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病院やクリニックなどの医療機関で雇用されて業務を行う勤務医。自身の裁量で働くのは難しく、当直やオンコール対応などが多いと激務になりやすいと言われています。
勤務医として働いているものの、「仕事量に比べて割りに合わないのではないか」と将来のキャリアプランに不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
ここでは、勤務医が激務になりやすい様々な理由や実際のエピソードに加えて、勤務医として働くことで得られるメリットや将来の働き方についてご紹介します。
勤務医が激務になりやすい理由
厚生労働省が発表する「病院勤務医の勤務時間の統計結果(2016年時点)」によれば、およそ4割もの常勤医師が月に80時間を超える時間外労働をしています。
その時間外労働の大部分を、有床病院における当直やオンコール体制のなかでの緊急対応が占めています。
救急搬送を含めた診療時間外に診療を必要とする患者さまの対応や、それに伴う事務作業、長時間の手術など、所定の勤務時間内に収まらない要因は多くあげられます。
それだけでなく、交代人員やコメディカルスタッフによるフォローといったタスクシフティングの不備や、「質の高い医療を提供するために激務を厭わない」という医師の職業意識の高さなども、副次的な要因となり得るでしょう。
これらは、個々の医療機関における業務・組織のマネジメントの課題と言えます。
それ以外にも、地域ごとの医師の需給バランスや、医療機関同士における機能分化・連携体制、国民の医療のかかり方などにおける様々な課題が絡み合っているのです。
勤務医の激務エピソード
現在、病院の勤務医として働く医師の方々は、現場でどのようなことを感じているのでしょうか。
ドクタービジョンでは、実際の医師数名から勤務医の激務エピソードをヒアリングしました。以下3点、ご紹介します。
頻繁なオンコールの呼出しで完全フリーになる時間がほぼない
急性期病院の循環器内科に勤めるこちらの先生は、直接命に関わるカテーテル治療を行っているため、ほぼ毎日のようにオンコールの呼び出しがあったそうです。
オンコール担当はいつでも連絡が受けられる体制を維持する必要があり、緊急時は現場へ駆けつけなければなりません。
完全フリーになる時間はほとんどなく、まともに家族サービスもできない状況だったとのこと。
さらに、急性期病院では平均在院日数を短くすることが求められているため、患者さまと過ごす時間は極端に短くなります。そういった事情があり、激務の中で自らの目指す全人的な診療ができないのも悩みだったそうです。
開業も考えていましたが、その後、訪問診療に携わることができる医療機関へ転職。プライベートの時間が増え、急性期後の患者さまに寄り添い、全人的に診察できるようになったそうです。
時間外・当直・オンコールも厭わず働くことで家族を後回しにしてしまう
急性期病院の消化器外科医として勤めるこちらの先生は、体力に自信があったこともあり、患者さまのために時間外・当直・オンコールも厭わず働いていました。
しかし、ある日の勤務中に先生のご息女がヘルペス脳炎となり、病院に救急搬送される事態が発生したのです。
その時は病院に駆けつける事ができましたが、もし患者さまのオペを行っている時に同じような事が起こったら、家族を後回しにしてしまう可能性もあることを実感したと言います。
ご息女は今は元気に過ごされていますが、この出来事は先生の今後のキャリアについて考えるきっかけとなったそうです。
そして、この先生は、いざという時に融通が利く訪問診療のお仕事に転職されました。夜間や週末などでもオンコールに対応しなくてよい時間が確保され、家族との時間を十分にとることができるようになったそうです。また急性期病院に勤めていた時と比べて、患者さまと接する期間も長くなり、各々に寄り添った診療ができているとのことです。
他科からの患者さまが割り振られた際に業務が逼迫する
こちらの先生は、精神科病院の内科医として勤務していました。
外来対応や内視鏡検査を主な業務として行っていますが、精神科領域の救急で運ばれてきた患者さまの診療を内科医として担当することもあったそうです。
ここで問題となるのが、後者の精神科から振り分けられる患者数の多さです。このため、日々の業務が非常に逼迫してしまっていたとのこと。
本人としては純粋に内科業務だけに集中できる環境を求めているものの、現在の職場は医局人事によって決められているため、なかなか現状を打破できないでいたようです。
療養病院や老健への転職も検討されましたが、面接での印象や先生の年齢、保有している資格を考慮して、二次救急のケアミックス病院で勤務することになりました。自分自身にとって適した業務量であり、ワークライフバランスを保ちながら、現在は充実した日々を送られているそうです。
将来の勤務医の働き方や得られるメリット
激務を強いられがちな勤務医について、将来の働き方はどうなっていくでしょうか。
2024年施行の法改正に向けて、医師の働き方に関する見直しも進んでおります。今後は、勤務医として以下のようなメリットが享受しやすくなるでしょう。
【勤務医のメリット】
- 同僚や上司の医師を通じて、新しい知識や人脈を得られる
- 専門的な高度医療や、先進的な医療のスキルを習得することができる
- リスクマネジメントを担当する専門部署があり、個人で責任を負う機会が少ない
- 専門医資格を取得したいと考えている医師に有利
- 多職種のコメディカルとの交流がある
近年の医師に向けた働き方改革の動向
2019年に「働き方改革関連法」が施行されたことで、36協定(労働基準法第36条に基づく労使協定)で定められる時間外労働や休日労働の限度時間などが厳格に設定されるようになりました。
これによって一般労働者の勤務環境改善は期待されていますが、人命にかかわるエッセンシャルワーカーである医師の場合には、長期的な検討が必要とされ、施行時期は2024年4月と先延ばしになっています。
現段階では、次のような検討がされていることを知っておきましょう。
- すべての医師(A水準)に時間外労働上限を適用し、原則として年間960時間以下とする
- 救命救急センターなど緊急性の高い医療を提供する医療機関など(B水準)では、期限付きで医師の時間外労働を年間1860時間以下までとする
- 研修医など短期間で集中的に症例経験を積む必要がある場合(C水準)には、時間外労働を年間1860時間以下までとする
法改正だけでなく、全医療機関で36協定の適切な締結などの労務管理徹底、タスクシフティングやタスクシェアリングによる労働時間短縮を進める必要性も論じられています。
医療事故やヒヤリ・ハットは勤務時間が長くなるほど発生率が上昇することがわかっており、厚生労働省は「医師の健康確保」と「医療の質や安全の確保」は表裏一体であるとして、この問題に向けた取り組みをすでに始めているのです。
もちろん政府が主導して対策を行うだけではなく、各医療機関が自主的に医師に働きかけて、その健康状態を守る必要があるでしょう。
勤務医が働きやすい時代の到来を見据えたキャリア形成を
職務内容や環境の性質上、勤務医が働くなかではどうしても長時間勤務が避けられない場面も出てきます。
そのような状況下で、患者さまに寄り添ったケアや治療を施せなかったり、自由な時間がないために自身の家族サービスもままならなかったりと、様々な弊害に苦しむ医師の方がいるのが現状です。
しかし、近年の医師に向けた働き方改革によって、こうした現状は見直されています。2024年予定の法改正から、勤務医にとって働きやすい環境は少しずつ整えられていく見込みです。
そうした時代の流れを見据えながら、勤務医として働くメリットにも目を向けて、自身のキャリア形成について考えてみてはいかがでしょうか。
ドクタービジョン編集部
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