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一般的な職業と比較して人事異動の多い医師。数年ごとに異動があることは珍しくなく、働き方やライフスタイルが大きく変わることもあります。異動が決定し、今後のキャリアや将来に不安を抱いている医師もいるのではないでしょうか。やっと慣れてきたときに望まない異動となると、複雑な思いを抱くこともあるかもしれません。
今回は医師の異動について、その実情やキャリアに与える影響、それによって生じるストレスを詳しく解説していきます。
医師の異動は断れない?
勤務医の中でも大学医局に所属している医師には、1〜3年ごとの頻度で異動が発生します。医師にもそれぞれのキャリアプランや家庭の事情がある中で、異動は断れないものなのでしょうか。
結論、医師の異動は断れないことが多いです。医師が異動を断るとほかの医師や関連病院だけでなく、人員不足によって地域医療が揺らぐなど患者さまにまで迷惑がかかる可能性があります。個々の希望や事情を考慮していてはスムーズな人員の配置転換は行えないため、医局にいる限りは異動を断れないと思っていたほうが良いでしょう。
断れるケースとしては、下記のようなものがあります。
- 健康上の理由がある
- 親の介護や妊娠、育児
- 正式に決定していない打診の段階
自身の健康状態や家庭の事情に関しては、上層部の価値観によっても受け入れられるかどうかが変わってきます。自身が大病を患っていたり、怪我で業務が困難だったり、余程の理由でないと異動の撤回は厳しいでしょう。
まだ打診や相談の段階であり、人事権を持つ上層部と上手くコミュニケーションを取れた場合は、望まない異動を避けられることもあります。しかし、今後も異動の打診がある可能性は高く、毎回希望が通るとは限りません。やむを得ない場合は、医局を離れることや異動のない職場への転職も視野に入れると良いかもしれません。
医師に異動がある理由
なぜ病院は異動を行うのでしょうか。一般的に考えられる主な理由について説明します。
医師の成長のため
まず、医師の成長やキャリア形成などの「人材育成」のためです。長年「同じ職場」で「同じ同僚」と「似たような症例」を見続けていると、どうしてもスキルが頭打ちになります。異動によって様々な医療機関で幅広い臨床経験を積ませることで、医師の成長を促せます。新しい知識や技術を取り入れることは、視野を広げるきっかけにもなるでしょう。
また、異なる医療機関で働くと、多くの医師や多職種のスタッフ、患者さまと関わることになるので、人脈の構築や対人スキルの向上も期待されます。
病院側の事情
異動は、病院側の事情で発生するケースも多々あります。具体的な理由としては、メンバーの固定化を防ぐ、勤続年数や経験のバランスを調整する、関連病院のポストの欠員を埋める、人手不足の解消などです。待遇があまり良くない病院で一部の医師にだけ大きな負担がかからないように、ローテーションを目的とした異動が行われることもあります。
地域医療は医局派遣によって機能しているケースも多く、人事においては医局や各病院の事情が優先されています。
新型コロナウイルス感染症の影響による異動
感染症などの影響により、人員が足りない病棟に異動となるケースもあります。とくに新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを行う医療機関では、期間限定で専用の病棟に異動を命じられるケースが多く見られます。
妊娠中の女性や高齢者、基礎疾患を持つ人の異動に対しては、厚生労働省から感染防止に配慮するように要請が出ており、これは医師として働く人も同様です。独身や子どものいない医師、若手医師はコロナ禍で前述のような異動を求められる可能性は低いでしょう。
異動は我慢すべき?異動によるストレスと対処法
異動の時期には、住む場所や働く仲間、勤務スタイルなど色々な変化が生じます。ここでは、異動によって生じるストレスと対処法について解説します。
ミスが増えて仕事が上手くいかなくなった
異動によって職場環境が変わると、一時的にミスは増えるものです。いつものようにパフォーマンスが発揮できないことで、自信を失う悪循環に陥ってしまうかもしれません。慣れの問題もあるため、ミスに縛られすぎず、成長の機会と前向きに捉えて冷静に仕事と向き合いましょう。病院ごとのローカルルールや不明点はすぐ確認するなど、ミスを防ぐ対策を事前に講じることも大切です。
興味のある分野に関わることができない
異動により興味のある分野に関われなくなる場合があります。本業とは別にアルバイトなどで携わる方法もありますが、割ける時間はどうしても限られてしまいます。
興味のある分野を本格的に追求できないことがストレスとなっている医師には、転職が解決の近道です。今後のキャリアを中長期的に考えた上で、今の職場ではスキルの習得が難しいと感じた際は、どこかで見切りをつける必要があります。転職のタイミングや転職先に困ったときは、コンサルタントに相談してもよいでしょう。
人間関係による悩み
新しい環境では、人間関係の構築に悩む医師も多いのではないでしょうか。医師同士のジェネレーションギャップや看護師とのミスコミュニケーションがストレスの一因となります。初めのうちは意識して明るく挨拶をしたり、自分から話しかけたりして、友好的な対応をするようにしましょう。
人間関係の理由のみで転職を決意すると、転職先でも同様に人間関係の悩みに陥ってしまう可能性があります。精神的に耐えられる範囲であれば、良い関係を築くために無理に頑張りすぎず、「次の異動で離れられるから」と割り切って最低限のコミュニケーションに留めることもおすすめです。
勤務スタイルの変化に適応できない
通勤時間や長時間労働、当直、オンコールなどで、異動による変化が大きいと、なかなかそれに適応できないことがあります。体力は年齢とともに衰えていくものであり、無理をして続けて体を壊しては元も子もありません。
また、自身は新しい環境に適応できても、家族やパートナーにとっては難しいこともあります。転校することになると、子どものメンタルケアも必要になります。自身が精神的、体力的に厳しいときのほかにも、家族に好ましくない影響が出ている場合は転職を検討しましょう。
異動が負担に感じたら転職するのも一つの手段
ほとんどの場合で異動には理由があり、基本的に断ることはできません。
異動を受け入れ続けることで自身の理想とする働き方から遠ざかってしまう、心身ともに限界を感じているなどの場合は、我慢せずに早めに転職の準備をすることが大切です。とくに20〜30代前半は異動やそれに伴う転勤が多いですが、「専門医の取得まで」といったように期限を決めて働くのも選択肢のひとつでしょう。
望まない異動に備えて、働く上で自分の譲れない条件を持つことも重要です。納得できる選択をして自分らしいキャリアが歩めるように、「どのような医師を目指し、どのような働き方をしたいのか」を定期的に考えてみてはいかがでしょうか。
ドクタービジョン編集部
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