「インフェクションコントロールドクター(ICD)」とは?感染防御の専門家として活躍する

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公開日:2021.03.11

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」とは?感染防御の専門家として活躍する

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」とは?感染防御の専門家として活躍する

インフェクションコントロールドクター(ICD)とは、「感染症を制御する医療従事者」のことです。感染制御に関する専門的な知識を有し、院内感染対策だけでなく抗菌薬の誤った使用による耐性菌の出現予防など感染症に関わる様々な業務に携わっています。

いまだ新型コロナウイルス感染症が終息の気配を見せないなか、医療機関内で感染が拡大するケースは少なくありません。活躍の場が広がっているいま、ICDの存在が注目されています。そこで今回は、ICDの役割や資格取得方法などについて詳しく解説します。

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」とは?

インフェクションコントロールドクター(ICD)とは、おもに医療機関内での感染症拡大対策や薬剤耐性菌の出現予防など感染症を制御するための対策を行う医師・歯科医師・薬剤師・看護師・検査技師などの医療従事者を指します。

以前は感染制御に関わる医師の専門医資格の一つとされていました。しかし、感染制御対策は医師だけでなく、看護師や薬剤師、検査技師などほかの医療従事者が一丸となって挑む必要があるという観点から、現在では感染制御に関わるすべての医療従事者が要件を満たせば取得できる資格となっています。

ただし、医師と歯科医師以外の医療従事者は博士号を取得していなければ資格を得ることができません。2019年にICD制度協議会が行ったアンケートによればICDの認定を受けた医療従事者のうち医師が89.58%と最多を占め、歯科医師6.81%、薬剤師1.90%、臨床検査技師0.65%、看護師0.04%とされています。医師と歯科医師以外の医療従事者は博士号を取得したうえでさらに感染症の専門的な知識も身につけて行かなければならないため、取得には多くの時間と自己研鑽が必要となっているのが現状です。

一方、医師はICD資格を取得するのに必ずしも感染症専門医である必要はなく、一般内科、一般外科、呼吸器科、小児科、総合診療科など様々な診療科の医師が資格を取得しICDとして活躍しています。

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」の役割

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」の役割

ICDは専門的に感染制御を行いますが、その業務の範囲は思いのほか広いもの。具体的には次のような業務に携わっています。

院内感染対策

医療機関には病気や治療の影響で免疫力が低下した患者さまも多くいるため、感染症が広がりやすい場所の一つでもあります。とくに病棟で集団生活を送っている患者さまたちに一度感染症が広がってしまうと、制御することが困難な場合も多く、多数の死者が出てしまうケースも全国的に少なくありません。また、医療従事者にも感染症が広がってしまうと、その家族を介して市中感染へと移行してしまうことも考えられます。

そのため、適切な感染対策によって患者さまと医療従事者を感染症から守るのは医療機関の非常に重要な責務となります。ICDには、その中心的な役割を果たすことが期待されます。具体的には、院内感染発生時の迅速な対策を遂行するための実態調査(サーベイランス)と対策計画の構築のほか、日頃の院内感染対策指針の見直しや立案、結核や麻疹など伝染性感染症が発生した際の対応、職員の教育など様々な業務を担います。

薬剤耐性菌出現への対策

日本は諸先進国よりも抗菌薬の使用量が多く、薬剤耐性菌の出現が国際的にも問題になっています。そのため、2016年には国として初めての薬剤耐性対策アクションプランが決定され、抗菌薬の適正使用が強く推奨されることとなりました。

ICDはこのような薬剤耐性菌の出現と抗菌薬使用に関するモニタリングを行い、必要があれば医師に抗菌薬の適正使用を助言する役割も求められます。

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」資格を活かせる仕事

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」資格を活かせる仕事

では、ICD資格はどのような職場で活かすことができるのでしょうか?詳しく見てみましょう。

ICD活動は「兼任」が最多!

ICD制度協議会が行った調査(2019年)によれば、ICD資格を有する医療従事者のうち、ICDとして活躍する際の業務形態は「兼任」が最も多く66%を占めます。一方、「専任」は13%、「専従」に至ってはわずか2%という結果でした。また、ICD資格を有するもののICD活動を行っていない医療従事者は19%にものぼるとのこと。

ICD資格を取得しても感染制御のみに関わっているケースは少なく、多くは自身の専門科での診療に従事しながら必要に応じて「院内感染対策委員」などとして感染制御に関わっている方が多いといえるでしょう。ICD資格を取得したらそのような委員会活動が充実した医療機関を選ぶのがおすすめです。

一定規模以上の医療機関を選ぶとよい

資格を取得したにも関わらずICD活動をしていない方も2割ほどいますが、せっかく資格を取得したのならぜひそれを活かした業務に携わりたいものです。前述したアンケートによれば、ICD活動を行っている医療従事者の所属施設は病床数が100床以上の医療機関が多いことがわかっています。ICD資格を取得した場合は、一定規模以上でICD活動を積極的に行っている医療機関を選ぶと活躍の場が広がるでしょう。

ただし、100床未満の病院や無床クリニックなどでいま現在ICD活動が積極的に行われていない場合でも、ICD資格をもつ医療従事者が介入することでMRSAなどの薬剤耐性菌の出現頻度が低下、インフルエンザなどの季節性感染症の集団感染も少なくなった...という医療機関は少なくありません。このようなケースでは自身のICDとしての知識や経験を大いに活かせる可能性もありますので、「これから感染対策をしっかりしていきたい」という医療機関を選ぶのもやりがいがあるでしょう。

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」を取得するには?

「インフェクションコントロールドクター(ICD)」を取得するには?

ICDを取得するには、次の3つの条件をクリアし、ICD制度協議会に申請する必要があります。

学会に加入

日本感染症学会、日本呼吸器学会、日本環境感染学会などICD制度協議会に加盟している21の学会いずれかに加入している必要があります。

医歴、または博士号

医歴が5年以上の医師と歯科医師、または博士号取得後5年以上であり、感染対策委員としての稼働やICD制度協議会が行う講習会への出席など、感染制御に関わる活動を行っていることが必要です。また、申請には所属する施設長の推薦を得なければなりません。

学会からの推薦

ICD制度協議会に加盟する学会からの推薦が必要となります。

ICD資格はこれらの経歴や活動歴、推薦などを総合的に評価したうえで認定の可否が決まります。しかし、その認定期間は5年間。資格を継続するには学会員として活動しながら、協議会が指定する一定の研修を受けなければいけません。認定を受けたあとも自己研鑽が必要になります。

まとめ

新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、感染制御を担うインフェクションドクター(ICD)の存在や役割が見直されています。

ICDの専門知識と経験を有する医療従事者の多くは医師です。資格を得るにはICD制度協議会に加盟する学会に所属、さらに医歴が5年以上または博士号取得後5年以上であり、学会や所属長の推薦などの要件をクリアしなければなりません。また、認定期間は5年間なのでその後も協議会が指定する講習会を受けるなど自己研鑽が必要となります。

しかし、ICDは医療機関内で患者や医療従事者を感染症から守る大切な役割を担うだけでなく、薬剤耐性菌の出現予防など社会問題にもアプローチするやりがいのある業務です。感染症に対する社会的な関心が高まっているいまだからこそ、ICD資格の取得を目指してみることをおすすめします。

ドクタービジョン編集部

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