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北海道函館市に位置する函館中央病院は、1930年(昭和5年)の開設当初より、地域の基幹病院として急性期医療を担ってきた歴史ある病院です。
いつの時代も函館市という地域で担うべき医療を実践し、過去90年以上に渡り、そのたすきをつないできました。函館中央病院が担うべき役割とは、どのようなものなのでしょうか。今回は、現院長である本橋雅壽先生にお話を伺いました。
函館中央病院院長 本橋雅壽先生
日本心臓血管外科学会国際会員、心臓血管外科専門医・修練指導医、日本胸部外科学会評議員、日本外科学会専門医・指導医、医学博士。北海道大学医学部を卒業後、北海道大学第二外科に入局し、道内の関連病院で勤務。フランス・オンリーモンドール病院・研究所への留学を経て、1996年より函館中央病院で約9年間勤務。NTT東日本札幌病院での勤務を経て、2007年に再び函館中央病院へ。2017年には、函館中央病院の病院長に就任。
少子高齢化が進むこの地域で、函館中央病院が担うべき役割
まず始めに、函館中央病院の特徴を教えてください。
当院は、1930年(昭和5年)に社会福祉法人函館厚生院が運営する病院として開設されて以来、一貫して急性期医療を中心に取り組んでまいりました。とくに「1.小児・周産期医療」「2.整形外科の診療体制」「3.がん診療の体制」「4. 救急医療」は、この地域で当院が担うべき重要な役割と考え注力してきました。
小児・周産期医療
まず1つ目の特徴が、小児・周産期医療です。1973年に開設した未熟児センター(現NICU/GCU)は、50年間に渡り道南地域で当院が唯一担ってきました。総合周産期母子医療センターの指定を受け、24時間体制でハイリスク分娩や低出生体重児のケアにあたっています。
このほか北海道小児地域医療センター指定病院、小児がん連携病院(類型3)の指定を受けているほか、地域との連携として函館・道南地域における性暴力被害にあった方の救援支援を行うチーム「函館・道南SART(サート)」にも参画しています。当院は主に18歳以下の被害者を中心に、性暴力被害に遭われた方の心情に寄り添いながら、証拠採取、性感染症検査、緊急避妊薬の処方といった取り組みを積極的に行っています。
また、子育て支援の強化にも積極的に取り組み、「こども子育て支援室」を開設しました。ここでは子どもの相談や受診の相談、医療費や福祉制度、子どもの預かり、子育ての息抜き、学習や学校に関する相談、家庭問題、子育てグッズ、性的マイノリティ、ことばの相談などができます。子どもたちが輝ける地域となるために、地域と連携しながら小児・周産期医療の強化を図っています。
整形外科の診療体制
2つ目に、充実した整形外科の診療体制があげられます。当院の整形外科は脊椎疾患や上肢、下肢の外傷、変性疾患、小児整形外科を含めた各分野において経験豊富な指導医を中心に専門医が10名以上在籍し、国内最大級の診療体制を整え、地域の皆さまから信頼を得ています。
がん診療の体制
3つ目が、がん診療の体制です。北海道がん診療連携指定病院でもある当院は、がん診療体制のさらなる充実を図るため、道南初となる腫瘍内科を開設したほか、がん化学療法看護認定看護師らによる専門外来も開設しています。
さらに、がん患者さまの不安に寄り添ってサポートをするために「がん相談支援センター」の設置、がん患者さま同士が語り合い・励まし合う場としてがんサロン「ほっと」を開設しました。そのほかにも札幌からヨガインストラクターを招き、がん患者さま向けにヨガ教室を定期開催するなど、地域におけるがん診療拠点の一つとして、がんの診療体制・サポート体制の充実を図っています。
がんは身近な病気であるとともに、早期発見できれば治る病気になりつつあります。当院では1969年より「胃がん検診車」による巡回住民検診事業を開始するなど、予防医療も力を入れています。
救急医療
最後に、設立より当院が担ってきた救急医療です。函館の急性期医療は当院を含めた3病院が中心となり、2次輪番制で対応しています。救急指定日の対応では、関連大学の協力を得ながらも、基本的には当院所属の医師が各科で対応しています。
救急症例においても、転院することなく専門科に依頼できる体制が整っています。夜間や休日の救急指定日は受け入れが難しい場面もありますが、各科ならびに看護師を含めた多職種協働により、夜間でもスムーズな対応を実践できています。
これらの領域に力を入れてきたのには、やはり地域の少子高齢化の影響が少なからずあるのでしょうか。
そうですね。現在函館市および近郊の市町村では、少子高齢化や人口減少が著しく進んでいます。先に説明した取り組みは、いずれも当院がこの地域で担うべき医療であり、90年以上の歴史の中で先人たちが築き継続してきた医療です。
地方都市である函館では現在の状況を鑑みながら、担わなければならない医療、住民のニーズに応える医療を継続していくことが非常に重要であると考えています。
他職種との協働で「質の高い医療の提供」「業務改善」を実現する
先ほど「多職種協働」という言葉がありましたが、急性期医療を提供していくために、貴院ではどのような体制で診療にあたっているのか教えてください。
急性期型病院で行うのは、入院や検査、手術といった高度で専門的な治療です。とくに近年では医療の高度化によって診断技術や治療の多様化が進み、専門分化が明確になってきています。
医師以外に看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士などの多職種が集まり、安全で質の高い医療を提供するためにチームとして治療に関わります。また、患者さまの経済的負担や療養環境の相談に応じるために、医療ソーシャルワーカーもチームの一員としてカンファレンスなどに加わります。
さらに患者さまの権利を尊重しつつ安心・安全なチーム医療を提供するために、地域の医療機関や行政との連携や、職員が安心して働ける職場環境づくりと人材育成にも力を入れています。
医療を受ける側にとっても、提供する側にとっても万全な体制が整っているのですね。近年では医師のタスクシフトなど、医療従事者の働き方改革も重要な課題となっていますね。
そうですね。当院でも勤務医の負担軽減のために多職種との協働はもちろん、地域医療機関との連携強化、業務や会議の効率化などの業務改善を中心とした収支構造の変革にも積極的に取り組んでいます。
良質な医療や看護の提供、そして職員やその家族の幸せのためには、経営の安定が必要だと考えています。しかし、これらは一朝一夕で実践できるものではありません。職員一丸となって日々工夫しながら継続的に取り組んでいく所存です。
函館中央病院の魅力と求める人物像
貴院では、とくにどのような経験が積めるのでしょうか。医師にとっての「函館中央病院で働く魅力」を教えてください。
当院には、多くの実践の場があります。たとえば外科系医師にとっては、年間で約5,000件の手術症例があり、手術件数が多いことも魅力です。一番近くにある大学病院(札幌市)とは約300kmも離れているため、通常大学病院で治療などを行う症例を、当院で診る機会もあるかもしれません。
また当院には全部で26の診療科があることから、多種多様な疾患を診る機会があります。救急医療については、希望に応じて二次救急外来に携わる機会を増やすことも可能です。
上級医や経験豊富な看護師の指導のもと、軽症から重症、頻度の高い疾患から稀な疾患までさまざまな経験を積める環境があるので、医師として経験を積みたい若手の方に魅力的な環境が整っていると思います。
函館中央病院が求める人物像とは、どのような方でしょうか。また、本橋先生はどんな方と一緒に働きたいと考えていますか。
当院のような地方都市の基幹病院は、日進月歩で進化し続ける医療に対応し、普通の医療を普通に継続できることが重要であると考えています。そのためには、さまざまな経験を積み、常に自己研鑽を続けていかなければなりません。その結果、基礎が身に付き、さらに新たな知識を得ることで柔軟な対応ができる医師に成長できるはずです。
また、医師として医療を提供していくうえで最も大事なのは、「医療はチームで行う」ということです。看護師を含む多職種とのコミュニケーションの重要性を理解し、ともに高め合える医師と協働できたらと考えています。
函館・道南で「地域に選ばれる病院」を目指す
最後に本橋先生が考える函館中央病院の魅力と、求職者の方へメッセージをお願いします。
函館は北海道の他地域と比べて夏は涼しく、氷点下ではあるものの比較的冬の気温も高めで、雪が少ないです。空港は街から近いうえに新幹線が通る駅も近郊にあるなど、交通アクセスもよく、新鮮な海産物に代表されるようにおいしい食べ物も豊富なため、道外から来た医師も住みやすい街だと思います。
そんな函館・道南の魅力に加えて、当院は立地もよく周囲には飲食店や百貨店もあります。また、24時間保育可能な院内保育室を完備しているため、子育て中の方でも安心して働けます。
そして私の考える函館中央病院の最大の魅力は、地域の基幹病院の一つとして先人たちの医療を継承しつつも、その時々の住民のニーズに応えるべく、変化に柔軟に対応する病院であることです。この地域だからこそ提供すべき医療について常に考えて実践し、地域住民の方はもちろん地域外の方にも「函館中央病院なら間違いない」「函館中央病院を受診してよかった」と選んでいただけるような病院を目指しています。
もしご興味のある方がいらっしゃれば、まずは函館へ遊びにいらしてください。きっとこの街の魅力を感じられるはずです。そのうえで、当院を選んでいただければ職員一丸でサポートします。そういった環境が、当院にはあります。
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