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高齢者施設のなかでも、医師の勤務先のひとつとして注目されている「介護老人保健施設(老健)」。高齢者が退院した後にリハビリなどを行い、在宅への復帰を目指すための施設です。高齢化にともなって施設数は年々増加しており、入所者の健康管理を行う医師の重要性が高まっています。
今回は、介護老人保健施設における医師の働き方や業務内容、求められる能力、やりがい・魅力などについて詳しく解説します。
「介護老人保健施設(老健)」とは?
「老健」とも呼ばれる介護老人保健施設は、医療機関で病気やケガなどの治療を終えた高齢者がリハビリを行い、在宅への復帰を目標に生活する施設です。「65歳以上で要介護度1以上」が主な入所条件で、入所期間の目安は3〜6ヵ月です。
介護老人保健施設では、医師や看護師、介護士など、様々な職種のスタッフが働いています。医師に関しては、入所定員100人に対して常勤医師を1人以上配置するよう介護保険法で定められています。また、リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の配置も義務づけられており、介護よりも医療ケアやリハビリに重点が置かれている施設です。
特別養護老人ホーム(特養)との違い
「特養」とも呼ばれる特別養護老人ホームは、自宅での生活が困難な要介護度3以上の高齢者が対象です。入所期間は決められておらず、問題がなければ一度入居すると生涯利用できますが、入居待機者は多い傾向にあり、地域によっては数年待つケースも見られます。
リハビリの設備は、在宅への復帰が目的である介護老人保健施設のほうが充実している場合が多いでしょう。特別養護老人ホームでは生活支援が中心のため、ゲームやイベントなどのレクリエーションがよく行われるのも特徴です。
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▼参考資料はコチラ
厚生労働省 介護老人保健施設
介護老人保健施設での医師の役割と業務内容
介護老人保健施設で働く医師(以下、老健医)は、2018年のデータでは全国で3,388人と、総医師数327,210人のうち1%にとどまっています。基本的に1施設に医師1人のため、希望する施設にすぐに転職できるとは限りません。老健医の働き方に関しては、常勤93.4%、非常勤4.0%と常勤で働くケースが多くを占めます。
老健医になるにあたり医師免許以外に必要な資格はなく、診療科も問われません。老健医の主な診療科は、内科(55.3%)、外科(22.8%)、精神科/産婦人科(4.8%)という報告もあります。それでは、老健医に求められる役割や業務内容について具体的に見ていきましょう。
医師に求められる役割
介護老人保健施設では、看護師、介護士、理学療法士、栄養士などの様々な職種が連携し、ひとつのチームとなって入所者をサポートします。そのなかでも医師は、診察をはじめとする健康管理だけではなく、各スタッフへの指示出しを行うなど、施設の中で中心的な役割を担います。
高齢者特有の病気や認知症、栄養管理、感染症対策、リハビリにいたるまで、総合診療医のように幅広い知識が必要です。また、常勤医師が施設長を兼任する場合も多く見られます。医療機関と異なり、収入は介護保険で賄われるため、経営能力も求められるでしょう。
主な業務内容
メインとなる業務は、入所者の健康管理です。回診で入所者の健康状態を日々確認し、必要に応じて薬を処方します。短期入所や通所リハビリ、訪問リハビリの機能をもつ施設の場合は、その利用者の健康管理も行います。基本的に病状が安定している方が入所するため、大きな治療を行うことはありません。急変時や施設内の設備で対応が困難な場合は、医療機関に転院や通院となる場合がほとんどでしょう。
また、入所者の心身の状態を把握したうえで、看護師や介護士、リハビリ専門職に指示を出し、円滑に日常生活やリハビリが行えるようにサポートします。そのほかにも、看取りや入退所判定、スタッフが働きやすい職場環境づくりなど、業務内容は多岐にわたります。
老健医に向いているのは?
介護老人保健施設では、どのような医師が求められているのでしょうか。向いている医師像について解説します。
人間性・コミュニケーション能力が高い
介護老人保健施設では、高い人間性とコミュニケーション能力が重要視されます。職種、専門領域、経験値など、様々な雇用形態のスタッフと働くため、それぞれの立場に配慮しながら、良好な関係を築く必要があります。意見の違いからスタッフ間でトラブルが生じるケースもあり、場合によっては医師が介入して解決することも。これらの点から、細やかに気を配れるベテラン医師が重宝されます。
また、入所者は主に65歳以上のため、高齢者との会話に抵抗があると老健医は難しいでしょう。こまめに顔を見に行ったり、世間話をしたり、積極的なコミュニケーションが入所者との信頼関係を深めるのです。
プライマリ・ケアの臨床経験が豊富
プライマリ・ケアの臨床経験が豊富な医師は、幅広い対応や問診、視診、触診などのフィジカルアセスメントに慣れていることから老健医としての活躍が期待できます。
介護老人保健施設では、入所者の健康状態を良好に保つために予防医療や公衆衛生の視点が欠かせません。病気を診るのではなく、より広い視点で人を診たいと考えている医師は老健医に向いているでしょう。
医師が介護老人保健施設で働くやりがいとスキルアップ
老健医の業務内容や向いている医師像について知ったところで、気になる魅力ややりがい、スキルアップについてお伝えします。
魅力とやりがい
介護老人保健施設では、当直や残業はほぼなく、基本的には定時で帰ることが可能です。体力的な負担が少なくワークライフバランスを取りやすい点は、大きな魅力でしょう。実際に、体力面に不安をもつ高齢の医師や家庭と両立したい女性医師が活躍しています。医療機関と異なり時間的な余裕もあるため、入所者一人ひとりとじっくり向き合える点もやりがいにつながります。
入退所の頻度が高く、入所者が在宅に復帰するというゴールに立ち会えるため、無事に送り出すことにやりがいを感じる医師も多いようです。
得られるスキル
介護老人保健施設で働くことにより、医療機関における臨床ではなかなか身につけられない介護やリハビリの専門知識を得られます。また、プライマリ・ケアの専門性やコミュニケーションスキルを向上することも可能でしょう。
ただし、医療機器などの設備は限られており、行える医療行為は多くありません。そのため、医療技術のスキルアップは見込めないと理解しておきましょう。
老健医として新たなステージへ
医療機関での仕事とは業務内容ややりがいも大きく異なる老健医。自分のペースを保ちながら働くことができるうえに、他職種や人生の先輩である高齢者と関わるなかで医師として新たな気づきを得られることもあるでしょう。
ベテラン医師のセカンドキャリアとして検討されることが多いものの、年齢が若くてもチャンスがないわけではありません。老健医に可能性を感じている方は、キャリアの選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
ドクタービジョン編集部
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