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かつて医師の進路と言えば「臨床」か「研究」の二択でしたが、時代は移り変わって医師の働き方は多様化しています。今後のキャリアを考えるにあたって、臨床以外の働き方に興味をもっている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、医師免許を活かした臨床以外の働き方について、業務内容や勤務形態、働くための条件なども含めて詳しく解説します。
医師免許が活かせるキャリア
医師免許をもつ人のうち9割以上が臨床医を占めています。臨床医以外の道を選ぶ人は少ないものの、ほかの仕事で活躍している医師もいます。医学の知識や臨床経験は、ほかのキャリアにどのように活かせるのでしょうか。臨床以外の代表的な働き方について紹介していきます。
産業医
産業医は、職場で働く労働者の心身の健康を守ることが仕事です。常時50人以上の労働者がいる事業所において、産業医を1名以上選任することが法律で義務付けられています。どの業界・業種でも「働き方改革」は進められており、産業医の重要性は年々高まっています。
具体的な業務内容としては、月1回以上の職場巡視や健康診断、ストレスチェックの実施・面接指導、健康相談への対応、感染症予防、作業環境の維持などが挙げられます。労働者の生活習慣病や労働災害予防のほかに、メンタルヘルスやハラスメントの問題など、幅広い知識が求められます。
産業医の仕事を掛け持つ勤務医や開業医が多いですが、企業の専属産業医として週に4〜5日常勤で働く医師もいます。臨床医と比較すると報酬は少ないですが、残業はほぼなくワークライフバランスを整えやすいことから育児やプライベートと両立したい医師から注目を集めています。
医師免許をもつだけでは産業医になれません。各地域の医師会や産業医科大学などで産業医学に関する研修を50単位以上履修するか、労働衛生コンサルタント試験の保健衛生区分で合格し、産業医資格を取得する必要があります。
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メディカルドクター(製薬会社)
メディカルドクターはMDとも呼ばれ、製薬会社に勤める医師を指します。具体的な仕事内容としては、新薬の開発における臨床試験の実施やプロトコールの作成、安全性のモニタリングが挙げられます。既存の製品の評価や医療機関への情報提供なども行います。
製薬会社は利益を出す必要もあることから、医学の知識以外にもビジネス・経営視点もあると重宝されるでしょう。また、目の前の患者さまだけではなく、新薬の開発で多くの患者さまを救いたいと感じる医師に向いています。
勤務形態はおもに正社員で、年収や福利厚生が手厚い会社が多くあります。在宅勤務やアルバイトが認められているケースもあり、働きやすい環境を期待できます。
メディカルドクターになる際に特別な資格は必要なく、医師免許をもっていれば求人に応募が可能です。ただし、製薬会社によっては応募条件に博士号や英語力(TOEIC700点以上)が必須になっている場合もあるため、よく確認しましょう。
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基礎研究職
基礎医学の研究職を目指すキャリアもあります。大学や医学研究機関で病気になる原因やメカニズム、治療・予防方法などを研究します。研究結果は、論文や学会で主に英語を使って発表するため、高い英語力が求められます。
基礎医学の研究者には、医学部や薬学部のほかに、理学部や工学部出身の人もいます。さまざまなバックグラウンドをもつ研究者と関われることも魅力でしょう。患者さまと接する機会はないため、人とコミュニケーションをはかることは苦手という医師でも、研究が好きであれば研究医としてキャリアが花開く可能性があります。
基礎研究職に就くためには、まずは大学院の博士課程に進むことが大半です。医学部講座で助手や講師として働きながら研究を行うケースや、民間や公的な研究機関に就職するケースがあります。ポストが少なく経済的な余裕はあまり期待できないものの、成果が出たときの達成感や喜びはひとしおでしょう。
開発職
医学の知識や臨床経験を活かして、医療機器やヘルスケアメーカーの開発職で活躍している医師もいます。世の中のニーズを汲み取り、新しい技術や商品を生み出します。企業によって必要とされる知識は異なりますが、医学のほかに人間工学やソフトウェアなどの専門的な知識が求められることもあります。
開発職は正社員として働くことが一般的です。必要とされる資格はないものの、入社試験で狭き門をくぐり抜けなければなりません。
医系技官
医系技官とは、おもに厚生労働省で保健医療に関する制度の企画・立案・実施を行う国家公務員です。厚生労働省の本省以外にも、検疫所や研究所、地方厚生局などの附属機関で働く人もいます。
内閣官房や外務省、環境省、文部科学省など、ほかの府省庁に出向して、医系技官としての専門性を深めていく場合もあるようです。マイナーではあるものの、日本の医療・福祉の発展に幅広く携われる職業です。
医系技官に対して、激務という印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、少しずつワークライフバランスが整うよう推進され、育児休業の取得や時短勤務が可能なことから女性で医系技官を目指す人も増えています。医系技官は、医師免許か歯科医師免許をもち、厚生労働省の採用試験に合格すればなることができます。
公衆衛生医師
公衆衛生医師は、おもに各自治体の保健所や保健センターで働く公務員です。母子保健や感染症対策、生活習慣病予防、がん予防、難病対策、食品衛生など、様々な角度から地域の人の健康をサポートします。
幅広い職種と関わりながら仕事をするためコミュニケーション能力が求められるだけではなく、所長職であればマネジメント力も必要とされます。地域の健康課題に臨床以外からアプローチしたい人や予防医学に興味をもつ人、臨床の現場で公衆衛生の重要性を感じた人などは、やりがいや魅力を感じられるでしょう。
また、公衆衛生医師は医師免許をもっていれば採用試験に応募することができ、臨床経験が問われない場合もあります。
転職時の注意点
臨床医以外にキャリアチェンジをするときの注意点は、臨床の仕事をメインにできなくなることについてよく検討することです。一般企業への就職の場合はアルバイトで臨床に携わることも可能ですが、公務員の場合はアルバイトをはじめとする副業に何かしらの制約があるケースがほとんどです。
また、臨床医以外の仕事では、目の前の人を救うやりがいはなくなる可能性が高いです。一般企業に転職する場合は医療機関での常識とは異なる点が多々あり、様々なギャップを感じる人もいるでしょう。仕事内容や勤務条件をよく確認し、自分のスキルや特性を活かせるかじっくり考えることが大切です。
キャリアチェンジの相談は転職コンサルタントに
臨床以外の道を志しても、そのような人が周囲に少なく不安を感じることもあるかもしれません。そもそも臨床以外への転職の仕方がわからない、客観的な視点がほしいなど、キャリアについて困った際は、転職コンサルタントに相談をしてみてもよいでしょう。
メディカルドクターや開発職など、一部の職種ではコンサルタントを使わなければ転職が困難なケースもあります。臨床以外のキャリアについて情報を得たい場合は、気軽に転職コンサルタントに相談するところから始めてみましょう。
ドクタービジョン編集部
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