといえるでしょう。
都道府県ごとの平均年収に目を向けると、トップは秋田県で2,150万円、2位に福島県の2,095万円と続き、麻酔科医の平均年収を大きく引き離して2,000万円を超える結果となりました。3位は愛媛県・高知県・徳島県の3県が同額で1,950万円のため、トップ5の平均年収の差はそれほど大きくありません。これは、地方において医療資源が乏しいのをカバーしようと市場原理が働き、給与額を高く設定する傾向があるためと考えられます。
興味深いのは、大都市圏における麻酔科医の平均年収額の差です。東京都の1,433万円に対して大阪府は1,826万円、東京都に隣接する神奈川県も1,800万円で、400万円近い差がありました。
このことから、麻酔科医の平均年収は医師の平均年収と近いものの、地域における医療資源の充実度などの影響を受けて変動することがわかります。平均年収は勤務先を選ぶ際の重要なポイントになりますから、麻酔科医として働くことを考えている方は確認しておくといいでしょう。
※:2020年10月時点のドクタービジョン掲載求人をもとに平均値を出しています
麻酔科医の業務内容
麻酔科医の業務範囲は、ペインクリニック、緩和医療、集中医療、救急医療、総合診療と非常に幅広いのも特徴のひとつ。ここでは、麻酔科医が担当する業務内容について具体的にご紹介していきます。
術前回診の実施
手術の事前準備として、同意書の確認や当日の手術内容の確認を行い、病棟にて患者さまとご家族に向けて麻酔に関する説明を実施します。麻酔による合併症を起こした血縁者がいないかをここでしっかりと確認するのも、麻酔科医の大切な役割です。
しかし、術前回診はその日予定している麻酔がすべて終了してから行いますので、病棟訪問が業務時間外になってしまうことも珍しいことではありません。
また、担当医と病棟看護師との連携も重要になります。事前検査の項目で不明点があれば問い合わせと、前投薬の詳細・飲食の禁止・手術室への入室時間などの情報を病棟看護師と共有します。
術前症例の検討
患者さまの疾患・合併症・身体状態を把握して、不明点などがある場合には担当医へ照会が必要です。本来であれば業務時間内に済ませるのが理想ですが、術前回診と同様、業務時間外に対応せざるを得ないときもあります。
麻酔の準備
自身の診察や担当医からの情報共有をもとに、患者さまへ実施する麻酔一式を準備します。麻酔薬だけでなく、麻酔機器、咽頭鏡、気管チューブといった道具一式の準備と点検も麻酔科医の仕事です。
麻酔の実施
予定している手術内容と麻酔方法など患者さまにまつわる情報の再確認、手術室入室前の麻酔前投薬を実施します。患者さま入室後は手術の進行と患者さまの生理状態を確認しながら麻酔量と投薬スピードを調整。酸素飽和度や血圧の管理・記録も麻酔科医の担当です。
術後回診
手術終了後の患者さまの状態把握と対応の検討、必要に応じて担当医師や看護師に指示を出します。
麻酔科医が不足する原因とは?
日本麻酔科学会がまとめた『 麻酔科医マンパワー不足に対する日本麻酔科学会の提言 』では、日本麻酔科医学会に所属する麻酔科医と専門医・標榜医の数自体は年々増加傾向にあります。それにもかかわらず、麻酔科医は不足していると感じる医療機関が多いのには、医療機関における麻酔科医の定数、女性医師の活躍にともなうライフステージの変化、医学部生と初期研修医が持つ麻酔科のイメージ像が乏しいことなどが理由に考えられています。
麻酔科医の定数問題
医療機関における麻酔科医の定員枠が少なく、新しく麻酔科医を招くことができないのが現状です。その結果、在籍する麻酔科医の業務負担は増える一方であり、すべての麻酔業務を担当するには圧倒的マンパワー不足であることが見受けられます。
女性医師のキャリア形成にかかる問題
女性の麻酔科医の増加も関係しています。とくに出産後に復帰しようとしても、託児所や保育所が見つからない、あるいは家庭との両立を考えて当直が難しいなどの理由から、家庭と仕事との両立に頭を悩ませるケースも多く、自治体や医療機関による保育事業の普及と浸透は、女性の麻酔科医の活躍を考えるうえで、大きな課題となっています。
麻酔科の魅力が伝わりにくい
上記2点とは少し性質の違う問題ですが、麻酔科のやりがいは現場を経験するまで伝えるのが難しいとの指摘もあります。麻酔は医学部生時代にも必ず勉強しますが、ほかの分野と比較して「診療で欠かせないことはわかるけれど、何をしているのかよくわからない」と感じてしまうことが多いでしょう。麻酔科医として活躍中の医師からも、「学生時代に病院実習に参加してようやく全体像を掴めるようになった」という声もあります。
縁の下の力持ちでもある麻酔科医のやりがい
麻酔科のやりがいや魅力は、実際に経験してようやくわかると話す麻酔科医も多いもの。麻酔科に入ると、先輩医師や指導医によるサポートを受けながら、手術麻酔のバリエーションを学んでいきます。同じ病気でも患者さまや執刀医が異なれば、適した麻酔術式も異なるため、まったく同じ手術はありません。
また、医療機関の方針にもよりますが、研修医1年目でも心臓外科、呼吸外科、小児外科、産科などの特殊麻酔を経験します。ほかの診療科よりも、独り立ちが早い傾向があるといわれるのはこのためです。
仕事はハードで決して華々しくはないものの、医療現場には欠かすことのできない麻酔科。勉強することは多岐にわたりますが、身につけた知識が多くなるほど様々な患者さまとより密接に関われるようになることが麻酔科医のやりがいであり、魅力といえるでしょう。
麻酔科医は、臓器や分野を超えて患者さまと医師を支える存在
この記事では、麻酔科の年収と業務内容、麻酔科不足の原因、そして麻酔科医のやりがいについて解説しました。他の診療科同様ハードワークではありますが、毎日の地道な仕事のなかにやりがいを感じる方も多いでしょう。
医学部生や初期研修医のなかには、臓器や分野に縛られないマルチプレーヤーとして活躍したいと考えている方も多いはず。麻酔科医という働き方を選ぶことが、理想の医師像に近づく一歩になるかもしれません。ドクタービジョン編集部
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