診療科の選択、どうする?先輩医師の意見も紹介

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公開日:2022.06.16

診療科の選択、どうする?先輩医師の意見も紹介

診療科の選択、どうする?先輩医師の意見も紹介

診療科の選択は、その後のキャリア形成はもちろん、ワークライフバランスや年収にも大きな影響を与えます。ご自身にとって興味がある診療科を選択したいと一度は考えるものの、転職や独立などの可能性も考慮しながら数十年にわたって働くことを考えるとどうしても慎重にならざるをえません。

そこで今回は、診療科を選択する際に意識したいポイントと理由のほか、現在第一線で働いている先輩医師6名に聞いた各診療科を選んだ理由と将来性などを紹介します。

診療科を選択する際のポイント

診療科を選択する際のポイント

自身の興味が診療科を選択する際に影響を与え、ときに決め手となりうることは、おそらく多くの方が予想しているでしょう。

日本医師会総合政策研究機構が調査した『日医総研ワーキングペーパー 若手医師の診療科選択プロセスに関する調査』によると、ほかにもライフスタイルを意識している傾向があることがわかります。ここでは、それぞれの詳細をご紹介します。

 

自身の興味

  • 小さい頃に自身や家族が医療機関を受診した経験から外科医を志した
  • 漫画やドラマの影響で救急医に憧れを持つようになった
  • 脳に興味があったから、より深く関わることができる脳神経外科を志望した
  •    

    など、理由はそれぞれですが、過去の経験から興味を惹かれた診療科をそのまま選択する医師が多い傾向があります。

    記事後半では、現役医師6名が診療科を選択肢した理由もご紹介しています。

    ワークライフバランス

    社会人や職業人としてのスキル向上やキャリア形成を大切にしつつも、プライベートも充実させたいと考える方は増加傾向にあります。医師も例外ではなく、診療科選択時にはワークライフバランスも意識している方が一定数以上いることがわかりました。

    休日・余暇等、自分の時間が取り易いこと」を重視すると回答した方の割合は、医学部志願時点21.5%、医学部1〜4年生時点27.0%、医学部5〜6年生時点31.6%、研修医時点37.5%でした。

    男女別回答を見てみると、男性は医学部志願時点23.3%、医学部1〜4年生時点29.3%、医学部5〜6年生時点31.8%、研修医時点37.0%です。対して女性は、医学部志願時点18.1%、医学部1〜4年生時点22.7%、医学部5〜6年生時点31.3%、研修医時点38.3%でした。

    以上から、診療科選択のリミットが迫るにつれて余暇を重視する方が増えることと、女性よりも男性のほうが自分の時間を取れる環境をやや重視する傾向があることがわかります。

    ところで、ワークライフバランスを考える上で「結婚や子育てとの両立がしやすいこと」に対する男女差があります。同項目を重視すると回答した方の割合は、医学部志願時点21.4%、医学部1〜4年生時点23.3%、医学部5〜6年生時点29.1%、研修医時点32.7%でした。

    男性の内訳は、医学部志願時点10.3%、医学部1〜4年生時点8.2%、医学部5〜6年生時点12.3%、研修医時点15.4%です。ところが女性になると、医学部志願時点42.0%、医学部1〜4年生時点51.5%、医学部5〜6年生時点60.4%、研修医時点65.0%で、男性の回答内訳と乖離する結果となりました。このことから、女性医師のキャリア形成において結婚や妊娠は避けて通れない問題であると多くの方が意識していることが伺えます。

    医局・診療科の雰囲気

    同調査では「診療科や医局の雰囲気・人間関係が良いこと」を重視すると回答した割合が最も高かったです。結論から言うと、医師として「何を」するかだけではなく「職場の過ごしやすさ」と「一緒に働く同僚」も重視していることが読み取れる結果となりました。

    同項目を重視すると回答した方の割合は、医学部志願時点46.0%、医学部1〜4年生時点50.3%、医学部5〜6年生時点57.9%、研修医時点62.8%です。

    男性の内訳は、医学部志願時点47.4%、医学部1〜4年生時点49.7%、医学部5〜6年生時点57.0%、研修医時点61.5%です。女性の内訳は、医学部志願時点43.6%、医学部1〜4年生時点51.5%、医学部5〜6年生時点59.5%、研修医時点65.3%だったため、ワークライフバランスの「結婚や子育てとの両立がしやすいこと」のような極端な男女差は見られませんでした

    収入・待遇

    収入と待遇に該当する項目は、 「期待できる収入が多いこと」「バイト・副業がやり易いこと」があります。

    期待できる収入が多いこと」をあげた方の割合は、医学部志願時点30.2%、医学部1〜4年生時点28.8%、医学部5〜6年生時点29.4%、研修医時点27.4%でした。

    男性の内訳は、医学部志願時点36.1%、医学部1〜4年生時点34.9%、医学部5〜6年生時点36.4%、研修医時点33.3%です。女性になると、医学部志願時点19.3%、医学部1〜4年生時点17.5%、医学部5〜6年生時点16.3%、研修医時点16.3%です。収入は男性のほうがやや意識しているものの、医学部志望時から初期研修時にいたるまでほぼ横ばいなのは男女共通です。また、収入を重視する回答の割合は徐々に減ってきて増加しないのも男女共通でした。

    反対に、「バイト・副業がやり易いこと」 は男女ともに値が低く、医学部志願時点5.9%、医学部1〜4年生時点6.9%、医学部5〜6年生時点10.5%、研修医時点11.6%でした。

    男性の内訳は、医学部志願時点6.4%、医学部1〜4年生時点6.9%、医学部5〜6年生時点10.3%、研修医時点10.3%です。女性も、医学部志願時点4.9%、医学部1〜4年生時点7.1%、医学部5〜6年生時点10.7%、研修医時点14.1%で、高いものでも10%前半にとどまっています。

    ある程度の収入は主となる職場に求めるものの、非常勤や副業先はさほど求めていないのは、先にご紹介したワークライフバランスを意識する方の多さを裏付ける結果と受け取れるでしょう。

    先輩医師6人に聞いた各診療科の特徴と将来性

    先輩医師6人に聞いた各診療科の特徴と将来性

    現役医師に対して、現在所属する診療科を選択した理由、診療科の将来性、おすすめしたいしたいかどうかとその理由、もう一度診療科を選ぶ場面に遭遇した場合どの診療科を選ぶかをアンケートしました。

    普段はなかなか聞くことができない現役医師たちの本音が垣間見える結果となったため、ここでは6名の回答内容をご紹介します。

     

    やりがいを感じるし、実は転職時に「つぶし」がきく(救急科 クリニック 30代)

    現在の診療科を専攻した理由をお聞かせください。

    ジェネラル(総合的)に患者さまを診られる医師になりたかったからです。

    自身の診療科の今後は明るいと思いますか?

    今後も救急を専門とする医師が求められることを考えると、明るいと思います。たしかに退局する医師も多い診療科ですが、それを考慮しても選択肢が多いのではないでしょうか。いずれにせよ、救急科は医療現場から寄せられる幅広い需要に応えられる診療科だと思います。

    自分の専門としている診療科を、人にお勧めしますか?理由とともにお聞かせください。

    おすすめしたいです。救急科の経験があることで転職先の訪問診療クリニックでも「つぶし」がきき、職場で重宝されていると感じているからです。

    もし学生からやり直す、または転職するとしたらどの診療科を目指しますか?理由と共にお聞かせください。

    やはり救急科を選択します。人命を救う最前線にいることにやりがいを感じますし、先々のキャリアプランを再検討した場合でも救急科を選択すると思います。

    救急搬送されてくる患者さまの対応にあたるため、救急科ではより多くの経験を積めます。日々手応えを感じられますし、やりがいもひとしおでしょう。

    全身に対する知識が身につくことから、転科を検討する場合にも選択肢を広く取れるのも魅力です。

    ワークライフバランスは今後さらに整う可能性が(麻酔科 病院 30代)

    現在の診療科を専攻した理由をお聞かせください。

    「自身のスキルが人の命をコントロールしている」という責任感をダイレクトに感じられるからです。

    自身の診療科の今後は明るいと思いますか?

    オペが存在する限り私たち麻酔科医の存在意義もなくならないため、明るいと思います。最近はオペの予定が定時内で収まる医療機関も増えており、麻酔科医のワークライフバランスも整ってきているように感じます。

    自分の専門としている診療科を、人にお勧めしますか?理由とともにお聞かせください。

    自分のスキルを生かしたい」「麻酔を伴う処置によって社会に貢献したい」と考える方にはおすすめですね。

    もし学生からやり直す、または転職するとしたらどの診療科を目指しますか?理由と共にお聞かせください。

    正直に言うと、内科への興味もあります。しかし、「麻酔のかけ方」は奥深く、挑戦したいことが多いため、内科への興味を上回っています。そのため、最終的には麻酔科を選択するのではないでしょうか。

    麻酔管理と全身管理など、麻酔科医はオペを円滑に進めるため欠かせない存在です。そのため、今後も一定以上の需要が見込まれるでしょう。働き方改革と業務効率化の進行により、ワークライフバランスを意識した働き方も期待できます。

    女性の一生と赤ちゃんの成長を間近で見守れる(産婦人科 クリニック 40代)

    現在の診療科を専攻した理由をお聞かせください。

    家族が産婦人科系の病気にかかったことがきっかけです。

    自身の診療科の今後は明るいと思いますか?

    明るいと思います。人間がいる限り産科はなくてはならない診療科ですし、妊娠と出産以外に、予防医療の観点からも産婦人科の需要は増えてきていると思うからです。

    自分の専門としている診療科を、人にお勧めしますか?理由とともにお聞かせください。

    お勧めしたいです。手術や外来などバランスよく対応できる診療科だと思います。私も自分が出産するまでは手術もたくさんこなしており、やりがいがあってとても楽しかったです。

    今後は子育てをしながら、産婦人科医として患者さまが感じている日常の悩みに寄り添った診療をしていきたいです。

    もし学生からやり直す、または転職するとしたらどの診療科を目指しますか?理由と共にお聞かせください。

    再度選択すると思います。産婦人科には分娩や手術だけでなく、婦人科や不妊治療など幅広く活躍できる分野が揃っているからです。

    産婦人科は人の誕生に唯一関わることができる診療科であるため、赤ちゃんの成長をご家族とともに見守り、医師として携われることに魅力を感じる方が多いようです。また、対応範囲がライフサイクルに応じた女性特有の悩みや予防医療など幅広いことも魅力のようです。

    親の思いを知ったから地域の親御さんがより輝けるようにしたい(小児科 病院 30代)

    現在の診療科を専攻した理由をお聞かせください。

    子育てをしたことで、小児科医療の大切さを親の立場で実感したからです。

    自身の診療科の今後は明るいと思いますか?

    少子化とは言われていますが、小児科はなくてはならない診療科であることに変わりありません。小児科診療を続けることで、子どもたちが安心して成長できる環境を作りたいと思っています。

    自分の専門としている診療科を、人にお勧めしますか?理由とともにお聞かせください。

    ぜひともおすすめしたいです。赤ちゃんが成長していく過程に医師として携われることに、とてもやりがいを感じています

    もし学生からやり直す、または転職するとしたらどの診療科を目指しますか?理由と共にお聞かせください。

    選択すると思います。少子化が深刻だからこそ、地域のお母さんお父さんが安心して働きながら子育てできるよう、小児科診療というかたちでお手伝いしたいと思っています。

    お子さまと親御さまの双方に寄り添い支える小児科も、なくてはならない診療科です。次世代を担う子どもの未来を守ることに興味を持つ方が多いようです。

    治療の成果が「眼に見えて」わかる(眼科 クリニック 40代)

    現在の診療科を専攻した理由をお聞かせください。

    眼科領域が扱う疾患は死に直面するようなことは限りなく少ないですが、人間の生活には必要不可欠なものだと考えています。治療ひとつで、その方の視界だけでなく、生活までも明るくできると思ったため眼科医になりました。視力の回復に関して言えば、成果は文字通り"目に見えて"分かるため、治療後は患者さまからも非常に感謝されます

    自身の診療科の今後は明るいと思いますか?

    明るいと思います。高齢化が進んだことに付随して、眼科の需要は今後も伸びていくと予想されるからです。

    自分の専門としている診療科を、人にお勧めしますか?理由とともにお聞かせください。

    おすすめしたい理由はいくつかあります。

    まず、眼科という1つの診療科の中にも領域があり、どれも奥深い点。次に、手術を極める方向と外来メインの方向を選べ、バランスよく働ける点です。何より、夜間に呼び出されることが原則ない診療科なので、ワークライフバランスを重視しやすいのが、おすすめしたい理由です。

    もし学生からやり直す、または転職するとしたらどの診療科を目指しますか?理由と共にお聞かせください。

    何でも診られる総合診療医にも少し興味はありますが、基本的には眼科を選びたいと考えています。

    眼科領域は治療ひとつで予後が劇的に変化することが多いため非常にやりがいを感じるのと、老若男女を問わず多くの人々に寄り添えるのが理由です。

    眼科は、治療による変化をダイナミックに感じることができ、かつワークワイフバランスを意識した働き方を実現しやすい診療科と言えるでしょう。オンもオフも充実させたいと考えている方にとって狙い目です。

    何でも診るから柔軟なキャリアプランを実現できる(総合診療科 クリニック 30代)

    現在の診療科を専攻した理由をお聞かせください。

    父親が開業医をしており、小児科、内科、外科など何でも診ている姿を見ていました。

    そのため、領域や専門にこだわることなく、父のように多くの患者さまを診られる医師になりたいと思い、総合診療科に進むことにしました。

    自身の診療科の今後は明るいと思いますか?

    総合診療科は良い意味で幅広く診られる診療科のため、キャリアプランは多くあります。病院で総合診療医として働く以外にも、家庭医としてクリニックに勤務して日常的な不調の解消に努める、何かしらの専門性を身につけるなど、選択肢は無数にあります。

    自分の専門としている診療科を、人にお勧めしますか?理由とともにお聞かせください。

    「●●しか診られない」よりもまず何でも診られるほうが重宝されますし、業務も多岐にわたるため、やりがいも多いです。

    自分自身、特に選択したい診療科がなかったというのもあるのですが...。そのような方こそ、総合診療を選択し、今後のキャリアを考えていくのも良いと思います。

    もし学生からやり直す、または転職するとしたらどの診療科を目指しますか?理由と共にお聞かせください。

    おそらく選択すると思います。総合診療科は、小児から高齢者まであらゆるライフステージに寄り添い続け、必要な医療を提供できる診療科だからです。

    複数の診療科で悩むのは多くの先輩医師が通ってきた道

    先にも登場した『日医総研ワーキングペーパー 若手医師の診療科選択プロセスに関する調査』によると、選択候補にあった平均診療科数の推移は、医学部志願時点2.20科、医学部1〜4年生時点2.49科、医学部5〜6年生時点2.44科、研修医時点1.96科でした。

    医学部で知識を身につけていく過程で、あるいは現場で活躍する先輩医師たちの背中を見たり印象的な出来事を経験したりしたことで、特定の診療科に対する思い入れが深くなるのはごく自然です。考え方を変えれば、診療科選択に伴う悩みは、各診療科と自分自身のキャリア形成と真剣に向き合った故に生まれた悩みであるとも言えるでしょう。

    医学の進歩、医療制度、医師の働き方改革など、医師を取り巻く環境は常に変化しています。将来的に転科を検討している方は、数十年続く医師人生をどのようなものにしたいのか、転科後のキャリアプランをよく考え、診療科を選択するようにしましょう

    ドクタービジョン編集部

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